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領地の変わりようⅧ
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そのあと、今日視察に回った場所について、感想を行っていく義父。ジョージアから話を聞いていて、見違えるような領地になったと聞いてはいたが、思っていた以上の変化に子どものように、視察先ではしゃいでしまったと照れ笑いしていた。
「しかし、どこを見ても変わっていて、何より領民の目が輝いていることが何よりだと思うよ。目が生き生きして、顔をあげ、笑っているんだ。あちこちで井戸端会議をしていたり……理想とする領地像があるとしたら、まさにあんな感じだなと思っていたよ」
「それは、私もこの領地に初めてきたときに、目指したものではあります。俯いていたり、目が虚ろだったり……こんなことを言っては叱られてしまうかもしれませんが、領地全体が病んでいたとさえ思いました。
ひどいありさまに目を背けたくなったことも……私もこんな性格をしていますから、いろいろな場所へ出かけて行きます。それこそ、こっそり貧民街へいったことすらありました。そこと同等、それ以下の生活をアンバー領ではしていたように感じました。目の前に畑は広がっていても、作れば作るほど生活が苦しくなるような畑で、一体何を作って生きて来たのだろうと……
ただ、少し手を差し伸べるだけで、ここの領民は逞しかった。私は、それが眩しく感じました。ここまで落ちぶれたのなら、どうせ何もかわらない、やったって無駄だと拒否されることすら考えていたのですから」
当時を思い出しても胸が熱くなる。呼びかけに答えてくれたからこそ、今のアンバー領があるのだ。私たちがこういうことをしたいと提案したことに、領民のほうからも寄り添ってくれたからこそ、うまくいったんだと話すと義父は嬉しそうにしている。
「さて、明日はもう少し先までいくことにしているんだ。孫たちの顔も見たいから、そろそろ席をジョージアに譲ることにしよう。今日一日、ジョージアとセバスチャンとが説明をしてくれたんだが……セバスチャンはやはりアンナリーゼが目を付けただけある青年だね。いずれこの地に住んで欲しい……そう、願わずにはいられない」
ニコッと笑う義父は、セバスの優秀さに気が付いていて、公に返さないでいいだろうと含みを持たせていた。
私も義父に応え、微笑んだ。もちろん、公へ返すつもりはないのだと。領地で屋敷を立てる資金を公からふんだくって来て欲しいだけの話なので、その辺も含め、思わくがある。
義父が執務室から出ていくのを見送りながら、椅子に座り治す。これから、視察に出たセバスたちから話を聞くのだが、どちらかといえば、セバスたちが、今日の執務具合を聞きたそうにしていた。
「何かあれば、イチアを通して話をするわ!ジョージア様たちからも新しい情報があれば教えて欲しいけど、何かある?」
「特段何もなかったように思うけど……」
「たしかに……父上が、やたらはしゃいでいたくらい」
「お義父様は、領地視察がそれほど嬉しかったのかしら?」
「そうだと思うよ?あんなに笑う人だと思いもしなかったよ。いつも難しい顔ばかりしていたからね」
「それなら……よかった。もし、もしね?」
「大丈夫。父上は、アンナのことを本当の娘のように可愛がっていたし、視察で驚きはしただろうけど、本心から喜んでいたよ」
小さく息を吐く。領地視察のことは、ずっと気がかりであった。前アンバー公爵である義父がどのように感じるのか、怖かったのだ。
「アンナが思う以上に、みんな、アンナがしたいと始めたことに対していい意味で感じるものがあるんだよ。いつものように、背筋を伸ばして、前をみていたらいい。アンナの周りにはたくさんアンナの手助けしたいと思う人が集まっているんだから」
はいとジョージアに返事をした。
「あぁ、そうだ。公都へ行くときは、両親も一緒に向かうことは聞いているかい?」
「えぇ、そのようにお手紙にありましたね」
「アンナは、社交の始めの方に集中的に出るんだよね?そのあと、コーコナ領へ?」
「そのつもりですけど……何か、あるのですか?」
「その、父上がコーコナ領へも一度行ってみたいというんだ!よかったら、一緒にいいだろうか?」
「えぇ、大歓迎しますわ!できれば、今年はみなで向かいたいと思っていたので!」
「そうか。じゃあ……そのように父上には話しておくよ」
「お願いします」
「アンナリーゼ様、コーコナ領は僕もついて行ってもいいですか?」
「セバスも?いいけど……」
「馬移動とか……?」
「いいえ、馬車移動になると思うわ!一緒に向かいましょう!あちらの領主の屋敷はそれほど大きくはないから、コットンの農場の近くにたくさん泊まれる屋敷を急遽作ってあるから、そこに泊まればいいかしらね。子どもたちも連れて行くことだし」
「そりゃ大変だな……じゃあ、ナタリーにもお願いしたほうがいいかな?」
「ナタリーは、たぶん、情報収集の方を頑張ってくれるから……本当に終わる直前までは、身動きできないと思うよのね……」
ナタリーのおおまかな日程を知っているから、提案をしたら、どういうわけかこちらをジトっと見られた。
あれ?みんな、ナタリー狙いなのかしら?
みなの反応を見ていたら、気を聞かせてくれたのか、ジョージアが代表して驚いた理由を話してくれるらしい。
「コホン……今年は、ナタリーも参加させないと拗ねるか?各々どう思う?」
「……たぶん。でも、お役目があるなら、そちらを優先してくれるんじゃないかな?」
セバスのいうとおりなのだろう。今年は、ナタリーも誘ってコーコナ領へ行ってみるか……とため息をついた。
「しかし、どこを見ても変わっていて、何より領民の目が輝いていることが何よりだと思うよ。目が生き生きして、顔をあげ、笑っているんだ。あちこちで井戸端会議をしていたり……理想とする領地像があるとしたら、まさにあんな感じだなと思っていたよ」
「それは、私もこの領地に初めてきたときに、目指したものではあります。俯いていたり、目が虚ろだったり……こんなことを言っては叱られてしまうかもしれませんが、領地全体が病んでいたとさえ思いました。
ひどいありさまに目を背けたくなったことも……私もこんな性格をしていますから、いろいろな場所へ出かけて行きます。それこそ、こっそり貧民街へいったことすらありました。そこと同等、それ以下の生活をアンバー領ではしていたように感じました。目の前に畑は広がっていても、作れば作るほど生活が苦しくなるような畑で、一体何を作って生きて来たのだろうと……
ただ、少し手を差し伸べるだけで、ここの領民は逞しかった。私は、それが眩しく感じました。ここまで落ちぶれたのなら、どうせ何もかわらない、やったって無駄だと拒否されることすら考えていたのですから」
当時を思い出しても胸が熱くなる。呼びかけに答えてくれたからこそ、今のアンバー領があるのだ。私たちがこういうことをしたいと提案したことに、領民のほうからも寄り添ってくれたからこそ、うまくいったんだと話すと義父は嬉しそうにしている。
「さて、明日はもう少し先までいくことにしているんだ。孫たちの顔も見たいから、そろそろ席をジョージアに譲ることにしよう。今日一日、ジョージアとセバスチャンとが説明をしてくれたんだが……セバスチャンはやはりアンナリーゼが目を付けただけある青年だね。いずれこの地に住んで欲しい……そう、願わずにはいられない」
ニコッと笑う義父は、セバスの優秀さに気が付いていて、公に返さないでいいだろうと含みを持たせていた。
私も義父に応え、微笑んだ。もちろん、公へ返すつもりはないのだと。領地で屋敷を立てる資金を公からふんだくって来て欲しいだけの話なので、その辺も含め、思わくがある。
義父が執務室から出ていくのを見送りながら、椅子に座り治す。これから、視察に出たセバスたちから話を聞くのだが、どちらかといえば、セバスたちが、今日の執務具合を聞きたそうにしていた。
「何かあれば、イチアを通して話をするわ!ジョージア様たちからも新しい情報があれば教えて欲しいけど、何かある?」
「特段何もなかったように思うけど……」
「たしかに……父上が、やたらはしゃいでいたくらい」
「お義父様は、領地視察がそれほど嬉しかったのかしら?」
「そうだと思うよ?あんなに笑う人だと思いもしなかったよ。いつも難しい顔ばかりしていたからね」
「それなら……よかった。もし、もしね?」
「大丈夫。父上は、アンナのことを本当の娘のように可愛がっていたし、視察で驚きはしただろうけど、本心から喜んでいたよ」
小さく息を吐く。領地視察のことは、ずっと気がかりであった。前アンバー公爵である義父がどのように感じるのか、怖かったのだ。
「アンナが思う以上に、みんな、アンナがしたいと始めたことに対していい意味で感じるものがあるんだよ。いつものように、背筋を伸ばして、前をみていたらいい。アンナの周りにはたくさんアンナの手助けしたいと思う人が集まっているんだから」
はいとジョージアに返事をした。
「あぁ、そうだ。公都へ行くときは、両親も一緒に向かうことは聞いているかい?」
「えぇ、そのようにお手紙にありましたね」
「アンナは、社交の始めの方に集中的に出るんだよね?そのあと、コーコナ領へ?」
「そのつもりですけど……何か、あるのですか?」
「その、父上がコーコナ領へも一度行ってみたいというんだ!よかったら、一緒にいいだろうか?」
「えぇ、大歓迎しますわ!できれば、今年はみなで向かいたいと思っていたので!」
「そうか。じゃあ……そのように父上には話しておくよ」
「お願いします」
「アンナリーゼ様、コーコナ領は僕もついて行ってもいいですか?」
「セバスも?いいけど……」
「馬移動とか……?」
「いいえ、馬車移動になると思うわ!一緒に向かいましょう!あちらの領主の屋敷はそれほど大きくはないから、コットンの農場の近くにたくさん泊まれる屋敷を急遽作ってあるから、そこに泊まればいいかしらね。子どもたちも連れて行くことだし」
「そりゃ大変だな……じゃあ、ナタリーにもお願いしたほうがいいかな?」
「ナタリーは、たぶん、情報収集の方を頑張ってくれるから……本当に終わる直前までは、身動きできないと思うよのね……」
ナタリーのおおまかな日程を知っているから、提案をしたら、どういうわけかこちらをジトっと見られた。
あれ?みんな、ナタリー狙いなのかしら?
みなの反応を見ていたら、気を聞かせてくれたのか、ジョージアが代表して驚いた理由を話してくれるらしい。
「コホン……今年は、ナタリーも参加させないと拗ねるか?各々どう思う?」
「……たぶん。でも、お役目があるなら、そちらを優先してくれるんじゃないかな?」
セバスのいうとおりなのだろう。今年は、ナタリーも誘ってコーコナ領へ行ってみるか……とため息をついた。
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