698 / 1,513
試作品Ⅵ
しおりを挟む
「それ、いいわね!でも、どこに入れる?」
香水についての説明文を入れるのはどうかという提案におもしろそうだとのむことにした。
「このあたりの外から隠れているところに、1枚入れてはいかがですか?」
「それなら、それようの紙も欲しいわね!普通の紙がいいのか、ちょっと変わったものがいいのか……領地で手に入るのか、そうじゃないのかっていうのも考えものよ!」
「紙は、買うしかないですね。アンバーでは作っていませんから……」
「じゃあ、その方向で……印刷は、こっちで出来るよね?何か説明も詩的な文章が欲しいわね?」
「それなら、もうすぐ、ジョージア様が帰ってくるから、原文を作ってもらえばいいんじゃない?かなりのロマンチストだからね?姫さん」
「知りません!」
ウィルにふいに言われ、恥ずかしくなった。確かにジョージアなら、甘い言葉の一つや二つや三つ……いや、たくさん出てくることだろう。公もこんな話は好きそうだが……と考えていた。
「私は、ジョージア様が考えなくてもいいと思います」
「それは、どういうことですか?ナタリー様」
「例えば、ですよ?青薔薇は、ジョージア様とアンナリーゼ様の思い出の花ですよね?」
「えぇ、私たちの思い出には、いつも青薔薇があるわ!」
「アンナリーゼ様に青薔薇の言葉を考えてもらいます。メインで売りたい薔薇の香水は、もちろん、青薔薇ですよね?」
「……えっと、赤です」
「ロイド、そこは、嘘でも青薔薇と言うべきですよ!アンバー公爵夫妻の思い出の花なのですから!」
「わかりました!ナタリー様、今からでも、青をメインと考えましょう!そこは、私の腕の見せ所ですからね!」
「ニコライはさすがにわかっているわね!リンゴの香水はカレンに、オレンジの香水は黒の貴族のご婦人に説明文を書いてもらいましょう!旦那様にあてるつもりの恋文で!まぁ、黒の貴族のご婦人に恋文みたいな説明文をというのは……酷かもしれませんが……」
「あとは、どうする?」
「そうですね……エリザベス様とエレーナ様。お願い出来るなら、シルキー王太子妃様にメアリー妃にお願い出来るといいですね!」
「姫さんの手紙ひとつで、喜んで書いてくれそうだな!」
ウィルの言葉にみなが頷いた。私は、この試作品の話し合いが終われば、さっそく手紙を書くことになるだろう。
最後に、赤薔薇となんの香りかわからないものが1つだけ残った。
「私もこちらを書かせていただいてもいいですか?」
「もちろんよ!ナタリーの恋文は……楽しみね!」
「残すは、赤薔薇だね……」
セバスの顔をみなが一斉に見た。その視線にたじろぎながら……私へ視線をよこすセバス。
「赤薔薇なんだけど……一人、お願いしたい人がいるの!いいかしら?」
「姫さんの思うままに!」
そうして、私たちは、試作品の大まかな概要が決まりそうであった。
「あとは、何があるかしら?」
「そうですね……売る時期をまだ決めていませんでしたね?」
「そうね!これは、いつの時期がいいかしら?アンジェラの誕生日が過ぎた頃がいいかしら?」
「社交界が始まる少し前ですね!流行を広める時期としては、最適ですね!」
「そのこそには、もうひとつ提案していた方も進められるかしら?」
「それは……男物の香水ですか?」
「そう。あとは、男女どちらからっていうもの」
「リアノがもう少しで帰ってくるので、それからですから、まだ、少し手がつけられていません」
確かに、これは、ロイドとリアノの共同開発にしようという話になっていたので、頷いた。
リアノも初めて会ったとき、素敵な香りがしたなぁっと考えていた。
「ねぇ、ロイド。知っていたら教えて欲しいのだけど……」
「なんでしょうか?」
「リアノの香水って、自分で調香したものか知っている?」
「えぇ、あれはリアノが作ったものですよ!それが?」
「私、あの香り好きだなって思って……今度、帰ってきたら香りを披露して欲しいわ!ここにいる男性陣の話も聞いてみたいし!ナタリーも」
「私もですか?」
「そう。今ね、男性用の香水を作ろうとしているんだけどね?」
「えぇ、それは、話の内容からなんとなく……察しました」
「その香水をね、男性も女性も使える香りにしたいと思っているんだけど……」
「あぁ、なるほど!」
ナタリーは心得たというふうで、頷いた。
「ここにいる男性陣だけでは、女性の好みと違う可能性があるからね!誰からも好まれる香りっていうのが理想だけど……黒の貴族御用達とかになってくれるようなものがいいなって思って」
「香りが宝石の変わりをするってことですか?なんだか……黒の貴族って名前に思うところはありますけど、夫婦や恋人でつけていると素敵ですね!貴族同士、公に出来ない未発表の婚約もありますからね。上位貴族になればなるほど。それに、ちょっとした遊び心をということですね!」
「そういうこと。思惑通りにいくかどうかはわからないけど……おもしろそうかなって!」
「誰が、まず、流行らせるのですか?」
「うーん、ジョージア様と私だよね。なんたって……社交界の上位貴族でこの遊びに付き合ってくれそうな人って少なそうじゃない?」
「カレンなら……リンゴの香水で旦那様とつけてくれそうですけどね?」
「……リンゴの香水は、少々甘すぎないかしら?」
「カレンの妖艶さがあれば、甘さは消えてしまいますし……」
「独占欲の塊だからなぁ……あのご婦人」
「そういうことです。手紙をかかれるときに、流行を作りたいって話も一筆入れておいてみてはいかがですか?」
ナタリーの提案に私は頷き、いいかもしてないわねとほくそ笑んだ。
カレンのことを考えていたとき、ふと、ナタリーの説明文の担当する香水に見当がついた。
「ナタリーにお願いした香水って……もしかして、葡萄なのかしら?」
「えっ?今まで気が付いてなかったのですか?」
「…………」
「アンナリーゼ様なら、気が付いてくれると思っていたのですが……まだ、何か足りないのですかね?」
「ごめんなさい、ロイド」
「俺も実はずっと考えてた……」
ウィルが白状すると、他にもセバスとテクトも続く。
「と、いうことは……やり直しですね!葡萄は、失敗です」
「ごめんなさい」
「いいのです!十分な香りが出来上がっていなかったといういわけですから……」
肩を落とすロイドへ追い打ちをかけるように、『赤い涙』の香りなら、わかるんだけどな……と呟いてしまった。
落胆した肩が元気を取り戻すのに、時間はかからなかった。
香水ではないが、『紅い涙』は、とても甘いよい香りのする葡萄酒。その香りを知らないロイドではなかったということだ。
すぐに、新しい葡萄の香りの試作品ができることだろうなと微笑んだ。
香水についての説明文を入れるのはどうかという提案におもしろそうだとのむことにした。
「このあたりの外から隠れているところに、1枚入れてはいかがですか?」
「それなら、それようの紙も欲しいわね!普通の紙がいいのか、ちょっと変わったものがいいのか……領地で手に入るのか、そうじゃないのかっていうのも考えものよ!」
「紙は、買うしかないですね。アンバーでは作っていませんから……」
「じゃあ、その方向で……印刷は、こっちで出来るよね?何か説明も詩的な文章が欲しいわね?」
「それなら、もうすぐ、ジョージア様が帰ってくるから、原文を作ってもらえばいいんじゃない?かなりのロマンチストだからね?姫さん」
「知りません!」
ウィルにふいに言われ、恥ずかしくなった。確かにジョージアなら、甘い言葉の一つや二つや三つ……いや、たくさん出てくることだろう。公もこんな話は好きそうだが……と考えていた。
「私は、ジョージア様が考えなくてもいいと思います」
「それは、どういうことですか?ナタリー様」
「例えば、ですよ?青薔薇は、ジョージア様とアンナリーゼ様の思い出の花ですよね?」
「えぇ、私たちの思い出には、いつも青薔薇があるわ!」
「アンナリーゼ様に青薔薇の言葉を考えてもらいます。メインで売りたい薔薇の香水は、もちろん、青薔薇ですよね?」
「……えっと、赤です」
「ロイド、そこは、嘘でも青薔薇と言うべきですよ!アンバー公爵夫妻の思い出の花なのですから!」
「わかりました!ナタリー様、今からでも、青をメインと考えましょう!そこは、私の腕の見せ所ですからね!」
「ニコライはさすがにわかっているわね!リンゴの香水はカレンに、オレンジの香水は黒の貴族のご婦人に説明文を書いてもらいましょう!旦那様にあてるつもりの恋文で!まぁ、黒の貴族のご婦人に恋文みたいな説明文をというのは……酷かもしれませんが……」
「あとは、どうする?」
「そうですね……エリザベス様とエレーナ様。お願い出来るなら、シルキー王太子妃様にメアリー妃にお願い出来るといいですね!」
「姫さんの手紙ひとつで、喜んで書いてくれそうだな!」
ウィルの言葉にみなが頷いた。私は、この試作品の話し合いが終われば、さっそく手紙を書くことになるだろう。
最後に、赤薔薇となんの香りかわからないものが1つだけ残った。
「私もこちらを書かせていただいてもいいですか?」
「もちろんよ!ナタリーの恋文は……楽しみね!」
「残すは、赤薔薇だね……」
セバスの顔をみなが一斉に見た。その視線にたじろぎながら……私へ視線をよこすセバス。
「赤薔薇なんだけど……一人、お願いしたい人がいるの!いいかしら?」
「姫さんの思うままに!」
そうして、私たちは、試作品の大まかな概要が決まりそうであった。
「あとは、何があるかしら?」
「そうですね……売る時期をまだ決めていませんでしたね?」
「そうね!これは、いつの時期がいいかしら?アンジェラの誕生日が過ぎた頃がいいかしら?」
「社交界が始まる少し前ですね!流行を広める時期としては、最適ですね!」
「そのこそには、もうひとつ提案していた方も進められるかしら?」
「それは……男物の香水ですか?」
「そう。あとは、男女どちらからっていうもの」
「リアノがもう少しで帰ってくるので、それからですから、まだ、少し手がつけられていません」
確かに、これは、ロイドとリアノの共同開発にしようという話になっていたので、頷いた。
リアノも初めて会ったとき、素敵な香りがしたなぁっと考えていた。
「ねぇ、ロイド。知っていたら教えて欲しいのだけど……」
「なんでしょうか?」
「リアノの香水って、自分で調香したものか知っている?」
「えぇ、あれはリアノが作ったものですよ!それが?」
「私、あの香り好きだなって思って……今度、帰ってきたら香りを披露して欲しいわ!ここにいる男性陣の話も聞いてみたいし!ナタリーも」
「私もですか?」
「そう。今ね、男性用の香水を作ろうとしているんだけどね?」
「えぇ、それは、話の内容からなんとなく……察しました」
「その香水をね、男性も女性も使える香りにしたいと思っているんだけど……」
「あぁ、なるほど!」
ナタリーは心得たというふうで、頷いた。
「ここにいる男性陣だけでは、女性の好みと違う可能性があるからね!誰からも好まれる香りっていうのが理想だけど……黒の貴族御用達とかになってくれるようなものがいいなって思って」
「香りが宝石の変わりをするってことですか?なんだか……黒の貴族って名前に思うところはありますけど、夫婦や恋人でつけていると素敵ですね!貴族同士、公に出来ない未発表の婚約もありますからね。上位貴族になればなるほど。それに、ちょっとした遊び心をということですね!」
「そういうこと。思惑通りにいくかどうかはわからないけど……おもしろそうかなって!」
「誰が、まず、流行らせるのですか?」
「うーん、ジョージア様と私だよね。なんたって……社交界の上位貴族でこの遊びに付き合ってくれそうな人って少なそうじゃない?」
「カレンなら……リンゴの香水で旦那様とつけてくれそうですけどね?」
「……リンゴの香水は、少々甘すぎないかしら?」
「カレンの妖艶さがあれば、甘さは消えてしまいますし……」
「独占欲の塊だからなぁ……あのご婦人」
「そういうことです。手紙をかかれるときに、流行を作りたいって話も一筆入れておいてみてはいかがですか?」
ナタリーの提案に私は頷き、いいかもしてないわねとほくそ笑んだ。
カレンのことを考えていたとき、ふと、ナタリーの説明文の担当する香水に見当がついた。
「ナタリーにお願いした香水って……もしかして、葡萄なのかしら?」
「えっ?今まで気が付いてなかったのですか?」
「…………」
「アンナリーゼ様なら、気が付いてくれると思っていたのですが……まだ、何か足りないのですかね?」
「ごめんなさい、ロイド」
「俺も実はずっと考えてた……」
ウィルが白状すると、他にもセバスとテクトも続く。
「と、いうことは……やり直しですね!葡萄は、失敗です」
「ごめんなさい」
「いいのです!十分な香りが出来上がっていなかったといういわけですから……」
肩を落とすロイドへ追い打ちをかけるように、『赤い涙』の香りなら、わかるんだけどな……と呟いてしまった。
落胆した肩が元気を取り戻すのに、時間はかからなかった。
香水ではないが、『紅い涙』は、とても甘いよい香りのする葡萄酒。その香りを知らないロイドではなかったということだ。
すぐに、新しい葡萄の香りの試作品ができることだろうなと微笑んだ。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる