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羨ましさ
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出迎えてくれたアンジェラをジョージアが抱きかかえ、ジョージの手を私が握る。おかえりなさいと挨拶する二人に義父は少々驚いていた。
「挨拶まで出来るだな?三歳にもうすぐなる……ジョージアのときはどうだっただろう?」
不思議そうに義父を見つめる子らにクスクス笑ってしまう。私はアンジェラのころは……と考えて、もっとおしゃべりだったことを思い出した。
「ジョージア様はどんな子どもだったんですか?」
「とにかく物静かな子だったよ。一人ソファに座って本を読んでいたかな?」
「今とあまり変わりませんね。物静かな感じで、落ち着いていて」
「そりゃあ、アンナに比べれば誰だって落ち着いていると思うけど?」
「どういう意味ですか?」
「そのまんまだよ」
「……今も騒々しいってこと?」
ジョージアを睨むとクスクスと笑う。きっと、そういうことであろうことはわかるが、面と向かって言われると、ムッとしてしまう。
「アンナリーゼは、アンジェラたちくらいのころはどうだったんだい?」
「私は、とってもおしゃべりでした。兄を黙らせるほどには」
「小さいころから、そのおてんばぶりはかわらないのか。可愛らしかっただろうね。お父上が離さなかった感じかな?」
「そうですね。私も父の側にいることは好きだったので、仕事がない日は、必ず執務室に行って、本を読んでもらっていたと思います」
「サシャくんがいるから、言葉を覚えるのは早そうだね?」
「はい、お兄様が常日頃から一緒にいることがが多いので、どうしても兄から学ぶことが多かったと思います。アンジェラとジョージは同い年ですからね……そういうことはあまりないでしょうが、レオやミアが話し相手になることも多いので、言葉は自然とその二人から学ぶことがあると思います」
自身の名が出てきたので、少しだけ緊張の顔つきになるレオ。さっきまで楽し気にしていたのに少し気の毒ではあった。
「なるほど。アンナリーゼがサシャくんから学んだようにということだね。確かに普段一緒にいる子から、学ぶことも多いだろうからね」
頷きながらレオの方をチラリと見る義父にどう反応していいのかわからず、戸惑うレオ。
「レオは、私も多少の礼儀作法は教えていますが、ジョージア様を見て倣っているのか、とても所作が綺麗になったわ!」
「本当ですか?身についているかどうかはわかりませんが、ダンスを見せてもらってからは、ジョージア様の日常の所作を真似ようとしています」
「それがいいと思うよ!」
開いている手で頭を撫でると、目を細めた。
「ウィルも綺麗だけどね。ジョージア様とは少し違うよね?」
「はい。真似をするようになってから、気が付きました。日常はジョージア様を見習い、剣の方はアンナ様を目標にしています!」
「嬉しいわ!お手本になれるだなんて!」
「確かに。俺もそんなふうに言われたことがなかったから嬉しいよ!」
食堂へ移動していると、ナタリーとミア、義母が揃ってこちらに歩いてくる。どうやら、三人でお茶会をしていたようで、未だに楽し気に話をしていた。
「あっ、アンナリーゼ様、おかえりなさいませ!」
「おかえりなさいませ!」
「ただいま!ナタリー、ミア!」
ニコリと笑いかけると、それに相対するように二人も可愛らしく笑う。まるで、姉妹のような二人に少しだけ羨ましさを感じた。
その後は、みなが揃っての夕食だ。もちろん、私たちだけではなく義父母やセバス、ナタリーを始め、いつものように食卓を囲んだ。
普通の貴族の屋敷では見慣れない光景に義父母は戸惑ってはいた。
「今のアンバー領はこんな感じがいつもの光景です。報告会はしますが、日常的にあった出来事とか世間話程度のことなら、こうやって話を聞くことの方が多いんです」
「……もしかして、ずっと私たちに遠慮をしていたのかい?」
「そう言うわけではありませんが、それぞれがアンジェラたちとお義父様お義母様との時間をと考えてくれていたのだと思います。
あと、私が視察に出れていなかったので、基本的にイチアへ情報を集めていたからでしょう」
「今日は視察に出たから、話が聞きたいという流れかな?」
「そうですね!私たちは、とにかく報告書や報告会、日常的に会話をしたりして情報共有に重きを置いています。貴族である私には言いにくくても、リリーやその部下になら言えることもあるでしょうし、三商人になら相談しやすいこともあるでしょう。この大きな領地でなるべく領民が楽に生活できる方法を模索するのが私の仕事であり、ここに集まるみなの使命ですから」
私たちを見て、義父が頷いた。
「納得だ。あの領地のありようを見せられたら何も言えなくなる。領地運営は、一人でしないといけないと思っていたが、そうではないと突きつけられたようだったよ。視察に行ったどこも、とても素晴らしかった。あれほど笑う領民を見たことがなかったからね。みな、よく頑張ってくれた。これからも、アンナリーゼを中心に、アンバー領のことを頼むよ?」
「もちろんです!アンナリーゼ様に見出してもらったものは多い。それに似合ったお返しのつもりで、領地の繁栄に関わっていきます」
「ありがとう、ありがとう」
頭を下げ、目頭をきつく抑える義父。隣に座るアンジェラが覗き込み「おじいちゃん?」と不思議そうにしていた。
「あぁ、大丈夫だよ。アンジー。アンジーのママのおかげで、いいものがいっぱい見れた。大きくなったら、アンジーも領地の視察に連れて行ってもらうといい」
義父の大きな手で頭を撫でられ、ジョージアと同じ銀の髪が揺れていた。嬉しいのだろう。
「まるで、ジョージアの子どものころみたいね?」
そんな二人の様子を見て、義母が懐かしそうに微笑んだ。
「挨拶まで出来るだな?三歳にもうすぐなる……ジョージアのときはどうだっただろう?」
不思議そうに義父を見つめる子らにクスクス笑ってしまう。私はアンジェラのころは……と考えて、もっとおしゃべりだったことを思い出した。
「ジョージア様はどんな子どもだったんですか?」
「とにかく物静かな子だったよ。一人ソファに座って本を読んでいたかな?」
「今とあまり変わりませんね。物静かな感じで、落ち着いていて」
「そりゃあ、アンナに比べれば誰だって落ち着いていると思うけど?」
「どういう意味ですか?」
「そのまんまだよ」
「……今も騒々しいってこと?」
ジョージアを睨むとクスクスと笑う。きっと、そういうことであろうことはわかるが、面と向かって言われると、ムッとしてしまう。
「アンナリーゼは、アンジェラたちくらいのころはどうだったんだい?」
「私は、とってもおしゃべりでした。兄を黙らせるほどには」
「小さいころから、そのおてんばぶりはかわらないのか。可愛らしかっただろうね。お父上が離さなかった感じかな?」
「そうですね。私も父の側にいることは好きだったので、仕事がない日は、必ず執務室に行って、本を読んでもらっていたと思います」
「サシャくんがいるから、言葉を覚えるのは早そうだね?」
「はい、お兄様が常日頃から一緒にいることがが多いので、どうしても兄から学ぶことが多かったと思います。アンジェラとジョージは同い年ですからね……そういうことはあまりないでしょうが、レオやミアが話し相手になることも多いので、言葉は自然とその二人から学ぶことがあると思います」
自身の名が出てきたので、少しだけ緊張の顔つきになるレオ。さっきまで楽し気にしていたのに少し気の毒ではあった。
「なるほど。アンナリーゼがサシャくんから学んだようにということだね。確かに普段一緒にいる子から、学ぶことも多いだろうからね」
頷きながらレオの方をチラリと見る義父にどう反応していいのかわからず、戸惑うレオ。
「レオは、私も多少の礼儀作法は教えていますが、ジョージア様を見て倣っているのか、とても所作が綺麗になったわ!」
「本当ですか?身についているかどうかはわかりませんが、ダンスを見せてもらってからは、ジョージア様の日常の所作を真似ようとしています」
「それがいいと思うよ!」
開いている手で頭を撫でると、目を細めた。
「ウィルも綺麗だけどね。ジョージア様とは少し違うよね?」
「はい。真似をするようになってから、気が付きました。日常はジョージア様を見習い、剣の方はアンナ様を目標にしています!」
「嬉しいわ!お手本になれるだなんて!」
「確かに。俺もそんなふうに言われたことがなかったから嬉しいよ!」
食堂へ移動していると、ナタリーとミア、義母が揃ってこちらに歩いてくる。どうやら、三人でお茶会をしていたようで、未だに楽し気に話をしていた。
「あっ、アンナリーゼ様、おかえりなさいませ!」
「おかえりなさいませ!」
「ただいま!ナタリー、ミア!」
ニコリと笑いかけると、それに相対するように二人も可愛らしく笑う。まるで、姉妹のような二人に少しだけ羨ましさを感じた。
その後は、みなが揃っての夕食だ。もちろん、私たちだけではなく義父母やセバス、ナタリーを始め、いつものように食卓を囲んだ。
普通の貴族の屋敷では見慣れない光景に義父母は戸惑ってはいた。
「今のアンバー領はこんな感じがいつもの光景です。報告会はしますが、日常的にあった出来事とか世間話程度のことなら、こうやって話を聞くことの方が多いんです」
「……もしかして、ずっと私たちに遠慮をしていたのかい?」
「そう言うわけではありませんが、それぞれがアンジェラたちとお義父様お義母様との時間をと考えてくれていたのだと思います。
あと、私が視察に出れていなかったので、基本的にイチアへ情報を集めていたからでしょう」
「今日は視察に出たから、話が聞きたいという流れかな?」
「そうですね!私たちは、とにかく報告書や報告会、日常的に会話をしたりして情報共有に重きを置いています。貴族である私には言いにくくても、リリーやその部下になら言えることもあるでしょうし、三商人になら相談しやすいこともあるでしょう。この大きな領地でなるべく領民が楽に生活できる方法を模索するのが私の仕事であり、ここに集まるみなの使命ですから」
私たちを見て、義父が頷いた。
「納得だ。あの領地のありようを見せられたら何も言えなくなる。領地運営は、一人でしないといけないと思っていたが、そうではないと突きつけられたようだったよ。視察に行ったどこも、とても素晴らしかった。あれほど笑う領民を見たことがなかったからね。みな、よく頑張ってくれた。これからも、アンナリーゼを中心に、アンバー領のことを頼むよ?」
「もちろんです!アンナリーゼ様に見出してもらったものは多い。それに似合ったお返しのつもりで、領地の繁栄に関わっていきます」
「ありがとう、ありがとう」
頭を下げ、目頭をきつく抑える義父。隣に座るアンジェラが覗き込み「おじいちゃん?」と不思議そうにしていた。
「あぁ、大丈夫だよ。アンジー。アンジーのママのおかげで、いいものがいっぱい見れた。大きくなったら、アンジーも領地の視察に連れて行ってもらうといい」
義父の大きな手で頭を撫でられ、ジョージアと同じ銀の髪が揺れていた。嬉しいのだろう。
「まるで、ジョージアの子どものころみたいね?」
そんな二人の様子を見て、義母が懐かしそうに微笑んだ。
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