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アンジェラが欲しい贈り物
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トタトタという足音が廊下から聞こえる。その後ろを追いかけるリアンの足音も。きっとアンジェラが、この部屋に向かっているのだろう。
「ジョージア様、うちの可愛いお姫様がきますよ!」
「あぁ、そうなの?二人きりの時間は、少ないね……」
「もう少しあの子たちが大きくなれば、二人で過ごす時間も増えますよ」
クスクス笑いながら、居住まいを正す。だらけていたのにとジョージアは苦笑いをして、私を解放した。
ピタッとおさまる小さな足音は、部屋の前でとまる。
「アンジェラ様!」とやや小声で呼ぶリアンの声も虚しく、扉が開いた。
「ママっ!」
ニッコリ笑いかけるのは、我が家のお姫様。部屋に入ってきて、私たちが座るソファに駆けてくる。
やっと追いついたと、リアンは少々荒い息で、部屋を覗いた。
「リアン、大丈夫?」
「……はい。あの、アンジェラ様を」
「うぅん、いいのよ!ありがとう」
「ママ、何してたの?」
「ジョージア様とお話してたのよ!アンジェラも一緒にお話する?」
嬉しそうに私にしがみつく。余程恋しかったのだろうか?母に抱きついた記憶が……あまりないので、私の方がうれしくなった。
お母様に抱きつこうものなら、そのあと、どれほどお説教をされたことか。余程のことがない限り、お母様は厳しかったからな。
自信の子どもの頃を思い出し、苦笑いした。
アンジェラを膝の上に乗せ抱きしめる。温かい子ども体温にホッとする。
「もうすぐ、三歳のお誕生日だね?何か欲しいものがあるかしら?」
「うーん、赤ちゃん?」
「へっ?」
「いや、ねぇ?赤ちゃんって……ネイトもいるよ?」
「ネイトはもうすぐ大きくなるの!アンの妹が欲しい!」
私はジョージアと顔を見合わせ笑いあう。たしかに、アンジェラには、弟が二人いるけど、妹はいない。兄と呼べるレオや姉と呼べるミアはいるけど、妹はいなかった。
「うーん、アンジー」
「何?パパ」
「赤ちゃんは、神様からの贈り物だからね……アンジーが欲しいからって、手に入るものじゃないよ?」
「いや、妹がほしい!」
じーっとアンジェラに見つめられ、はぁ……とため息をついた。
「もう少ししたら、デリアに子が生まれるわ。男の子でも女の子でも、アンジェラが大事にしてあげたらいいと思うのだけど?」
「デリアに?」
「そう。デリアのところに、赤ちゃんが来てくれたのよ」
「……いつ会える?」
「そうね……次、公都に帰ったら、きっとあえるわ!」
「わかった。楽しみにする!」
ニシシと笑い、本当に楽しみにしているようだ。ネイトの面倒もよくみていると聞いていたので、本当にいいお姉さんをしたいのだろう。少し大きくなったからか、お手伝いをしたい!というようになったらしい。
「アンジーは、ママに会いに来たの?」
「そう。ママに会いに来たの!大好き」
会話らしい会話をできるようになってから、たくさんとりとめもない話をするようになった。大好きだと言っては抱きしめていたので、いつの間にかアンジェラも同じように私を抱きしめるようになった。私だけではなく、ジョージやネイトにもらしい。どうしてか、ジョージアにはそんなふうには抱きついて行かないときいたときは、笑ったものだ。
「ママ、どこにもいかない?」
「うん、いかないよ!しばらくはここにいるわ。アンジェラのおじいちゃんとおばあちゃんが来るからね。一緒にご飯を食べたり遊んだりしましょう!」
「おじいちゃんとおばあちゃん?」
「アンジーは初めて会うね。俺の……パパのお父さんとお母さんだよ?」
「パパのパパとママ?」
コテンと小首を傾げて考えている。その姿が愛らしくて仕方がない。
「会えば、わかるよ。パパのパパは、アンジーとパパと同じ目をしているからね」
「本当?」
「うん、本当だ!」
「アン、ネイトの目が好き!」
「不思議な色をしているものね?」
「そう。ママとアンの目みたい!」
「そこは、ママとパパの目じゃないのか?」
「ママとアン!」
二人が張り合っているのがおかしくて、クスクス笑ってしまう。
穏やかな時間が、こんなに愛しいだなんて思いもしなかった。『予知夢』と変わった未来がこんなに温かいなんて、夢にも思わなかった。アンジェラが、話せるようになってから、こうして親子で話す時間がとても嬉しい。
もう少ししたら、きっと、エマがネイトを連れてきてくれるだろう。ジョージにも声をかけて、きてくれるに違いない。
リアンが、私たちを見ながら、お茶の用意をしてくれる。そのとき、予想したとおり、エマが二人を連れて入ってきた。
「ジョージ、ネイトも来たのね!こっちにいらっしゃい」
手招きすると、エマに連れられやってきた。私の膝の上にいたアンジェラはジョージアの方へ移動して、ネイトに私の膝を譲る。ジョージは、私の隣に座って、足をぶらぶらとさせた。
家族が揃ったところで、ジョージアが小さく呟いた。
「一人占めは当分できそうにないな……」
「さっきまで、私はジョージア様を一人占めしてましたよ?」
「そうだね。明日は視察へでかけるんだろう?」
「えぇ、そのつもりです!」
「それなら、早く寝るとしよう。家族も揃ったことだし、リアンに入れてもらった美味しいお茶を飲んだあと、家族でねむろう」
優しい顔をしてアンジェラの頭を撫でるジョージア。
子どもたちをベッドへ連れて行き、眠ることにした。明日は、アンバー領の視察に出かける。
朝は早いのだからと、五人が並んで眠りについた。
「ジョージア様、うちの可愛いお姫様がきますよ!」
「あぁ、そうなの?二人きりの時間は、少ないね……」
「もう少しあの子たちが大きくなれば、二人で過ごす時間も増えますよ」
クスクス笑いながら、居住まいを正す。だらけていたのにとジョージアは苦笑いをして、私を解放した。
ピタッとおさまる小さな足音は、部屋の前でとまる。
「アンジェラ様!」とやや小声で呼ぶリアンの声も虚しく、扉が開いた。
「ママっ!」
ニッコリ笑いかけるのは、我が家のお姫様。部屋に入ってきて、私たちが座るソファに駆けてくる。
やっと追いついたと、リアンは少々荒い息で、部屋を覗いた。
「リアン、大丈夫?」
「……はい。あの、アンジェラ様を」
「うぅん、いいのよ!ありがとう」
「ママ、何してたの?」
「ジョージア様とお話してたのよ!アンジェラも一緒にお話する?」
嬉しそうに私にしがみつく。余程恋しかったのだろうか?母に抱きついた記憶が……あまりないので、私の方がうれしくなった。
お母様に抱きつこうものなら、そのあと、どれほどお説教をされたことか。余程のことがない限り、お母様は厳しかったからな。
自信の子どもの頃を思い出し、苦笑いした。
アンジェラを膝の上に乗せ抱きしめる。温かい子ども体温にホッとする。
「もうすぐ、三歳のお誕生日だね?何か欲しいものがあるかしら?」
「うーん、赤ちゃん?」
「へっ?」
「いや、ねぇ?赤ちゃんって……ネイトもいるよ?」
「ネイトはもうすぐ大きくなるの!アンの妹が欲しい!」
私はジョージアと顔を見合わせ笑いあう。たしかに、アンジェラには、弟が二人いるけど、妹はいない。兄と呼べるレオや姉と呼べるミアはいるけど、妹はいなかった。
「うーん、アンジー」
「何?パパ」
「赤ちゃんは、神様からの贈り物だからね……アンジーが欲しいからって、手に入るものじゃないよ?」
「いや、妹がほしい!」
じーっとアンジェラに見つめられ、はぁ……とため息をついた。
「もう少ししたら、デリアに子が生まれるわ。男の子でも女の子でも、アンジェラが大事にしてあげたらいいと思うのだけど?」
「デリアに?」
「そう。デリアのところに、赤ちゃんが来てくれたのよ」
「……いつ会える?」
「そうね……次、公都に帰ったら、きっとあえるわ!」
「わかった。楽しみにする!」
ニシシと笑い、本当に楽しみにしているようだ。ネイトの面倒もよくみていると聞いていたので、本当にいいお姉さんをしたいのだろう。少し大きくなったからか、お手伝いをしたい!というようになったらしい。
「アンジーは、ママに会いに来たの?」
「そう。ママに会いに来たの!大好き」
会話らしい会話をできるようになってから、たくさんとりとめもない話をするようになった。大好きだと言っては抱きしめていたので、いつの間にかアンジェラも同じように私を抱きしめるようになった。私だけではなく、ジョージやネイトにもらしい。どうしてか、ジョージアにはそんなふうには抱きついて行かないときいたときは、笑ったものだ。
「ママ、どこにもいかない?」
「うん、いかないよ!しばらくはここにいるわ。アンジェラのおじいちゃんとおばあちゃんが来るからね。一緒にご飯を食べたり遊んだりしましょう!」
「おじいちゃんとおばあちゃん?」
「アンジーは初めて会うね。俺の……パパのお父さんとお母さんだよ?」
「パパのパパとママ?」
コテンと小首を傾げて考えている。その姿が愛らしくて仕方がない。
「会えば、わかるよ。パパのパパは、アンジーとパパと同じ目をしているからね」
「本当?」
「うん、本当だ!」
「アン、ネイトの目が好き!」
「不思議な色をしているものね?」
「そう。ママとアンの目みたい!」
「そこは、ママとパパの目じゃないのか?」
「ママとアン!」
二人が張り合っているのがおかしくて、クスクス笑ってしまう。
穏やかな時間が、こんなに愛しいだなんて思いもしなかった。『予知夢』と変わった未来がこんなに温かいなんて、夢にも思わなかった。アンジェラが、話せるようになってから、こうして親子で話す時間がとても嬉しい。
もう少ししたら、きっと、エマがネイトを連れてきてくれるだろう。ジョージにも声をかけて、きてくれるに違いない。
リアンが、私たちを見ながら、お茶の用意をしてくれる。そのとき、予想したとおり、エマが二人を連れて入ってきた。
「ジョージ、ネイトも来たのね!こっちにいらっしゃい」
手招きすると、エマに連れられやってきた。私の膝の上にいたアンジェラはジョージアの方へ移動して、ネイトに私の膝を譲る。ジョージは、私の隣に座って、足をぶらぶらとさせた。
家族が揃ったところで、ジョージアが小さく呟いた。
「一人占めは当分できそうにないな……」
「さっきまで、私はジョージア様を一人占めしてましたよ?」
「そうだね。明日は視察へでかけるんだろう?」
「えぇ、そのつもりです!」
「それなら、早く寝るとしよう。家族も揃ったことだし、リアンに入れてもらった美味しいお茶を飲んだあと、家族でねむろう」
優しい顔をしてアンジェラの頭を撫でるジョージア。
子どもたちをベッドへ連れて行き、眠ることにした。明日は、アンバー領の視察に出かける。
朝は早いのだからと、五人が並んで眠りについた。
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