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薬の違い
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「リアンが様子を見に来てくれました。何か足らないものはありますか?と聞いてますが……、何かありますか?」
「それなら、リンゴがあれば、擦ってきて欲しいと伝えて。あとは……」
「水と解熱剤ですね!」
わかりましたとライズは、扉の前まで行き、コンコンとノックする。リアンに、扉の前まで来た合図を出しているようだった。そのあとに、こちらから、欲しいものを伝えていた。聞き取れなかったが、ちゃっかり、自分のために何か頼んでいるのは、さすがだと思う。頼み終わったようで、席に戻りだらっとしていた。
「あぁやって見ると、ライズもどこにでもいそうな青年よね?」
「中身が伴っていないのが、残念です」
「その言葉は、私も耳に痛いわ……」
「あの……」
後ろから話しかけられたので、振り返ると困った顔をしたアデルが、見上げてきた。
どうしたの?と問いかけると、さらに眉尻を下げて、困った顔をする。
「……今、どういう状況なのでしょうか?」
「見ての通り、アデルが病人。私とイチアとライズがあなたをここに運んだ人間」
「……どうして、侍女やメイド、同僚ではなく、お三方がこの部屋にいるのでしょう?」
頭の回らないアデルに経緯を説明していく。ただ、また、熱が上がってきているのだろう。顔が赤くなっていく。
「アデル、話は後にしましょう。少し休みなさい。また、熱が上がってきているのではなくて?」
「……すみません。さっきから、ぼぅっとしてます」
「うん、私たちは、ここにいるから、眠ってちょうだい。解熱剤が来たら、起こすから、それまで、少しでも休んで」
アデルを寝かせ、おでこに絞ったタオルを置く。赤かった顔が少しだけ、色味を薄め、楽になった……そんな表情になる。
「熱がかなり高いので辛いでしょうね」
「そうね。子どもも熱はよく出すけど、大人になってからでも、同じよね」
私たちは、話声で起こすと悪いと思い、アデルの隣から移動する。
ライズが、ダレている机の方から、アデルを見ながら、イチアと話す。
「イチアは、この病はいくつのときに罹ったの?」
「小さかったので、全く覚えていないのですけど、両親に聞いたところによると、生死の境目を彷徨っていたそうです。今のアデルのようにかなりの高熱が出てたようで」
「そっか。イチアが、元気にこうして私の前にいてくれて嬉しいわ!ライズはどう?」
「いつだったか覚えてないです」
そっけなく言うライズに、イチアが仕方がないですねとため息をついて、代わりに答えてくれた。
「ライズは、5歳のときに罹りましたよ。たまたま、菌の潜伏期間に公爵家へ遊びに来ていたので、ノクト様のお子さんにうつしたのです。公爵家では、罹患したのが跡取り様でしたので、昼夜問わず、大変な騒ぎになりました」
「そうなんだ?」
「そんな他人事のように言わないでください。あなたが、うつしたのですから!」
「うつっていたなんて知らないし、そんな昔のこと言われても、もう時効でしょ?」
「……そうですね」
「それにしたって、昼夜問わずって、大変だったんだね?」
「はい。まだ、病に対して、薬の開発が遅れていたこともあって、みなで慌てたものです」
「全然、覚えてないな」
ライズは、天井を目だけで見つめて思い浮かべているようだ。記憶力がないなら、考えても無理な話だろう。
「アンナリーゼ様は、いつ罹られたのですか?」
「私?」
「そうです」
「私、最近、罹患していた事実を知ったんだけど……」
「えぇ、それは、大変でしたね?」
「そう。私、10歳のとき、ヨハンに盛られたのよね!」
「盛られた?と……そんなことあるのですか?」
「あるみたいよ?ヨハンのことだから、本当に、何をしてくれるのかって感じよね!この前、コーコナで、その事実を初めて知って、愕然としたわ!」
「ヨハンが何故?アンナリーゼ様、嘘ついてはいけませんよ!」
「嘘じゃないわよ!そこまでいうなら、ライズもヨハンに飲ませてもらえばいいわ!ちなみに、罹患率100%だから!」
イチアは笑うけど、本当のことだ。ヨハンに初めて飲まされた毒と言われて飲まされたのが、まさに感染症それだったと聞いたとき、血の気がなくなったような気がする。
「それで、どうだったんですか?」
「高熱が出たわよ?とっても。まだ、そのときは、万能解毒剤も出来てなかったし、とても苦しんだんだから!」
「万能解毒剤では、治らないのでは?」
「そうだった……別の薬だったわ!って、アデルにもその薬が必要じゃないの?解熱剤って言ったけど……」
「そうなんですけど……まずは、少し熱をさげましょう。熱のせいで、食欲が落ちていますし、あの薬は、強い効き目があるので、食事も多少胃に入れてからでないと飲めません」
「そうなの?ヨハンは、高熱の子どもにも、ご飯が食べられなくても飲ませていたわよ?」
私の言葉に驚いたようだ。それも、イチアだけでなくライズまでだ。
「……本当ですか?」
「えぇ、私も飲ませていたから、間違いないわ!」
「その薬って、手元にありますか?」
「執務室にはあったと思うけど……取り寄せようか?リアンが来たら、お願いしましょうか?」
「それなら、アデルの今の状態で飲んでも問題ないのかもしれませんね?」
「……一応、熱だけもう少し下げた方がいいんじゃないか?」
「ライズ、1度で、感染症にも高熱にも効くものなら、その方がいいに決まっているじゃないですか!」
私たちは、三人で顔を突合せ、次にリアンが来たときにすぐに持ってきてもらうようお願いすることを決めた。
もう少し、待っていてね……熱でうなされているアデルの方を見たのである。
「それなら、リンゴがあれば、擦ってきて欲しいと伝えて。あとは……」
「水と解熱剤ですね!」
わかりましたとライズは、扉の前まで行き、コンコンとノックする。リアンに、扉の前まで来た合図を出しているようだった。そのあとに、こちらから、欲しいものを伝えていた。聞き取れなかったが、ちゃっかり、自分のために何か頼んでいるのは、さすがだと思う。頼み終わったようで、席に戻りだらっとしていた。
「あぁやって見ると、ライズもどこにでもいそうな青年よね?」
「中身が伴っていないのが、残念です」
「その言葉は、私も耳に痛いわ……」
「あの……」
後ろから話しかけられたので、振り返ると困った顔をしたアデルが、見上げてきた。
どうしたの?と問いかけると、さらに眉尻を下げて、困った顔をする。
「……今、どういう状況なのでしょうか?」
「見ての通り、アデルが病人。私とイチアとライズがあなたをここに運んだ人間」
「……どうして、侍女やメイド、同僚ではなく、お三方がこの部屋にいるのでしょう?」
頭の回らないアデルに経緯を説明していく。ただ、また、熱が上がってきているのだろう。顔が赤くなっていく。
「アデル、話は後にしましょう。少し休みなさい。また、熱が上がってきているのではなくて?」
「……すみません。さっきから、ぼぅっとしてます」
「うん、私たちは、ここにいるから、眠ってちょうだい。解熱剤が来たら、起こすから、それまで、少しでも休んで」
アデルを寝かせ、おでこに絞ったタオルを置く。赤かった顔が少しだけ、色味を薄め、楽になった……そんな表情になる。
「熱がかなり高いので辛いでしょうね」
「そうね。子どもも熱はよく出すけど、大人になってからでも、同じよね」
私たちは、話声で起こすと悪いと思い、アデルの隣から移動する。
ライズが、ダレている机の方から、アデルを見ながら、イチアと話す。
「イチアは、この病はいくつのときに罹ったの?」
「小さかったので、全く覚えていないのですけど、両親に聞いたところによると、生死の境目を彷徨っていたそうです。今のアデルのようにかなりの高熱が出てたようで」
「そっか。イチアが、元気にこうして私の前にいてくれて嬉しいわ!ライズはどう?」
「いつだったか覚えてないです」
そっけなく言うライズに、イチアが仕方がないですねとため息をついて、代わりに答えてくれた。
「ライズは、5歳のときに罹りましたよ。たまたま、菌の潜伏期間に公爵家へ遊びに来ていたので、ノクト様のお子さんにうつしたのです。公爵家では、罹患したのが跡取り様でしたので、昼夜問わず、大変な騒ぎになりました」
「そうなんだ?」
「そんな他人事のように言わないでください。あなたが、うつしたのですから!」
「うつっていたなんて知らないし、そんな昔のこと言われても、もう時効でしょ?」
「……そうですね」
「それにしたって、昼夜問わずって、大変だったんだね?」
「はい。まだ、病に対して、薬の開発が遅れていたこともあって、みなで慌てたものです」
「全然、覚えてないな」
ライズは、天井を目だけで見つめて思い浮かべているようだ。記憶力がないなら、考えても無理な話だろう。
「アンナリーゼ様は、いつ罹られたのですか?」
「私?」
「そうです」
「私、最近、罹患していた事実を知ったんだけど……」
「えぇ、それは、大変でしたね?」
「そう。私、10歳のとき、ヨハンに盛られたのよね!」
「盛られた?と……そんなことあるのですか?」
「あるみたいよ?ヨハンのことだから、本当に、何をしてくれるのかって感じよね!この前、コーコナで、その事実を初めて知って、愕然としたわ!」
「ヨハンが何故?アンナリーゼ様、嘘ついてはいけませんよ!」
「嘘じゃないわよ!そこまでいうなら、ライズもヨハンに飲ませてもらえばいいわ!ちなみに、罹患率100%だから!」
イチアは笑うけど、本当のことだ。ヨハンに初めて飲まされた毒と言われて飲まされたのが、まさに感染症それだったと聞いたとき、血の気がなくなったような気がする。
「それで、どうだったんですか?」
「高熱が出たわよ?とっても。まだ、そのときは、万能解毒剤も出来てなかったし、とても苦しんだんだから!」
「万能解毒剤では、治らないのでは?」
「そうだった……別の薬だったわ!って、アデルにもその薬が必要じゃないの?解熱剤って言ったけど……」
「そうなんですけど……まずは、少し熱をさげましょう。熱のせいで、食欲が落ちていますし、あの薬は、強い効き目があるので、食事も多少胃に入れてからでないと飲めません」
「そうなの?ヨハンは、高熱の子どもにも、ご飯が食べられなくても飲ませていたわよ?」
私の言葉に驚いたようだ。それも、イチアだけでなくライズまでだ。
「……本当ですか?」
「えぇ、私も飲ませていたから、間違いないわ!」
「その薬って、手元にありますか?」
「執務室にはあったと思うけど……取り寄せようか?リアンが来たら、お願いしましょうか?」
「それなら、アデルの今の状態で飲んでも問題ないのかもしれませんね?」
「……一応、熱だけもう少し下げた方がいいんじゃないか?」
「ライズ、1度で、感染症にも高熱にも効くものなら、その方がいいに決まっているじゃないですか!」
私たちは、三人で顔を突合せ、次にリアンが来たときにすぐに持ってきてもらうようお願いすることを決めた。
もう少し、待っていてね……熱でうなされているアデルの方を見たのである。
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