828 / 1,515
葡萄畑Ⅱ
しおりを挟む
「なんと、酒を作る作業をするために集められた人が、結婚とな?」
「吊り橋効果的なものですかね?」
「協同作業をすることで、その人となりがわかるとかで……近衛からも何人か来ているので、人気ですよね。高給取りですし……結婚したら、この領地から出ることでも考えているんでしょうか?」
「……たぶん、逆だと思う。アンバー領って妙に居心地がいいから、近衛を辞めるものが多くなるんじゃないかな?俺も辞めるし」
「えっ?辞める?」
「アデルは、辞めるというより、引き抜きかな?私がお願いしたのですよ!」
ニッコリ笑いかけると、事情を知っているリリー以外が苦笑いをしていた。
「では、父様も近衛を辞めるのでしょうか?」
「ウィルは、辞めないわ!お給金の問題もあるけど、ウィルはとても強いから、小競り合いの抑止になったりするのよ。エリックが前線へ行けないから、ウィルは辞めないわ!まぁ、本人は辞めたいって言ってるけど……近衛は領地の警備に比べて危険も多いから。レオやミアという家族が出来たからこその考えなんだと思うよ」
「……父様」
「大丈夫。強いから」
「でも……」
レオの頭を撫でると、心配そうにしている顔が少しだけ変わった。
「僕が、父様を助けられるくらい強くなればいいんですね。アンナ様の変わりに父様が背を預けられるくらいに」
「うん。そうだね。でも、そんなに急がなくていい。まだ、10年はあるから。ゆっくりウィルに追いつけるよう訓練しましょう!」
首を傾げるレオに微笑む。目の前に葡萄畑が見えてきたので、みなに馬から降りるようにいい小屋に馬の手綱をくくりつけた。
「さぁ、行きましょう!ご案内しますよ!」
「アンナリーゼは生き生きしているね?」
「こういったところで駆け回っているほうが、私らしいですから」
レオと手を繋ぎ、葡萄畑へと入って行く。ユービスが事前に視察へ向かうことを葡萄農家へ言ってくれてあったので、少し上ったところで、葡萄の生育を見ながら待っていてくれたようだった。
「今年の葡萄の出来はどうかしら?」
「アンナリーゼ様?おはようございます!」
「おはよう!今日は案内をしてくれると聞いて来たのだけど、よかったかしら?」
「えぇ、もちろん!お連れの方……は、前領主様ですね!一度拝見したことがあります。ようこそ、葡萄畑へ!」
「あぁ、今日は厄介になるね。長く領主をしていたのに実は知らなかったんだ。アンナリーゼに連れてきてもらったところだよ。昨日の葡萄酒……『赤い涙』は本当に美味かった!」
「それはよかった。サムのじいさんに言ってもらえると喜ぶと思う……いや、思います」
こちらへと案内してくれる葡萄畑を管理しているの農夫は、説明をしながら歩いて行く。
「こっちにあるのが一般的な葡萄酒を造る葡萄になります。これは、渋みが強いので、加工しないと食べれたものではありません。香りはいいので、虫たちは喜んで来ますが……そういえば、香水の原料もこの葡萄から取ったと聞いていますが、ご存じですか?」
「葡萄を使った香水の話は聞いたけど、どれをとは聞いていないわ。確かに甘くて美味しそうな香りがするわ!」
「蜂や虫を集めるためのこの葡萄たちの工夫です」
「一般的と言う話だが、この葡萄はどんな酒になるんだい?」
「大旦那様が昨日飲まれたのがこの領地で最高級な『赤い涙』です。そこからずぅーっと下方にある、俺たちみたいなものが安酒として飲むものがこの葡萄で造られます」
リリーが説明をしてくれる。葡萄酒にも順位がある。もちろん、『赤い涙』は特級のお酒となるのだが、この葡萄で造る酒は、渋みが強すぎるため、3級にもなれないものだった。なので、安価で手に入りやすい。渋みを活かして料理にも使うと聞いたことがあるが、詳しくないので黙っておく。
「そうかい。それもぜひ飲んでみたい。何種類か葡萄酒にもあるのかな?」
「今、大きくわけて4種類作っています。上位が1級酒。貴族に好まれるものになります。領地外だと2級酒が好まれますね。少しずつですが、売るようになっているものです。あとは3級酒で、1番幅広く流通しているものになります。リリーが言ったお酒は、3級酒に匹敵しないお酒のことを言うのですが、渋みがえぐいほどのものがたまに出来上がります。等外として扱っていて、酔えればいいという理由で、最近では土木工事をしている近衛たちがよく飲んでいると聞きおよんでいますわ」
「よくご存じですね?この葡萄では、2級のものが稀にできることがありますが、基本的には3級か等外のものが多い。昔なら捨てられるような酒になるんですが、販売許可をユービス様が取ってくださったおかげで、利益のギリギリで出しています。丈夫な瓶を使ってくれているおかげで、その分の経費が浮くので安く提供が出来ています」
「やっぱり、瓶の回収制度は、いいことね。他のところでもやはり助かっているいるのよ。砂糖もだけど、塩も同じようにしているから」
「手を伸ばしすぎって叱られたんだけど……売れるし、なるべく地産地消をして経費は下げたいじゃない?塩って生きている限り、必要なものだし」
ふふっと笑うと確かにと声が返ってくる。
「事業は広げても利益がでないと行けないから、まだまだこれから研究を重ねていくんだけど、それは、塩だけじゃなく、葡萄も含めた農産物もよね!私の魔法使いたちは、役に立っているかしら?」
「もちろんです!もう少ししたら、早くに取れる葡萄の木が見えます。見て欲しいものがありますから、ぜひに!」
そういってニッと笑う。何があるのか、楽しみである。
「吊り橋効果的なものですかね?」
「協同作業をすることで、その人となりがわかるとかで……近衛からも何人か来ているので、人気ですよね。高給取りですし……結婚したら、この領地から出ることでも考えているんでしょうか?」
「……たぶん、逆だと思う。アンバー領って妙に居心地がいいから、近衛を辞めるものが多くなるんじゃないかな?俺も辞めるし」
「えっ?辞める?」
「アデルは、辞めるというより、引き抜きかな?私がお願いしたのですよ!」
ニッコリ笑いかけると、事情を知っているリリー以外が苦笑いをしていた。
「では、父様も近衛を辞めるのでしょうか?」
「ウィルは、辞めないわ!お給金の問題もあるけど、ウィルはとても強いから、小競り合いの抑止になったりするのよ。エリックが前線へ行けないから、ウィルは辞めないわ!まぁ、本人は辞めたいって言ってるけど……近衛は領地の警備に比べて危険も多いから。レオやミアという家族が出来たからこその考えなんだと思うよ」
「……父様」
「大丈夫。強いから」
「でも……」
レオの頭を撫でると、心配そうにしている顔が少しだけ変わった。
「僕が、父様を助けられるくらい強くなればいいんですね。アンナ様の変わりに父様が背を預けられるくらいに」
「うん。そうだね。でも、そんなに急がなくていい。まだ、10年はあるから。ゆっくりウィルに追いつけるよう訓練しましょう!」
首を傾げるレオに微笑む。目の前に葡萄畑が見えてきたので、みなに馬から降りるようにいい小屋に馬の手綱をくくりつけた。
「さぁ、行きましょう!ご案内しますよ!」
「アンナリーゼは生き生きしているね?」
「こういったところで駆け回っているほうが、私らしいですから」
レオと手を繋ぎ、葡萄畑へと入って行く。ユービスが事前に視察へ向かうことを葡萄農家へ言ってくれてあったので、少し上ったところで、葡萄の生育を見ながら待っていてくれたようだった。
「今年の葡萄の出来はどうかしら?」
「アンナリーゼ様?おはようございます!」
「おはよう!今日は案内をしてくれると聞いて来たのだけど、よかったかしら?」
「えぇ、もちろん!お連れの方……は、前領主様ですね!一度拝見したことがあります。ようこそ、葡萄畑へ!」
「あぁ、今日は厄介になるね。長く領主をしていたのに実は知らなかったんだ。アンナリーゼに連れてきてもらったところだよ。昨日の葡萄酒……『赤い涙』は本当に美味かった!」
「それはよかった。サムのじいさんに言ってもらえると喜ぶと思う……いや、思います」
こちらへと案内してくれる葡萄畑を管理しているの農夫は、説明をしながら歩いて行く。
「こっちにあるのが一般的な葡萄酒を造る葡萄になります。これは、渋みが強いので、加工しないと食べれたものではありません。香りはいいので、虫たちは喜んで来ますが……そういえば、香水の原料もこの葡萄から取ったと聞いていますが、ご存じですか?」
「葡萄を使った香水の話は聞いたけど、どれをとは聞いていないわ。確かに甘くて美味しそうな香りがするわ!」
「蜂や虫を集めるためのこの葡萄たちの工夫です」
「一般的と言う話だが、この葡萄はどんな酒になるんだい?」
「大旦那様が昨日飲まれたのがこの領地で最高級な『赤い涙』です。そこからずぅーっと下方にある、俺たちみたいなものが安酒として飲むものがこの葡萄で造られます」
リリーが説明をしてくれる。葡萄酒にも順位がある。もちろん、『赤い涙』は特級のお酒となるのだが、この葡萄で造る酒は、渋みが強すぎるため、3級にもなれないものだった。なので、安価で手に入りやすい。渋みを活かして料理にも使うと聞いたことがあるが、詳しくないので黙っておく。
「そうかい。それもぜひ飲んでみたい。何種類か葡萄酒にもあるのかな?」
「今、大きくわけて4種類作っています。上位が1級酒。貴族に好まれるものになります。領地外だと2級酒が好まれますね。少しずつですが、売るようになっているものです。あとは3級酒で、1番幅広く流通しているものになります。リリーが言ったお酒は、3級酒に匹敵しないお酒のことを言うのですが、渋みがえぐいほどのものがたまに出来上がります。等外として扱っていて、酔えればいいという理由で、最近では土木工事をしている近衛たちがよく飲んでいると聞きおよんでいますわ」
「よくご存じですね?この葡萄では、2級のものが稀にできることがありますが、基本的には3級か等外のものが多い。昔なら捨てられるような酒になるんですが、販売許可をユービス様が取ってくださったおかげで、利益のギリギリで出しています。丈夫な瓶を使ってくれているおかげで、その分の経費が浮くので安く提供が出来ています」
「やっぱり、瓶の回収制度は、いいことね。他のところでもやはり助かっているいるのよ。砂糖もだけど、塩も同じようにしているから」
「手を伸ばしすぎって叱られたんだけど……売れるし、なるべく地産地消をして経費は下げたいじゃない?塩って生きている限り、必要なものだし」
ふふっと笑うと確かにと声が返ってくる。
「事業は広げても利益がでないと行けないから、まだまだこれから研究を重ねていくんだけど、それは、塩だけじゃなく、葡萄も含めた農産物もよね!私の魔法使いたちは、役に立っているかしら?」
「もちろんです!もう少ししたら、早くに取れる葡萄の木が見えます。見て欲しいものがありますから、ぜひに!」
そういってニッと笑う。何があるのか、楽しみである。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。


元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる