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心配しなくても任せないわ!
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図に乗るヒーナ。私の弱みを握ったとでも思っているのだろうが、大きな間違いだ。たしかに、ジョージアには甘いが、全てが甘いわけでは……決してない!
「旦那様の護衛は、必要ですよね?悪い人から守って差し上げないと!」
いいことを思いついたかのようなヒーナを睨んでやる。おもしろそうに目を細めているが、周りは、少々凍り付いているかのような雰囲気であった。
「悪い人って、誰のことかわかっている?」
「誰のことです?私はこんな可愛らしい侍女ですし……」
キョロキョロとわざとらしくしているヒーナにイラっとした。
「ヒーナ以外にいないでしょ?私からしたら、ヒーナはちょっと前まで、インゼロ帝国の手先だったのですもの。そんな人物を私の旦那様につけてたまるものですか!」
「そうは言いますが、奥さま!」
「奥さまって呼ぶのは、アンバー公爵家以外の人間だけよ?覚えておいて。次、奥さまって呼んだら、二度と日の目の見ない場所で……」
「願ったり叶ったりです!奥さま!」
「……」
わざと言っているのだろう。ヒーナは、本当に私のことが嫌いのようだ。万人に好かれようとは思っていないが、あからさまにとなると、腹が立つ。それに、どちらが主か、ハッキリさせる必要がある。
執務机に向かい、ベルを鳴らす。すると、リアンがしずしずと執務室へ入ってきた。
「何か御用でしょうか?」
「えぇ、ナタリーのところへヒーナを向かわせてちょうだい。夜会用のドレスを新調しないといけないでしょ?」
「なっ!夜会なんて!」
「行くのよ?私とジョージア様の護衛として。侍女ですもの。ドレスコードさえあればいけるわ。どちらが主人か、世間に教えていただきましょう」
勝ち誇ったように言えば、先程までの余裕はなく俯いてしまう。ヒーナは余程目立つことが苦手のようだ。確かに、夜会やお茶会に参加していたとき、背中だけでも目立ってはいたが、それ以上にその幼い容姿もみなの視線を奪うのだろう。
「……かしこまりました。始まりの夜会のみ、お供します」
「いいえ、私とジョージア様が出るものは全て参加してもらうわ!もともと、そのつもりでいたのだから、これ以上は何も受け付けないわ!リアン、ナタリーのいるところへヒーナを連れて行って」
「よろしいのですか?ナタリー様は……護衛なら、ノクトが行ってくれるでしょ?なんたって子猫の保護者だし」
「アンナ、いつヒーナの……」
「元雇い主の一族でしょ?」
「……それは、そうだが。少々骨が折れる。俺も老体なんだから、体を労わるとかだな?」「アンジェラにお願いさせる?じぃじ、お願い!って」
「……悪くない。それなら、俄然やる気が出る!」
「じゃあ、リアン悪いんだけど、ノクトも連れてアンジェラの元へ寄ってちょうだい。その後、ナタリーの元へ」
返事をして、ヒーナの首根っこを引っ掴前るリアン。
あっ、あれ?どうなっているの?
そう思っているうちに扉はしまり、リアンのお説教のような声が聞こえてきた。扉の前に立つノクトはどうしたものかとため息をついて私をみるので、しっしっと手で合図して執務室から追い出した。
「大丈夫なのですか?」
「ヒーナのこと?」
「えぇ、他にいませんけど……」
「躾は終わっているって話だから、大丈夫。ただ、見た目の子猫のような容姿に騙されないようにしないといけないけど……それがわかっていたら、ね。徹底的にアンバー色に染めて……」
「アンナリーゼ様だから、青紫だよ。薔薇の君なんだから」
「本当ね。しっかり染めてあげましょう。いつか、薔薇をあげられるくらいには」
「それにしても、アンナリーゼ様のアメジストは、みなが欲しがりますね?先日、アデルが、聞いてきていましたよ?どうすれば、アメジストがもらえるようになるのかって」
「……そうね。特に基準はないのよね。アンバー領によく尽くしてくれ、私が贈る相手への信頼の証みたいなものだから……明確なものはないの」
「なるほど。今度、教えておいてあげます」
「……ノクトとイチアは、ほぼほぼ脅迫ぽかったけど……でも、知識や経験に対する期待値や、ウィルやセバスの成長の助けになればとも思っていたのよね。二人がいることは、アンバー領地の改革において、10年早くものごとが進められるからありがたいわ!識字率だけでなく、来年導入する累進課税の制度だって、だいたいこんなものって言うのを纏めてくれたのでしょ?私は口にするけど、実務はほとんどしないから。得難い人を得たと私はずっと思っているの」
「それは、ノクト様や私が思っていることですよ。この年になって、こうして若者の育成を手伝える。それも、私を打ち負かしたセバスに自身の知識を与えられることは、とても幸せなことです。戦争ばかりしていて、先のことなんて考えたことがなかったのです。ノクト様についてきただけではありますが、心が満ちているのは、アンバー領へ来られたからです。人が温かい。みな、かつての敵であったはずの私にまで」
自身の手のひらを見ながら、イチアはいう。その手には、敵味方関係なく汚れている手だと言うのにと。
「アンナリーゼ様の目は、どこまで先が見えているんですかね?」
ニコリと笑うイチアに、さぁととぼけておく。私がみた『予知夢』は、娘アンジェラの戴冠式。残酷な現実を突きつけられたのち、平和な世の中が来る未来だ。
未来は、今のように平和であり続けてくれれば……と願う。アンジェラを始め、あの場にいた子どもたちがみな、幸せな日々の中、暮らしてくれるのであれば、アンジェラが必ずしも女王となる未来でなくていいのだ。
幼い我が子に、想いを馳せた。
「旦那様の護衛は、必要ですよね?悪い人から守って差し上げないと!」
いいことを思いついたかのようなヒーナを睨んでやる。おもしろそうに目を細めているが、周りは、少々凍り付いているかのような雰囲気であった。
「悪い人って、誰のことかわかっている?」
「誰のことです?私はこんな可愛らしい侍女ですし……」
キョロキョロとわざとらしくしているヒーナにイラっとした。
「ヒーナ以外にいないでしょ?私からしたら、ヒーナはちょっと前まで、インゼロ帝国の手先だったのですもの。そんな人物を私の旦那様につけてたまるものですか!」
「そうは言いますが、奥さま!」
「奥さまって呼ぶのは、アンバー公爵家以外の人間だけよ?覚えておいて。次、奥さまって呼んだら、二度と日の目の見ない場所で……」
「願ったり叶ったりです!奥さま!」
「……」
わざと言っているのだろう。ヒーナは、本当に私のことが嫌いのようだ。万人に好かれようとは思っていないが、あからさまにとなると、腹が立つ。それに、どちらが主か、ハッキリさせる必要がある。
執務机に向かい、ベルを鳴らす。すると、リアンがしずしずと執務室へ入ってきた。
「何か御用でしょうか?」
「えぇ、ナタリーのところへヒーナを向かわせてちょうだい。夜会用のドレスを新調しないといけないでしょ?」
「なっ!夜会なんて!」
「行くのよ?私とジョージア様の護衛として。侍女ですもの。ドレスコードさえあればいけるわ。どちらが主人か、世間に教えていただきましょう」
勝ち誇ったように言えば、先程までの余裕はなく俯いてしまう。ヒーナは余程目立つことが苦手のようだ。確かに、夜会やお茶会に参加していたとき、背中だけでも目立ってはいたが、それ以上にその幼い容姿もみなの視線を奪うのだろう。
「……かしこまりました。始まりの夜会のみ、お供します」
「いいえ、私とジョージア様が出るものは全て参加してもらうわ!もともと、そのつもりでいたのだから、これ以上は何も受け付けないわ!リアン、ナタリーのいるところへヒーナを連れて行って」
「よろしいのですか?ナタリー様は……護衛なら、ノクトが行ってくれるでしょ?なんたって子猫の保護者だし」
「アンナ、いつヒーナの……」
「元雇い主の一族でしょ?」
「……それは、そうだが。少々骨が折れる。俺も老体なんだから、体を労わるとかだな?」「アンジェラにお願いさせる?じぃじ、お願い!って」
「……悪くない。それなら、俄然やる気が出る!」
「じゃあ、リアン悪いんだけど、ノクトも連れてアンジェラの元へ寄ってちょうだい。その後、ナタリーの元へ」
返事をして、ヒーナの首根っこを引っ掴前るリアン。
あっ、あれ?どうなっているの?
そう思っているうちに扉はしまり、リアンのお説教のような声が聞こえてきた。扉の前に立つノクトはどうしたものかとため息をついて私をみるので、しっしっと手で合図して執務室から追い出した。
「大丈夫なのですか?」
「ヒーナのこと?」
「えぇ、他にいませんけど……」
「躾は終わっているって話だから、大丈夫。ただ、見た目の子猫のような容姿に騙されないようにしないといけないけど……それがわかっていたら、ね。徹底的にアンバー色に染めて……」
「アンナリーゼ様だから、青紫だよ。薔薇の君なんだから」
「本当ね。しっかり染めてあげましょう。いつか、薔薇をあげられるくらいには」
「それにしても、アンナリーゼ様のアメジストは、みなが欲しがりますね?先日、アデルが、聞いてきていましたよ?どうすれば、アメジストがもらえるようになるのかって」
「……そうね。特に基準はないのよね。アンバー領によく尽くしてくれ、私が贈る相手への信頼の証みたいなものだから……明確なものはないの」
「なるほど。今度、教えておいてあげます」
「……ノクトとイチアは、ほぼほぼ脅迫ぽかったけど……でも、知識や経験に対する期待値や、ウィルやセバスの成長の助けになればとも思っていたのよね。二人がいることは、アンバー領地の改革において、10年早くものごとが進められるからありがたいわ!識字率だけでなく、来年導入する累進課税の制度だって、だいたいこんなものって言うのを纏めてくれたのでしょ?私は口にするけど、実務はほとんどしないから。得難い人を得たと私はずっと思っているの」
「それは、ノクト様や私が思っていることですよ。この年になって、こうして若者の育成を手伝える。それも、私を打ち負かしたセバスに自身の知識を与えられることは、とても幸せなことです。戦争ばかりしていて、先のことなんて考えたことがなかったのです。ノクト様についてきただけではありますが、心が満ちているのは、アンバー領へ来られたからです。人が温かい。みな、かつての敵であったはずの私にまで」
自身の手のひらを見ながら、イチアはいう。その手には、敵味方関係なく汚れている手だと言うのにと。
「アンナリーゼ様の目は、どこまで先が見えているんですかね?」
ニコリと笑うイチアに、さぁととぼけておく。私がみた『予知夢』は、娘アンジェラの戴冠式。残酷な現実を突きつけられたのち、平和な世の中が来る未来だ。
未来は、今のように平和であり続けてくれれば……と願う。アンジェラを始め、あの場にいた子どもたちがみな、幸せな日々の中、暮らしてくれるのであれば、アンジェラが必ずしも女王となる未来でなくていいのだ。
幼い我が子に、想いを馳せた。
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