ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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試作品Ⅵ

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「それ、いいわね!でも、どこに入れる?」


 香水についての説明文を入れるのはどうかという提案におもしろそうだとのむことにした。


「このあたりの外から隠れているところに、1枚入れてはいかがですか?」
「それなら、それようの紙も欲しいわね!普通の紙がいいのか、ちょっと変わったものがいいのか……領地で手に入るのか、そうじゃないのかっていうのも考えものよ!」
「紙は、買うしかないですね。アンバーでは作っていませんから……」
「じゃあ、その方向で……印刷は、こっちで出来るよね?何か説明も詩的な文章が欲しいわね?」
「それなら、もうすぐ、ジョージア様が帰ってくるから、原文を作ってもらえばいいんじゃない?かなりのロマンチストだからね?姫さん」
「知りません!」


 ウィルにふいに言われ、恥ずかしくなった。確かにジョージアなら、甘い言葉の一つや二つや三つ……いや、たくさん出てくることだろう。公もこんな話は好きそうだが……と考えていた。


「私は、ジョージア様が考えなくてもいいと思います」
「それは、どういうことですか?ナタリー様」
「例えば、ですよ?青薔薇は、ジョージア様とアンナリーゼ様の思い出の花ですよね?」
「えぇ、私たちの思い出には、いつも青薔薇があるわ!」
「アンナリーゼ様に青薔薇の言葉を考えてもらいます。メインで売りたい薔薇の香水は、もちろん、青薔薇ですよね?」
「……えっと、赤です」
「ロイド、そこは、嘘でも青薔薇と言うべきですよ!アンバー公爵夫妻の思い出の花なのですから!」
「わかりました!ナタリー様、今からでも、青をメインと考えましょう!そこは、私の腕の見せ所ですからね!」
「ニコライはさすがにわかっているわね!リンゴの香水はカレンに、オレンジの香水は黒の貴族のご婦人に説明文を書いてもらいましょう!旦那様にあてるつもりの恋文で!まぁ、黒の貴族のご婦人に恋文みたいな説明文をというのは……酷かもしれませんが……」
「あとは、どうする?」
「そうですね……エリザベス様とエレーナ様。お願い出来るなら、シルキー王太子妃様にメアリー妃にお願い出来るといいですね!」
「姫さんの手紙ひとつで、喜んで書いてくれそうだな!」


 ウィルの言葉にみなが頷いた。私は、この試作品の話し合いが終われば、さっそく手紙を書くことになるだろう。
 最後に、赤薔薇となんの香りかわからないものが1つだけ残った。


「私もこちらを書かせていただいてもいいですか?」
「もちろんよ!ナタリーの恋文は……楽しみね!」
「残すは、赤薔薇だね……」


 セバスの顔をみなが一斉に見た。その視線にたじろぎながら……私へ視線をよこすセバス。


「赤薔薇なんだけど……一人、お願いしたい人がいるの!いいかしら?」
「姫さんの思うままに!」


 そうして、私たちは、試作品の大まかな概要が決まりそうであった。


「あとは、何があるかしら?」
「そうですね……売る時期をまだ決めていませんでしたね?」
「そうね!これは、いつの時期がいいかしら?アンジェラの誕生日が過ぎた頃がいいかしら?」
「社交界が始まる少し前ですね!流行を広める時期としては、最適ですね!」
「そのこそには、もうひとつ提案していた方も進められるかしら?」
「それは……男物の香水ですか?」
「そう。あとは、男女どちらからっていうもの」
「リアノがもう少しで帰ってくるので、それからですから、まだ、少し手がつけられていません」


 確かに、これは、ロイドとリアノの共同開発にしようという話になっていたので、頷いた。
 リアノも初めて会ったとき、素敵な香りがしたなぁっと考えていた。


「ねぇ、ロイド。知っていたら教えて欲しいのだけど……」
「なんでしょうか?」
「リアノの香水って、自分で調香したものか知っている?」
「えぇ、あれはリアノが作ったものですよ!それが?」
「私、あの香り好きだなって思って……今度、帰ってきたら香りを披露して欲しいわ!ここにいる男性陣の話も聞いてみたいし!ナタリーも」
「私もですか?」
「そう。今ね、男性用の香水を作ろうとしているんだけどね?」
「えぇ、それは、話の内容からなんとなく……察しました」
「その香水をね、男性も女性も使える香りにしたいと思っているんだけど……」
「あぁ、なるほど!」


 ナタリーは心得たというふうで、頷いた。


「ここにいる男性陣だけでは、女性の好みと違う可能性があるからね!誰からも好まれる香りっていうのが理想だけど……黒の貴族御用達とかになってくれるようなものがいいなって思って」
「香りが宝石の変わりをするってことですか?なんだか……黒の貴族って名前に思うところはありますけど、夫婦や恋人でつけていると素敵ですね!貴族同士、公に出来ない未発表の婚約もありますからね。上位貴族になればなるほど。それに、ちょっとした遊び心をということですね!」
「そういうこと。思惑通りにいくかどうかはわからないけど……おもしろそうかなって!」
「誰が、まず、流行らせるのですか?」
「うーん、ジョージア様と私だよね。なんたって……社交界の上位貴族でこの遊びに付き合ってくれそうな人って少なそうじゃない?」
「カレンなら……リンゴの香水で旦那様とつけてくれそうですけどね?」
「……リンゴの香水は、少々甘すぎないかしら?」
「カレンの妖艶さがあれば、甘さは消えてしまいますし……」
「独占欲の塊だからなぁ……あのご婦人」
「そういうことです。手紙をかかれるときに、流行を作りたいって話も一筆入れておいてみてはいかがですか?」


 ナタリーの提案に私は頷き、いいかもしてないわねとほくそ笑んだ。
 カレンのことを考えていたとき、ふと、ナタリーの説明文の担当する香水に見当がついた。


「ナタリーにお願いした香水って……もしかして、葡萄なのかしら?」
「えっ?今まで気が付いてなかったのですか?」
「…………」
「アンナリーゼ様なら、気が付いてくれると思っていたのですが……まだ、何か足りないのですかね?」
「ごめんなさい、ロイド」
「俺も実はずっと考えてた……」


 ウィルが白状すると、他にもセバスとテクトも続く。


「と、いうことは……やり直しですね!葡萄は、失敗です」
「ごめんなさい」
「いいのです!十分な香りが出来上がっていなかったといういわけですから……」


 肩を落とすロイドへ追い打ちをかけるように、『赤い涙』の香りなら、わかるんだけどな……と呟いてしまった。
 落胆した肩が元気を取り戻すのに、時間はかからなかった。
 香水ではないが、『紅い涙』は、とても甘いよい香りのする葡萄酒。その香りを知らないロイドではなかったということだ。
 すぐに、新しい葡萄の香りの試作品ができることだろうなと微笑んだ。
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