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ジニー
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ジニーが笑ったので、今まで話をしていた公がそちらへ視線を向けている。どうみても……可愛いなとか思っている目だ。
「どうかしたのか?」
「発言しても、よろしいですか?」
私の方を見てジニーが尋ねてくるので頷いた。それに、それを聞くなら、どう考えても公に聞くのが一般的ではある。私に聞いたと言うのは、外面な上下関係ではなく、何かしら見抜いているのだろう。
取り繕いもせず、話をしているのを聞いていれば、わかることだ。
「……何故、アンナリーゼに聞くのだ?」
「私は、アンナリーゼ様の連れですので……ご容赦ください」
「まぁいい。それで、そなたが、ジニーだな」
「はい、公。私の名はジニー。ただのジニーでございます」
ニコッと笑いかけるその仕草は……あざとい。コホンと咳ばらいをすると、だらしないその顔を公は引き締めることになった。
「アンナリーゼが申すに、そなた、生物兵器だと……」
「はい、そうです。私も兄も両親の実験により、そのように」
「それは、なんというか……」
「どうしてそのようなお顔をされるのですか?私はそのようにしか、生きられません。別の道を見つけ、アンナリーゼ様に仕えている兄が妬ましいくらいです」
そのアメジストのような瞳を私の方へ向けてくる。この瞳の色は珍しいのだが、よく見れば見るほど、綺麗な宝石のようであった。
「自身の瞳でも見つめているようね。その瞳、とても綺麗だわ!」
「そういえば……紫の瞳は、珍しいな。こうして二人並ぶと、姉妹のようだ」
「元々、私の血筋はこの国にあると思いますよ」
「それは、どうして?」
「おばあさまが、こちらの出身ですから……何処かで、ヨハンやジニーとは血の交わりがあるのかもしれないと、ずっと考えていました」
「ヨハンも?報告ではそのような容姿ではなかったと思うが……」
「普段は、隠しているのですよ。珍しいものを人は好みますからね。ジニーもだからこそ、この国へ流れてきた」
「そんなものを運ぶような……」
「いえ、公。アンナリーゼ様の言葉は、正しいのです」
「本当に、人身売買の末だといいたいのか?この国では、禁止されていると……」
「思っているのは、公だけです。裏で取引されていると言ったではありませんか。南はインゼロ帝国との関わりも根深い。門兵も、たぶん……」
「グルなのか!この国は、腐っている!」
「公が、それを言っちゃおしまいです」
「その資金はどこに向かているのか、知っているのだろ?」
私を睨むが、答えないでおく。今回のことは、後に起こる戦争の布石になるやもしれないが、脈々とゴールド公爵家が斡旋していることを1代限りの公爵である私が介入できることではない。それは、国が動くべき案件だ。
ただ、国が動けば、転覆させるくらいの力は、ゴールド公爵とて持っているだろう。
抗えるものがない今、どうしても、目を瞑らざるえない。
「口を割らぬか。その時点で、誰が黒幕なのかはわかったが、口を割らぬ理由もわかる。これは、アンナリーゼにどうにかできることではないということなんだろ?」
そんなカマかけてきても、言いませんからね?
ニッコリ笑って躱していく。国の中の出来事に巻き込まれるのは、少々面倒なのだ。守るべきものがいるからこそ、なるべく、大人しく領地改革をしていたい。なのに、そこを察してくれない公に思うところはたくさんある。
「それで、今回、どのように……」
「赤い実です。この国でも薬として使われますが、ヨハンやジニーが使うと、それがきっかけで病を発症する。ただ、本人たちは、うちに飼っているようなものなので、発症したところでなんともないらしいけど、免疫のない人が接触すると……」
「うつるのか……」
「ナルド子爵の容態をみましたけど……かなりの重体でしたよ!」
「聞いてもいいか?」
「なんです?」
「そなたは、平気なのか?」
「あれ?言いませんでしたっけ?私、すでに罹っているのですよ?だから、うつりません。基本的には、子どもが罹患するものですけど、何かしら手を加えているのでしょ?大人にも罹患したということは。いちはやく、ヨハンが対処してくれてましたから、なんとかなっていますけどね。そこらへんは、私、詳しくないので、聞いていません!」
「そういえば、コーコナ領が1番早く罹患したと連絡があったが……」
「そうでは、ありません。私が買われた先は、最西の領地でした。そこから少しずつ広げていった。ローズディア公国にはない病ですから、静かに広げていくことが私の役目です。手っ取り早くうつす方法として、娼婦をしたに過ぎませんから!」
ニコッと笑うジニーは悪意もなく、無邪気にいたずらを告白するような子どものようで、怖く感じた。
「なぜ、南に多くの罹患者が……?」
「より多くの人が集まるからでしょう」
「取引が盛んな場所だからか……?それにしても、ジニーもそこにいたのだろ?」
「私は、ヒーナさんを迎えに行ったまでです。その間も……」
「もういい!わかった」
「内側から蝕むように病で崩しにかかるとは……インゼロ帝国はまだ、内政が落ち着いていないのではなくて?」
「それは、私の預かり知らぬところです。ヒーナさんのほうが詳しいと思いますよ?」
おっとりと話すジニーに何だか頭痛を覚える。目の前の公も宰相も同じようで、こめかみをグリグリとしている。
「それで、次の話だ。ジニーを今後どうするつもりだ?」
「公はどうしますか?」
「できることなら、アンナリーゼに預けたいと……ここに置いておくこともできぬ」
「何故?」
「何故って……」
「気に入ったからとか?」
信じられないという目で見ると同じ目で宰相もエリックも公を見ていた。
「元々、好みなんだ!仕方ないだろ?」
「いつになったら、おちつくのか」
「そうはいうが、アンナリーゼ」
「なんですか?」
「そなたが、妃になっていれば、なんの面倒ごともなかったんだからな!」
「嫌ですよ!もう、この話は終わった話です。それで、ジニーは私に預けるってことでよかったですか?」
ぶつくさと言っている公を無視し睨むと、あぁと返事がくる。
「任せる」
「では、ヨハンに預けます。丸投げしてくると思っていたので、ちょうどいいですね!」
そなたも丸投げではないかと文句をいう公に、本人からの申し出があったとだけ告げる。あとは、ヨハンがいいようにしてくれるだろう。お任せである。
「どうかしたのか?」
「発言しても、よろしいですか?」
私の方を見てジニーが尋ねてくるので頷いた。それに、それを聞くなら、どう考えても公に聞くのが一般的ではある。私に聞いたと言うのは、外面な上下関係ではなく、何かしら見抜いているのだろう。
取り繕いもせず、話をしているのを聞いていれば、わかることだ。
「……何故、アンナリーゼに聞くのだ?」
「私は、アンナリーゼ様の連れですので……ご容赦ください」
「まぁいい。それで、そなたが、ジニーだな」
「はい、公。私の名はジニー。ただのジニーでございます」
ニコッと笑いかけるその仕草は……あざとい。コホンと咳ばらいをすると、だらしないその顔を公は引き締めることになった。
「アンナリーゼが申すに、そなた、生物兵器だと……」
「はい、そうです。私も兄も両親の実験により、そのように」
「それは、なんというか……」
「どうしてそのようなお顔をされるのですか?私はそのようにしか、生きられません。別の道を見つけ、アンナリーゼ様に仕えている兄が妬ましいくらいです」
そのアメジストのような瞳を私の方へ向けてくる。この瞳の色は珍しいのだが、よく見れば見るほど、綺麗な宝石のようであった。
「自身の瞳でも見つめているようね。その瞳、とても綺麗だわ!」
「そういえば……紫の瞳は、珍しいな。こうして二人並ぶと、姉妹のようだ」
「元々、私の血筋はこの国にあると思いますよ」
「それは、どうして?」
「おばあさまが、こちらの出身ですから……何処かで、ヨハンやジニーとは血の交わりがあるのかもしれないと、ずっと考えていました」
「ヨハンも?報告ではそのような容姿ではなかったと思うが……」
「普段は、隠しているのですよ。珍しいものを人は好みますからね。ジニーもだからこそ、この国へ流れてきた」
「そんなものを運ぶような……」
「いえ、公。アンナリーゼ様の言葉は、正しいのです」
「本当に、人身売買の末だといいたいのか?この国では、禁止されていると……」
「思っているのは、公だけです。裏で取引されていると言ったではありませんか。南はインゼロ帝国との関わりも根深い。門兵も、たぶん……」
「グルなのか!この国は、腐っている!」
「公が、それを言っちゃおしまいです」
「その資金はどこに向かているのか、知っているのだろ?」
私を睨むが、答えないでおく。今回のことは、後に起こる戦争の布石になるやもしれないが、脈々とゴールド公爵家が斡旋していることを1代限りの公爵である私が介入できることではない。それは、国が動くべき案件だ。
ただ、国が動けば、転覆させるくらいの力は、ゴールド公爵とて持っているだろう。
抗えるものがない今、どうしても、目を瞑らざるえない。
「口を割らぬか。その時点で、誰が黒幕なのかはわかったが、口を割らぬ理由もわかる。これは、アンナリーゼにどうにかできることではないということなんだろ?」
そんなカマかけてきても、言いませんからね?
ニッコリ笑って躱していく。国の中の出来事に巻き込まれるのは、少々面倒なのだ。守るべきものがいるからこそ、なるべく、大人しく領地改革をしていたい。なのに、そこを察してくれない公に思うところはたくさんある。
「それで、今回、どのように……」
「赤い実です。この国でも薬として使われますが、ヨハンやジニーが使うと、それがきっかけで病を発症する。ただ、本人たちは、うちに飼っているようなものなので、発症したところでなんともないらしいけど、免疫のない人が接触すると……」
「うつるのか……」
「ナルド子爵の容態をみましたけど……かなりの重体でしたよ!」
「聞いてもいいか?」
「なんです?」
「そなたは、平気なのか?」
「あれ?言いませんでしたっけ?私、すでに罹っているのですよ?だから、うつりません。基本的には、子どもが罹患するものですけど、何かしら手を加えているのでしょ?大人にも罹患したということは。いちはやく、ヨハンが対処してくれてましたから、なんとかなっていますけどね。そこらへんは、私、詳しくないので、聞いていません!」
「そういえば、コーコナ領が1番早く罹患したと連絡があったが……」
「そうでは、ありません。私が買われた先は、最西の領地でした。そこから少しずつ広げていった。ローズディア公国にはない病ですから、静かに広げていくことが私の役目です。手っ取り早くうつす方法として、娼婦をしたに過ぎませんから!」
ニコッと笑うジニーは悪意もなく、無邪気にいたずらを告白するような子どものようで、怖く感じた。
「なぜ、南に多くの罹患者が……?」
「より多くの人が集まるからでしょう」
「取引が盛んな場所だからか……?それにしても、ジニーもそこにいたのだろ?」
「私は、ヒーナさんを迎えに行ったまでです。その間も……」
「もういい!わかった」
「内側から蝕むように病で崩しにかかるとは……インゼロ帝国はまだ、内政が落ち着いていないのではなくて?」
「それは、私の預かり知らぬところです。ヒーナさんのほうが詳しいと思いますよ?」
おっとりと話すジニーに何だか頭痛を覚える。目の前の公も宰相も同じようで、こめかみをグリグリとしている。
「それで、次の話だ。ジニーを今後どうするつもりだ?」
「公はどうしますか?」
「できることなら、アンナリーゼに預けたいと……ここに置いておくこともできぬ」
「何故?」
「何故って……」
「気に入ったからとか?」
信じられないという目で見ると同じ目で宰相もエリックも公を見ていた。
「元々、好みなんだ!仕方ないだろ?」
「いつになったら、おちつくのか」
「そうはいうが、アンナリーゼ」
「なんですか?」
「そなたが、妃になっていれば、なんの面倒ごともなかったんだからな!」
「嫌ですよ!もう、この話は終わった話です。それで、ジニーは私に預けるってことでよかったですか?」
ぶつくさと言っている公を無視し睨むと、あぁと返事がくる。
「任せる」
「では、ヨハンに預けます。丸投げしてくると思っていたので、ちょうどいいですね!」
そなたも丸投げではないかと文句をいう公に、本人からの申し出があったとだけ告げる。あとは、ヨハンがいいようにしてくれるだろう。お任せである。
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