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領地はどんな具合?

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 私からの報告は終わり、領地に残ったものたちからの報告を聞く。
 まず、この領地で1番大きな事業としている街道整備の話になった。


「アンナリーゼ様は後程、視察に出たいと申していたので、それほど多くは報告しませんが、第一陣で来てくれた近衛がとても頑張ってくれています。主に工作部隊を中心に部隊を組んでいたのですが、石切りの町のピュールたちとうまく連携が取れ始め、どういうふうにしていけば、効率よく作業ができるのかと1週間に1度ではありますが、意見交換会をするようになったのだとか」
「それが功を奏したようですね。アンナ様が知る作業スピードではありませんよ!」
「そうなの?」
「はい。第一陣が頑張ってくれていると言いましたが、第二陣がコーコナ領での作業について話をしたのです。残念なお話も聞かせていただきました。長雨の影響も急激な暑さもあり、現場の作業が遅れたことの無念さを聞き、改善策として、ピュールを始め石切りの町のものたちと第一陣が話し合ったようです。もちろん、第二陣も班を振り分け、意見交換会には参加しています」
「コーコナ領でのことは、本当に助かったの。慣れない作業であったり、雨が本当に多くて作業がしにくかったり、急激に晴れて倒れる人も出るくらいだったの。それでも、間に合わなかった。第二陣の近衛を責めるつもりはないし、コーコナ領の領民に何か思うところがというのがあるわけではないの。守れなかった命は、私の責任だから。それでも、自主的に、話し合う時間を作ってくれたり、安全な作業に向けみなが注意深く考えてくれること、感謝しかないわ!
 今度の視察では、お礼を言いましょう。そして、美味しい差し入れもしましょう」
「それは、工事現場は喜びます。あと南側については、もうすぐ屋敷まで続きますが、北側については、少し工事が遅れているようです」
「うん、慌てず焦らず安全第一で進めてちょうだい!まずは、アンバー領全体の街道整備をしてみて、よければ、公都までの道のりの工事を進めるつもりだから。その前に、コーコナ領になるかもしれないけど」


 現場に顔を出してくれているリリーと報告を受けているセバスが頷いていた。


「アンナよ。その街道整備は、どこまで考えているんだ?」
「今のところ、アンバー領とコーコナ領は絶対と思っているわ!それによって、領地内の物流がもう少し楽になるし、歩きやすさや馬車での移動もガタゴトしている道よりいいでしょ?」
「確かにそうだな。他の利点は、雨水処理か?」
「そう、今回、街道の下に雨水とか下水を処理するため池も作っているんだけど、水たまりを多く残しておくと衛生面からもあまりよくないから、そのあたりも含めて今回の工事は進めているのよ」
「公都までの話があったが、それは?」
「公との約束で、近衛を貸してくれているから、一番奥のアンバー領から公都までの街道整備も頼まれているわ!お金ももちろん、もらうつもり。石切りの町の人たちの労働対価に石畳の整備をするから、その分をね。支払い方法とか、取り決めは、とりあえず、アンバー領が完成してからの話をしていたのだけど……そこの交渉は、セバスに任せるわ!」
「その交渉は、イチアとニコライが適任だと思うよ!」
「理由は?」
「国の文官である僕が出ていくと、予算云々の話をまず最初にされるからね。アンバー領での実績とその金額等の提示をしていくなら、国に関わるものより、アンバー領の代表として話が出来る方がいいと考えた」
「それは……正解ね!セバスにお願いしたい案件ではあるけど、値切られるとこまるから。この事業、私の私財で相当な金額を賄っているから、取り返してほしいのよね」


 大きなため息が隣から聞こえてきた。ジョージアは難しい顔をしている。


「アンナ、どれほどの私財を投入している?」
「学生のころからですから……そうですね……アンバー領20年分の予算と言えばいいですか?」
「……20年だって?」
「はい。街道だけではありませんけどね。いろいろなことにお金は出しています。ない袖は振れませんし、だからと言って放っておくわけにもいかない。それに、20年と言っても、昨年の税収を基本とした場合の話です。今年は、昨年の3倍の税収が見込まれていますし、何より、ハニーアンバー店が好調なので、そちらからの補填もありますから、10年もあれば、回収できるかな?と」
「……アンナ、アンバー領に投資してくれたことは嬉しいけど……そのお金は、どうやって手に入れているの?元々の資産とは言わないよね?」
「お父様が投資であげた利益ですよ。もちろん、それは、私も自身でおもしろいものにどんどんお金を出して、どんどん利益を出しているので、それほど気にする子tではありませんよ!」
「アンナよ?」
「何かしら?ノクト」
「そのお金を元に、どれだけの領民を助けたんだ?」


 どれくらいかしら?とセバスの方をみると苦笑いをする。代わりに答えてくれるようだ。


「僕たちがアンバー領に入ったとき、領地へ割り振られたお金は、領主の屋敷の従業員への給金の他は、殆どなかったんだよ。たぶん、国からの補助金とかもあったかもしれないけど、ダドリー男爵たちに横から全部持っていかれていたからね。アンバー領の中で、最初にお金を使ったのは紅茶の茶葉農園だった、ですよね?」
「えぇ、そうね」
「そのあと、街道を作るために石切りの町で仕事を依頼したり、麦などの作物を作るために畑を肥やす肥料代、種、苗、農機具に至るところまで、アンナリーゼ様のお金だね。そのあと、葡萄農園の再開や葡萄酒の酒造所、『赤い涙』を入れるためのガラス細工や飾り箱、ハニーアンバー店への出資もだし、他にもコーコナ領でも何かとお金は出しています」
「たいした資産家だな?」
「アンナ一人で、どれだけの予算をひねり出しているのか……」
「10年かかっても返さないといけないので、僕たちは領民たちが生活しやすい環境を整え、資金回収できるよう日夜考えて仕事をしています。国より多い予算をうまく活用して新しい事業、新しい産業をアンバー領やコーコナ領で広げています。おかげで、当初考えていた人口増加の目論みも早い段階で達成できそうですし、学校設備を整えてくれたおかげで納税方法の変更が今年中にはめどがつくのではないかと考えています」


 生き生き話すセバスを見ると、いろいろうまくいっているようで嬉しく思う。イチアもセバスと同じように領地運営に関わってくれているので、その全容がわかっている。頷き、不敵な笑みを浮かべているので、私の私財はもしかすると、もう少し早く回収できるのかもしれないと二人の策士を見つめておいた。
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