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領地の変わりようⅡ
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今日は、義母とお茶を……なんて思っていたら、意外と山のような執務に追い回されることになった。
セバスはジョージアについて行ってくれたらい。私が執務室へ入ったのを確認した瞬間に、イチアが入ってきたとき、その表情は、『逃がしませんからね?』と、まるで鬼のようであった。
「えっと……何かな?」
「何?決裁が山のようにあるので、それを片付けてもらいたいだけです?」
ニコッと笑うその顔は、笑っていない。怖くて、椅子に思わず抱きつきたくなった。
「決裁なら、ジョージア様もできるでしょ?」
「そうですね。でも、アンナリーゼ様が帰ってくるのをずっと待っていたのですよ!セバスと二人で。今日は1日、この裁可をお願いします」
「裁可って……これ、1ヶ月分より多いよ?」
「そうですか?これくらいの山が、ざっと5つほどありますから……今日のところは、どこにも逃がしませんからね!」
腕っぷしなら、きっと私でもイチアに勝つことはできるだろう。それをしたところで、意味がないこと、さらに仕事が増えるであろうことは想像ができたので、大人しく「ください」と呟いた。
今度は、先程の笑顔とちがい優しい笑顔である。
ベルを鳴らして、リアンを執務室へ呼び寄せた。
「お義母様からお茶の誘いがあっても、今日はいけそうにありません。申し訳ないんだけど……」
リアンもその山のように積んである書類を見て、心得たと頷いてくれた。
「美味しいお茶とお菓子を用意しますね。それくらいの休憩はいいでしょうか?」
「もちろんです。とびっきり甘いお菓子を用意してあげてください」
「……とびっきり甘い?」
「アンナリーゼ様は、決裁に判を押すだけの仕事はしません。その内容も吟味しながら裁可をされますから、きっと、身も心もとても疲れると思いますから!」
「わかりましたわ!アンナリーゼ様へのお菓子は、とびっきりのものにいたします!」
二人がわかり合っているところ悪いが……ため息をついて、1番上の書類を手に取った。
「何々……壊れた橋の話ね。石切りの町のカノタが、活躍しているようね。新しい方法を試すのに、仕入れたい材料があるか……なんだろう?鉄の棒?鉄の棒って……その囲いみたいな……それなら、この領地でも……?」
「カノタさんの話ですね。川に流された橋の修理をしていて、次、同じようなことがあっても大丈夫なようにって、新しい方法を考えたようですよ。コンクリートが使えるようになったので、他の方法を試したいって。コーコナ領で作った壁のことを聞いて、思いついたようです」
「なるほど……技術や発想は、別の現場からでも取り入れることが出来るのね。確か、あのときは、コンクリートの間に何か入れて強度を保たせるって話を聞いたわね!」
「リアノが考案した方法ですね。あのフレイゼン領から来た魔法使いたちの活躍が、領地をさらに活性化させている……そんな気にさせてくれます」
「すごいでしょ?お父様とお兄様の自慢の人材育成の成功者なのよね!私も、もっといい人材をたくさん育てたいわ!まずは、今、育ちつつあるカノタの力になりましょう。必要なものの購入については、もちろん買いましょう!私も完成を楽しみにしているわ!」
「あぁ、続きがありまして、他の橋の強化もしたいと申し出がありました。その分も入れると、結構な額になるかと思いますが……」
私はイチアに頷き、裁可したと領主印を押した。
この調子で、案件を読んではイチアが補足をしてを繰り返し、やっと一山終わった頃に昼食となった。
「全然減らないね……まだ、あと4つも?」
「いえ、あと5つです。午後にはこの早さで決裁を進めていくと、今日中には、あと2つほど減らせそうですけど……」
「それまでの自由はないってことね?疲れた」
「事務仕事は苦手ですか?」
「どちらかというと、体を動かしているほうが好きよ!だから、セバスやパルマを近くに置いているのだもの!」
堂々と書類仕事は嫌だと宣言すると、イチアが苦笑いをしている。何か、思い当たることがあるようだ。
「ノクト様も同じような感じでした。奥さまが事務仕事のできる方でしたし、ノクト様の意向をくみ取るのがとても上手な方でしたから、いつも屋敷にいるときは、ノクト様抜きで奥さまと一日中こんなふうに執務をしていたように思います。懐かしいですね」
「たしかに、ノクトも執務机に齧りついているって感じではないわね。私と一緒!」
「そうですね。ジョージア様が、奥さまほどアンナリーゼ様のことをくみ取れる、もしくは、それ以上の領地運営の才能があればよかったのですけどね……」
「イチアの話は、ジョージア様に対して、失礼じゃないかしら?」
「それは、失礼いたしました。申し訳ありません。ただ、アンナリーゼ様の元でこういった仕事をしているせいか、ジョージア様には物足りなさを感じてしまう……それだけは、覚えておいていただけると。私だけでなく、アンナリーゼ様の元にいる面々は考えていることだと思いますよ!常に上を、より良いことを!誰もが考えてはいますけど、アンナリーゼ様に引き上げられるものは、とても多いのですよ」
では、昼食にと席を立つイチアの背中を追いかけながら食堂に向かう。さっき言われたイチアの言葉を頭の中で繰り返す。
領地のことをよくしたいと思っているのは、私だけでなくジョージアもだが、まだまだ、イチアたちからはジョージアに対して、厳しい意見が多いようだった。
セバスはジョージアについて行ってくれたらい。私が執務室へ入ったのを確認した瞬間に、イチアが入ってきたとき、その表情は、『逃がしませんからね?』と、まるで鬼のようであった。
「えっと……何かな?」
「何?決裁が山のようにあるので、それを片付けてもらいたいだけです?」
ニコッと笑うその顔は、笑っていない。怖くて、椅子に思わず抱きつきたくなった。
「決裁なら、ジョージア様もできるでしょ?」
「そうですね。でも、アンナリーゼ様が帰ってくるのをずっと待っていたのですよ!セバスと二人で。今日は1日、この裁可をお願いします」
「裁可って……これ、1ヶ月分より多いよ?」
「そうですか?これくらいの山が、ざっと5つほどありますから……今日のところは、どこにも逃がしませんからね!」
腕っぷしなら、きっと私でもイチアに勝つことはできるだろう。それをしたところで、意味がないこと、さらに仕事が増えるであろうことは想像ができたので、大人しく「ください」と呟いた。
今度は、先程の笑顔とちがい優しい笑顔である。
ベルを鳴らして、リアンを執務室へ呼び寄せた。
「お義母様からお茶の誘いがあっても、今日はいけそうにありません。申し訳ないんだけど……」
リアンもその山のように積んである書類を見て、心得たと頷いてくれた。
「美味しいお茶とお菓子を用意しますね。それくらいの休憩はいいでしょうか?」
「もちろんです。とびっきり甘いお菓子を用意してあげてください」
「……とびっきり甘い?」
「アンナリーゼ様は、決裁に判を押すだけの仕事はしません。その内容も吟味しながら裁可をされますから、きっと、身も心もとても疲れると思いますから!」
「わかりましたわ!アンナリーゼ様へのお菓子は、とびっきりのものにいたします!」
二人がわかり合っているところ悪いが……ため息をついて、1番上の書類を手に取った。
「何々……壊れた橋の話ね。石切りの町のカノタが、活躍しているようね。新しい方法を試すのに、仕入れたい材料があるか……なんだろう?鉄の棒?鉄の棒って……その囲いみたいな……それなら、この領地でも……?」
「カノタさんの話ですね。川に流された橋の修理をしていて、次、同じようなことがあっても大丈夫なようにって、新しい方法を考えたようですよ。コンクリートが使えるようになったので、他の方法を試したいって。コーコナ領で作った壁のことを聞いて、思いついたようです」
「なるほど……技術や発想は、別の現場からでも取り入れることが出来るのね。確か、あのときは、コンクリートの間に何か入れて強度を保たせるって話を聞いたわね!」
「リアノが考案した方法ですね。あのフレイゼン領から来た魔法使いたちの活躍が、領地をさらに活性化させている……そんな気にさせてくれます」
「すごいでしょ?お父様とお兄様の自慢の人材育成の成功者なのよね!私も、もっといい人材をたくさん育てたいわ!まずは、今、育ちつつあるカノタの力になりましょう。必要なものの購入については、もちろん買いましょう!私も完成を楽しみにしているわ!」
「あぁ、続きがありまして、他の橋の強化もしたいと申し出がありました。その分も入れると、結構な額になるかと思いますが……」
私はイチアに頷き、裁可したと領主印を押した。
この調子で、案件を読んではイチアが補足をしてを繰り返し、やっと一山終わった頃に昼食となった。
「全然減らないね……まだ、あと4つも?」
「いえ、あと5つです。午後にはこの早さで決裁を進めていくと、今日中には、あと2つほど減らせそうですけど……」
「それまでの自由はないってことね?疲れた」
「事務仕事は苦手ですか?」
「どちらかというと、体を動かしているほうが好きよ!だから、セバスやパルマを近くに置いているのだもの!」
堂々と書類仕事は嫌だと宣言すると、イチアが苦笑いをしている。何か、思い当たることがあるようだ。
「ノクト様も同じような感じでした。奥さまが事務仕事のできる方でしたし、ノクト様の意向をくみ取るのがとても上手な方でしたから、いつも屋敷にいるときは、ノクト様抜きで奥さまと一日中こんなふうに執務をしていたように思います。懐かしいですね」
「たしかに、ノクトも執務机に齧りついているって感じではないわね。私と一緒!」
「そうですね。ジョージア様が、奥さまほどアンナリーゼ様のことをくみ取れる、もしくは、それ以上の領地運営の才能があればよかったのですけどね……」
「イチアの話は、ジョージア様に対して、失礼じゃないかしら?」
「それは、失礼いたしました。申し訳ありません。ただ、アンナリーゼ様の元でこういった仕事をしているせいか、ジョージア様には物足りなさを感じてしまう……それだけは、覚えておいていただけると。私だけでなく、アンナリーゼ様の元にいる面々は考えていることだと思いますよ!常に上を、より良いことを!誰もが考えてはいますけど、アンナリーゼ様に引き上げられるものは、とても多いのですよ」
では、昼食にと席を立つイチアの背中を追いかけながら食堂に向かう。さっき言われたイチアの言葉を頭の中で繰り返す。
領地のことをよくしたいと思っているのは、私だけでなくジョージアもだが、まだまだ、イチアたちからはジョージアに対して、厳しい意見が多いようだった。
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