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エルドアからの手紙Ⅱ

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「ウィルのことは、エルドアでも有名な話なのですかね?インゼロ帝国の常勝将軍に勝ったとでも言われているのですか?」
「それは、しらぬ。インゼロ帝国に対しての防衛話は、外相どうしでしていることはあるらしいが、それ以上のことは入ってこない」
「それは、まずいんじゃないですかね?エリックは、何か知っていて?」


 公の後ろに控えていたエリックは、公に話してもいいかと視線を送っていた。こういうところを見ると、やはり組織の中の一人なのだと感じる。
 パルマなら、聞けば鐘をうつより早く返してくれるのだが、そうもなかなかいかない。


「お答えします。ウィル様については、エルドアでも有名な話であるとパルマに聞いたことがあります。実際にどのように話が広まっているかはわかりませんが、公国いちの剣の使い手という噂があるとも」
「否定はしないけど……公国いちは言い過ぎだと思うな」
「……それは、私も思います。公国いちは、誰がどう考えてもアンナリーゼ様以外にいませんから」
「ありがとう!エリック」


 ニッコリ笑いかけると、満足そうなエリック。その様子を見て、宰相と顔を合わせていた。


「見事に飼いならされているぞ?」
「本当ですね。エリックは、アンナリーゼ様が元々好きですから……」
「……誤解を招くようなことは言わないでください。アンナリーゼ様のことは、元々は苦手だったんですから」
「苦手?今の熱烈な感じからは、さっぱりだが……」
「そうでしょうか?私は元々もウィル・サーラーの補佐をしていたのです。アンナリーゼ様が来れば、ウィル様が仕事をしなくなるので、すごく苦手でした」
「それが、今では、大懐きしているということか……人誑しめ!」


 私を睨むが怖くない。私も睨み返しておいた。若干引いているのは、気のせいだろう。


「それはそうと、ウィルのことは書いてあるのとは別に、インゼロ帝国への対策を足並み揃えておきたいという内容もありますけど?それは、どうしますか。エリックをここから離すわけにも行かないでしょうし」
「そんな内容もあるのか。確かにエリックは公宮にいて欲しい。俺の護衛も考えると、いなくなるのはこまるからな」
「それでは、誰をと考えると、なかなか適任がいるように思えないですね」
「……適任ですか?いないこともないですけど……それは、公と宰相次第なので、後で話し合いませんか?」
「今じゃダメなのか?エリック」
「今はダメです。アンナリーゼ様は、わざわざ来ていただいているので、帰られてからでもいいのではないでしょうか?」
「……なるほど、それも一理あるな。ところで、アンナリーゼ」
「何でしょうか?」
「足並みを揃えると書いてあるらしいが、具体的な話は書いてあるのか?」
「……特には何も。ただ、打ち合わせをして、今後の対策をという議題で話したいということでしょう」
「なるほど。それなら、文官を向かわせてもよさそうだな」
「どうしてです?」
「……逆にどうしてと聞くのだ?」


 公は質問を質問で返してきた。コテンと首を傾げる。


「……バカなものでも見るような目は辞めてくれ。俺は、それで事足りると思ったから、言ったまでだから」
「……まだまだですね?公って、本当に平和ボケした甘ちゃんですよ!」
「アンナリーゼの感覚がおかしいのであろう?小競り合いはあれど、戦争なんて起こるわけでもないんだから」
「……だから、甘いと言っているのですけど?インゼロは、他の国と違い、かなり好戦的です。だから、エルドアは協議をもって、お互い、国を守る話し合いをしようと言ってきているのです。
 公は、何も感じていないのかもしれませんが、エルドアの王は、その鱗片でも感じたのではないですか?」
「何故、そう思う?」
「少し国内が落ち着いているという情報が入ってきています。ローズディアは、病の広がりで、国力はほどほどに落ちていますし、エルドアの方も、不穏な話が聞こえてきているという情報もありますからね。ここいらで、エルドアの国王としての威厳も取り戻したいという狙いもあるのでしょう。
 公くらいなら、何とでもなりそうですからね」
「……くらいと来たか。まぁ、仕方がない。公になっても、いまだにアンナリーゼの助けを必要としているのだから」


 自覚はあるのですか?とからかうと、今までのことを振り返ることくらいあると自嘲気味に笑っている。


「アンナリーゼなら、どうする?」
「とりあえず、公都の警備の中、仕事していないものがいるんおは御存じ?」
「あぁ、まぁ、知っている」
「その人たちが国を守る仕事へ。鍛えるのも兼ねて、一石二鳥目になりますね!」


 話を聞いていた三人が聞こえないふりをしていたようだ。


「あと、その人たちを引き連れて会合の場に向かうのは、前近衛団長ですね。素人の文官が行っても、正直に何の役にも立たないと思いますよ。実際に演習だろうと何だろうと戦っている人は、経験則で話ができますから。あとは、戦術が使える軍師のような存在が必要です。それは、そちらで考えてもらうとして、ただ、話をしに行くだけだと考えるのは辞めてください。本当に国を守るつもりがあるのかと、怒りたくなります!」


 まったく……とため息つけば、しばらく休憩をくれるのだろう。侍女が入れてくれ冷めた紅茶を一口飲んで、状況を頭の中で整理していった。
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