上 下
845 / 1,508

3歳のお祭りの楽しみ方

しおりを挟む
 どうも、おじいちゃん、おばあちゃんは、私に優しいということを悟ったアンジェラ。どこかの誰かさんが我が家の女王様の怒りをかったときに逃げ込む父の後ろというのが見えてくる。
 私の祖父母も、遠く離れた場所で住んでいたので、それほど頻繁に会えなかった。だから、祖父母の方も私を甘やかしたかったというのもあったのだと思うが、目の前でそれを見せられていると、どうしたものかと思ってしまう。
 アンジェラたちの誕生祭は、始まっており、屋敷の前は店が並び賑わっていた。


「次はあっち」
「アンジェラや、こっちのはどうだ?」
「うぅん、こっちがいいの!」


 我儘言いたい放題になっているアンジェラに少々悩まされる。


「アンジーはかなり打ち解けているね?」
「……ジョージア様。なんとか言ってあげてください」
「そうはいってもねぇ?両親も可愛くて仕方がないんだから、しょうがないよ。アンナがあんなに可愛い子を生むからいけないんだ」
「……ほぼほぼ、見た目はジョージア様ですけどね!」
「中身はアンナだけどね?」


 クスクス笑うジョージアは、私の子ども時代を見てきたかのようにアンジェラの話をする。私がいなかった数ヶ月の間、そうとうジョージアに甘やかされていたらしい。ただし、リアンには、叱られてばかりいたとか。


「リアンはさすがだよね。母親だけあって、うまく叱ってくれるよ」
「叱るというより、諭すのほうが正解ですよ。リアンは、決して威圧的ではなく、目を見てどうしてそれをしたのかとか、しっかり話を聞いた上で、これはどうしてしてはいけないのかと、こんこんと言われるの」
「まるで、アンナが言われたようなふうに聞こえるけど?」
「……そんなこと、ありませんよ?」


 おほほほ……と笑うと、じとっとこちらを見てくる。


「ママは、リアンに叱られているの」


 思わぬ伏兵に手を繋いでいたジョージを見る。


「へぇーアンナがリアンにね?まぁ、デリアがいたときもよく見た光景だけど?」
「……そんなことありませんよ?」
「デリアがいたときは、注意だけではなかったよね。本当にアンナはいつまでたっても……」
「子どもだって言いたいんですか?」
「……違うよ?予測不可能って言いたかったんだよ」
「同じじゃないですか!アンジェラだって、あっ、ほら!」
「本当だ。おんなじだね。母娘なのに……もう少し落ち着こうか?アンナも」
「……落ち着いた立派な淑女ですよ!」
「そういうことにしておくよ!さて、アンジーを回収してくるよ。そうしないと、両親が寝込んでしまいそうだ」
「それは、困りますから、お願いします」
「あぁ、わかったよ。それにしても……」


 こちらを見て、まだ、何か言いたげなジョージアを睨む。


「アンジーは、きっとアンナのような大人になるんだろうね」
「それは……」
「そのままだよ」


 そういってアンジェラの元に駆けていってしまう。その後ろ姿を見ながらため息をつく。


「ママ?」
「どうしたの?」
「あれ、食べたい」


 珍しくジョージが興味をひいた食べ物があったようで、指さした方を見ると、たまに食べたくなる蒸かし芋。そこにバターがのかっていておいしそうだ。
 おやつに出してもらうことがあるので、ジョージも好きだそうだ。


「半分こする?」
「うん、する!」


 私はジョージと蒸かし芋をしている店の前まで行く。


「こんにちは!お芋1つくださいな!」
「はいはい、お芋……って、アンナちゃんかい?持っていきな!」
「ダメダメ!お金は受取って!あとで、回収させてもらうから」
「抜け目がないねぇ……まったく。今日は、ぼっちゃんと回っているのかい?」
「えぇ、そうよ!ジョージがお芋が食べたいって。割ってもらえるかしら?」
「任せといて!それより、お嬢ちゃんはどうしたんだい?いつも元気な……」
「マッマッ!」
「あら、来た来た。お嬢ちゃん」
「アンジー待ちなさい!」


 ジョージアからスルッと逃げ出し、私たち一目散に走ってくるアンジェラ。蒸かし芋の店をしているおばさんが、嬉しそうにしている。


「もう1個必要だね?」


 ニヤッと笑うので、私は2個分の代金を払う。先にジョージ、走って私に抱きついたアンジーにも渡してあげ、私の分とジョージアの分を受取った。


「もう、食べているの?」
「ジョージが欲しいっていったから、半分にするつもりだったの。どうぞ、旦那様」


 ジョージアに半分に切った芋を渡そうとすると、その手を掴んで固定し、そのまま口でかぶりつく。
 いままでそんなこと1度もされたことがなかったので驚いたのと、なんだかとても恥ずかしくなった。


「……あの、ジョージア様?」
「ん?このお芋おいしいね。おばさん、どこのお芋?」
「おっ、旦那様だね。芋はアンバーで採れたものだけど、そんなことより!なんだい?あんたたち、熱いんだねぇ?こっちのホクホク蒸かしている芋より熱いんじゃないかい?ねぇ、アンナちゃん?」
「……」
「アンナ?」
「えっ?何?」
「何?って大丈夫?」
「……えぇ、大丈夫よ!」
「あら、アンナちゃん、顔が赤いわよ?」
「……そうかしら?お芋が熱いからじゃない?ほら、ふぅふぅ……」
「ママ、もう冷めてるよ?」


 食べ終わったアンジェラが、物欲しそうにこちらを見上げていた。目があったら、何か見透かされているようで、それも恥ずかしくなる。


「アンナは一体どうしたことやら?」
「……なんでもありません!さぁ、次はどこに行く?」


 前を見れば、義両親が仲良さげに店を見て回っていた。手にはアンジェラにねだられたものが、たくさんあって、申し訳なく思ったが、顔を見れば、満足そうに笑いあっている。


「年をとっても、あんなふうに一緒にいたいね?」
「……ジョージア様?」
「ん。俺、アンナの両親もだけど、ああやって二人揃って穏やかにこの領地で過ごしたいなって思っているんだ。まだまだ、これから、アンジェラたちに振り回されるんだろうけど……ね?」


 苦笑いをするジョージアに私も微笑む。外側の手を子どもたちと繋いでいたので、真ん中でジョージアの手を握る。驚いてはいたが、久しぶりのデートのようで嬉しそうであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 完結まで執筆済み、毎日更新 もう少しだけお付き合いください 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます

処理中です...