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答え合わせ

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 部屋に入ってきてから一頻り話をして、ふと思い至ったような顔をするパルマ。こちらを見て考える素振りを見せる。
 ここに集まっているのは、公と宰相、護衛のエリック。本来なら呼ばれるような場所ではない場所に来ていることに疑問を持ったようだ。


「ところで、僕は何故呼ばれたのでしょうか?」
「パルマを呼んだのは、私です」
「……宰相様がですか?何か御用でもあったのでしょうか?先程は何も言われておりませんでしたが……」
「頼みたいことがあったんだ。公、手紙を」
「あぁ、これだ」


 公から宰相へ渡された手紙をパルマに渡す。その手紙は、私たちが先程まで議論していたものに間違いないが、私もパルマがこの暗号入りの手紙を読めると踏んでいたので、パルマを見る。


「そんなに見られていると読みづらいです」
「……その手紙、パルマは読めるのか?」
「読めると申しますと、公は、これが読めないのですか?」


 公と宰相が顔を見合わせながら、パルマに頷いた。


「えっと、これは、なかなかのお話ですね。声に出してもいいものなのでしょうか?それとも、紙に書いた方がよかったですか?」
「声に出して、そこに書かれている内容を教えてくれ」
「……アンナリーゼ様の前で、それをするのは、少し気がめいりますね」
「何故だ?」
「……この手紙、アンナリーゼ様はすでに解読されているのですよね?それで、公も内容はご存じだと……そのうえでとなると、僕の能力を試すため。アンナリーゼ様ほどの人が解けないわけがないので、やはり……」
「嫌か?」
「……そういうわけではありません。答えがあるものなので、解けないことはないし、すでに内容は把握しました」
「……アンナリーゼといい、パルマといい……規格外だな?」
「私たちだけではないですよ。ウィルやセバス、ナタリーはもちろんのこと……」
「あぁ、わかった。アンナリーゼの周りは、すごいものばかりだな!これでいいか?」
「……投げやりですね。確かにすごい勉強家ばかりですけど」


 私と公が雑談を挟んでいる間に、パルマは居住まいを正していた。


「頼めるか?パルマ」
「はい、お任せください。では……」


 そういって、説明を始めるパルマに、公と宰相は驚きのあまり言葉を失う。

「この手紙は一見変哲もない季節の頼りですが、内容からして、3つの事柄が書かれているように思います。
 1つ目が、ウィル・サーラーの配置について。現在、公国の最南端にいるサーラー伯爵をもう少しエルドア国の方へ配備できないかという要望ですね。サーラー伯爵の武勇伝は、国を越えていると聞いたことがありますから、それで、このような要望を言ってきたのでしょう」
「ちなみに、その武勇伝とはなんだ?」
「たしか、インゼロ帝国との小競り合いのときに、敵将の常勝将軍に打ち勝ったっというものらしいですけど……本当は、サーラー伯爵は、側についていただけなんですよね。確か」
「そうよ!ウィルは、無茶をしようとしていたセバスについて行っただけ。死者なしで、お互いの軍をひかせたのは、セバスの知略というか、チェスの強さね!」
「その話、聞いてはいたが、やはり本当のことだったのだなぁ?」
「信じてなかったんですか?セバスは、武力ではなく、戦略と言えるほどのものではありませんが、勝ったわけです。イチアをも負かしたのですから、たいしたものだと思いますよ!」


 続き、いいでしょうか?とパルマの確認に公が頷いた。私も同じく頷く。


「2つ目が軍事に関する共闘のための会議を開きたいというものです。公国より、エルドアのほうが、インゼロ帝国との間に隔たりが少ないですし、陸続きですから攻撃もされやすいということですからね。そのあたり、今、公国も病によって国力が下がっているので、手を組みたいとの申し入れですね」
「なるほど、なかなかよい読みをしているな」
「滅相もないです。これは、先輩であるセバス様からいただいた情報を元に自分なりに考えていることです。帝国からは遠く離れたアンバー領から、僕以上に情報を取り込んでいることに、正直なところ、震えております」
「定期的にセバスチャン・トライドとは、やり取りをしているのか?」
「もちろんです!セバス様の近くには、軍師であったイチア様がいらっしゃいますから、たくさん教えをこうています!」


 ニッコリいい笑顔のパルマに対して、公と宰相は顔を引きつらせる。後ろに控えているエリックは、パルマとは情報交換をするよう伝えてあるので、もちろん知っているし、自身もウィルとの情報交換を密にしているので、頷くだけだ。


「最後は、公子とエルドア国の第一王女との婚約を願っていると書かれています。第一王女との婚約ですか……何か、納得が……」


 しまったという顔をしているパルマに、公が目を輝かせる。


「それは、何故、そう思う?」
「……王族の婚姻については、私はよく知りませんが、エルドア国の第一王女は、我が国の公子より年が離れています。貴族の結婚では、よくある話ではありますが、国同士の結びつきを考えるのなら、公子と年の近いものとの縁組をするはずです。10歳近く離れている王女との婚姻とは……と、勘ぐってしまっただけです。お許しください」
「いや、いい。考えることは、みな似たようなものだ。それにしても、答え合わせをしたが、見事なものだ」
「……アンナリーゼ様?」
「正解ですよ。私が読み解いたものと、同じです」


 よかった……と胸を撫でおろすパルマ。少し緊張をしていたようで、顔が綻んだ。
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