ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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いざ、ジニー探しのたび!寄り道ごぅごぅ!Ⅱ

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 ガチャっと中へ開く扉を押して入ると、そこには、一人の大柄な男性が、机にもたれかかるように座っていた。
 俯いたまま、誰だ?と低い声を出す。


「アンナリーゼと申します」


 私の声を聞き、ちろりと視線だけで確認する。


「あぁ、嬢ちゃん、貴族か?」
「えぇ、そうですけど……あなたが、ここのお頭かしら?」
「あぁ、そうだ。この首を取りに来たのか?」
「そうね……そうするつもりだったけど……あなたも罹患しているのね?」


 近づこうとしたとき、のそっと立ち上がる。


「ふぅ……高熱なんて、ガキのころしか出たことがねぇから、堪えるわ!」


 手元に置いてあった剣の柄を握った。


「お嬢ちゃん、剣を見てもおどろかねぇし、悲鳴もあげないなんて……本当に貴族か?」
「えぇ、一応、公爵位を拝命しているわ!」
「公爵だって!冗談!」
「冗談じゃないわよ!本当の本当。それに、私、鍛えてるから……負けないよ?」


 チラッと剣を見せると、フッと笑う。視線の先は柄のようで、それを見て嬉しそうに笑ったかと思いきや、勢いよく机の上から飛び出してくる。私は、重い一撃を受けるより避ける方を選択し、視線を残したまま剣を抜く。


「よく使いこまれている剣だなぁ……さっきの言葉はうそじゃねぇ……いいなぁ、そういうのと戦ってみたかった!」
「そう?それなら、元気なあなたとやり合ってみたかったけど!」
「よくいうよ!嬢ちゃん。さっきのは、本気の一撃だったのに、ひらっと逃げて……くそっ、悔しいな!」
「それより、あの、領主の屋敷の有様は、どうなっているの?」
「領主の?盗みには入ったが……他に何かあったか?」
「結構な人数がきり殺されていたわ!領主もね!」
「あぁ、あれな。俺らが入る前にあぁなっていたぞ?だから、易々と入れたんだが……」
「!!」
「俺らを疑ったか?他にいんぜ!元々、今の領主の後ろには黒い組織がついてたって話だからな」
「あなたたちは、どうして、あれほどの病人を抱えていたの?」
「抱えてっていっても、五十人ほどだ。街でいく場所もなく困っていたやつらを引き寄せただけだが……おしゃべりは、そろそろ終わりにしようぜ!」


 再度切りかかって来たが、いなして蹴り飛ばした。壁にぶつかりぐふっっと息を吐ききった。


「大丈夫?」
「……あぁ、大丈夫といいたいところだが……目が回る」
「無理をするから……下におりてらっしゃい。人手が足りないから、ここまで診に来れるものがいないのよ!」
「……俺らみたいなあらくれものを診るってか?お貴族様はめでたいな」
「めでたいわよ!すっごいいいもの拾った気持ちだし、病気を治していく場所がないのなら、アンバー領へいらっしゃい!ここからは、遠いけど……衣食住くらいは、整えられるよう仕事も斡旋するから!」
「……まぁ、考えておく。それより、みな、助かるか?」
「私は医者じゃないからわからないわ!でも、みなを助けたいのなら……下山することをお薦めするかな?ここの人を助けるにも薬は必要でしょ?その薬は、街の広場にある。ごった返しているけど……手伝ってくれるなら、ありがたいし」
「薬にも診てもらうにも金がいるだろ?俺たちは食うや食わずなんだ。そんな金は……」


 ニコッと笑う。


「今回のは、お金を取っていないの!元々、みながおさめてくれている税をあてて、薬や治療をしているから。だから、治る命を見捨てないでちょうだい!今来ている人たちと協力して、みなを助けましょう!」


 手を出すと、その手をしっかり握る。大男らしいその大きな手を引っ張って立たせた。


「ノクトより、大きいかしら?」


 大男を見上げながら呟くと、そんな大きな奴がいるのか?と人懐っこく笑う。


「いるわよ!私の部下なのよ!下にいけば、明日の朝には会えるかもしれないわね!」
「そうか……」


 じゃあ、いきましょう!と扉を開けると、こちらを一斉に見てくるみな。入口のところでウロウロとしているキースを見て、思わず笑ってしまう。
 立ち入り禁止を言い渡したので、きっちり、守ってくれているようだった。


 ◆・◆・◆


 根城の外までいくと、A、B、Cの代表を呼び寄せる。二百人程度いる兵に説明をして、救援するむねを伝えた。
 すると、反対はおろか、みなが急にテキパキと動き始める。殺すより、助けるほうが、集まったみなはいいようだ。
 おかげで、昼前には、患者たち、みなを街の広場へと下ろされた。


「領主様より、アンナリーゼ様の命に従うよう申し使っております。何なりと、お申し付けください」
「そう……まだ、帰らなくてもいいの?」
「はい。そのように」
「では、この街の警護を交互にしてちょうだい。あと、圧倒的に診れる人が少ないの!そちらを優先的に手伝ってくれないかしら?」
「かしこまりました。アンナリーゼ様は、また、どちらかに向かわれるのですか?」
「明日の朝、西へ発つつもりよ!それまでは、私もここを手伝うから!あと、女性たちも罹患しているでしょ?疲労もあるだろうから、休ませてあげて!」
「そのようにいたします。あと、一つ」
「何?」
「こちらを伺っているものの中から、一人、ここの賊とは違う人物を捕まえてあります。いかがなさいますか?」
「キース!」
「はい、なんでしょうか?」
「おもしろい珍獣が網にかかったみたいなの!見に行くから、一緒にきて!」
「わかりました。どこにいるのですか?」
「こちらに……」


 私たちが急いで向かうと、ちょうど見張りの兵士を切り付け逃げるところだった。
 腰からナイフを取り出し、走り去ろうとしる人物にナイフを投げた。

 命中!

 見ていたキースとAの代表者は、驚いていたが、あたった本人は、逃げることに必死で足に刺さったナイフを抜き、また、走り出す。


「キース!」
「はい、ただいま!」


 キースが走って逃げる相手を追いかけようとしたとき、その人物は急に倒れこんだ。


「キース、猿ぐつわをして!」
「はいっ!」


 私の指示に追いついたあとテキパキと応えるキースがその人物を引きずりながら近づいてきた。


「痺れ薬が塗ってあったの」


 ハンカチを出し、足を縛る。白いハンカチはみるみるうちに血を吸い真っ赤になった。


「深くはないけど、手当てはしましょう。死なれては、困るわ!」


 少女を見ながら、私はどこの子かしら?と考えていた。幸い、逃げ出したときに傷つけた兵士たちに命の別状もなく、かすり傷ですんだことに安堵しながら、私にあてがわれた部屋へと捕まえた少女を連れ帰るのであった。
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