上 下
785 / 1,480

さて、お仕事しますか?

しおりを挟む
 子ども部屋にいると、みなが集まってくる。私が帰ってきたことが屋敷中に広まったようで、このままだと、ネイトが泣いてしまいそうだった。


「そろそろ、執務室の方へ移動した方がいいかな?ジョージ、レオ、ごめんね」


 二人の手を離すと、レオはわかってくれるが、ジョージは、そうはいかなかった。


「ママ、嫌!もっと、おてて……」
「うん、そうだよね。ずっと、離れていたんだもんね!大きくなったら、公に嫌がらせするといいよ!どんどんと!アンバー領やコーコナ領に不利益にならず、ガッツリお金を絞り取って……」
「アンナさん?それ、私情だから。子どもたちにそんなこと教えないで。ジョージとネイトは、たぶん大丈夫だけど、若干心配な子がいるから……」


 チラリとアンジェラの方をみるジョージア。その他の大人たちも見ていた。やはり、三人の子どものうち、私と1番性格が似たのは、アンジェラのようである。
『予知夢』でわかっていたけど……たぶん、私より手強くなるはずだ。なにせ、ジョージアの容姿も含まれるのだから……。


「なんだか、私のことを言われているようで心外ですけど……私以上になると思いますよ!」
「へっ?」
「考えてもみてください!ほらほら……ジョージア様の容姿ですよ?もう、それだけで、ただ事ではありませんよね?」
「確かに……旦那様はとても見目麗しく、ドレスを着れば夜の城で映えますよ!」


 みなが頷いているのをみて、ジョージアはため息をついた。


「中身がアンナで?外身が俺?もう、誰も手が付けられないんじゃないか?」
「大丈夫ですよ!私にジョージア様がいるように、あの子にもちゃんといますから。女の子として見て欲しい人が!ねっ?」


 レオの肩に手を置くと、ジョージアがムスッとする。


「嫁には出さないから!」
「どっちかって言うと、婿養子ですよね?筆頭公爵家から嫁に出すのは王族か公族かでしょ?」
「なんで、金髪ばかり……」
「ん?私、銀髪大好きですよ!」


 みなに生暖かい目で見られても、そこは譲らず、ジョージア様を持ち上げておく。


「でも、ヘンリー」
「ハリーは、幼馴染です!ジョージア様と結婚して何年たつと思うんですか?義務で子どもは産みませんよ!ジョージア様との子だから、私たちに愛されるために来てくれたのですからね!」


 いつまで、言うんですか!と少々怒ると、アンジェラが駆けてきて足にまとわりつく。


「ママ、パパをめっしちゃダメ!」
「めっしてないよ!聞き分けのない子に教えてあげているだけよ?」
「本当に?」
「本当に!」


 ニコッと笑って、アンジェラは私から離れて、ネイトとまた遊び始めた。


「子どもは、お二人のことをよく見ていますから」
「本当ね……」
「気を付けないと」
「仲はいいと思うんですけどね……アンナ様の王子様が絡むと……」
「面目ない」
「ジョージア様もいつまでも自信がないとか、言ってられませんよ?お子が大きくなれば、もっと二人の背中を追いかけてきますからね!」
「うかうかしてられないってことだね?ナタリー」
「そういうことです。アンナリーゼ様もですよ!」
「わかりました。それでは、ジョージ……とっても、名残惜しいけど、ママお仕事してくるね!今晩、一緒に眠りましょ!」


 そういうと、握っていた手を離してくれた。寂しかったのだろう。ジョージの行動は、間違ってはいないのだから。


 執務室へ移動すると、ニコライと三商人、リリーとアデルがすでに待っていてくれた。そこに、左隣を空け、それぞれの席に座ってくれる。空席は、ウィルの席だけであった。


「ウィルがいないって、変な感じだね?」
「確かに。アンナリーゼ様とどこに行くのも、常に一緒って感じするもんね」
「そんなにアンナと一緒にいるのかい?」
「まぁ、だいたいは一緒だよね?アンナリーゼ様」


 ジョージアが私の返答をじっとこちらを見て待っていた。


「そうね……何処かへ行くときは、基本的にウィルが側にいてくれかなぁ?意思疎通もしやすいから、今回みたいな公の変な視察とかは、本当に助かるのよ」
「あぁ、そういえば、アンナが動く前に、いろいろと手を打ってる感じはしたな?」
「ノクトでいうところのイチアみたいなものね。近衛のほうをみなが注目しているけど、セバスと談議できるくらいの頭も十分あるし、なんなら領地運営もできるくらい優秀なんだよ。私の側にいてくれるのは、宝の持ち腐れ感はずっとあるんだけど、いてくれないと困るから、手放せないのよね。もちもん、ここにいるみんなそうよ!」


 ニッコリみなに笑いかけると、みなが微笑み返してくれる。


「知らなかった」
「そうでしょうね?学年も違いますし。ウィルは座学も学園では2位とかふざけた順位だったものね……」
「アンナは、何位だったんだ?」
「……ノクト、聞かないで!人間、テストだけがはかれるものではないわ!」
「確かに、アンナリーゼ様は、その範疇にいないですからね?どっちかっていうと、場外!」
「セバス、うまいこというな!」


 執務室は、笑いで満たされている。2年前は、小難しい顔をしながら、どうすればいいのかと必死に考えていたけど、こうやって笑いあうだけの余裕が少し出来たことが嬉しく思えた。


「さて、おしゃべりはここまで!報告から始めましょうか?」


 私が、パンパンと手を叩けば、雑談も終わる。まずは、それぞれの報告会から、始まった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...