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お品書き渡す

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「話は以上だが、それぞれ頼んだ。他にあるか?」


 アンナリーゼだけは口を開くな!と言いたげにこちらを見てくる。そんな顔されれば、いうことがなくても、言いたくなるのが私だ。ニッコリ笑って、いいですか?と問う。
 やっぱりかととても残念そうに公も宰相も項垂れている。他には特に気にした様子もないが、セバスとパルマがほどほどにという視線で私を見てくる。

 ……失礼ね。二人とも。

 見返していると、公が大きくため息をついて、指名してくる。


「それで、なんだ?アンナリーゼ。何が言いたい?」
「……あんまり、歓迎されていない感じですね。寂しいな」
「寂しいなっていう顔をしておらんぞ?どこぞの悪ガキが何かおもしろいことを思いついたような顔だ」
「失礼ですね!私を何だと思っていらっしゃるのですか?」
「……アンナリーゼだ」
「そうですよ!アンナリーゼですよ!せっかく、公にも有益になりそうな情報は共有してあげようと思ったのに、辞めておきます。セバス、遠く離れ……」
「待て!有益なとは、なんだ?」
「私の話は聞きたくないのでしょう?」
「……誰もそんなことは言っておらぬ!なぁ?みなもそうであろう?」
「今更、取り繕っても……」
「本当にだ、アンナリーゼの情報は助かっているんだ。何かあるなら……」


 頼む!と言う公に、ニコリと笑う。相変わらず、しまった!と顔をしているが、後の祭り。


「では、まず、こちらを。いハニーアンバー店店主より、預かってきましたお品書きですので、お納めください。納品については、店主もしばらく不在にすることとなっています。代理のものが、納品にくると思いますので、その際のお支払いは、よろしくお願いします」
「……こ、これはいくらになるのだ?」
「下の方に売値が……今回、たくさん買っていただきましたので、多少の値引きもさせていただきました!」
「それでも、この額になるのか。もう少しだな?」
「領民の生活がかかっているので、それ以上は……」


 くそうと、貴族らしくない言葉を使いながら唇を噛んでいる。思った以上の出費になったようで、少々顔色が変わった。


「それで、これに似合う情報なのだろうな?」
「情報はおまけですよ。この前のお手紙を読んだことへの」
「それで?」
「そう急かさないでくださいよ。情報は、すぐに逃げたりしません」
「そりゃわかるが……」
「わかりました。では、セバスに随行するものとして、パルマをお願いします」
「……随行?連れていけということか?」
「はい、もちろんです。次代の文官を育てるためにも、こういった場所には少々若い文官を連れていくことがいいのですよ」
「なるほど……若い文官を育てるか。それはいい案だ。と、言っても……トライドも十分若いんだがなぁ……俺より若い」
「そうですよ!そういう人が、どんどん育っていかなければ、国を支える人がいなくなりますよ。腐敗政治の始まり……かもしれません」
「それは、困る。わかった。パルマの随行を許可しよう」
「後ですねぇ?」
「まだ、あるのか?」
「もちろんです!」
「……なんだ、もう、ついでだから、何でも言ってくれ」
「相談役に経験豊かな人の随行を」
「それなら……元近衛団長がいるではないか?」
「政治をする中では、近衛では文官のように中枢まで知っている人物はいないでしょう」
「それは、一理ある。近衛はあくまで、守る側。言を盾に相対するものではないしな……」
「作戦立案なら近衛がやくにたつでしょうけど、経費など計算は近衛では出来ないわ」


 公と宰相はお互いを見て何か視線で意見を交わしたようだ。頷きあっている。


「どのような人物が必要ですか?アンナリーゼ様」
「宰相が信頼している中で、そういう人いるかしら?」
「……そうですね。心当たりはあります。その人にも声をかければ、いいですか?」
「そうね。宰相が信頼している人なら、セバスやパルマを預けても大丈夫でしょう」
「わかりました。公、私に心当たりがありますので、その方にも声をかけることをお許し願えますか?」
「あぁ、わかった。他にも数人……宰相が目をかけているものがいれば、連れて行ってくれ」
「わかりました。今回は、エルドアでの滞在になることになります。その間の滞在場所は……」
「私の友人の別荘を借りることを提案しても?」


 一斉にこちらを見てくる。協議に向かうと言えど、ざっと三十人ほどの人間が向かうことになるのだ。宿を確保するには、なかなかの人数である。内、護衛のものがいるとはいえ、大人数を受入れてくれる先があるのは、ありがたいはずだ。


「友人って、エルドアにもいるのか?」
「もちろんです!私、顔だけは広いので」
「……はぁ、叶わないな。それで、大人数も受入れてくれるのか?」
「えぇ、そのように。公国に近い領地となっているので、エルドアへの返事のときに書いておいてくださいますか?」
「あぁ、わかった。そのように手配しよう。他にもあるのか?」
「他は……その中に、うちの商人の隊列もついて行かせてもらってもいいですか?」
「……それくらいなら、もう、なんとでもしてくれ」


 公は呆れたような声を出しながら、許可を出してくれた。これで、ニコライの護衛はいなくても済むだろう。
 あとは、情報の提供もエルドアにいる友人からしてもらえると伝えたところで、休憩となった。
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