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領地の変わりよう、小休止Ⅱ
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「あら、これは変わった味がして美味しいわ!甘味があるのに、爽やかな香りもするし……何かしら?」
生クリームをつけて食べた一口目、食べたことがないと二口目は、そのまま口に運んでいた。
「これは、オレンジの皮を使ったケーキですよ」
「オレンジ?」
「そうです。夏の間にオレンジ皮を煮詰めて、蜂蜜につけてあるらしいのです。私には、どういう製法になっているのか、わからないのですけど……食べたとき、衝撃をうけました!今年、ハニーアンバー店の喫茶の方で出してもらおうかな?とか考えています」
「このほんのり甘さは蜂蜜なのね。爽やかさはオレンジ……なるほど。そう聞いてみれば、たしかにケーキのところに、オレンジ色のものがみえるわ!」
「甘みもあり、爽やかさを出して、そして……生クリームを乗せて……もう、夢のようなケーキです!」
「ふわふわとしているものね!」
「アンジェラも大好きなケーキなのですよ!こちらに来てから食べて、とても気に入ったようですよ!」
「確かに、大人にもいいけど……生クリームを添えることで、子どもにもおいしいものになるのね」
もう一口と義母は口にケーキを運んでいく。イチアもそれに倣って食べていた。
「疲れた頭には、これはいいですね。甘すぎず……」
「あら、生クリームは苦手?」
「そうですね……それほど、好きではありませんね」
「……おいしいのに」
「アンナリーゼは、生クリームに目がないものね!」
「……お義母様」
「そういえば、聞いたことがあります。伝説の生クリーム事件!」
「その話は、やめましょう。イチア。誰も、救われないわ!」
「そうですね。ご兄妹で生クリームを既存の量にさらにのせ、そこから追い生クリームをしたってことは、間違っても言えませんよね?」
「……言ってるし」
むぅっと頬を膨らませると、アンナリーゼと呼ばれ、笑われる。学生の頃の話だ。たしか、ウィルに成績がよかったときに連れて行ってくれたときの話だ。
「さて、美味しいお菓子もいただけたし、アンナリーゼのお話も聞けたから、次に向かうことにしますわ!」
「すみません、お茶しかだせなくて……」
「いいのよ!仕事の邪魔をしてごめんないね。また、旦那様が帰ってきた夜にでも話を聞かせてくれるかしら?きっと、旦那様も、子どものように帰ってくると思うから」
「お義父様がですか?」
「えぇ、こちらに来る間、すごく楽しみにしていたの。馬車の窓から覗いては、嬉しそうにしていたもの!」
義母が微笑んでるということは、きっとホクホク顔の義父が視察から帰ってくるのだと思える。
「次は、どこに行かれるのですか?」
「子ども部屋に案内してもらおうと思っているわ。アンジェラやネイトにももっとあってみたいし」
「アンジェラもお義母様に会えて嬉しかったようなので、可愛がっていただけると嬉しいです。あの……」
「ジョージもと言いたいのでしょ?アンナリーゼが、それを望むなら、私もあなたに従いますよ。私には出来ないことですもの。アンナリーゼは、本当にすごいと心から思っているのです。アンナリーゼからすれば、他人の子ですものね」
「血は繋がっていなくて、ジョージは可愛い私の息子です。アンジェラやネイトと変わりはありません。それに、レオやミアも血の繋がりはないウィル……サーラー伯爵に懐いていますし、それと変わりはありません」
「それでも、あなたは、この国の筆頭公爵なのですよ?」
「仮初の称号です。私がなしたいことをするために、公にねだったものですから。いつかは、ジョージア様にお返ししますわ!」
「……ジョージアに?でも、それって、アンナリーゼは納得するの?」
「お義母様、ジョージア様の可能性を信じてください。お義父様とお義母様のお子ですから、本当に素敵な方ですから、私も改革をした領地を託すことができます」
「もし、ジョージアに領地を託したあと、アンナリーゼはどうするのかしら?」
それには、答えなかった。というより、答えられなかった。ジョージアに領地を託すということは、きっと私は……もう、いないのだろうから。
領地改革を始めて仲間が集まってきた。その仲間がジョージアも支えてくれるよう橋渡しするのが、私の役目でもある。関われるなら……年をとって、アンジェラたち子どもたちが、子を連れこの屋敷に遊びに来てくれる……そんなときまで、領主をしていたい。この遊び場は、次から次へとおもしろいことがあって、譲りたくない。
でも、未来は、決まっている。回避することは、無理だろう。経験からすれば、必ず、私は死ぬのだから。
「まだまだ、先ですから!ジョージア様に領主も筆頭公爵も譲りますけど……それは、まだ先の話です!この領地で出会った領民ともっと楽しいことしてからでしか、譲りません!」
「それでこそ、アンナリーゼですね!私の目に狂いはなかった。アンバー公爵家に嫁に来てくれたこと、辛い思いもさせましたが、本当に感謝しているわ!これからも、アンナリーゼをよく支えるようにとジョージアに言っておくわね!」
「ありがとうございます!」
ニコッと笑いかけた。それじゃあと義母はそのまま、子ども部屋へと向かった。
「大奥さまも少し変わっている方ですね?」
「そう?」
「普通、我が子が領主で無かったり、筆頭でなければ怒る貴族夫人は多いのですよ?」
「認められていると思っていいのかしらね?」
「きっと、そうですよ!これからも、頑張りましょうね?」
イチアと義母が出て行った扉を見送っていた。次の瞬間には、ふぅっと息を吐いて二人して執務に戻るのであった。
生クリームをつけて食べた一口目、食べたことがないと二口目は、そのまま口に運んでいた。
「これは、オレンジの皮を使ったケーキですよ」
「オレンジ?」
「そうです。夏の間にオレンジ皮を煮詰めて、蜂蜜につけてあるらしいのです。私には、どういう製法になっているのか、わからないのですけど……食べたとき、衝撃をうけました!今年、ハニーアンバー店の喫茶の方で出してもらおうかな?とか考えています」
「このほんのり甘さは蜂蜜なのね。爽やかさはオレンジ……なるほど。そう聞いてみれば、たしかにケーキのところに、オレンジ色のものがみえるわ!」
「甘みもあり、爽やかさを出して、そして……生クリームを乗せて……もう、夢のようなケーキです!」
「ふわふわとしているものね!」
「アンジェラも大好きなケーキなのですよ!こちらに来てから食べて、とても気に入ったようですよ!」
「確かに、大人にもいいけど……生クリームを添えることで、子どもにもおいしいものになるのね」
もう一口と義母は口にケーキを運んでいく。イチアもそれに倣って食べていた。
「疲れた頭には、これはいいですね。甘すぎず……」
「あら、生クリームは苦手?」
「そうですね……それほど、好きではありませんね」
「……おいしいのに」
「アンナリーゼは、生クリームに目がないものね!」
「……お義母様」
「そういえば、聞いたことがあります。伝説の生クリーム事件!」
「その話は、やめましょう。イチア。誰も、救われないわ!」
「そうですね。ご兄妹で生クリームを既存の量にさらにのせ、そこから追い生クリームをしたってことは、間違っても言えませんよね?」
「……言ってるし」
むぅっと頬を膨らませると、アンナリーゼと呼ばれ、笑われる。学生の頃の話だ。たしか、ウィルに成績がよかったときに連れて行ってくれたときの話だ。
「さて、美味しいお菓子もいただけたし、アンナリーゼのお話も聞けたから、次に向かうことにしますわ!」
「すみません、お茶しかだせなくて……」
「いいのよ!仕事の邪魔をしてごめんないね。また、旦那様が帰ってきた夜にでも話を聞かせてくれるかしら?きっと、旦那様も、子どものように帰ってくると思うから」
「お義父様がですか?」
「えぇ、こちらに来る間、すごく楽しみにしていたの。馬車の窓から覗いては、嬉しそうにしていたもの!」
義母が微笑んでるということは、きっとホクホク顔の義父が視察から帰ってくるのだと思える。
「次は、どこに行かれるのですか?」
「子ども部屋に案内してもらおうと思っているわ。アンジェラやネイトにももっとあってみたいし」
「アンジェラもお義母様に会えて嬉しかったようなので、可愛がっていただけると嬉しいです。あの……」
「ジョージもと言いたいのでしょ?アンナリーゼが、それを望むなら、私もあなたに従いますよ。私には出来ないことですもの。アンナリーゼは、本当にすごいと心から思っているのです。アンナリーゼからすれば、他人の子ですものね」
「血は繋がっていなくて、ジョージは可愛い私の息子です。アンジェラやネイトと変わりはありません。それに、レオやミアも血の繋がりはないウィル……サーラー伯爵に懐いていますし、それと変わりはありません」
「それでも、あなたは、この国の筆頭公爵なのですよ?」
「仮初の称号です。私がなしたいことをするために、公にねだったものですから。いつかは、ジョージア様にお返ししますわ!」
「……ジョージアに?でも、それって、アンナリーゼは納得するの?」
「お義母様、ジョージア様の可能性を信じてください。お義父様とお義母様のお子ですから、本当に素敵な方ですから、私も改革をした領地を託すことができます」
「もし、ジョージアに領地を託したあと、アンナリーゼはどうするのかしら?」
それには、答えなかった。というより、答えられなかった。ジョージアに領地を託すということは、きっと私は……もう、いないのだろうから。
領地改革を始めて仲間が集まってきた。その仲間がジョージアも支えてくれるよう橋渡しするのが、私の役目でもある。関われるなら……年をとって、アンジェラたち子どもたちが、子を連れこの屋敷に遊びに来てくれる……そんなときまで、領主をしていたい。この遊び場は、次から次へとおもしろいことがあって、譲りたくない。
でも、未来は、決まっている。回避することは、無理だろう。経験からすれば、必ず、私は死ぬのだから。
「まだまだ、先ですから!ジョージア様に領主も筆頭公爵も譲りますけど……それは、まだ先の話です!この領地で出会った領民ともっと楽しいことしてからでしか、譲りません!」
「それでこそ、アンナリーゼですね!私の目に狂いはなかった。アンバー公爵家に嫁に来てくれたこと、辛い思いもさせましたが、本当に感謝しているわ!これからも、アンナリーゼをよく支えるようにとジョージアに言っておくわね!」
「ありがとうございます!」
ニコッと笑いかけた。それじゃあと義母はそのまま、子ども部屋へと向かった。
「大奥さまも少し変わっている方ですね?」
「そう?」
「普通、我が子が領主で無かったり、筆頭でなければ怒る貴族夫人は多いのですよ?」
「認められていると思っていいのかしらね?」
「きっと、そうですよ!これからも、頑張りましょうね?」
イチアと義母が出て行った扉を見送っていた。次の瞬間には、ふぅっと息を吐いて二人して執務に戻るのであった。
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