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私もその抗いに賛同したいです

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「アデルへのお願いって……ジョージア様がしたなら、命令になりますよね?公爵だし、領主だし……ただし、アンナリーゼ様が、ジョージア様へコーコナ領の一時全権移譲してきたとしても、近衛であるアデルの預かりは、アンナリーゼ様ですからね」
「……ややこしいな」
「仕方ないじゃない……ヨハンもジョージア様もアデルも自分たちで判断してしまって、相談してくれなかったんだから。アデルが、配達をするようになったのって、こちらに帰ってくる直前だったらしいの。なら、アンバーに戻る他の近衛に手紙を託すことは出来たはずなのに、それすらしなかった。罹患したことがないアデルを治験に使えば、どうなるかわからないうえに、副反応や後遺症が残る場合があったら、どうするのかとか……たぶん、何も考えていないのよ。ジョージア様も治験に参加してというならまだしも、アデルにだけ飲ませたのよ。ヨハンはもちろん、罹ったことがあるから、抗体を持っているから治験用の薬を飲んだところで、たいした影響はないはずなのよ!」


 みながこちらを向き、ため息をついた。なんともままならない状況というか……アデル……と頭を抱えるセバス。


「じゃあ、その薬を俺たちも飲めばいいか?」
「いいわけないんだけど!飲むなら、私が飲むわよ!ただ……私は、ヨハンの毒の実験で、すでに病には罹っているから、私自身もその治験薬を飲んだとしても、それほど、大きな影響はないはずなの」
「……それなら、なおのこと、罹ったことがないやつが飲むしかないだろ?」


 私は首を横に振る。もし、それで、何かあったら……どうするんだと問えば、それはそのときじゃね?とウィルは返してくる。


「そんな運試しのようなことは、しないで!私は、本当にあなたたちを頼りにしているのだから……私の知らないところで苦しむようなことは、決してしないでちょうだい」
「姫さん、俺らの人生は、俺ら自身が責任を持つ。だから、そこまで……」
「違うの!私は、いずれいなくなる存在。だから、そんなときに、アンジェラを始め、子どもたちを導いてくれる大人が必要なの。それは、私にはできないから……」


 唇を噛みしめる。『予知夢』と少しずつ変わっていく現在。見る『予知夢』さえ曖昧になってきた私にとって、ここにいるウィルにセバス、ナタリーは特に頼りにしている。だから、巻き込みたくない。


「アンナリーゼ様、それは……?」
「……イチアには、言ってなかったね。私の寿命は、あと10年くらいしかないのよ」
「10年ですか?」
「えぇ、子ども……アンジェラのデビュタントまでは、迎えられるけど……あとは、たぶん、この世にいないの」
「どういうことですか?ノクト様は知っていますか?」
「いいえ。このことを知っているのは、ジョージア様、ウィル、セバス、ナタリー、あとはトワイスにいる家族や幼馴染とデリアだけだよ!」
「そんなことってあるのですか?」
「えぇ、あるわ!私には、『予知夢』があるの」
「……だから、コーコナの災害……」


 思案顔するイチアにみなが同情の顔をしている。


「みなさんは、それを受入れているのですか?」
「いいえ、そんな未来なんて、蹴り飛ばして差し上げたいと思っていますわ!私たちが、アンナリーゼ様とともにあるのは、それぞれの想いからですけど、この話を聞かされたとき、そんなことあるか!って、抗ってやる!ってどれほど思ったことか。イチアより、私たちはアンナリーゼ様と一緒に過ごした時間は長いのです。友人として、共にアンバー領を支える者として、アンナリーゼ様がいなくなる未来なんて、ない方がいいに決まっている。そのためにそれぞれが努力をし、模索し、側にいるのです!ただ、アンナリーゼ様の最後のときを指をくわえて待っているだけではありませんよ!」
「それでは、私もその抗いに賛同したいです。何より、ノクト様が仕えてもいいと思えるような人物です。私もここに来てから、新しい画期的なたくさんの経験をさせていただきました。みなさんよりかは、人生経験は豊富ですからね!」


 何かわからないが、四人が頷きあっていた。治験の話をしていたはず……なのに。


「あの……」
「アンナリーゼ様も自分を諦めていませんから、私たちができることで、支えて行きましょう。『予知夢』が狂って1日でも長く、アンナリーゼ様と一緒にいられる日々を守るために!」
「最初から、そうだろ?俺たちは」
「紫の薔薇に誓いましたからね!僕ら」
「本当ですよ!」


 少々ため息をつきながらこちらを向いてくる。


「で、治験だよな?ヨハン教授からの連絡はないのか?」
「えぇ、ないの……だから、状況もわからないの」
「どうしたものかなぁ……」


 五人が考え込んでいるところへ、リアンが慌てて執務室へ入ってくる。


「アンナリーゼ様!」
「どうしたの?」
「アデルが……今、玄関で倒れて……」
「「「「「!」」」」」


 執務室にリアンの荒い息だけが、聞こえてくる。みなに頷く。


「イチアは、罹ったことある?」
「えぇ、もちろんです!」
「じゃあ、私とイチアだけ。他は、ここで待機。リアン、どこか隔離の出来る部屋はあるかしら?」
「最上階の侍従たちの部屋なら2部屋ほど空いていますが……」
「今から、アデルをそこに運びます。悪いけど、部屋の準備だけして。そのあとは、一切近づかないで!イチアと私で対応します」


 私は玄関へと駆ける。患ったというよりかは、副反応が今出てきた可能性が高い。それか、副反応が出てたけど、真面目なアデルは、自分の身を顧みなかったことも考えられた。


「症状、軽ければいいですけど……」
「病というより、副反応が長く続いているのかもしれないわね……元々肉体労働をして、心身共に疲れていたでしょうし、アデルのことだから……」
「自分より他の人のために動いてしまってと言うことですか?アンナリーゼ様の側にくる人物は、そういう人がとても多い……もっと、自身を大事にしてほしいですね!アンナリーゼ様を含め!」
「……すみません」


 イチアに小言を言われているうちに玄関でぐったりしているアデルの元へ行く。


「みんな、近寄らないで!イチア」
「私は、どちらかというと頭脳派なんですけどね……」


 呟きながら、アデルに肩を貸すイチア。


「アデル?最上階まで昇るわよ!もう少しだけ頑張って!」
「……お手数かけます」
「いいから、いくわよ!」


 イチアに支えられながら、階段を昇る。私は、後ろから支えて行くことにした。みなが、それをみて、手伝いに来ようとするのを止めるのにとても苦労する。


「優秀な侍従ばかりいるのも……大変ね!」
「あっ、あそこにも罹患したことかがある方が!」


 逆に関わらないと距離を取っていた人物がいた。私は、一目散にその人物を捕まえに行き、アデルを支えるように指示をする。


「あの……」
「罹患したことある人なら、苦しまないから大丈夫でしょ?」


 ライズが逃げないように、ベルトをしっかり握りしめ、しっかり働けと激を飛ばす。皇太子なのに……という小言に元でしょ!と怒りをぶつけ、アデルを無事空き部屋まで連れていくことができた。
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