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やっと、お声がかかりましてよ!

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 こちらをとディルが手紙を持ってきてくれた。そこには、公の印が押してある。


「やっときた……」
「公からの手紙ですね?」
「そう。中を確認しないとわからないけど、たぶん、領主たちを集めるのでしょうね?」
「アンナリーゼ様、くれぐれもしゃしゃり出るような……」
「わかっているわ!私は、大人しく黙っています」


 そんな話をしながら、手紙の封を切ると、集まる日時が書いてある。案内状とは別に、手紙が入っていた。


「何々?」


『 アンバー公アンナリーゼ

  領主を集めて話し合いをする。そこで、そなたも思う存分話すように。
  なんなら、あの娘……ヒーナを連れてきてもいいぞ?
  必ず、来るように!
                                    』


「これ、行かないと、ダメ?」
「ダメです。嫌でも、行ってきてください」
「だって……ふざけてるんだもの。腹が立つわ!」
「お二人とも、似たり寄ったりかと……」
「私と公が?」
「はい。公もきっと同じように思ってらっしゃることでしょう。あと、アンナリーゼ様には心を許している……そう、見受けられます」
「心は許してないわよ?私」


 それよりもと話を遮られてしまい、それ以上、ディルに愚痴を零せなかった。


「ヒーナはどうされますか?」
「連れて来いって書いてあるけど、私だけで行くわ!ノクトも連れていけないし……ディル、ついてきてくれる?」
「それは、構いませんが、私がついて行ってもよろしいのですか?」
「えぇ、むしろ、私、俄然、頑張るわ!」
「何故です?私は、ただの侍従ですよ?」
「だからよ!一度、主としての采配、見てらっしゃい!」


 ニッコリ笑うと、いつも見ていますよと微笑まれた。


「えっ?どこで?」
「アンナリーゼ様のなさったことは、全て耳に入っています。報告書をとおしてですが。こちらの屋敷を管理されていたときも見事な采配をなさっていましたから、私の信頼は少しも揺るぎません。アンバー公爵家のため、アンバー領やコーコナ領のため、領民のために、どれほど努力され尽くしているのかは、アンナリーゼ様自ら語らずとも、みなが私に報告をくれるのです。お側に侍ることは少ないですが、いただいたアメジストにかけて、アンナリーゼ様のことは、ずっと見守っています」


 ディルの言葉に驚き、見つめ返すと、長年私に仕えてきてくれた従者のようで、胸が熱くなった。


「アンバー公爵家に来て、1番手に入れてよかったものは、ジョージア様と子どもたちなんだけど、2番目によかったものはディル、あなたよ。どんなときも、支えてくれて、ありがとう。これからも、屋敷を離れている時間が多いと思うけど……」
「みなまで言わずとも、わかっています。留守を守るのは、アンバー公爵家筆頭執事の誇りでもあります。当主である旦那様とアンナリーゼ様、お子様たちがいつでも帰ってきたいと思ってもらえるような屋敷にしたいですね。アンナリーゼ様を始め、アンジェラ様もネイト様もあちらの方が好きなようですからね……少し寂しいです」
「今年は、社交の季節、ずっと公都の屋敷にいるわ!子供たちともども、よろしくお願いね?」


 かしこまりましたと笑いあい、公からの招待状に目を向ける。ドレスなどは全て用意されている。当日、行けばいいだけとなっているので、南での報告を纏めたものや、追加でヨハンたちから送られてくる手紙などに目をとおしていく。
 目に見えて激減したわけではないらしいが、少しずつ患者は減っていっていると書いてある手紙を見ればホッとした。子のため、自身も熱があるのに長蛇の列に並んでいた母親など、少なくなっていたらいいなと思う。


「さて、私は、私の仕事をしましょう!」


 1週間後、公からの招待で、大領地の領主として、席に座る。
 約束どおり、ディルがエスコート役でついてきてくれた。その珍しい取り合わせに、公は少し不思議そうにこちらを見ていた。


「……アンナリーゼ、よく来てくれた!」
「来たくなくても、後ろ盾なんで、こないと示しがつかないじゃないですか?」
「まぁ、そう言うな……」
「今日は、どれだけの領主に声をかけたのですか?」
「一応、全領主に手紙を送ってある。来る来ないは、任せるとかいてあるので、どれだけのものが現れるか……」
「強制参加は、私だけですかね?」
「しかし、アンバー公爵が来るのかという問い合わせがとても多かった。どういうことだ?」
「私、今日は答えませんからね?全て、公が領主たちの質問に答えてください」
「……それは、困る!」
「困りません!そのための時間だったんじゃないですか?私を頼りにするのは間違っています!」
「……わかってはいるんだ。わかってわ!」
「じゃあ、それを今日、実行しましょう。見守ってますから、頑張ってください!」


 ニッコリ笑いかけると、そろそろ貴族たちが集まってきたと連絡が入る。公は、一旦部屋から出て、準備をするらしい。
 始めっからいればいいのにと愚痴を零し、部屋を出る公を見送り私は席についた。

 部屋にとおされた領主たちは、すでに座っている私を見て慌てて挨拶に来た。


「アンナリーゼ様、お久しぶりでございます」


 たくさん挨拶を受けた中、サーラー子爵が挨拶に来てくれた。


「子爵、久しぶりね!夫人はお元気?」
「おかげさまで、この度は誠に助かりました。我が領では、アンナリーゼ様のお心遣いのおかげで領地で病になることもなく、領民共々元気に過ごせています」
「それは、よかったわ!」
「それで、こんなことを聞くのは申し訳ないのですが……」
「ん?ウィルのこと?ウィルなら……」
「愚息のことは、いいのです。その、ミアは元気でしょうか?」
「ごめんなさいね。ミアはアンバー領にいるから、しばらく会ってないの。ウィルとなら少し前まで一緒に南の領地へ、公の指示のもと向かっていたのだけど……」
「そうだったのですか?それで?」
「子爵も口では愚息と言っても、ウィルのことを心配してくれる優しい父親で嬉しいわ!ウィルは、今、最南端に行ってるの」
「……最南端。たしか、南はとても罹患者が多いと聞いていますが」
「えぇ、この国で1番多いと思うわ。でも、ウィルはわけあって、罹らないから大丈夫よ!私の主治医の護衛をしてくれているの!」


 サーラー子爵と話をしていると、それぞれの席に領主たちは席に座っていく。私と面識ある領主たちは手を振ってくれる。
 すると、もったいぶったように公が奥の扉から入ってくるのであった。
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