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エルドアからの手紙Ⅳ
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「それで、息子との縁談だったな。公妃に聞いてみないと返事が出来ないことだが……背景は探った方がいいということか。単純に公子の婚約者という立場は、この国ではなかなかの地位があるぞ?アンナリーゼは、自身の子どもは、自由に相手を選んだらいいと言っていたが、それこそ、うちの息子との縁組は考えていないのか?」
「どうでしょう?ジョージア様に聞いたことはないですけど、まず、アンジェラを自身の手元から離すってことすら、少しも考えていませんし……次期公爵ですから、公の子どもとの結婚なんて、ありえないでしょ?」
「……ありえなくないと思うが?」
「どうしてです?いつかは、いいましたけど……それだって、アンジェラが選んだらっていう条件がありましたよね?」
「選んだらって、一応、公子の方が、身分は……」
「立場は、ハニーローズの方が上ですけどね。どこまで、公がハニーローズを認めるかによりますが、勝手に決めると、あとあとめんどくさいことになりますよ?」
「何かあるのか?」
「……アンジェラは何かにつけて、私以上だってことです」
「アンナリーゼ以上……それは、何か感じることがあるのか?その……」
ハニーローズについて、アンバー公爵家以外に伝わっていることは、それほど多くない。誰もが知っていることは繁栄の象徴であることだろう。セバスが言ったように破滅の方はあまり知られていないのは、悪いことが起こったときにハニーローズが身を粉にして国を立て直すということしか記録として残っていないからだろう。
「ハニーローズは、過去見が出来るのはご存じですか?」
「……あまり知らないんだが、そういうこともできるのか?」
「そうですよ。アンジェラは、過去を見ることができるようです。過去から知識を得ることが可能ということです」
「今の時代と昔は違うと思うんだが……」
「そう思うでしょうけど、何か彼女たちにしかわからないことがあるのだと思いますよ」
「……歴代のハニーローズにしかわからないものか。それは、聞いてみたい気もするが、きっと理解が及ばないことなのだろう」
「まだ、うちの子3歳になったばかりだから、まず、言葉と行動の理解から始まるんですよね。それに誰に似たのか突拍子もないですし」
「……間違いなくアンナリーゼに似たのであろう?」
「私ですか?私は、そこまで脈略なく動き回りませんよ!」
「子どものころは、そうでもないはずだ。俺が子どものころは、大人しくてそれはそれはいい子だったぞ?」
「……その反動があれですか?」
「あれ?」
「ダンスのお誘いベッドまで!」
「…………そんな若いころもあったな?」
ほんの数年前ですよっとニッコリ笑いかけると、引きつったような顔でこちらを見てくる。ジョージアも連れまわされていたので、よく覚えているが、私が、アンバー公爵家の預かりになったときもそんな感じで遊びまわっていたと記憶している。
「それに、私よりっていうのは、過去見だけの話ではありませんよ。人誑しなんですよ。人の内面にスルッと打ち解けたりしてしまうし……あのヒーナを数日で手名付けたことは、正直驚きました」
「なるほど、それは、アンナリーゼ以上の能力だ」
あとは……と考える。公には言わないが、予知夢も見れることは、報告からわかっているし、それだけでなく、他に何かはわからないが、能力が備わっているように感じている。
「あとは、剣の腕前も私よりうまくなるかもしれません。これは、一生伸びしろあると思うのですけど……」
「それはどういう?」
「剣を持って、レオの後ろをついて歩いているようです」
「……レオとは?」
「ウィルの養子ですよ」
「あぁ、ダドリー男爵の子か。男爵の子を側においていいのか?」
「ごもっともな意見です。でも、アンジェラにとって、レオは支えになると思いますよ。私がウィルに支えられているように」
「ジョージアが聞けば、やくであろうな」
「……知っています。ウィルの席は右隣。ジョージアの席は左隣ですから」
「なるほどな。ウィルもアンナリーゼを信頼しているのは、そこにあるのか。ちなみにセバスチャンは、どこに座るんだ?」
「ウィルの隣ですよ」
「なるほど……かなりアンナリーゼに近い場所に座らせるのだな」
「当たり前です!アンバー領の命運はセバスにかかっているのですから!」
その瞬間、少々難しい顔をする公を私は見逃さなかった。その表情から、セバスを一時的にでも公国へ戻す算段を公の中ではしているのではないだろうか。
……セバスが抜けるのは、正直困るわ。何ヶ月も拘束されてしまうと、イチアが全てを担うことになる。
何かセバスに言ってきた場合の想定は、私の中にもあった。先程の話のとき、1番初めに浮かんだのがセバスだった。イチアと共に過ごすなかで、とても成長しているのがわかる。
「……私から、友人は取り上げないでくださいね!」
ボソッと呟くと何か言ったか?と公が聞き返してきた。何もと言って苦笑いをしておいた。
「どうでしょう?ジョージア様に聞いたことはないですけど、まず、アンジェラを自身の手元から離すってことすら、少しも考えていませんし……次期公爵ですから、公の子どもとの結婚なんて、ありえないでしょ?」
「……ありえなくないと思うが?」
「どうしてです?いつかは、いいましたけど……それだって、アンジェラが選んだらっていう条件がありましたよね?」
「選んだらって、一応、公子の方が、身分は……」
「立場は、ハニーローズの方が上ですけどね。どこまで、公がハニーローズを認めるかによりますが、勝手に決めると、あとあとめんどくさいことになりますよ?」
「何かあるのか?」
「……アンジェラは何かにつけて、私以上だってことです」
「アンナリーゼ以上……それは、何か感じることがあるのか?その……」
ハニーローズについて、アンバー公爵家以外に伝わっていることは、それほど多くない。誰もが知っていることは繁栄の象徴であることだろう。セバスが言ったように破滅の方はあまり知られていないのは、悪いことが起こったときにハニーローズが身を粉にして国を立て直すということしか記録として残っていないからだろう。
「ハニーローズは、過去見が出来るのはご存じですか?」
「……あまり知らないんだが、そういうこともできるのか?」
「そうですよ。アンジェラは、過去を見ることができるようです。過去から知識を得ることが可能ということです」
「今の時代と昔は違うと思うんだが……」
「そう思うでしょうけど、何か彼女たちにしかわからないことがあるのだと思いますよ」
「……歴代のハニーローズにしかわからないものか。それは、聞いてみたい気もするが、きっと理解が及ばないことなのだろう」
「まだ、うちの子3歳になったばかりだから、まず、言葉と行動の理解から始まるんですよね。それに誰に似たのか突拍子もないですし」
「……間違いなくアンナリーゼに似たのであろう?」
「私ですか?私は、そこまで脈略なく動き回りませんよ!」
「子どものころは、そうでもないはずだ。俺が子どものころは、大人しくてそれはそれはいい子だったぞ?」
「……その反動があれですか?」
「あれ?」
「ダンスのお誘いベッドまで!」
「…………そんな若いころもあったな?」
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「それに、私よりっていうのは、過去見だけの話ではありませんよ。人誑しなんですよ。人の内面にスルッと打ち解けたりしてしまうし……あのヒーナを数日で手名付けたことは、正直驚きました」
「なるほど、それは、アンナリーゼ以上の能力だ」
あとは……と考える。公には言わないが、予知夢も見れることは、報告からわかっているし、それだけでなく、他に何かはわからないが、能力が備わっているように感じている。
「あとは、剣の腕前も私よりうまくなるかもしれません。これは、一生伸びしろあると思うのですけど……」
「それはどういう?」
「剣を持って、レオの後ろをついて歩いているようです」
「……レオとは?」
「ウィルの養子ですよ」
「あぁ、ダドリー男爵の子か。男爵の子を側においていいのか?」
「ごもっともな意見です。でも、アンジェラにとって、レオは支えになると思いますよ。私がウィルに支えられているように」
「ジョージアが聞けば、やくであろうな」
「……知っています。ウィルの席は右隣。ジョージアの席は左隣ですから」
「なるほどな。ウィルもアンナリーゼを信頼しているのは、そこにあるのか。ちなみにセバスチャンは、どこに座るんだ?」
「ウィルの隣ですよ」
「なるほど……かなりアンナリーゼに近い場所に座らせるのだな」
「当たり前です!アンバー領の命運はセバスにかかっているのですから!」
その瞬間、少々難しい顔をする公を私は見逃さなかった。その表情から、セバスを一時的にでも公国へ戻す算段を公の中ではしているのではないだろうか。
……セバスが抜けるのは、正直困るわ。何ヶ月も拘束されてしまうと、イチアが全てを担うことになる。
何かセバスに言ってきた場合の想定は、私の中にもあった。先程の話のとき、1番初めに浮かんだのがセバスだった。イチアと共に過ごすなかで、とても成長しているのがわかる。
「……私から、友人は取り上げないでくださいね!」
ボソッと呟くと何か言ったか?と公が聞き返してきた。何もと言って苦笑いをしておいた。
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