上 下
871 / 1,480

興味をもたれた二人

しおりを挟む
 

「その、アデルとリリーというのは、誰だ?」
「誰だって言われても、アデルは引き抜き予定の近衛ですし、リリーは領地の警備隊のまとめ役ですよ?」
「なるほど……アンナリーゼ様が目をつけているなら、さぞ、強いのでしょうね?」


 元近衛団長とエリックが目を光らせる。

 ……強い人、好きね。


「アデルもリリーもそれほどは強くないわよ!」
「ならば、なぜ、その二人の名が上がるんですか?」
「……しいていうなら、アンバー領に欲しい人材だから?」
「欲しい人材?」
「アデルは、私の護衛にウィルがいないときのために必要なんです」
「先程、強くないとおっしゃられていませんでしたか?」
「えぇ、強くはない。ただ、度胸もあるし、統制がうまいと思うのよね!私、そういう人がアンバーには必要だって思ってて、リリーなんて、まさにその人!」
「リリーって女性ですよね?」
「なぜ?」
「名前から……して」
「私も最初はそう思っていたのだけど、男性よ。領地の警備隊で飲んだくれていたのを引き抜いたの。これが、すごいのよ。だれとでも仲良くなるから、この改革にはなくてはならない存在。私たち貴族との間を取り持ってくれる存在ね。商人以外にって意味だけど。あとは、領地の誰とでも顔がきくんだけど、近衛とも仲がいいし、アデルとの連携もすごいの!だから、欲しいと言われてもあげませんからね!」
「……強くなくても、アンナリーゼ様の側にはいられるんですね?」
「別に強さは求めてないわ。適材適所におさまる人材をたくさん集めているのよ。領地を運営するには、どうしても人手がいる。今までは、領主だけが考えていたけど、それじゃあ、広大なアンバー領は把握出来ないから。国と同じようにしているの。さしずめ、セバスととイチアが宰相ってとこかしら?他にもお金を扱う人とか商人も何人も受入れているし、ウィルが近衛団長みたいな感じ。役割をわけて、最後に集約して私のところへ繋いでもらっている。国と違って、広いと言っても1週間もあれば、領地内はまわれるから自身の目で見て判断もできるし……私の代は、これで運営をするつもりよ!」


 なるほどとみなが頷く。今まで、領主たちは考えたことがないようなことだったので、驚いているのはわかるが、信頼ができる人選をすることが私の1番の仕事だと思っている。


「それで、二人はとても優秀だから、いろいろと手伝ってくれているのよ」
「やはり、アンナリーゼ様といると、楽しそうだ。いつか、アンバーの領地で、アンナリーゼ様の役にたちたいです!」
「いや、だから、エリック。アンナリーゼのところへ行ってもらったら、困るから。給金も十分だろう?他に何か必要な……」
「公、お給金ではないのです。アンナリーゼ様の元で働きたいというのが、私の夢なのですよ!」
「……公、それじゃあ、アンナリーゼ様には叶わないですよ!」


 宰相に言われ、公はブツブツと文句を言っているが聞こえない。ところどころで、私の名が出てくるので、だいたい言っていることは想像できた。


「それじゃあ、そろそろ、お開きにしますか?」
「そうだな。あとは、パルマが返事を書いて、こちらへの返答次第で、動いてもらうことになるから、トライドはそのつもりで」
「かしこまりました」
「それじゃあ、解散だ」


 公の宣言により、私たちは席をたった。
 後ろからセバスが追いかけてきたので、横並びに歩く。すると、周りの文官たちが、チラチラと伺うように見てくるので、エスコートしてもらうことにした。


「アンナリーゼ様、もう、このままおかえりになりますか?」
「そのつもりだけど……何かある?」
「少し、お話が出来ればと思いまして……先日も話はさせてもらいましたけど、今日のことをふまえて」
「えぇ、そうね。今から、屋敷にこれる時間はとれるかしら?」
「もちろんです。できれば、このまま一緒に向かわせていただいても?」
「いいわよ!ちょうど、私も話したいことがあったから」


 セバスと一緒に馬車に乗り込み、アンバーの屋敷へと向かう。
 今日の話をしながらだったので、あっという間についてしまい、そのまま話しながら執務室へと入った。


「おかえりなさいませ、アンナリーゼ様」
「ただいま、ディル。今後の話をすることになったから、そうね……夕飯も作っておいてくれると助かるわ!」
「かしこまりました。では、後程お茶をお持ちします」


 出ていくディルを見送りながら、先程の話しの続きを始めた。


「滞在の件についてだけど、クロック侯爵家にお世話になるってことでいいんだよね?」
「そうよ!あと、国内の情勢とかは、情報を共有してくれる約束になっているから、大丈夫だと思うわ」
「ありがとうございます。手配していただけると、すごく助かります。あとは……」
「護衛なんだけど、強くはないけど、一人、宛があるの。声をかけてもいいか確認した上で、誘ってみてほしいのだけど……」
「今度は、どこで見つけて?」
「南の領地を一緒に回ったのよ。ゴールド公爵家の血縁者ではあるけど、なんだかちょっとおもしろい感じなのよね。名はキース。一度打診してみてくれる?ゆくゆくは、私の元で働きたいって言っていたから」


 わかりましたとセバスは頷き、メモを取る。そこから、キースの人となりを軽く話、セバスも同行を許可できると判断できるならとお願いした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

処理中です...