862 / 1,480
答え合わせ
しおりを挟む
部屋に入ってきてから一頻り話をして、ふと思い至ったような顔をするパルマ。こちらを見て考える素振りを見せる。
ここに集まっているのは、公と宰相、護衛のエリック。本来なら呼ばれるような場所ではない場所に来ていることに疑問を持ったようだ。
「ところで、僕は何故呼ばれたのでしょうか?」
「パルマを呼んだのは、私です」
「……宰相様がですか?何か御用でもあったのでしょうか?先程は何も言われておりませんでしたが……」
「頼みたいことがあったんだ。公、手紙を」
「あぁ、これだ」
公から宰相へ渡された手紙をパルマに渡す。その手紙は、私たちが先程まで議論していたものに間違いないが、私もパルマがこの暗号入りの手紙を読めると踏んでいたので、パルマを見る。
「そんなに見られていると読みづらいです」
「……その手紙、パルマは読めるのか?」
「読めると申しますと、公は、これが読めないのですか?」
公と宰相が顔を見合わせながら、パルマに頷いた。
「えっと、これは、なかなかのお話ですね。声に出してもいいものなのでしょうか?それとも、紙に書いた方がよかったですか?」
「声に出して、そこに書かれている内容を教えてくれ」
「……アンナリーゼ様の前で、それをするのは、少し気がめいりますね」
「何故だ?」
「……この手紙、アンナリーゼ様はすでに解読されているのですよね?それで、公も内容はご存じだと……そのうえでとなると、僕の能力を試すため。アンナリーゼ様ほどの人が解けないわけがないので、やはり……」
「嫌か?」
「……そういうわけではありません。答えがあるものなので、解けないことはないし、すでに内容は把握しました」
「……アンナリーゼといい、パルマといい……規格外だな?」
「私たちだけではないですよ。ウィルやセバス、ナタリーはもちろんのこと……」
「あぁ、わかった。アンナリーゼの周りは、すごいものばかりだな!これでいいか?」
「……投げやりですね。確かにすごい勉強家ばかりですけど」
私と公が雑談を挟んでいる間に、パルマは居住まいを正していた。
「頼めるか?パルマ」
「はい、お任せください。では……」
そういって、説明を始めるパルマに、公と宰相は驚きのあまり言葉を失う。
「この手紙は一見変哲もない季節の頼りですが、内容からして、3つの事柄が書かれているように思います。
1つ目が、ウィル・サーラーの配置について。現在、公国の最南端にいるサーラー伯爵をもう少しエルドア国の方へ配備できないかという要望ですね。サーラー伯爵の武勇伝は、国を越えていると聞いたことがありますから、それで、このような要望を言ってきたのでしょう」
「ちなみに、その武勇伝とはなんだ?」
「たしか、インゼロ帝国との小競り合いのときに、敵将の常勝将軍に打ち勝ったっというものらしいですけど……本当は、サーラー伯爵は、側についていただけなんですよね。確か」
「そうよ!ウィルは、無茶をしようとしていたセバスについて行っただけ。死者なしで、お互いの軍をひかせたのは、セバスの知略というか、チェスの強さね!」
「その話、聞いてはいたが、やはり本当のことだったのだなぁ?」
「信じてなかったんですか?セバスは、武力ではなく、戦略と言えるほどのものではありませんが、勝ったわけです。イチアをも負かしたのですから、たいしたものだと思いますよ!」
続き、いいでしょうか?とパルマの確認に公が頷いた。私も同じく頷く。
「2つ目が軍事に関する共闘のための会議を開きたいというものです。公国より、エルドアのほうが、インゼロ帝国との間に隔たりが少ないですし、陸続きですから攻撃もされやすいということですからね。そのあたり、今、公国も病によって国力が下がっているので、手を組みたいとの申し入れですね」
「なるほど、なかなかよい読みをしているな」
「滅相もないです。これは、先輩であるセバス様からいただいた情報を元に自分なりに考えていることです。帝国からは遠く離れたアンバー領から、僕以上に情報を取り込んでいることに、正直なところ、震えております」
「定期的にセバスチャン・トライドとは、やり取りをしているのか?」
「もちろんです!セバス様の近くには、軍師であったイチア様がいらっしゃいますから、たくさん教えをこうています!」
ニッコリいい笑顔のパルマに対して、公と宰相は顔を引きつらせる。後ろに控えているエリックは、パルマとは情報交換をするよう伝えてあるので、もちろん知っているし、自身もウィルとの情報交換を密にしているので、頷くだけだ。
「最後は、公子とエルドア国の第一王女との婚約を願っていると書かれています。第一王女との婚約ですか……何か、納得が……」
しまったという顔をしているパルマに、公が目を輝かせる。
「それは、何故、そう思う?」
「……王族の婚姻については、私はよく知りませんが、エルドア国の第一王女は、我が国の公子より年が離れています。貴族の結婚では、よくある話ではありますが、国同士の結びつきを考えるのなら、公子と年の近いものとの縁組をするはずです。10歳近く離れている王女との婚姻とは……と、勘ぐってしまっただけです。お許しください」
「いや、いい。考えることは、みな似たようなものだ。それにしても、答え合わせをしたが、見事なものだ」
「……アンナリーゼ様?」
「正解ですよ。私が読み解いたものと、同じです」
よかった……と胸を撫でおろすパルマ。少し緊張をしていたようで、顔が綻んだ。
ここに集まっているのは、公と宰相、護衛のエリック。本来なら呼ばれるような場所ではない場所に来ていることに疑問を持ったようだ。
「ところで、僕は何故呼ばれたのでしょうか?」
「パルマを呼んだのは、私です」
「……宰相様がですか?何か御用でもあったのでしょうか?先程は何も言われておりませんでしたが……」
「頼みたいことがあったんだ。公、手紙を」
「あぁ、これだ」
公から宰相へ渡された手紙をパルマに渡す。その手紙は、私たちが先程まで議論していたものに間違いないが、私もパルマがこの暗号入りの手紙を読めると踏んでいたので、パルマを見る。
「そんなに見られていると読みづらいです」
「……その手紙、パルマは読めるのか?」
「読めると申しますと、公は、これが読めないのですか?」
公と宰相が顔を見合わせながら、パルマに頷いた。
「えっと、これは、なかなかのお話ですね。声に出してもいいものなのでしょうか?それとも、紙に書いた方がよかったですか?」
「声に出して、そこに書かれている内容を教えてくれ」
「……アンナリーゼ様の前で、それをするのは、少し気がめいりますね」
「何故だ?」
「……この手紙、アンナリーゼ様はすでに解読されているのですよね?それで、公も内容はご存じだと……そのうえでとなると、僕の能力を試すため。アンナリーゼ様ほどの人が解けないわけがないので、やはり……」
「嫌か?」
「……そういうわけではありません。答えがあるものなので、解けないことはないし、すでに内容は把握しました」
「……アンナリーゼといい、パルマといい……規格外だな?」
「私たちだけではないですよ。ウィルやセバス、ナタリーはもちろんのこと……」
「あぁ、わかった。アンナリーゼの周りは、すごいものばかりだな!これでいいか?」
「……投げやりですね。確かにすごい勉強家ばかりですけど」
私と公が雑談を挟んでいる間に、パルマは居住まいを正していた。
「頼めるか?パルマ」
「はい、お任せください。では……」
そういって、説明を始めるパルマに、公と宰相は驚きのあまり言葉を失う。
「この手紙は一見変哲もない季節の頼りですが、内容からして、3つの事柄が書かれているように思います。
1つ目が、ウィル・サーラーの配置について。現在、公国の最南端にいるサーラー伯爵をもう少しエルドア国の方へ配備できないかという要望ですね。サーラー伯爵の武勇伝は、国を越えていると聞いたことがありますから、それで、このような要望を言ってきたのでしょう」
「ちなみに、その武勇伝とはなんだ?」
「たしか、インゼロ帝国との小競り合いのときに、敵将の常勝将軍に打ち勝ったっというものらしいですけど……本当は、サーラー伯爵は、側についていただけなんですよね。確か」
「そうよ!ウィルは、無茶をしようとしていたセバスについて行っただけ。死者なしで、お互いの軍をひかせたのは、セバスの知略というか、チェスの強さね!」
「その話、聞いてはいたが、やはり本当のことだったのだなぁ?」
「信じてなかったんですか?セバスは、武力ではなく、戦略と言えるほどのものではありませんが、勝ったわけです。イチアをも負かしたのですから、たいしたものだと思いますよ!」
続き、いいでしょうか?とパルマの確認に公が頷いた。私も同じく頷く。
「2つ目が軍事に関する共闘のための会議を開きたいというものです。公国より、エルドアのほうが、インゼロ帝国との間に隔たりが少ないですし、陸続きですから攻撃もされやすいということですからね。そのあたり、今、公国も病によって国力が下がっているので、手を組みたいとの申し入れですね」
「なるほど、なかなかよい読みをしているな」
「滅相もないです。これは、先輩であるセバス様からいただいた情報を元に自分なりに考えていることです。帝国からは遠く離れたアンバー領から、僕以上に情報を取り込んでいることに、正直なところ、震えております」
「定期的にセバスチャン・トライドとは、やり取りをしているのか?」
「もちろんです!セバス様の近くには、軍師であったイチア様がいらっしゃいますから、たくさん教えをこうています!」
ニッコリいい笑顔のパルマに対して、公と宰相は顔を引きつらせる。後ろに控えているエリックは、パルマとは情報交換をするよう伝えてあるので、もちろん知っているし、自身もウィルとの情報交換を密にしているので、頷くだけだ。
「最後は、公子とエルドア国の第一王女との婚約を願っていると書かれています。第一王女との婚約ですか……何か、納得が……」
しまったという顔をしているパルマに、公が目を輝かせる。
「それは、何故、そう思う?」
「……王族の婚姻については、私はよく知りませんが、エルドア国の第一王女は、我が国の公子より年が離れています。貴族の結婚では、よくある話ではありますが、国同士の結びつきを考えるのなら、公子と年の近いものとの縁組をするはずです。10歳近く離れている王女との婚姻とは……と、勘ぐってしまっただけです。お許しください」
「いや、いい。考えることは、みな似たようなものだ。それにしても、答え合わせをしたが、見事なものだ」
「……アンナリーゼ様?」
「正解ですよ。私が読み解いたものと、同じです」
よかった……と胸を撫でおろすパルマ。少し緊張をしていたようで、顔が綻んだ。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる