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国1番の!
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ユービスの屋敷へついて、まず風呂へ案内される。確かに馬に乗ってここまで来たからか、土埃でザラザラとした感触がある。
「あの……入浴のお手伝いをと主から……」
貴族の相手などしたことがないのだろう。メイドがどうしたらいいのか戸惑いながら部屋に入ってきた。
私は微笑み、その申し出を断る。すると、顔色が悪くなってきた。
「それほど、私たちのことは気にしなくてもいいわ!貴族だからって、何もできないわけではないのよ。こうして視察に出ることもあるから、ある程度は自分でできるから。そんなに怯えないで?」
「……でも、失礼なことがあればと……」
「どこも、失礼なところなんてないわ!ユービスに言っておいてちょうだい。あと、食事なんだけど……『赤い涙』を出してほしいて伝えてくれる?」
「……かしこまりました。では、主に伝えてきます」
戸惑っていたメイドに指示を出せば、青くなっていた顔色も少しよくなり、部屋から下がってくれる。
……そういえば、レオはどこでねることになるのかしら?
ぼんやり考えながら、湯船に浸かる。貴族の生活を取り入れるためにユービスの屋敷には貴族の屋敷にあるようなものが、わりと揃っている。テクトの方が立派な屋敷を構えているのだとユービスは笑っていたが、ここまで揃えてあるのはさすがだ。
……貧乏な男爵家より、よっぽどいい屋敷よね。
いつきても感心してしまう。それだけ、お金がかかっているのはもちろんだが、その心の持ちようがユービスを大商人として成長させたゆえんだろう。
湯船から上がり、体を拭いていく。長い髪を乾かすには時間がかかるため、素早く着替え窓をあけた。タオルで優しく髪を拭きながら、オイルをつけたくしで優しくとかしていた。
「入るよ?」
「ジョージア様?」
「アンナは髪が長いから大変かなと思って手伝いにきたよ?きっと、メイドを帰してしまっただろうと思っていたんだよね?」
「さすがですね?ジョージア様はどうされたんですか?」
私からくしを取り上げ、優しくとかしていく。ところどころ絡まってしまっているのか、手でほぐしながら、整えてくれた。
「断ったよ。手伝ってもらわなくても、たいていのことはできるからね」
「リリーやアデルは、大丈夫でしょうけど、レオは大丈夫かしら?」
「あぁ、レオね。俺の部屋に呼ぼうか。その方がいいかな?」
「私の部屋でもいいですよ?」
「アンナの部屋は、まずいでしょ?もう、大人に近いんだし」
「そうですか?まだ、レオは子どもですよ?」
「……そう思っているのは、アンナだけな気がするけど、自覚ない?」
「自覚ですか?まだ、10歳にもなってないですよ?レオは」
ん?と小首を傾げるとため息が漏れた。
「……俺、思うんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「レオは、アンナのことが好きだと思うよ?」
「レオが?私を?」
「レオだけじゃなくて、リリーもアデルも……もちろん、ノクトやイチア、セバス……アンナに関わるみんなが好きだと思うけど、ウィルとナタリー、レオはアンナのことを特別な存在だと思っているだろうね。同じアンナを想うものとして感じるものがあるんだよね。だから、レオはダメ。アンナと一緒の場所で寝るのは……ダメ」
「……そこまで言われるのなら、ジョージア様にお任せします」
髪も乾いたねとジョージアが微笑んだ。さてと立ち上がり、私をエスコートしてくれる。
「行こうか?夕食へ」
「えぇ、『赤い涙』をお願いしておいたので、今日の疲れを癒してください!お義父様も喜んでくれると嬉しいんだけど……」
「『赤い涙』は、父上も気に入っているから、喜ぶと思うよ!父上も知らなかったらしいからね。葡萄酒については。アンナが見つけてくれたおかげで領地内だけでなく、国内外にも広がったからね。人気があるのも喜んでくれているんだよ」
「そうなのです?私、お義父様とはあまり連絡を取ってないので知らないのですよね。そんな風に言ってくださっているの、嬉しいです」
「今日は、せっかく父上がいるから、直接聞いてみたらどう?」
「そうですね。そうします!」
食堂へ入って行くと、もうすでに義父たちは座って夕食を始めるところだった。
「あぁ、アンナリーゼ、来たかい」
「遅くなってしまいました。申し訳ありません」
「いいや、女性には時間が必要だからね。気にすることないよ!」
ありがとうございますと微笑むとジョージアに似た優しい微笑みが返ってくる。
「お義父様、もうお酒は飲まれましたか?」
「まだだよ?」
「では、国1番の人気者のアンナリーゼが、お義父様に特別なお酒を用意いたしますわ!」
「と、いうと……あれかい?」
「えぇ、あれです!ユービス、『赤い涙』を」
「用意しております。こちらを」
ジョージアから離れ、ユービスに手渡された『赤い涙』を持ち、義父の側へ向かう。どうぞと義父が傾けてくれたグラスに『赤い涙』を入れる。
「綺麗な色だ。アンナリーゼがこの葡萄酒のことをみなに広めてくれたんだってね」
「たまたまです。ユービスに教えてもらったのです。……残念ながら、私、下戸ですから一滴も飲めないんですけど」
苦笑いをすると、ニコッと笑い、義父は『赤い涙』の入ったグラスを傾け、口に含んだ。
「あぁ、とってもおいしいお酒だね。本当、何十年も領主をしていたのに、こんなにおいしいものがあったなんて知らなかったんだ。領主として失格な気分だけど、この酒のうまさには叶わないな」
幸せそうな顔をして微笑む義父にみなの顔も緩む。
「みなも飲んでちょうだい!おいしいはずだから!私は飲めないけど……」
クスっと笑うと、私の持っていた『赤い涙』をユービスが持ちに来て、ジョージアを筆頭にアデルやリリーにもついでいく。レオは私と同じく葡萄ジュースをくんでもらい、みなで乾杯をした。
「あの……入浴のお手伝いをと主から……」
貴族の相手などしたことがないのだろう。メイドがどうしたらいいのか戸惑いながら部屋に入ってきた。
私は微笑み、その申し出を断る。すると、顔色が悪くなってきた。
「それほど、私たちのことは気にしなくてもいいわ!貴族だからって、何もできないわけではないのよ。こうして視察に出ることもあるから、ある程度は自分でできるから。そんなに怯えないで?」
「……でも、失礼なことがあればと……」
「どこも、失礼なところなんてないわ!ユービスに言っておいてちょうだい。あと、食事なんだけど……『赤い涙』を出してほしいて伝えてくれる?」
「……かしこまりました。では、主に伝えてきます」
戸惑っていたメイドに指示を出せば、青くなっていた顔色も少しよくなり、部屋から下がってくれる。
……そういえば、レオはどこでねることになるのかしら?
ぼんやり考えながら、湯船に浸かる。貴族の生活を取り入れるためにユービスの屋敷には貴族の屋敷にあるようなものが、わりと揃っている。テクトの方が立派な屋敷を構えているのだとユービスは笑っていたが、ここまで揃えてあるのはさすがだ。
……貧乏な男爵家より、よっぽどいい屋敷よね。
いつきても感心してしまう。それだけ、お金がかかっているのはもちろんだが、その心の持ちようがユービスを大商人として成長させたゆえんだろう。
湯船から上がり、体を拭いていく。長い髪を乾かすには時間がかかるため、素早く着替え窓をあけた。タオルで優しく髪を拭きながら、オイルをつけたくしで優しくとかしていた。
「入るよ?」
「ジョージア様?」
「アンナは髪が長いから大変かなと思って手伝いにきたよ?きっと、メイドを帰してしまっただろうと思っていたんだよね?」
「さすがですね?ジョージア様はどうされたんですか?」
私からくしを取り上げ、優しくとかしていく。ところどころ絡まってしまっているのか、手でほぐしながら、整えてくれた。
「断ったよ。手伝ってもらわなくても、たいていのことはできるからね」
「リリーやアデルは、大丈夫でしょうけど、レオは大丈夫かしら?」
「あぁ、レオね。俺の部屋に呼ぼうか。その方がいいかな?」
「私の部屋でもいいですよ?」
「アンナの部屋は、まずいでしょ?もう、大人に近いんだし」
「そうですか?まだ、レオは子どもですよ?」
「……そう思っているのは、アンナだけな気がするけど、自覚ない?」
「自覚ですか?まだ、10歳にもなってないですよ?レオは」
ん?と小首を傾げるとため息が漏れた。
「……俺、思うんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「レオは、アンナのことが好きだと思うよ?」
「レオが?私を?」
「レオだけじゃなくて、リリーもアデルも……もちろん、ノクトやイチア、セバス……アンナに関わるみんなが好きだと思うけど、ウィルとナタリー、レオはアンナのことを特別な存在だと思っているだろうね。同じアンナを想うものとして感じるものがあるんだよね。だから、レオはダメ。アンナと一緒の場所で寝るのは……ダメ」
「……そこまで言われるのなら、ジョージア様にお任せします」
髪も乾いたねとジョージアが微笑んだ。さてと立ち上がり、私をエスコートしてくれる。
「行こうか?夕食へ」
「えぇ、『赤い涙』をお願いしておいたので、今日の疲れを癒してください!お義父様も喜んでくれると嬉しいんだけど……」
「『赤い涙』は、父上も気に入っているから、喜ぶと思うよ!父上も知らなかったらしいからね。葡萄酒については。アンナが見つけてくれたおかげで領地内だけでなく、国内外にも広がったからね。人気があるのも喜んでくれているんだよ」
「そうなのです?私、お義父様とはあまり連絡を取ってないので知らないのですよね。そんな風に言ってくださっているの、嬉しいです」
「今日は、せっかく父上がいるから、直接聞いてみたらどう?」
「そうですね。そうします!」
食堂へ入って行くと、もうすでに義父たちは座って夕食を始めるところだった。
「あぁ、アンナリーゼ、来たかい」
「遅くなってしまいました。申し訳ありません」
「いいや、女性には時間が必要だからね。気にすることないよ!」
ありがとうございますと微笑むとジョージアに似た優しい微笑みが返ってくる。
「お義父様、もうお酒は飲まれましたか?」
「まだだよ?」
「では、国1番の人気者のアンナリーゼが、お義父様に特別なお酒を用意いたしますわ!」
「と、いうと……あれかい?」
「えぇ、あれです!ユービス、『赤い涙』を」
「用意しております。こちらを」
ジョージアから離れ、ユービスに手渡された『赤い涙』を持ち、義父の側へ向かう。どうぞと義父が傾けてくれたグラスに『赤い涙』を入れる。
「綺麗な色だ。アンナリーゼがこの葡萄酒のことをみなに広めてくれたんだってね」
「たまたまです。ユービスに教えてもらったのです。……残念ながら、私、下戸ですから一滴も飲めないんですけど」
苦笑いをすると、ニコッと笑い、義父は『赤い涙』の入ったグラスを傾け、口に含んだ。
「あぁ、とってもおいしいお酒だね。本当、何十年も領主をしていたのに、こんなにおいしいものがあったなんて知らなかったんだ。領主として失格な気分だけど、この酒のうまさには叶わないな」
幸せそうな顔をして微笑む義父にみなの顔も緩む。
「みなも飲んでちょうだい!おいしいはずだから!私は飲めないけど……」
クスっと笑うと、私の持っていた『赤い涙』をユービスが持ちに来て、ジョージアを筆頭にアデルやリリーにもついでいく。レオは私と同じく葡萄ジュースをくんでもらい、みなで乾杯をした。
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