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最悪な1日になりますよ
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夜遅くまで事情聴取をされていたので、屋敷に帰ってきたら、深夜だった。いつもなら眠っている時間に起きていたので、なんだか、眠れそうにない。
「眠れないの?」
「……こんな時間まで起きてたことがなかったので」
「そっか。アンナは早寝早起きだからね」
「ジョージア様も最近はそういう生活じゃありませんか?」
「そうだね。でも、この時間まで起きていることに特に抵抗がないから、普通に眠れるよ。どうする?アンナが寝られないなら……」
ベッドの上で座ってぼんやりしていたところに声をかけられたので、じっと見つめ返す。トロっとした蜂蜜色の瞳が私を心配してくれているのがわかる。
そっと頬に触れると、甘えるようにすり寄ってきてくれた。
「珍しいね、アンナが」
「そうですか?ジョージア様に触れたくて。今になって、少し怖くなったのかもしれません」
「どういう?」
「領地でも今夜も狙われたのは私ではなくジョージア様だったから……。私なら、怖くないのに、ジョージア様を失うのは怖いなと思って……」
「失うか……そんな簡単にはしなないよ」
「そんなのわからないじゃないですか?今日だって、『予知夢』があったから……」
「そうだけど……アンナがいつだって守ってくれるだろ?奥様に守られてるっていうのは、なんとも情けない話ではあるんだけどね」
手を伸ばして、私の頬に手を添えてくる。私も同じようにジョージアに甘えてみた。すると目を細め喜んでいるのがわかる。
「俺は、アンナがいなくなってしまうことの方がずっと怖いよ。『予知夢』で先がわかっているって言われても、アンナにはこのまま、俺の心臓が止まるまで、ずっとここにいて欲しいんだ」
優しく腕をひかれ、ジョージアの上に重なった。心臓がゆったりと動いているの聞こえてくる。
「暖かいですね。そりゃ生きているからね。冷たくなったアンナを抱くの嫌だからね。俺よりも長生きしてくれないと」
「私も嫌です。ジョージア様を見送るのなんて」
「同時っていうのも奇跡的だけど、それは、嫌だな……」
クスクス笑うので、体が震えている。頭を撫でられていると、ポツリと名を呼ばれた。
「アンナ」
「何ですか?」
「もし、本当に、アンナがいなくなる日が来たとしたら……」
「ジョージア様の胸の中で死にたいですね。他のどこでもなく。なんて意地悪なんだろうって思いますけど、ここ以外で死ぬのだけはごめんです」
クスっと笑うと、同じことを考えていたというジョージア。
「どんな状況でもいい。死ぬときは、必ず」
「……はい。もちろんです。ジョージア様のアンナですからね」
暖かい体温を感じているうちに眠くなってきた。ホカホカとしているうちに、眠ってしまったようだ。
「子どものようだね。おやすみ、アンナ」
ジョージアの声を遠くに聞き眠りについた。悪夢にうなされることなく、ジョージアと踊った卒業式の夢を見た。
懐かしいな。まだ、二人とも子どもだね。
青薔薇のドレスを着た私とジョージア。たくさん想い出はあっても、私の中で、いつもこのひとときを思い出すことが多い。
クスっと笑ったところで目が覚める。昨夜のまま眠っていたようで、私はそっとジョージアの腕の中かラ抜け出した。
「今日も公のところへ行くのか……気が重いな……」
優しく扉をノックする音がした。きっとリアンだろうと思い声をかける。
「おはようございます。アンナリーゼ様。昨夜は先に休ませていただき、ありがとうございました」
「うぅん、いいよ!昨日はレオとミアもこっちに来ていたのでしょ?」
「はい。子爵様方が夜会に向かわれたので、こちらで預からせていただきました。大切にされるらしいのですが、ウィル様がいないと、少し肩身が狭いようで」
「そうだよね。サーラー子爵には、今回、公都にいる間は、こちらにいるよう伝えておくわ!」
「お気遣い、ありがとうございます」
「でも、子爵夫妻は、レオとミアを連れて歩きたいと思っていると思うから……出かけたいと言われたら、一緒に出かけてくれるかだけ確認しておいてくれるかしら?」
「もちろんです!子爵には本当によくしていただいて……なんてお礼をしたらいいのか」
「レオとミアの笑顔とありがとうで十分だと思うよ!ウィルが、そういってたから。もし、気になるなら、あの子たちが大きくなったときに、何か贈り物をしたらいいと思うわ。それも、リアンがいうのでなく、あの子たちが自主的に出来れば最高ね!」
「今から、そうなるように教え込みます!」
「……う、うん。あくまで、自主的にね?でも、あの二人なら、感謝の気持ちを何かであらわせると思うわ!」
だといいんですけど……と心配しているようではあるが、大丈夫だろう。そのあたりは、ウィルがうまくする気がする。
「そういえば、私、ウィルからこっそり聞いていたんだけど……これが欲しいって、レオが言っていたそうなの」
「ピアスですか?まだ、早いような気がしますが……」
「そうだよね。もう少し待ってとは言ってあるんだけど……」
「……もしかして、アメジストの薔薇のことですか?」
「えっ?そうだけど。あぁ、私の薔薇は赤と青だからか。たぶん、アンジェラが大きく鳴ったら、青い薔薇をレオに渡すと思うんだよね。それまで、待ってくれればいいけど……欲しいと言われれば、考えなくもないんだよね」
「そんな、滅相もない!」
「公都にいるから、職人のところにもよるから、頼んでおくわ。開けるのは、任せるしウィルにも相談してあげて!」
リアンにそれだけいうと、寝坊助なジョージアを起こす。食事の用意をするためにリアンは一旦下がった。
「ジョージア様、起きてください」
「寝起きにアンナのキスをいただけるとは……これは、いい日に違いない」
「たぶん、最悪な1日になりますよ!」
公に呼ばれているのでとは言わず、ニッコリ笑っておく。おはようと挨拶をして、もそもそと布団から出てきたのであった。
「眠れないの?」
「……こんな時間まで起きてたことがなかったので」
「そっか。アンナは早寝早起きだからね」
「ジョージア様も最近はそういう生活じゃありませんか?」
「そうだね。でも、この時間まで起きていることに特に抵抗がないから、普通に眠れるよ。どうする?アンナが寝られないなら……」
ベッドの上で座ってぼんやりしていたところに声をかけられたので、じっと見つめ返す。トロっとした蜂蜜色の瞳が私を心配してくれているのがわかる。
そっと頬に触れると、甘えるようにすり寄ってきてくれた。
「珍しいね、アンナが」
「そうですか?ジョージア様に触れたくて。今になって、少し怖くなったのかもしれません」
「どういう?」
「領地でも今夜も狙われたのは私ではなくジョージア様だったから……。私なら、怖くないのに、ジョージア様を失うのは怖いなと思って……」
「失うか……そんな簡単にはしなないよ」
「そんなのわからないじゃないですか?今日だって、『予知夢』があったから……」
「そうだけど……アンナがいつだって守ってくれるだろ?奥様に守られてるっていうのは、なんとも情けない話ではあるんだけどね」
手を伸ばして、私の頬に手を添えてくる。私も同じようにジョージアに甘えてみた。すると目を細め喜んでいるのがわかる。
「俺は、アンナがいなくなってしまうことの方がずっと怖いよ。『予知夢』で先がわかっているって言われても、アンナにはこのまま、俺の心臓が止まるまで、ずっとここにいて欲しいんだ」
優しく腕をひかれ、ジョージアの上に重なった。心臓がゆったりと動いているの聞こえてくる。
「暖かいですね。そりゃ生きているからね。冷たくなったアンナを抱くの嫌だからね。俺よりも長生きしてくれないと」
「私も嫌です。ジョージア様を見送るのなんて」
「同時っていうのも奇跡的だけど、それは、嫌だな……」
クスクス笑うので、体が震えている。頭を撫でられていると、ポツリと名を呼ばれた。
「アンナ」
「何ですか?」
「もし、本当に、アンナがいなくなる日が来たとしたら……」
「ジョージア様の胸の中で死にたいですね。他のどこでもなく。なんて意地悪なんだろうって思いますけど、ここ以外で死ぬのだけはごめんです」
クスっと笑うと、同じことを考えていたというジョージア。
「どんな状況でもいい。死ぬときは、必ず」
「……はい。もちろんです。ジョージア様のアンナですからね」
暖かい体温を感じているうちに眠くなってきた。ホカホカとしているうちに、眠ってしまったようだ。
「子どものようだね。おやすみ、アンナ」
ジョージアの声を遠くに聞き眠りについた。悪夢にうなされることなく、ジョージアと踊った卒業式の夢を見た。
懐かしいな。まだ、二人とも子どもだね。
青薔薇のドレスを着た私とジョージア。たくさん想い出はあっても、私の中で、いつもこのひとときを思い出すことが多い。
クスっと笑ったところで目が覚める。昨夜のまま眠っていたようで、私はそっとジョージアの腕の中かラ抜け出した。
「今日も公のところへ行くのか……気が重いな……」
優しく扉をノックする音がした。きっとリアンだろうと思い声をかける。
「おはようございます。アンナリーゼ様。昨夜は先に休ませていただき、ありがとうございました」
「うぅん、いいよ!昨日はレオとミアもこっちに来ていたのでしょ?」
「はい。子爵様方が夜会に向かわれたので、こちらで預からせていただきました。大切にされるらしいのですが、ウィル様がいないと、少し肩身が狭いようで」
「そうだよね。サーラー子爵には、今回、公都にいる間は、こちらにいるよう伝えておくわ!」
「お気遣い、ありがとうございます」
「でも、子爵夫妻は、レオとミアを連れて歩きたいと思っていると思うから……出かけたいと言われたら、一緒に出かけてくれるかだけ確認しておいてくれるかしら?」
「もちろんです!子爵には本当によくしていただいて……なんてお礼をしたらいいのか」
「レオとミアの笑顔とありがとうで十分だと思うよ!ウィルが、そういってたから。もし、気になるなら、あの子たちが大きくなったときに、何か贈り物をしたらいいと思うわ。それも、リアンがいうのでなく、あの子たちが自主的に出来れば最高ね!」
「今から、そうなるように教え込みます!」
「……う、うん。あくまで、自主的にね?でも、あの二人なら、感謝の気持ちを何かであらわせると思うわ!」
だといいんですけど……と心配しているようではあるが、大丈夫だろう。そのあたりは、ウィルがうまくする気がする。
「そういえば、私、ウィルからこっそり聞いていたんだけど……これが欲しいって、レオが言っていたそうなの」
「ピアスですか?まだ、早いような気がしますが……」
「そうだよね。もう少し待ってとは言ってあるんだけど……」
「……もしかして、アメジストの薔薇のことですか?」
「えっ?そうだけど。あぁ、私の薔薇は赤と青だからか。たぶん、アンジェラが大きく鳴ったら、青い薔薇をレオに渡すと思うんだよね。それまで、待ってくれればいいけど……欲しいと言われれば、考えなくもないんだよね」
「そんな、滅相もない!」
「公都にいるから、職人のところにもよるから、頼んでおくわ。開けるのは、任せるしウィルにも相談してあげて!」
リアンにそれだけいうと、寝坊助なジョージアを起こす。食事の用意をするためにリアンは一旦下がった。
「ジョージア様、起きてください」
「寝起きにアンナのキスをいただけるとは……これは、いい日に違いない」
「たぶん、最悪な1日になりますよ!」
公に呼ばれているのでとは言わず、ニッコリ笑っておく。おはようと挨拶をして、もそもそと布団から出てきたのであった。
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