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興味をもたれた二人
しおりを挟む「その、アデルとリリーというのは、誰だ?」
「誰だって言われても、アデルは引き抜き予定の近衛ですし、リリーは領地の警備隊のまとめ役ですよ?」
「なるほど……アンナリーゼ様が目をつけているなら、さぞ、強いのでしょうね?」
元近衛団長とエリックが目を光らせる。
……強い人、好きね。
「アデルもリリーもそれほどは強くないわよ!」
「ならば、なぜ、その二人の名が上がるんですか?」
「……しいていうなら、アンバー領に欲しい人材だから?」
「欲しい人材?」
「アデルは、私の護衛にウィルがいないときのために必要なんです」
「先程、強くないとおっしゃられていませんでしたか?」
「えぇ、強くはない。ただ、度胸もあるし、統制がうまいと思うのよね!私、そういう人がアンバーには必要だって思ってて、リリーなんて、まさにその人!」
「リリーって女性ですよね?」
「なぜ?」
「名前から……して」
「私も最初はそう思っていたのだけど、男性よ。領地の警備隊で飲んだくれていたのを引き抜いたの。これが、すごいのよ。だれとでも仲良くなるから、この改革にはなくてはならない存在。私たち貴族との間を取り持ってくれる存在ね。商人以外にって意味だけど。あとは、領地の誰とでも顔がきくんだけど、近衛とも仲がいいし、アデルとの連携もすごいの!だから、欲しいと言われてもあげませんからね!」
「……強くなくても、アンナリーゼ様の側にはいられるんですね?」
「別に強さは求めてないわ。適材適所におさまる人材をたくさん集めているのよ。領地を運営するには、どうしても人手がいる。今までは、領主だけが考えていたけど、それじゃあ、広大なアンバー領は把握出来ないから。国と同じようにしているの。さしずめ、セバスととイチアが宰相ってとこかしら?他にもお金を扱う人とか商人も何人も受入れているし、ウィルが近衛団長みたいな感じ。役割をわけて、最後に集約して私のところへ繋いでもらっている。国と違って、広いと言っても1週間もあれば、領地内はまわれるから自身の目で見て判断もできるし……私の代は、これで運営をするつもりよ!」
なるほどとみなが頷く。今まで、領主たちは考えたことがないようなことだったので、驚いているのはわかるが、信頼ができる人選をすることが私の1番の仕事だと思っている。
「それで、二人はとても優秀だから、いろいろと手伝ってくれているのよ」
「やはり、アンナリーゼ様といると、楽しそうだ。いつか、アンバーの領地で、アンナリーゼ様の役にたちたいです!」
「いや、だから、エリック。アンナリーゼのところへ行ってもらったら、困るから。給金も十分だろう?他に何か必要な……」
「公、お給金ではないのです。アンナリーゼ様の元で働きたいというのが、私の夢なのですよ!」
「……公、それじゃあ、アンナリーゼ様には叶わないですよ!」
宰相に言われ、公はブツブツと文句を言っているが聞こえない。ところどころで、私の名が出てくるので、だいたい言っていることは想像できた。
「それじゃあ、そろそろ、お開きにしますか?」
「そうだな。あとは、パルマが返事を書いて、こちらへの返答次第で、動いてもらうことになるから、トライドはそのつもりで」
「かしこまりました」
「それじゃあ、解散だ」
公の宣言により、私たちは席をたった。
後ろからセバスが追いかけてきたので、横並びに歩く。すると、周りの文官たちが、チラチラと伺うように見てくるので、エスコートしてもらうことにした。
「アンナリーゼ様、もう、このままおかえりになりますか?」
「そのつもりだけど……何かある?」
「少し、お話が出来ればと思いまして……先日も話はさせてもらいましたけど、今日のことをふまえて」
「えぇ、そうね。今から、屋敷にこれる時間はとれるかしら?」
「もちろんです。できれば、このまま一緒に向かわせていただいても?」
「いいわよ!ちょうど、私も話したいことがあったから」
セバスと一緒に馬車に乗り込み、アンバーの屋敷へと向かう。
今日の話をしながらだったので、あっという間についてしまい、そのまま話しながら執務室へと入った。
「おかえりなさいませ、アンナリーゼ様」
「ただいま、ディル。今後の話をすることになったから、そうね……夕飯も作っておいてくれると助かるわ!」
「かしこまりました。では、後程お茶をお持ちします」
出ていくディルを見送りながら、先程の話しの続きを始めた。
「滞在の件についてだけど、クロック侯爵家にお世話になるってことでいいんだよね?」
「そうよ!あと、国内の情勢とかは、情報を共有してくれる約束になっているから、大丈夫だと思うわ」
「ありがとうございます。手配していただけると、すごく助かります。あとは……」
「護衛なんだけど、強くはないけど、一人、宛があるの。声をかけてもいいか確認した上で、誘ってみてほしいのだけど……」
「今度は、どこで見つけて?」
「南の領地を一緒に回ったのよ。ゴールド公爵家の血縁者ではあるけど、なんだかちょっとおもしろい感じなのよね。名はキース。一度打診してみてくれる?ゆくゆくは、私の元で働きたいって言っていたから」
わかりましたとセバスは頷き、メモを取る。そこから、キースの人となりを軽く話、セバスも同行を許可できると判断できるならとお願いした。
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