ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
787 / 1,514

領地に前領主夫妻が来る報告

しおりを挟む
 785. 報告会

「私から最後に……」


 休憩を挟んだあと、私からの最後の報告をする。たぶん、知っていると思うが、情報は共有が大事なので、話すことにした。


「みな知っていると思うんだけど、来週から3週間ほど、前公爵夫妻が領地の視察にこられます。知ってのとおり、ジョージア様の両親なんだけど、この中で、知っている人っているかしら?」
「僕とナタリーは夜会で見かけたことがあるくらいだね?」
「そうですね。お話したことは、ありません」
「あっ、あります!領地には何度も前公爵様が来られていましたから」
「リリーは、そうね。あとは商人たちもかしら?」
「ユービスは御用聞きでしたからね。私とビルは、数えるくらいですね」
「そうですね。公爵家と関わりができたのもアンナリーゼ様の代からですから」


 テクトとビルがそれぞれの商売の側から話をしてくれる。そう思うと、ここで、うま味があったのはユービスだけなのかとぼんやり聞いていた。


「ところで、その公爵様は何をしにくるんだ?」
「それは、俺から。父はアンナを中心に変わっていくアンバー領を見てみたいと常々言っていたんだ。元々、アンナの才覚に惚れ込んでいたのは、父だからね」
「それは、初耳です!」
「アンナはしらをきるかもしれないけど、トワイス国のワイズ伯爵の件の全容を知っているよ?」
「……ワイズ伯爵の件ですか?」
「身に覚えがあるだろ?俺は、父からアンナがローズディアへ来る直前に聞いたけど」
「懐かしいな」
「セバス……そこは、何も言わずに黙っておくべきよ!」
「君たちも知っていたのかい?」
「……あぁ、本当だ」
「あの噂の話のことだな。インゼロ帝国でも有名な話だぞ?小娘にまんまとやられた伯爵って」
「……みんな、話を誇張しすぎですよね?私の力だけではありませんし、そもそも、私は何もしていませんから」
「事の真相、知りたいです!」



 興味を持ったものたちが多いようで、ため息をついた。


「私は本当に何もしていないの。デリアに多額のお金を渡してちょっと商人たちをうまく操ってもらっただけだし……詳しくは聞かないで」
「それって、動機はなんだったのですか?」
「フレイゼン侯爵家のことに関わるから言わないわ!」


 残念という割に、ノクトとイチア当たりは笑っているので知っていることがわかる。

 私、話したこと、あるかしらね?

 ニコリと微笑むだけで、それ以上は何も言わない。


「何にしろ、前公爵が来て、領地の視察をしたいという話だな。アンナが、その案内をするのか?」
「そのつもりだったんだけど、私は、しばらく領地を外れていたから、ジョージア様にお願いしようと思っているのだけど、どうですか?」
「それは構わないけど、いいの?アンナがしたいんじゃ……」
「いいえ、元々、ジョージア様が治めるべき領地ですから、行ってきてください。もぅ、私なしでもどんなふうに改革を進めているのか、どの建物、どの工事、どの人物にどんな意味があるのかは知っていると思うので、大丈夫ですよ!護衛はアデルとリリーでお願いできるかしら?
「お任せください」
「やらせてください!」
「では、ジョージア様のフォローをセバスにお願いしたいのだけど?」
「任せて!ジョージア様がド忘れしたことはこっそり教えるから!」
「馬は、ちゃんと乗れる?」
「その日は、馬車で行きましょう!中でも説明したいですし!アンナリーゼ様が行ってきたこと、知ってもらいたいですからね!」


 張り切る三人に、お願いねと言えば、ちゃんと任されてくれた。


「ナタリーにもお願いがあるんだけど……」
「夫人のフォローですか?」
「うん、私のフォロー!お義母様は、視察には出ないと思うの。子どもたちともとても会いたがっていたから、そのときのフォローを。リアンとエマも一緒にいてくれるけど……」
「任せてください」


 頷くナタリー。リアンとエマと三人体制で私のフォローをしてもらえれば、とても助かる。


「三商人には、美味しい食材の手配をお願いできるかしら?」
「それは、お任せください。アンバー領で食べられる最高のものをお出しします!」
「ニコライは、出来れば、ハニーアンバー店の主力商品を少しだけこちらに持ってきてほしいわ!布地とか、お義母様が好きそうなものをお願いできる?」
「こちらにもありますが、公都から取ってまいります。しばらくは、アンナリーゼ様とのお茶会やお子様たちと触れ合う時間を多くとられると思いますので、頃合いを見計らって!」
「お願いね!」
「そのときは、私も一緒によろしいですか?」
「もちろん!ナタリーが主にドレスは作ってくれているのだもの!お義母様が、始まりの夜会に出席されるという場合、最短でドレスって作れるかしら?」
「そのドレスにもよりますが、間に合わせて見せます!そういえば、アンナリーゼ様のドレスは出来上がっていますよ!今年のは出来がまた一段と大人の女性を意識したものになっていますから、あとでみてください!」


 にこっと笑うナタリーにありがとうと言うと、私の楽しみですから!と微笑んだ。


「ノクトはいつものように、好きなことをしてくれていいわ!土木工事に向かうもよし!砂糖の作付けに向かうもよし!自由にしていて!」
「俺だけ、雑じゃないか?」
「ノクト様は、名を呼ばれるだけましではありませんか?私など、一度も……」
「イチアにもちゃんと、仕事はあるわよ?通常運転という扇の要のような重要な仕事が。誰かが、領地運営を見ている人がいてくれないと……領民から上がってくる情報の処理は早々に必要だから!」
「して、アンナは、夫人の相手だけなのか?」


 にぃっと笑う私。


「もちろん、遊撃隊!いつでもどこでもはせ参じます!人手が必要なら、どこにでも呼んでちょうだい!お義母様のことは、私も気にかけるけど……領地のこと第一に考えます!それで、いいですよね?」
「もちろん!」


 ジョージアの許可が出たところで、領地からの報告へとうつっていくのである。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

処理中です...