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義両親歓迎?
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客間に移動した私たち。その間も変わり果てた別荘をあちこち見ながら歩く。幸いと言うべきか、祖父母の手を両手でしっかり握っていてくれるので、周りを気にしつつもアンジェラが転ばないようにと時々みてくれる。
「それにしても、アンジェラは私たちのことを本当に怖がらないのね?」
「これぐらいの子は、人見知りをするものだと思うんだが」
「ジョージアなんて、一緒に住んでた旦那様の両親にさえ人見知りをして……よく泣いていたのに」
「母上?」
「あらあら?アンナリーゼの前では、まだ、格好つけたいの?」
「……それは、その」
「こらこら、ジョージアをからかうものではないよ。私だって、好いた女性の前ではいつまでもかっこつけたいものだからね?」
ジョージアと同じく義父は義母に優しく微笑んだ。
「親子そろって……アンナリーゼは、どう思うかしら?」
義母に手玉に取られているジョージアを庇ってくれる義父。親子の仲がいいことがわかる。慌てているジョージアも珍しく、アンジェラが喜んでいた。
「私は、私の前でかっこよくあろうとしてくれるジョージア様のことをとても好きですよ!」
「あらあら、こちらも。仲がとってもいいのね。よかったわね?ジョージア」
「母上もアンナもからかわないでくれ」
「本当のことなのに……」
「ジョージアは女心がわかっていないわ。残念ね。旦那様の子なのかしら?」
はぁ……とわざとらしくため息をつく義母に苦笑いをしておく。部屋についたので、リアンがお茶を用意してくれ、行き届いたころ、エマがネイトを連れてきてくれた。
「その子がネイト?」
「ずいぶんと大きいな?」
ネイトを見ようと座っていた義両親が立ち上がり、エマの方へ歩いていく。ネイトは、私によく似た容姿である。ストロベリーピンクの頭を知らない誰かに撫でられ、さすがに驚いたのか、泣き始めた。
「アンナリーゼ、泣いてしまいましたわ」
「大丈夫ですよ」
私もネイトのところへいき、エマから渡してもらったらすぐに泣き止んだ。
「驚かせてしまったのね……アンジェラがあまりにも人見知りをしないから、すっかりその気になってしまって」
「ネイトは、人見知りです。アンジェラと違い、大人しく甘えん坊なんです」
「確かに。アンナリーゼに抱かれると一瞬で泣き止むとか」
「座ってください。父上も母上も。子どもたちを紹介しますから」
あぁ、頼むとそれぞれが席に座る。アンジェラは、私たちの場所ではなく、義両親の間にちょこんと座った。余程、手を繋いで歩いたことが気に入ったようだ。
「アンジェラはさっき挨拶したからいいね。こっちの男の子がネイトだよ」
ジョージアが頭を撫でると、ネイトは嬉しそうにしている。
「アンナリーゼにソックリね!中身もアンナリーゼにソックリだと思っていたのに、姉弟でも似ないものね。ジョージアに似てしまったのかな……」
「いいではないですか?アンナに似た方がよかったですか?」
「そうね……男の子なら、アンナリーゼのような子だと、元気でいいかなって思うわ!ふふっ、それにしても、不思議な目をしているのね。アメジストの周りをアンバーが囲っているみたい」
「綺麗だな。その瞳。初めて見る」
「確かに……歴史的にそういう子はいなかったのかな?」
「聞かなかったけど……まぁ、可愛いからいいさ」
クスクスと笑う大人にキョロキョロと目を動かしていた。
そのあと、少しだけジョージアが緊張するのがわかる。あぁ、いよいよかと思うと、私も少しだけ緊張した。
私のジョージアの間に隠れるようにもう一人の息子がいる。ネイト以上に人見知りでずっと私の後ろに隠れていた。
「それで、この子が俺の子で、ジョージ」
親に叱られる子どものような声で話すジョージアにどう反応していいかわからないジョージ。
「ジョージか。初めまして」
「……初めまして、あの、ジョージです」
「あら、とっても人見知りなのね。ジョージアそっくり」
クスっと笑ってはいるが、貴族的な笑みは大人の私たちにはわかる。ジョージは気が付いただろうか?大人の機微は、誰よりも感じやすい。
「可愛いでしょ?ジョージは、とても本を読むことが好きで、ジョージア様みたいなんですよ!まだ、難しい本は隣について読み方を教えたりするんですけど、勉強熱心な子に育ちそうです」
ジョージのことを話すが、戸惑っているのはわかる。ジョージアは義両親にジョージの出生のことは言っていないと聞いていた。でも、わかるのだろう。どちらとも似ていない。今のアンバー公爵家の系譜のどこにも似ていないのだから、ジョージアの子ではないことは両親からしたら一目瞭然である。
「そうなのね!将来、アンジェラが公爵になったとき、側で支える人が多いことは、私たちは歓迎するわ!ねぇ?旦那様」
「あぁ、そうだね。公爵として立つのは、アンジェラだ。頼りにしているよ、ジョージ」
「……はい」
空気が重くなった。仕方ない。ジョージアは、こうなることを予想はしていた。ジョージを生かす決断をしたときから、ずっと考えていたことだろう。両親に拒まれることは。
ごめんね、ネイト。
私は、ネイトを少しだけつつくと、泣き始めた。
「よしよし、そろそろ眠いかな?」
「……大丈夫?」
「えぇ、そろそろネイトをお昼寝をさせてあげましょう」
「アンジェラもジョージも一緒に行っておいで?」
「エマ、お願いできるかしら?」
「私も一緒に一度退出いたします」
「えぇ、お願いできるかしら?リアンと一緒にアンジェラとジョージもいってらっしゃい。またあとで」
そういうと、子どもたちをつれエマとリアンが出ていく。扉が閉まってしばらく、義母が大きくため息をついた。
理由は、わかっている。これから、話すことは、気が重くなった。
「それにしても、アンジェラは私たちのことを本当に怖がらないのね?」
「これぐらいの子は、人見知りをするものだと思うんだが」
「ジョージアなんて、一緒に住んでた旦那様の両親にさえ人見知りをして……よく泣いていたのに」
「母上?」
「あらあら?アンナリーゼの前では、まだ、格好つけたいの?」
「……それは、その」
「こらこら、ジョージアをからかうものではないよ。私だって、好いた女性の前ではいつまでもかっこつけたいものだからね?」
ジョージアと同じく義父は義母に優しく微笑んだ。
「親子そろって……アンナリーゼは、どう思うかしら?」
義母に手玉に取られているジョージアを庇ってくれる義父。親子の仲がいいことがわかる。慌てているジョージアも珍しく、アンジェラが喜んでいた。
「私は、私の前でかっこよくあろうとしてくれるジョージア様のことをとても好きですよ!」
「あらあら、こちらも。仲がとってもいいのね。よかったわね?ジョージア」
「母上もアンナもからかわないでくれ」
「本当のことなのに……」
「ジョージアは女心がわかっていないわ。残念ね。旦那様の子なのかしら?」
はぁ……とわざとらしくため息をつく義母に苦笑いをしておく。部屋についたので、リアンがお茶を用意してくれ、行き届いたころ、エマがネイトを連れてきてくれた。
「その子がネイト?」
「ずいぶんと大きいな?」
ネイトを見ようと座っていた義両親が立ち上がり、エマの方へ歩いていく。ネイトは、私によく似た容姿である。ストロベリーピンクの頭を知らない誰かに撫でられ、さすがに驚いたのか、泣き始めた。
「アンナリーゼ、泣いてしまいましたわ」
「大丈夫ですよ」
私もネイトのところへいき、エマから渡してもらったらすぐに泣き止んだ。
「驚かせてしまったのね……アンジェラがあまりにも人見知りをしないから、すっかりその気になってしまって」
「ネイトは、人見知りです。アンジェラと違い、大人しく甘えん坊なんです」
「確かに。アンナリーゼに抱かれると一瞬で泣き止むとか」
「座ってください。父上も母上も。子どもたちを紹介しますから」
あぁ、頼むとそれぞれが席に座る。アンジェラは、私たちの場所ではなく、義両親の間にちょこんと座った。余程、手を繋いで歩いたことが気に入ったようだ。
「アンジェラはさっき挨拶したからいいね。こっちの男の子がネイトだよ」
ジョージアが頭を撫でると、ネイトは嬉しそうにしている。
「アンナリーゼにソックリね!中身もアンナリーゼにソックリだと思っていたのに、姉弟でも似ないものね。ジョージアに似てしまったのかな……」
「いいではないですか?アンナに似た方がよかったですか?」
「そうね……男の子なら、アンナリーゼのような子だと、元気でいいかなって思うわ!ふふっ、それにしても、不思議な目をしているのね。アメジストの周りをアンバーが囲っているみたい」
「綺麗だな。その瞳。初めて見る」
「確かに……歴史的にそういう子はいなかったのかな?」
「聞かなかったけど……まぁ、可愛いからいいさ」
クスクスと笑う大人にキョロキョロと目を動かしていた。
そのあと、少しだけジョージアが緊張するのがわかる。あぁ、いよいよかと思うと、私も少しだけ緊張した。
私のジョージアの間に隠れるようにもう一人の息子がいる。ネイト以上に人見知りでずっと私の後ろに隠れていた。
「それで、この子が俺の子で、ジョージ」
親に叱られる子どものような声で話すジョージアにどう反応していいかわからないジョージ。
「ジョージか。初めまして」
「……初めまして、あの、ジョージです」
「あら、とっても人見知りなのね。ジョージアそっくり」
クスっと笑ってはいるが、貴族的な笑みは大人の私たちにはわかる。ジョージは気が付いただろうか?大人の機微は、誰よりも感じやすい。
「可愛いでしょ?ジョージは、とても本を読むことが好きで、ジョージア様みたいなんですよ!まだ、難しい本は隣について読み方を教えたりするんですけど、勉強熱心な子に育ちそうです」
ジョージのことを話すが、戸惑っているのはわかる。ジョージアは義両親にジョージの出生のことは言っていないと聞いていた。でも、わかるのだろう。どちらとも似ていない。今のアンバー公爵家の系譜のどこにも似ていないのだから、ジョージアの子ではないことは両親からしたら一目瞭然である。
「そうなのね!将来、アンジェラが公爵になったとき、側で支える人が多いことは、私たちは歓迎するわ!ねぇ?旦那様」
「あぁ、そうだね。公爵として立つのは、アンジェラだ。頼りにしているよ、ジョージ」
「……はい」
空気が重くなった。仕方ない。ジョージアは、こうなることを予想はしていた。ジョージを生かす決断をしたときから、ずっと考えていたことだろう。両親に拒まれることは。
ごめんね、ネイト。
私は、ネイトを少しだけつつくと、泣き始めた。
「よしよし、そろそろ眠いかな?」
「……大丈夫?」
「えぇ、そろそろネイトをお昼寝をさせてあげましょう」
「アンジェラもジョージも一緒に行っておいで?」
「エマ、お願いできるかしら?」
「私も一緒に一度退出いたします」
「えぇ、お願いできるかしら?リアンと一緒にアンジェラとジョージもいってらっしゃい。またあとで」
そういうと、子どもたちをつれエマとリアンが出ていく。扉が閉まってしばらく、義母が大きくため息をついた。
理由は、わかっている。これから、話すことは、気が重くなった。
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