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エルドアからの手紙
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渡された手紙をもう1度読む。確認をしていくと、手紙の向こうからこちらをじっと見据える公と目が合った。
「もったいぶらなくてもいいんだぞ?」
「読まなくてもいいんですよ?」
「……まぁ、そうは言ってくれるな。褒美は、出すから」
「……別に褒美が欲しいわけではありませんよ」
「何なら喜ぶんだ?」
「そうですね……ハニーアンバー店の中にある在庫一掃してくれれば、私も嬉しいし、領地も潤いますから助かります」
「……いや、アンナリーゼの店が空になってしまうではないか?」
「それくらいで、空になるようなやわなつくりにはなっていませんよ。在庫も程々に持っていますし。本当に、空になるだけ買おうとしたら、国が滅びますから」
「……と、ところでアンナリーゼ様」
ん?と宰相の方を見つめてコテンと首を傾げる。今日は、とことん子どものように無邪気に接すると決めているので、可愛らしくしておいた。
「……その、砂糖の売上はどうなのでしょう?」
「初年度は、植えただけで量も取れなかったけど、今年はたくさん採れそうと聞いているわ。2年目3年目とだんだん、農家の方もこちらの気候に慣れてきたのか収穫じたいが増えているのよね。今年は秘密兵器もあるから、少し楽しみなのよね」
ふふふっと笑うと、宰相がすかさずニコリと笑う。
「ところで、エルドアはなんと送ってきたのですか?」
「なかなか、宰相も私のことをわかってきているような気がするわね。仕方がないな……」
大きくため息を一つ。
「書かれていることは、2つ……3つか」
「3つ?」
「今から、口出しなしで聞いてくださいね?いいですか?」
「あぁ、わかった」
「はい、じゃあ、いきますよっ!」
コクと頷く公。こういう決まりごとはなるべく守ってくれるよようになったので少し楽になった。全てを聞かずに話し出すので面倒だということに気が付いて始めた取り決めである。
「1つ目は、秘密裏に会合を開きたいそうです。宰相位か補佐ほどの役職の持つものが好ましいと書かれていますね。内容は、対インゼロ帝国についてだそうです。エルドアの方でも、不穏な動きを感じているみたいですね」
私は同じところを繰り返し読む。この暗号文になる前の原文を書いた人間をぶん殴ってやりたいほどの気持ちになりながら、唸る。
「……どうした?何かまずいことでも?」
「あれ?もう、いいんですか?」
「……いや、そういうわけではなくてだな、顔が険しいのが気になっただけだ。口出ししてすまぬ。続きを頼む」
「仕方がないですね。読みますよ」
コクっと頷く公は、非常にまずそうな顔をこちらに向けてくるが、私の方がそういう顔をしているのだろう。
唾を飲み込んでいる公と宰相。国の頂にいる人たちは、少々私の取り扱いに困っているようだった。
「ウィル・サーラーが最前線にいるなら、もう少しエルドア寄りに配備してほしいとのことです。どうですか?」
「……これは、話してもいいやつか?」
「もちろんです。どう思います?」
宰相を見て確認をとっている。もちろん、それは、私の欲しい答えをいうためと、エルドアに角が立たないように考えているようだった。
「エルドアのいうことは、もっともな気がするが、ウィル・サーラーは本来、アンバー領で、ハニーローズ及びその家族であるアンバー公爵家の護衛をしてもらっているものだ。エルドアには申し訳ないが、もう少ししたら、最前線にいるウィルを呼び戻す予定であるから、その返事は却下だな。先日も事なきを得ているが、ジョージアが狙われた事件もあることだし、国の宝であるハニーローズは、亡くすわけにはいかない」
「公も満点の答えをくださるときもあるのですね?」
「もちろんだ。だいたい、アンナリーゼ、ウィル・サーラー、ヨハン教授には随分と世話になりすぎている」
「自覚はあったんですね?」
「嫌味か?」
「……いえ、そういうつもりではないんですけど。つい本音が」
「本音の方か!なお、悪いわ!」
大きなため息を一つはき、公は続けていく。
「今回の病の件では、本当に世話になったと思っているんだ。この国の医師たちは未知の病気だと畏れていたわけだしな。それを救ってくれたこと、本当に感謝しているんだ。そろそろ、ウィルも子どもたちに会いたいだろうし、ヨハン教授も激務から解放したいだろ?」
「……あまり、大きな声では言えませんけど……ヨハンは、とても楽しんでいるらしいですよ?実験とかいろいろしていると、楽しそうな報告書が届いたので、1番助手に行動範囲等々を抑えるように伝令を出したところです」
「……それは、その。大丈夫なのか?」
「幸い、死者はしませんからね。大きな何かがあったとは報告を受けていません。ウィルからもないので、そこは大丈夫かと。あの研究バカのことですから、診療を抜け出し、ウロウロしていることだと思いますわ」
「それは、いいことなのか悪いことなのか、判断に迷うな」
「いいことだと思います。終息間近なのでしょう。余裕があるのは」
「……次の手紙で終息したか確認をして、終息宣言をだすか?」
「そう……」
「辞めたほうがいいですよ?インゼロに弱っているのでと知らせているようなものですから。宣言をするのでなく、北の方から、少しずつ領地を閉鎖しているところへ、解放の通知を出したらいいんじゃないですかね?一気に出すと、また、問題もあると思いますから。あくまで、領地での感染について、十分に調べてからでもいいと思います」
私はそれとなく、二人が動きやすいように誘導していく。知ってか知らずか、私の案に乗って行くようだ。
これからも大変だな……と、心の中で呟いた。
「もったいぶらなくてもいいんだぞ?」
「読まなくてもいいんですよ?」
「……まぁ、そうは言ってくれるな。褒美は、出すから」
「……別に褒美が欲しいわけではありませんよ」
「何なら喜ぶんだ?」
「そうですね……ハニーアンバー店の中にある在庫一掃してくれれば、私も嬉しいし、領地も潤いますから助かります」
「……いや、アンナリーゼの店が空になってしまうではないか?」
「それくらいで、空になるようなやわなつくりにはなっていませんよ。在庫も程々に持っていますし。本当に、空になるだけ買おうとしたら、国が滅びますから」
「……と、ところでアンナリーゼ様」
ん?と宰相の方を見つめてコテンと首を傾げる。今日は、とことん子どものように無邪気に接すると決めているので、可愛らしくしておいた。
「……その、砂糖の売上はどうなのでしょう?」
「初年度は、植えただけで量も取れなかったけど、今年はたくさん採れそうと聞いているわ。2年目3年目とだんだん、農家の方もこちらの気候に慣れてきたのか収穫じたいが増えているのよね。今年は秘密兵器もあるから、少し楽しみなのよね」
ふふふっと笑うと、宰相がすかさずニコリと笑う。
「ところで、エルドアはなんと送ってきたのですか?」
「なかなか、宰相も私のことをわかってきているような気がするわね。仕方がないな……」
大きくため息を一つ。
「書かれていることは、2つ……3つか」
「3つ?」
「今から、口出しなしで聞いてくださいね?いいですか?」
「あぁ、わかった」
「はい、じゃあ、いきますよっ!」
コクと頷く公。こういう決まりごとはなるべく守ってくれるよようになったので少し楽になった。全てを聞かずに話し出すので面倒だということに気が付いて始めた取り決めである。
「1つ目は、秘密裏に会合を開きたいそうです。宰相位か補佐ほどの役職の持つものが好ましいと書かれていますね。内容は、対インゼロ帝国についてだそうです。エルドアの方でも、不穏な動きを感じているみたいですね」
私は同じところを繰り返し読む。この暗号文になる前の原文を書いた人間をぶん殴ってやりたいほどの気持ちになりながら、唸る。
「……どうした?何かまずいことでも?」
「あれ?もう、いいんですか?」
「……いや、そういうわけではなくてだな、顔が険しいのが気になっただけだ。口出ししてすまぬ。続きを頼む」
「仕方がないですね。読みますよ」
コクっと頷く公は、非常にまずそうな顔をこちらに向けてくるが、私の方がそういう顔をしているのだろう。
唾を飲み込んでいる公と宰相。国の頂にいる人たちは、少々私の取り扱いに困っているようだった。
「ウィル・サーラーが最前線にいるなら、もう少しエルドア寄りに配備してほしいとのことです。どうですか?」
「……これは、話してもいいやつか?」
「もちろんです。どう思います?」
宰相を見て確認をとっている。もちろん、それは、私の欲しい答えをいうためと、エルドアに角が立たないように考えているようだった。
「エルドアのいうことは、もっともな気がするが、ウィル・サーラーは本来、アンバー領で、ハニーローズ及びその家族であるアンバー公爵家の護衛をしてもらっているものだ。エルドアには申し訳ないが、もう少ししたら、最前線にいるウィルを呼び戻す予定であるから、その返事は却下だな。先日も事なきを得ているが、ジョージアが狙われた事件もあることだし、国の宝であるハニーローズは、亡くすわけにはいかない」
「公も満点の答えをくださるときもあるのですね?」
「もちろんだ。だいたい、アンナリーゼ、ウィル・サーラー、ヨハン教授には随分と世話になりすぎている」
「自覚はあったんですね?」
「嫌味か?」
「……いえ、そういうつもりではないんですけど。つい本音が」
「本音の方か!なお、悪いわ!」
大きなため息を一つはき、公は続けていく。
「今回の病の件では、本当に世話になったと思っているんだ。この国の医師たちは未知の病気だと畏れていたわけだしな。それを救ってくれたこと、本当に感謝しているんだ。そろそろ、ウィルも子どもたちに会いたいだろうし、ヨハン教授も激務から解放したいだろ?」
「……あまり、大きな声では言えませんけど……ヨハンは、とても楽しんでいるらしいですよ?実験とかいろいろしていると、楽しそうな報告書が届いたので、1番助手に行動範囲等々を抑えるように伝令を出したところです」
「……それは、その。大丈夫なのか?」
「幸い、死者はしませんからね。大きな何かがあったとは報告を受けていません。ウィルからもないので、そこは大丈夫かと。あの研究バカのことですから、診療を抜け出し、ウロウロしていることだと思いますわ」
「それは、いいことなのか悪いことなのか、判断に迷うな」
「いいことだと思います。終息間近なのでしょう。余裕があるのは」
「……次の手紙で終息したか確認をして、終息宣言をだすか?」
「そう……」
「辞めたほうがいいですよ?インゼロに弱っているのでと知らせているようなものですから。宣言をするのでなく、北の方から、少しずつ領地を閉鎖しているところへ、解放の通知を出したらいいんじゃないですかね?一気に出すと、また、問題もあると思いますから。あくまで、領地での感染について、十分に調べてからでもいいと思います」
私はそれとなく、二人が動きやすいように誘導していく。知ってか知らずか、私の案に乗って行くようだ。
これからも大変だな……と、心の中で呟いた。
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