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公都到着
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「おかえりなさいませ、アンナ様!旦那様」
「……た、ただいま、デリア」
「ただいま!デリア。もう、出歩いても大丈夫なの?」
私は出迎えてくれたデリアに問うと、後ろから赤ちゃんを抱いているディルがため息交じりに出てきた。
「おかえりなさいませ。旦那様、アンナリーゼ様」
「ただいま、ディル。その子が?」
「えぇ、私たちの子どもです」
そういって見せてくれる赤ちゃん。馬車から降りてきたアンジェラが、赤ちゃんを見て飛んできた。
「赤ちゃん?」
「えぇ、そうよ。ディルとデリアの赤ちゃんよ!アンジェラは妹が欲しいって言っていたから、よかったね?」
「見せて!」
ディルの腕の中でスヤスヤと眠っている赤ちゃんをみて、目が輝いている。余程嬉しいのだろう。
「ママ、赤ちゃん!アンの妹?」
「めっそうもないです!アンジェラ様の侍従になるよう育てはしますが、妹ではありませんよ!」
「……そうなの?」
「そうね、妹ではないけど、妹みたいな子かな?アンジェラより小さい子なのだから、大切にしてあげなさい」
「うん、そうする。可愛いね!赤ちゃん」
「名前は、どうするの?」
「……デリア、お教えして」
「リーゼです」
「……リーゼ?」
「アンナからとったってこと?」
「当たり前です!旦那様。アンナ様、よろしいでしょうか?リーゼと名付けても」
「いいも悪いも……二人が決めたのなら、私は祝福をするだけよ?」
「なんていうか、きっとデリアが決めたんだろうなって、気はするよね……うん」
「お察しください。もう、生まれる前から、名は決まっていたのですから」
ディルがやや苦笑いをしながら、子を少し揺らしてあげる。たくさんの話声で起きたようで、ぼんやりと周りを見ていた。
生まれてそれほどたっていないので、まだ、それほど、出来ることは少ないようだ。アンジェラが、頬をつつこうとしたら、大泣きされ、それにつられネイトが泣いてしまった。
「あら、アンジェラ」
「……アンじゃないもん!」
こちらも泣きそうになり、大きな目に涙をいっぱい溜めていた。
「中に入りましょう。アンジェラ様のお好きな生クリームたっぷりのケーキもご用意してありますから!」
デリアが上手にご機嫌をとってくれたおかげで、泣くかと思われたアンジェラが目をキラキラさせてデリアの手を取り屋敷の中へと入って行く。
「誰に似たのかしら……生クリームたっぷりのケーキにつられるだなんて」
「アンナ以外にいないだろ?」
ジョージアがご機嫌なアンジェラの後ろ姿を見ながら微笑む。アンジェラが可愛くて仕方がないらしく、ぴょこぴょこと歩いているのが可愛いなと呟いていた。
私たちが、玄関先で、話し込んでいる間に荷物も全て運び込まれていたようだ。義父母の馬車が遅れて着いたので、ディルからリアンが子を預かり、案内してくれるように頼む。私は、そのまま執務室へ、ジョージアは子ども部屋へと向かう。
一人になった執務室で、机に置かれている手紙を読む。私たちの予定はディルに伝えてあったので、領地へ送らず、ここに残してくれてあったのだ。
「まずは、これね」
ウィルからの手紙を開いた。内容は何の変哲もない挨拶や日常的な内容。何を食べてうまかったなどが書かれている。
「ウィルって、本当に暗号文をかかせたら、ピカイチよね。私、ここまで上手に書けないわ。隠語を使っているけど、このあたりが全部隠語なのね。全然、わからないわ!」
手紙の内容を確認しながら読み進めた。
「要約すると……大きな動きはないか。ただ、ときおり、見え隠れするものはあると……でも、部隊で動いている感じではないのね。もし、何かあったとしても、大規模な戦争にはなりそうにないか。最悪、小競り合いはあるかもしれないって書いてあるわね」
私は、最南端にいるウイルとヨハンのことを考えた。二人のことだから、絶対はないにしても、必ず帰ってきてくれるとは思っている。心配はしているので、何事もないことにこしたことはない。
インゼロもまだ、国内が落ち着いていないのだから、よそにちょっかいかけるのもあまり得策ではないことはわかっているだろう。いくら戦争好きな現皇帝でも恐怖政治だけでは、続かないことはわかっているはずだ。聞いたところ、腕もたつが頭もきれるという話でもある。実の兄が言うのだから、確かだろう。
「あと、南の総大将の役目を押し付けられたですって?そんなの、事後処理まで帰ってこれないじゃない!もう!どれくらい時間がかかると思っているのよ!公は。南と西に近衛を送ったことは知っているけど……厄介なことになっているわね。ウィルがいないのは、少々困るのだけど……」
頭を抱えて、どうしようと呟いていると、ニコライが入ってくる。公都でしばらくの間、仕事をしてくれていたのだが、私も来たことで、訪ねてきたのだろう。
「後の方がよろしかったですか?」
「……後も今も変わらないわ!ニコライ、いろいろと任せっきりでごめんなさいね」
「いえ、道筋だけでもたててもらってあるので、あとは、それに添って商売をするだけですから。ナタリー様もコーコナ領の方も始まりの夜会までの間に相当数のドレスを売ることに成功しています。
目玉にしていた香水の合わせ販売の方も、おかげ様で完売です」
「本当に?」
「えぇ、それなりに戦略が必要かと考えていましたが、ハニーアンバー店で新しいものが出るので、期待しておいてくださいと、令嬢へのドレス納品のときに声をかけたら、瞬く間にという感じでした。今回、アンナリーゼ様が考えていた香りの共有がおもしろいと貴族方からは聞いています」
香水販売はうまくいったようで、私もニコライもニンマリと笑いあう。次なる商品への投資金ができたので、また、おもしろいことをしましょうと頷きあった。
「……た、ただいま、デリア」
「ただいま!デリア。もう、出歩いても大丈夫なの?」
私は出迎えてくれたデリアに問うと、後ろから赤ちゃんを抱いているディルがため息交じりに出てきた。
「おかえりなさいませ。旦那様、アンナリーゼ様」
「ただいま、ディル。その子が?」
「えぇ、私たちの子どもです」
そういって見せてくれる赤ちゃん。馬車から降りてきたアンジェラが、赤ちゃんを見て飛んできた。
「赤ちゃん?」
「えぇ、そうよ。ディルとデリアの赤ちゃんよ!アンジェラは妹が欲しいって言っていたから、よかったね?」
「見せて!」
ディルの腕の中でスヤスヤと眠っている赤ちゃんをみて、目が輝いている。余程嬉しいのだろう。
「ママ、赤ちゃん!アンの妹?」
「めっそうもないです!アンジェラ様の侍従になるよう育てはしますが、妹ではありませんよ!」
「……そうなの?」
「そうね、妹ではないけど、妹みたいな子かな?アンジェラより小さい子なのだから、大切にしてあげなさい」
「うん、そうする。可愛いね!赤ちゃん」
「名前は、どうするの?」
「……デリア、お教えして」
「リーゼです」
「……リーゼ?」
「アンナからとったってこと?」
「当たり前です!旦那様。アンナ様、よろしいでしょうか?リーゼと名付けても」
「いいも悪いも……二人が決めたのなら、私は祝福をするだけよ?」
「なんていうか、きっとデリアが決めたんだろうなって、気はするよね……うん」
「お察しください。もう、生まれる前から、名は決まっていたのですから」
ディルがやや苦笑いをしながら、子を少し揺らしてあげる。たくさんの話声で起きたようで、ぼんやりと周りを見ていた。
生まれてそれほどたっていないので、まだ、それほど、出来ることは少ないようだ。アンジェラが、頬をつつこうとしたら、大泣きされ、それにつられネイトが泣いてしまった。
「あら、アンジェラ」
「……アンじゃないもん!」
こちらも泣きそうになり、大きな目に涙をいっぱい溜めていた。
「中に入りましょう。アンジェラ様のお好きな生クリームたっぷりのケーキもご用意してありますから!」
デリアが上手にご機嫌をとってくれたおかげで、泣くかと思われたアンジェラが目をキラキラさせてデリアの手を取り屋敷の中へと入って行く。
「誰に似たのかしら……生クリームたっぷりのケーキにつられるだなんて」
「アンナ以外にいないだろ?」
ジョージアがご機嫌なアンジェラの後ろ姿を見ながら微笑む。アンジェラが可愛くて仕方がないらしく、ぴょこぴょこと歩いているのが可愛いなと呟いていた。
私たちが、玄関先で、話し込んでいる間に荷物も全て運び込まれていたようだ。義父母の馬車が遅れて着いたので、ディルからリアンが子を預かり、案内してくれるように頼む。私は、そのまま執務室へ、ジョージアは子ども部屋へと向かう。
一人になった執務室で、机に置かれている手紙を読む。私たちの予定はディルに伝えてあったので、領地へ送らず、ここに残してくれてあったのだ。
「まずは、これね」
ウィルからの手紙を開いた。内容は何の変哲もない挨拶や日常的な内容。何を食べてうまかったなどが書かれている。
「ウィルって、本当に暗号文をかかせたら、ピカイチよね。私、ここまで上手に書けないわ。隠語を使っているけど、このあたりが全部隠語なのね。全然、わからないわ!」
手紙の内容を確認しながら読み進めた。
「要約すると……大きな動きはないか。ただ、ときおり、見え隠れするものはあると……でも、部隊で動いている感じではないのね。もし、何かあったとしても、大規模な戦争にはなりそうにないか。最悪、小競り合いはあるかもしれないって書いてあるわね」
私は、最南端にいるウイルとヨハンのことを考えた。二人のことだから、絶対はないにしても、必ず帰ってきてくれるとは思っている。心配はしているので、何事もないことにこしたことはない。
インゼロもまだ、国内が落ち着いていないのだから、よそにちょっかいかけるのもあまり得策ではないことはわかっているだろう。いくら戦争好きな現皇帝でも恐怖政治だけでは、続かないことはわかっているはずだ。聞いたところ、腕もたつが頭もきれるという話でもある。実の兄が言うのだから、確かだろう。
「あと、南の総大将の役目を押し付けられたですって?そんなの、事後処理まで帰ってこれないじゃない!もう!どれくらい時間がかかると思っているのよ!公は。南と西に近衛を送ったことは知っているけど……厄介なことになっているわね。ウィルがいないのは、少々困るのだけど……」
頭を抱えて、どうしようと呟いていると、ニコライが入ってくる。公都でしばらくの間、仕事をしてくれていたのだが、私も来たことで、訪ねてきたのだろう。
「後の方がよろしかったですか?」
「……後も今も変わらないわ!ニコライ、いろいろと任せっきりでごめんなさいね」
「いえ、道筋だけでもたててもらってあるので、あとは、それに添って商売をするだけですから。ナタリー様もコーコナ領の方も始まりの夜会までの間に相当数のドレスを売ることに成功しています。
目玉にしていた香水の合わせ販売の方も、おかげ様で完売です」
「本当に?」
「えぇ、それなりに戦略が必要かと考えていましたが、ハニーアンバー店で新しいものが出るので、期待しておいてくださいと、令嬢へのドレス納品のときに声をかけたら、瞬く間にという感じでした。今回、アンナリーゼ様が考えていた香りの共有がおもしろいと貴族方からは聞いています」
香水販売はうまくいったようで、私もニコライもニンマリと笑いあう。次なる商品への投資金ができたので、また、おもしろいことをしましょうと頷きあった。
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