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領地の変わりよう
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子どもたちを交えて、夕飯をとり、先程の重かった空気は飛んでいった。アンジェラは、相変わらずで、ニコニコとしながら甘えていた。
「おじいちゃん、おばあちゃん!」
「なんだい?アンジェラ?」
「ふふっ、呼んだだけ!」
先程から、このやり取りが繰り返し続いていて、そんなアンジェラを可愛く思ってくれているのか、目を細めて義両親は優しく微笑んでいた。
「アンジェラって不思議な子だよね。僕らが喧嘩してても、すぐに気付いて仲を取り持つようなことをするんだよ」
「大人が思うより、子どもの方がずっと私たちをみているのですよ。ジョージアのこともアンナリーゼのことも好きだから、仲良くさせようとしているのでしょうね。ジョージアも小さい頃、そういうところがありましたから」
思わぬジョージアの話が聞けて、喜んでいると、ジョージアに睨まれる。
「明日は、旦那様もジョージアも領地へ出るのですから、アンナリーゼとはたくさん話ができるといいわ!」
「母上!あんまり変なことをアンナには言わないでください!」
「変なことって……一人息子との大事な想い出なのですよ!アンナリーゼにも聞いてもらいたいに決まっています!」
ツンっとする義母は、今まであまりジョージアのことを話す機会が無かったのだと零す。本当は、誰かと子のことで話したいと思っていても、筆頭公爵家の汚点に繋がるようなことは言えないでいるので、寂しかったらしい。
「お義母様!私、とっても楽しみです!ジョージア様のお話って、学園に入った以降しか知らないので、教えてくれたら嬉しいです!」
「えぇ、なんでも聞いてちょうだい!アンナリーゼと出会ったときの話なんて、まるで恋愛小説か舞台を見ているような甘い時間でしたよ!」
「母上!」
「ジョージア、諦めろ。もう二人の目が……」
義父がこちらを諦めたように見ている。ジョージアは諦めがつかないようだが、無駄ですよと微笑んでおく。
「私、お義母様たちの慣れ染めも聞きたいです!せっかくですもの!」
「いいですよ!明日からのお茶の時間が楽しみだわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ?」
「どうかされましたか?旦那様」
「いや、その、何を話すのかは、任せるが……その、アンナリーゼには、かっこいい話をだな?」
「父上、諦めてください!母上が好きなお話をアンナに脚色して聞かせてくれますから!」
「……ジョージア」
先程と逆転したジョージアと義父の話しぶりに義母と私は笑いあった。
男性陣は、苦笑いしかできず顔を見合って、ため息をついている。
「あぁ、そうだ。明日からの視察は、ジョージアが案内だったな?」
「そうです。アンナがよかったですか?」
「そりゃ、もちろん……可愛いアンナリーゼが案内をしてくれるにこしたことはないさ」
「可愛くない息子で我慢しておいてください。あと、アンナの護衛で俺たちと領民を繋いでくれている近衛のアデルと警備隊長のリリーが補足を担ってくれる」
「護衛が?」
「護衛と言っても、アンナは強いからね……近衛を百人とかのしちゃう程度には。ディルやデリア、リアンという侍従たちがどうしても護衛をつけてとお願いしてあるんだ。たいていは、一人で馬に乗って出かけてしまうから、基本的に二人が橋渡し的なことをしてくれてる。アンナへの報告も直にできるしね」
なるほどと頷く義父であった。
「ここへ来るまでも見たと思うけど、本当にアンバー領は俺たちが知っている領地とは別物。一応、俺も領主として名を連ねてはいるけど、領民たちにとって、アンナが領主だから。もしかしたら、父上が視察にでて悪い感情ばかり受けるようなことになったら、日程はあっても、視察は続けないから。そのつもりで」
「アンナリーゼは、この領地になくてはならない存在というのは、今の説明でもヒシヒシと伝わったよ」
「旦那様、4日後、私も一度村へ向かいます」
「何か?」
「カルアの家族に会いに」
「母上、それは……」
「ダドリー男爵家の件に関わっていた侍女の家族よ。アンナリーゼにも一緒に行ってもらうことにはなっているんだけど……」
「私も一緒に行こう!」
「いいえ、これは、私が」
「大丈夫なのですか?」
「えぇ、向かうことは約束済みですから。今は麦の収穫や種まきの時期で忙しいらしいのだけど……会ってくれるという話だから」
義母には、カルアへの想いがあるのだろう。私も助けられなかったという負い目があるのだが……いつものように出迎えてくれるサラおばさんを思い浮かべた。
「ジョージア様、私がついて行きますから、大丈夫だと思います。ジョージア様もよく知っているサラおばさんの家族ですから」
「あぁ、サラさん。俺は全然知らなかった」
「ジョージア様には言ってなかったですからね。蟠りは残っていると思いますが……会った日のことを考えてはおきます」
「うん、そうだね。何もないと思うけど……カルアは本当に我が家に尽くしてくれていた侍女だったから」
カルアとの確執があるのは、ジョージアも同じこと。アンジェラの出生のことで嘘をいったのは、他ならないカルアだったのだから。
でも、そのことをジョージアは割り切っていたので、私も何も言わないでいた。
「私のわがままで、ごめんなさいね?」
「いえ、大丈夫ですよ!サラおばさんも、お義母様に会うのを楽しみにしていると行ってくれているので」
「くれぐれも気を付けて行ってきてくれ」
義父に頷くと視察の目玉になる話をいくつかして、各自自室へと戻っていくこととなった。
「おじいちゃん、おばあちゃん!」
「なんだい?アンジェラ?」
「ふふっ、呼んだだけ!」
先程から、このやり取りが繰り返し続いていて、そんなアンジェラを可愛く思ってくれているのか、目を細めて義両親は優しく微笑んでいた。
「アンジェラって不思議な子だよね。僕らが喧嘩してても、すぐに気付いて仲を取り持つようなことをするんだよ」
「大人が思うより、子どもの方がずっと私たちをみているのですよ。ジョージアのこともアンナリーゼのことも好きだから、仲良くさせようとしているのでしょうね。ジョージアも小さい頃、そういうところがありましたから」
思わぬジョージアの話が聞けて、喜んでいると、ジョージアに睨まれる。
「明日は、旦那様もジョージアも領地へ出るのですから、アンナリーゼとはたくさん話ができるといいわ!」
「母上!あんまり変なことをアンナには言わないでください!」
「変なことって……一人息子との大事な想い出なのですよ!アンナリーゼにも聞いてもらいたいに決まっています!」
ツンっとする義母は、今まであまりジョージアのことを話す機会が無かったのだと零す。本当は、誰かと子のことで話したいと思っていても、筆頭公爵家の汚点に繋がるようなことは言えないでいるので、寂しかったらしい。
「お義母様!私、とっても楽しみです!ジョージア様のお話って、学園に入った以降しか知らないので、教えてくれたら嬉しいです!」
「えぇ、なんでも聞いてちょうだい!アンナリーゼと出会ったときの話なんて、まるで恋愛小説か舞台を見ているような甘い時間でしたよ!」
「母上!」
「ジョージア、諦めろ。もう二人の目が……」
義父がこちらを諦めたように見ている。ジョージアは諦めがつかないようだが、無駄ですよと微笑んでおく。
「私、お義母様たちの慣れ染めも聞きたいです!せっかくですもの!」
「いいですよ!明日からのお茶の時間が楽しみだわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ?」
「どうかされましたか?旦那様」
「いや、その、何を話すのかは、任せるが……その、アンナリーゼには、かっこいい話をだな?」
「父上、諦めてください!母上が好きなお話をアンナに脚色して聞かせてくれますから!」
「……ジョージア」
先程と逆転したジョージアと義父の話しぶりに義母と私は笑いあった。
男性陣は、苦笑いしかできず顔を見合って、ため息をついている。
「あぁ、そうだ。明日からの視察は、ジョージアが案内だったな?」
「そうです。アンナがよかったですか?」
「そりゃ、もちろん……可愛いアンナリーゼが案内をしてくれるにこしたことはないさ」
「可愛くない息子で我慢しておいてください。あと、アンナの護衛で俺たちと領民を繋いでくれている近衛のアデルと警備隊長のリリーが補足を担ってくれる」
「護衛が?」
「護衛と言っても、アンナは強いからね……近衛を百人とかのしちゃう程度には。ディルやデリア、リアンという侍従たちがどうしても護衛をつけてとお願いしてあるんだ。たいていは、一人で馬に乗って出かけてしまうから、基本的に二人が橋渡し的なことをしてくれてる。アンナへの報告も直にできるしね」
なるほどと頷く義父であった。
「ここへ来るまでも見たと思うけど、本当にアンバー領は俺たちが知っている領地とは別物。一応、俺も領主として名を連ねてはいるけど、領民たちにとって、アンナが領主だから。もしかしたら、父上が視察にでて悪い感情ばかり受けるようなことになったら、日程はあっても、視察は続けないから。そのつもりで」
「アンナリーゼは、この領地になくてはならない存在というのは、今の説明でもヒシヒシと伝わったよ」
「旦那様、4日後、私も一度村へ向かいます」
「何か?」
「カルアの家族に会いに」
「母上、それは……」
「ダドリー男爵家の件に関わっていた侍女の家族よ。アンナリーゼにも一緒に行ってもらうことにはなっているんだけど……」
「私も一緒に行こう!」
「いいえ、これは、私が」
「大丈夫なのですか?」
「えぇ、向かうことは約束済みですから。今は麦の収穫や種まきの時期で忙しいらしいのだけど……会ってくれるという話だから」
義母には、カルアへの想いがあるのだろう。私も助けられなかったという負い目があるのだが……いつものように出迎えてくれるサラおばさんを思い浮かべた。
「ジョージア様、私がついて行きますから、大丈夫だと思います。ジョージア様もよく知っているサラおばさんの家族ですから」
「あぁ、サラさん。俺は全然知らなかった」
「ジョージア様には言ってなかったですからね。蟠りは残っていると思いますが……会った日のことを考えてはおきます」
「うん、そうだね。何もないと思うけど……カルアは本当に我が家に尽くしてくれていた侍女だったから」
カルアとの確執があるのは、ジョージアも同じこと。アンジェラの出生のことで嘘をいったのは、他ならないカルアだったのだから。
でも、そのことをジョージアは割り切っていたので、私も何も言わないでいた。
「私のわがままで、ごめんなさいね?」
「いえ、大丈夫ですよ!サラおばさんも、お義母様に会うのを楽しみにしていると行ってくれているので」
「くれぐれも気を付けて行ってきてくれ」
義父に頷くと視察の目玉になる話をいくつかして、各自自室へと戻っていくこととなった。
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