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領地のこと
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報告は、多岐に渡る。事業自体が大きいので街道整備の話が1番始めではあったが、他にもたくさんある。
「次は、僕から。アンバー領の人口増加について報告するよ」
「えぇ、今はどれくらいふえたかしら?」
「どの時点を1としますか?」
セバスに問われ、少し考える。現時点と過去を比べるのであれば、改革前と今を知りたい。私の考えていることは、セバスも考えていてくれるので、頷くだけであった。
「では、アンナリーゼ様がクッキーを配ったときの人数と比較することにします」
「クッキーってなんのこと?」
「アンジェラのお誕生日会だったと思いますよ。1歳になったとき、領地の掃除を手伝ってくれたみんなに配ったんです。一人1枚。家族単位で配ったので、家族の名前や人数なんかをまとめてどこに住んでいるとかありとあらゆることを聞き出して領民の名簿を作ってあるのです」
「例えば、領地から引越しをする場合や子どもが生まれたとか家人が亡くなったとか、領主の屋敷にきて、手続きをしてくれるよう頼んであります。それで、アンバー領やコーコナ領の領民の人数などを把握しています。あと、引っ越したあとの家は、他に使いたい人がいれば、使ってもいいかとか。帰ってくる気がない人であれば、ある程度まとまった金額を渡して家を買い取り、修繕して、他の領民へ借家制度を取り入れています。空き家になっているものや、壊れた家なども修繕したものについては、領主の持ち物として借家として貸し出しをしていますよ」
「アンバー領にいたのに、全然知らなかった」
「ジョージア様が知らないのも無理はないかと。私たちが始めたことですから、まだ、他の領地も取り入れていませんし、それにとても手間がかかる仕事ではあるのです。その手間を惜しまず、セバスが頑張ってくれたおかげで、今、『住民票』というものが出来ています」
「『住民票』?それが、領民が何人いるのかわかるってことだよね?」
「そうですよ。今は、どれくらいになったのかしら?」
「約2倍の増加となっています。これには、公都から来ている近衛は含まれません」
「だそうですよ!」
「2倍も?確かに、外へ出ると、よく人に会うなって思っていたけど……そんなに」
「ジョージア様、まだ、驚かないでください」
「どうしてだい?セバス」
十分驚いたと言っているジョージアではあるが、セバスには、続きがあるようだった。
「人口は、まだ、増え続けています」
「なんだって?」
「閑散としていたアンバー領ですが、アンナリーゼ様の改革により、農地が豊かになり、酒類や紅茶、麦やいもなどの穀物などの農作物が好調であるので、働きたいと人が増えています。元々アンバー領の領民だった人が戻ってくることはあまりないのですが、他領から来たものたちは、移住をしてまで、働き口があることを喜び、仕事をしています」
「初耳なことばかりだ……これは、父上に話すと喜ぶであろう。父上と俺が領地運営をしていたときは、アンバー領がみるみるうちにさびれて行ったのだから」
「その人たちは、丁寧に働いてくれています。元刺客だと言っている人物も、土を触り、農民に声をかけられ、種をまいたとき、双葉が出たとき、感動したという話を聞きました。それほどまでに、アンバー領は、多種多様な人が集まりつつあります。あと、アンナリーゼ様が目指しているものですが……」
一旦言葉をきったセバス。ここまでの報告だけでも、有意義な気がしてならないが、まだ、あるらしい。
「学都のことね!」
「学都?」
「アンバー領をフレイゼンのような学都にしたいの!国の機関にだけ頼るのではなく、独自に作物の改良であったり、薬の開発であったり、たくさんの人材を育てて、領地をもっと発展させたいと思っているの。公にも識字率の話をされたわ!アンバー領がダントツに高いみたいね!」
「それもそうでしょう?基本的な文字なら、ほとんどの人が読めますからね!」
「これは、俺もビックリしたぞ?アンナ」
「ノクトのいた公爵領はどんなものだったの?うちより広大な領地を持っていたと思うけど」
「領民の識字率は10パーセントあればいい方だ。どこもかしこも。ここでは、大人向けの夜間学校を開いているからか、識字率がすごく高い」
「ノクトの領地でもそんなものなのね」
「どうやって、文字を覚えさせたんだ?俺には思いつかないこと……なのかな?」
ノクトでも出来なかったことがあるようで、私はニィっと笑う。
「文字を覚えさせるのは、意外と簡単なのよ!子どもたちに先に教えるの。子どもたちって勉強を覚えるのが早いでしょ?家に返ったら、学校であった、算数とか国語などの予習復習をするように説明しておいたら、大人も興味を持って見事に食らいついたわけです。子どもが読めるのに自分が読めないんだと、泣きつかれたこともありますよ。それに、子どもたちが出来ていることは、自分たちも覚えなくてはとなるようですよ」
「子どもに負けていられるか!というものか?」
「そういうことです。ジョージア様も子どもたちの前では、かっこいいお父様をしていたいものでしょ?」
「なるほどなぁ……人口も増え、識字率もあがり、勉強する大人も子どもも増えた。あとは、何か企んでいることがあるのか?」
「先程も言いましたが、独自の研究機関が欲しいので、まず、学都を目指します。フレイゼンからきた十人については、すでに講師をしてもらいながら、独自研究も始めています」
「独自研究……」
「はい。品種改良などアンバー領をより発展させてくれるようなものの研究開発ですね。あとは、ヨハンのような医術が使える人材の確保が急務ですね。それと、税収の増額が見込めると話をしたと思いますが」
「あぁ、聞いた。それも何か考えている?」
「『累進課税』というものを考えています。そのために、識字率をあげ、読み書き計算ができるように教育の場を提供したのですから!」
初めて聞く、耳慣れない言葉に、ジョージアたちは、首を傾げるのであった。
「次は、僕から。アンバー領の人口増加について報告するよ」
「えぇ、今はどれくらいふえたかしら?」
「どの時点を1としますか?」
セバスに問われ、少し考える。現時点と過去を比べるのであれば、改革前と今を知りたい。私の考えていることは、セバスも考えていてくれるので、頷くだけであった。
「では、アンナリーゼ様がクッキーを配ったときの人数と比較することにします」
「クッキーってなんのこと?」
「アンジェラのお誕生日会だったと思いますよ。1歳になったとき、領地の掃除を手伝ってくれたみんなに配ったんです。一人1枚。家族単位で配ったので、家族の名前や人数なんかをまとめてどこに住んでいるとかありとあらゆることを聞き出して領民の名簿を作ってあるのです」
「例えば、領地から引越しをする場合や子どもが生まれたとか家人が亡くなったとか、領主の屋敷にきて、手続きをしてくれるよう頼んであります。それで、アンバー領やコーコナ領の領民の人数などを把握しています。あと、引っ越したあとの家は、他に使いたい人がいれば、使ってもいいかとか。帰ってくる気がない人であれば、ある程度まとまった金額を渡して家を買い取り、修繕して、他の領民へ借家制度を取り入れています。空き家になっているものや、壊れた家なども修繕したものについては、領主の持ち物として借家として貸し出しをしていますよ」
「アンバー領にいたのに、全然知らなかった」
「ジョージア様が知らないのも無理はないかと。私たちが始めたことですから、まだ、他の領地も取り入れていませんし、それにとても手間がかかる仕事ではあるのです。その手間を惜しまず、セバスが頑張ってくれたおかげで、今、『住民票』というものが出来ています」
「『住民票』?それが、領民が何人いるのかわかるってことだよね?」
「そうですよ。今は、どれくらいになったのかしら?」
「約2倍の増加となっています。これには、公都から来ている近衛は含まれません」
「だそうですよ!」
「2倍も?確かに、外へ出ると、よく人に会うなって思っていたけど……そんなに」
「ジョージア様、まだ、驚かないでください」
「どうしてだい?セバス」
十分驚いたと言っているジョージアではあるが、セバスには、続きがあるようだった。
「人口は、まだ、増え続けています」
「なんだって?」
「閑散としていたアンバー領ですが、アンナリーゼ様の改革により、農地が豊かになり、酒類や紅茶、麦やいもなどの穀物などの農作物が好調であるので、働きたいと人が増えています。元々アンバー領の領民だった人が戻ってくることはあまりないのですが、他領から来たものたちは、移住をしてまで、働き口があることを喜び、仕事をしています」
「初耳なことばかりだ……これは、父上に話すと喜ぶであろう。父上と俺が領地運営をしていたときは、アンバー領がみるみるうちにさびれて行ったのだから」
「その人たちは、丁寧に働いてくれています。元刺客だと言っている人物も、土を触り、農民に声をかけられ、種をまいたとき、双葉が出たとき、感動したという話を聞きました。それほどまでに、アンバー領は、多種多様な人が集まりつつあります。あと、アンナリーゼ様が目指しているものですが……」
一旦言葉をきったセバス。ここまでの報告だけでも、有意義な気がしてならないが、まだ、あるらしい。
「学都のことね!」
「学都?」
「アンバー領をフレイゼンのような学都にしたいの!国の機関にだけ頼るのではなく、独自に作物の改良であったり、薬の開発であったり、たくさんの人材を育てて、領地をもっと発展させたいと思っているの。公にも識字率の話をされたわ!アンバー領がダントツに高いみたいね!」
「それもそうでしょう?基本的な文字なら、ほとんどの人が読めますからね!」
「これは、俺もビックリしたぞ?アンナ」
「ノクトのいた公爵領はどんなものだったの?うちより広大な領地を持っていたと思うけど」
「領民の識字率は10パーセントあればいい方だ。どこもかしこも。ここでは、大人向けの夜間学校を開いているからか、識字率がすごく高い」
「ノクトの領地でもそんなものなのね」
「どうやって、文字を覚えさせたんだ?俺には思いつかないこと……なのかな?」
ノクトでも出来なかったことがあるようで、私はニィっと笑う。
「文字を覚えさせるのは、意外と簡単なのよ!子どもたちに先に教えるの。子どもたちって勉強を覚えるのが早いでしょ?家に返ったら、学校であった、算数とか国語などの予習復習をするように説明しておいたら、大人も興味を持って見事に食らいついたわけです。子どもが読めるのに自分が読めないんだと、泣きつかれたこともありますよ。それに、子どもたちが出来ていることは、自分たちも覚えなくてはとなるようですよ」
「子どもに負けていられるか!というものか?」
「そういうことです。ジョージア様も子どもたちの前では、かっこいいお父様をしていたいものでしょ?」
「なるほどなぁ……人口も増え、識字率もあがり、勉強する大人も子どもも増えた。あとは、何か企んでいることがあるのか?」
「先程も言いましたが、独自の研究機関が欲しいので、まず、学都を目指します。フレイゼンからきた十人については、すでに講師をしてもらいながら、独自研究も始めています」
「独自研究……」
「はい。品種改良などアンバー領をより発展させてくれるようなものの研究開発ですね。あとは、ヨハンのような医術が使える人材の確保が急務ですね。それと、税収の増額が見込めると話をしたと思いますが」
「あぁ、聞いた。それも何か考えている?」
「『累進課税』というものを考えています。そのために、識字率をあげ、読み書き計算ができるように教育の場を提供したのですから!」
初めて聞く、耳慣れない言葉に、ジョージアたちは、首を傾げるのであった。
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