756 / 1,480
いざ、ジニー探しのたび!Ⅴ
しおりを挟む
翌朝はとてもいい天気だった。遅くまで手紙を書いていたので、朝日が目に染みるようで、目を瞬かせる。
「おはよう、ノクト」
「おはよう。ちょっとばかり、早いが西へ向かうか?」
「えぇ、ただでさえ、遅れているのですもの。すぐに向かいましょう。それにしても、ジニーと一緒に昨日のお嬢さんと繋がりがある組織が動いていたら嫌ね?」
「まぁ、確かに。そこで一網打尽にしてしまう手もあるが……人数がわからんしな」
「かなり、強いわよ?ノクトはともかく……キースは、ついてこれないわね?」
「アンナに傷でもついてみろ?旦那が、黙っちゃいないだろ?」
そうかしら?とすっとぼけると、借りていた部屋を出た。簡易の朝食を用意してくれていたようで、私たちはそれを口にほりこみ、馬房へと向かう。
「レナンテ、お疲れ様。もうひと働きしてもらうからね!」
レナンテの鼻先を撫でると、甘えたようにすり寄ってきた。思わず頬擦りしそうになっていたところへ、キースと見知らぬ少年が一緒にやってくる。
「アンナリーゼ様、おはようございます」
「おはよう、キース。ところで、その子は?」
「昨日のお嬢ちゃんだよ。髪を切って、服装を変えた。だからと言って、中身が変わったわけではないが……とりあえず、暴れたら、俺の名の元に処刑すると言ったら大人しくなった」
「ん?」
「皇帝直属の部隊にいたヤツが、お嬢ちゃんの上司だったらしくってな……皇族には、歯向かわないっていうルールがお嬢ちゃんがいた班にはあるんだってさ。お嬢ちゃんの上司がそうってだけで、他は違うらしいから、みんなに有効な手段ではないとだけ、アンナも覚えておいてくれ」
ノクトに頷き、名前を聞く。ヒーナと答えた声は、まだ、少女の声である。
「ヒーナ、私、一応抹殺対象となっているけど、行動をともにしてもいいのかしら?」
「いい。将軍の上司。将軍、皇族。手をかけてはいけない。その上司は、大切」
ノクトのほうをチラと見ると、頷いているので、ヒーナの本当の上司に出会わなければ、裏切らない……のかもしれないと考えた。
「一応、自害用の毒は没収してある。訓練されているから、自死をするための毒は特殊なものだし、刃物なんかもとりあえず、取り上げてある。体一つで対象者を死に至らしめることは可能だが、アンナは、ヒーナくらいなら対応できるだろ?」
「そうね。キースは、どうかしら?」
「……」
ちらりちらりとヒーナを見て困った顔をしている。と、いうことは……難しいということだろう。
「ヒーナは、ノクトとの行動を基本とする。組織が接触してきた場合、ノクトに教えてあげてくれる?」
じっと見上げてくる少女は、どうしてそんなことをいうのかわからないというふうだ。特化型の人材なのか、命令の種類があまり多くないのかもしれない。言葉も拙いところがあるので、悩ましい。
今のところ、ノクトには歯向かわないということなので、ノクトの命令下においておくのがいいだろう。正直なところ、ヒーナがノクトに組織の話を言っても言わなくても体制に影響はないので、曖昧に笑っておくだけにした。
まずは、ジニーの身柄の確保が第一だ。ノクトを待ったため、遅れているので、急がないといけない。
「助手から、連絡は会ったんですか?」
「今のところはないわ!向こうで合流したとき、話してくれるとは思うけど」
「助手の手腕は大丈夫なのか?」
「ヨハン折り紙付きだけど……それだけじゃ、不安かしら?」
「ヨハンが言うなら、大丈夫だろう」
「どうして?」
「貴人返事の類ではあるが、人を見る目は確かだからな。力量の見誤りもないだろう」
私が頷くと、誰かにつけられている感覚がした。キースが振り返ろうとしたので、用事もないのに名を呼んだ。
「何でしょうか?」
「……えっと、その……」
言葉に詰まりながら、考える。それでも、後ろが気になるキースに話題が出てこなく、困っているとヒーナが見えた。
「キース、ヒーナの髪はどうやったの?」
「ヒーナのですか?手持ちのナイフで、削ぐように切って行きました。女の子なので、少しでも長い方がいいのかな?と聞いてみたら、短いほうが、動きやすくていいということだったので、短くしてあります」
ノクトの前にちょこんと座っているヒーナの髪を触る。ナイフで切ったという割に、とても丁寧で、肌触りもよく切られていた。
「キースが切ったのでしょ?」
「えっ、あっ、はい。どうですか?」
「とても上手に整えられているなって思って」
「我が家は、ゴールド公爵家の傘下ではありますが、貧乏でしたからね。これくらいのこと」
「そう。こういう特技があるって、羨ましいわ!」
「何をおっしゃいます!アンナリーゼ様は、何もかもをお持ちでしょ?」
そうだといいけどね!と言いながら、ノクトに近寄って行き、話しかける。
「人数は、それほど多くはないが……」
「どこまでの手練れを連れてきているかにもよるわね!」
目配せをしていると、私が行きます!と名乗りをあげてくれるのは、ヒーナだ。小さくても、その道の人間なんだと思うと、背筋がゾッと寒くなったのである。
「おはよう、ノクト」
「おはよう。ちょっとばかり、早いが西へ向かうか?」
「えぇ、ただでさえ、遅れているのですもの。すぐに向かいましょう。それにしても、ジニーと一緒に昨日のお嬢さんと繋がりがある組織が動いていたら嫌ね?」
「まぁ、確かに。そこで一網打尽にしてしまう手もあるが……人数がわからんしな」
「かなり、強いわよ?ノクトはともかく……キースは、ついてこれないわね?」
「アンナに傷でもついてみろ?旦那が、黙っちゃいないだろ?」
そうかしら?とすっとぼけると、借りていた部屋を出た。簡易の朝食を用意してくれていたようで、私たちはそれを口にほりこみ、馬房へと向かう。
「レナンテ、お疲れ様。もうひと働きしてもらうからね!」
レナンテの鼻先を撫でると、甘えたようにすり寄ってきた。思わず頬擦りしそうになっていたところへ、キースと見知らぬ少年が一緒にやってくる。
「アンナリーゼ様、おはようございます」
「おはよう、キース。ところで、その子は?」
「昨日のお嬢ちゃんだよ。髪を切って、服装を変えた。だからと言って、中身が変わったわけではないが……とりあえず、暴れたら、俺の名の元に処刑すると言ったら大人しくなった」
「ん?」
「皇帝直属の部隊にいたヤツが、お嬢ちゃんの上司だったらしくってな……皇族には、歯向かわないっていうルールがお嬢ちゃんがいた班にはあるんだってさ。お嬢ちゃんの上司がそうってだけで、他は違うらしいから、みんなに有効な手段ではないとだけ、アンナも覚えておいてくれ」
ノクトに頷き、名前を聞く。ヒーナと答えた声は、まだ、少女の声である。
「ヒーナ、私、一応抹殺対象となっているけど、行動をともにしてもいいのかしら?」
「いい。将軍の上司。将軍、皇族。手をかけてはいけない。その上司は、大切」
ノクトのほうをチラと見ると、頷いているので、ヒーナの本当の上司に出会わなければ、裏切らない……のかもしれないと考えた。
「一応、自害用の毒は没収してある。訓練されているから、自死をするための毒は特殊なものだし、刃物なんかもとりあえず、取り上げてある。体一つで対象者を死に至らしめることは可能だが、アンナは、ヒーナくらいなら対応できるだろ?」
「そうね。キースは、どうかしら?」
「……」
ちらりちらりとヒーナを見て困った顔をしている。と、いうことは……難しいということだろう。
「ヒーナは、ノクトとの行動を基本とする。組織が接触してきた場合、ノクトに教えてあげてくれる?」
じっと見上げてくる少女は、どうしてそんなことをいうのかわからないというふうだ。特化型の人材なのか、命令の種類があまり多くないのかもしれない。言葉も拙いところがあるので、悩ましい。
今のところ、ノクトには歯向かわないということなので、ノクトの命令下においておくのがいいだろう。正直なところ、ヒーナがノクトに組織の話を言っても言わなくても体制に影響はないので、曖昧に笑っておくだけにした。
まずは、ジニーの身柄の確保が第一だ。ノクトを待ったため、遅れているので、急がないといけない。
「助手から、連絡は会ったんですか?」
「今のところはないわ!向こうで合流したとき、話してくれるとは思うけど」
「助手の手腕は大丈夫なのか?」
「ヨハン折り紙付きだけど……それだけじゃ、不安かしら?」
「ヨハンが言うなら、大丈夫だろう」
「どうして?」
「貴人返事の類ではあるが、人を見る目は確かだからな。力量の見誤りもないだろう」
私が頷くと、誰かにつけられている感覚がした。キースが振り返ろうとしたので、用事もないのに名を呼んだ。
「何でしょうか?」
「……えっと、その……」
言葉に詰まりながら、考える。それでも、後ろが気になるキースに話題が出てこなく、困っているとヒーナが見えた。
「キース、ヒーナの髪はどうやったの?」
「ヒーナのですか?手持ちのナイフで、削ぐように切って行きました。女の子なので、少しでも長い方がいいのかな?と聞いてみたら、短いほうが、動きやすくていいということだったので、短くしてあります」
ノクトの前にちょこんと座っているヒーナの髪を触る。ナイフで切ったという割に、とても丁寧で、肌触りもよく切られていた。
「キースが切ったのでしょ?」
「えっ、あっ、はい。どうですか?」
「とても上手に整えられているなって思って」
「我が家は、ゴールド公爵家の傘下ではありますが、貧乏でしたからね。これくらいのこと」
「そう。こういう特技があるって、羨ましいわ!」
「何をおっしゃいます!アンナリーゼ様は、何もかもをお持ちでしょ?」
そうだといいけどね!と言いながら、ノクトに近寄って行き、話しかける。
「人数は、それほど多くはないが……」
「どこまでの手練れを連れてきているかにもよるわね!」
目配せをしていると、私が行きます!と名乗りをあげてくれるのは、ヒーナだ。小さくても、その道の人間なんだと思うと、背筋がゾッと寒くなったのである。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる