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予想通りの
しおりを挟む子どもたちを客間から出し、ジョージア親子と私だけになった。子どもたちがいる間、笑顔を絶やさなかった義両親ではあったが、扉が閉まると同時に顔が曇った。
ジョージアと予想していたとおりで、残念に思う反面、アンバー公爵家の、ハニーローズの血筋を守るという意味では正しい反応であることは、私たち二人も理解していた。
「さて、ジョージア」
口を開いたのは義父ではなく、義母のほうだった。元々、義母はソフィアを公爵家の第二夫人として迎え入れることは反対をしていた。もちろん、私がいるからと言う名目ではあるが、私がジョージアと結婚しなかったとしても、義母の腹の中では、別途公爵家の夫人を公室から見繕う予定であったのだろう。
たまたま転がり込んできた私との婚約は手放しで喜んでくれたらしい。歓迎されていることから、それは伺えた。
厳しい視線はジョージアに向かう。義両親にはジョージの出生に関しては言ってなくとも、みればわかることもあるのだろう。
何を言われるかわかっているので、ジョージアの身が強張るのがわかった。
「何でしょうか?母上」
「どういうことでしょう?アンバー公爵は、夫人であるアンナリーゼが産んだ子が二人だけのはずですが、一人、どこの子かわからぬ子がいたようですね?それも、アンナリーゼの側に。これは、一体、誰の子かしら?ジョージア」
「それは、第二夫人であったソフィ……」
「黙りなさい!私の目は誤魔化せませんよ!」
優しい義母がとても怒っているのが伝わってくる。
「では、母上はどうしろというのですか?俺は、生まれたころからジョージへの愛情もあります。我が子のように接してきた時間をどうしろというのですか?」
「では、逆に聞きますよ?」
「……はい」
「ジョージアは、アンナリーゼがアンジェラを産んだとき、どこにいたのです?出産は命がけです。アンナリーゼが出産で大変なとき、乳飲み子を抱いていたとき、何をしていたのですか?自身の子でない子の側にずっとついていたのでしょ?アンジェラを初めて抱いたのはいつ?騙されて我が子には見向きもせず、アンナリーゼに苦労に苦労をかけて、本当にジョージアは……これ以上、アンナリーゼに苦労をかけるのですか?」
「あの、お義母様、私は……」
「アンナリーゼは少し黙っていなさい」
「いえ、黙れません。お義母様が言われたことは、正直思うところがあったのですけど、私もジョージのことが可愛くてなりません。ジョージア様のことは、お義母様が思うようにされたらいいと思いますが、ソフィア亡き今、ジョージア様が我が子として育てたいと私に願ったのです。それなら、私は支えていきたいですし、ジョージにもアンジェラやネイトと同じように愛情をかけたい。小さいときから、私も慕われているので、手放したくはないです」
「でも、アンナリーゼ。わかっているの?あなたを殺そうとしていたのですよ?そんな人から産まれた子を」
「それは、特に感じていません。ソフィアの最後に立ち会ったのは私でした。ジョージの幸せを願って死んでいった。子どもには罪はありませんし、アンバー領のことなら、これからアンジェラやネイトと協力して繁栄させてくれるなら、ジョージの生はそれだけでいいと思っています」
「……アンナリーゼがいいのなら。でも、私は、今も許すつもりはありませんよ。ダドリー男爵家の血筋は。可愛らしいアンナリーゼだけでなく、アンジェラにも手をかけた。報告書に書かれていたことが事実であるからには、領地のみなを苦しめた。公爵家の一員として、許すわけにはいきません。それだけはわかってほしいの」
義母が私を諭すようだった。ダドリー男爵によって、アンバー領への被害はあまりにも大きく、義両親はとても心を痛めたとカルアに聞いたことがあった。
「アンナリーゼ、辛くなったら私たちの元へ、ジョージを送ってくれてもいいんだよ?アンバー領のためにどれほど心を割いてくれているのか、アンジェラやネイトを無事に産んでくれたこと、本当に感謝しているのだから」
義父も私を心配してくれているようで、嬉しい。
「お義父様、お義母様、私のために気を使わせてしまい申し訳ありません。そのお心、とても嬉しく思います」
義両親がお互いの顔を見て、盛大なため息をついた。
「私たちは、ジョージアによい縁談だと思っていたのだが……ジョージアだけでなく、領地も見事に救ってくれ、私たちにも心を配ってくれる。ジョージアには勿体なさすぎる子だよ。
もし、ジョージアが嫌になったら、私たちに言うといい。離縁状ならいくらでも書いてあげるから!」
「ふふっ、ジョージア様とは、何があっても離れません。大切な方なのです」
ニコッと笑うと、義母が目尻を拭っていた。ここに来るまで、私に何を言おうか、実際子どもを見たときに、どんな態度を取ってしまうのか、たくさん考えてくれていたようだ。私は、ジョージを含め、三人の子に囲まれ幸せでる。それを伝えると、頷き納得をしてくれたようだ。
「アンナリーゼは、アンバー領の宝です。本当によく頑張ってくれました。大変なときに側にいてあげられなくて、ごめんなさいね?」
義母が謝ってくれる。その隣で、義父も頭をさげた。大袈裟ですよと逆にたしなめると、私たちの可愛い娘だから幸せになってほしいのだと言ってくれる。
それだけで、胸がいっぱいになった。
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