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試作品Ⅳ
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「もしかしなくても、職人たちを別室へ移動させたのって、仮眠を取らせるためですか?」
「そうだけど?」
ロイドも気が付いたようだったので、当たり前よね?とみなにいうと、頷きが返ってきた。
「気が付いていなかったのって……」
「ロイドだけだなぁ……俺ら、姫さんとの付き合いは長いし、考えていることは、だいたいわかる。今頃、リアンに一服盛られているんだぜ?きっと」
「……そ、そ、それは!ど――!」
「万能解毒剤っ!」
ロイドをからかったウィル。立ち上がって抗議までしようとしていたのに、まさかのヨハン作成万能解毒剤を飲まされているだなんて、思いもしなかったのだろう。領地では周知の事実だが、万能解毒剤は、毒におかされていなかったら、疲労回復に役立つ。睡眠時間を削って、三人が案を出してくれたのは嬉しいが……休んでも欲しかった。なので、リアンに指示を出し、無味無臭の万能解毒剤を混ぜた飲み物を提供してもらう手筈になっている。
たぶん、飲んだら、コロッと寝てしまうと思う。それくらい、効果は抜群だ。
ヘナっと座り直したロイドに、話を続けましょうかと声をかけると、ニコライが執務室へと飛び込んできた。
「遅れました!すみません、もう始まってますよね?」
「ふふっ、まだよ!今、並べただけだから、入ってちょうだい!」
招き入れると、ビルの隣に座って、並べられた瓶や飾り箱を見ている。
「これは、素晴らしい飾り箱ですね!見た目も可愛らしくて、目を引きますし……あっ、これ、香水が入るとこうなるんですね!」
商人ニコライ……私と同じで新しいもの珍しいもの高く売れるものが大好きだ。まさに、新商品となるものが目の前に並んで興奮しているのがわかる。
「今度の商品ですよね!これ、全部ですか?いいですね!この飾り箱。すごく気に入りました」
「ニコライ、少し落ち着いたらどうだい?」
「父さん、こんな素晴らしいものを見て、落ち着いていられるなら、もう、商人として衰えているんじゃないか?」
「いうようになったな……」
「アンナリーゼ様!」
「はいっ!」
「これ、全部、商品化するんですよね?」
まるで、自分を見ているような気持ちで、毎度のことながら……みんなごめんと心の中で謝る。
「そのつもりよ!ただ、改善点はあるだろうから、そこの詰めね!あと、商品をどのように組み合わせるかとか、考えようかと」
「なるほど……売値と原価もありますからね。ガラスがこれほど、ふんだんに使われているのと、貴族を対象としているのと、あとは、付加価値ですね」
「香水の方は、それほどの原価はかかっていません。それに片手間ではあるので」
「売り上げの一部は、ロイドにも分配はするわ!材料費は領地が持つとしても、手間賃は必要よ!」
「いりません!給金もたくさんいただいているいるのに、その他にまでとかは」
「それは、ダメね。そうしないと合わないもの。その支払ったお金で、ハニーアンバー店やアンバー領の店で使ってくれると嬉しいわ!還元の還元よ!ロイドなら、わかるでしょ?」
盲点でしたと照れ笑いするロイド。ロイドは、調香師として、領地へ来てもらったわけではないので、本業を忘れられては困る。
「取り分の配分は、ガラス職人2、飾り箱職人2、調香師2、領地4ってところね。材料費も領地が持つから、もう少し領地へ欲しいところだけど……」
「このガラス細工はラズの作ったものですね。わけ分として2はいいと思いますが、こちらの小瓶は量産できるよう作られているので、単価を落としてもいいのではないですか?こちらの飾り箱も同じく……長方形や楕円は、この繊細な飾り箱を作った職人でなくても作れるように作られたものですね。長方形のを見ると、このような形で纏めるのであれば……ガラス職人1.5、他0.5、飾り箱1、調香師1.5、領地5.5の配分でどうですか?」
ニコライの提案でどうかと、周りを見た。私的には、いい塩梅ではないかとと思うが、他の小瓶が少し安い気がしている。
「ニコライ殿、小瓶のガラス職人にもう0.5は配分出来ませんか?」
「その心は?」
「4つ種類の違う飾りの擦りガラスになるからです」
長方形の箱の中から、ラズの試作品を取り出すロイド。確かにニコライは、箱の外から見ての判断だったので、それは間違いではないだろう。
「いいですね!そういたしましょう!」
「待って!それなら、ナタリーのところも欲しいわ!配分は……1かしら?」
「いただけるのであれば……」
「ナタリー様は何をなさるので?」
「この中綿を作ることになっているの!」
「もしかして、あの布のお目見えですか?」
「えぇ、それを考えているわ!そういえば……ティアの反応はどうだった?」
「えぇ、えぇ、あの布は、大変、妻が気に入ったようです!光沢のある白に宝石の色を邪魔をしない領地の紋章が入っている布地は、アンバー領の宣伝にもなると大喜びでした!」
ナタリーとニコライは、ティアへ何か試してもらっていたらしい。報告を受けていないのでわからないが……今回の中綿にも使うという話を聞けば、その企みは知りたい。
「二人で盛り上がっているところ悪いのだけど……」
「まだ、報告を上げていらっしゃらなかったんですか?」
「私も夜中に到着したばかりで、この試作品を見せてもらっていたから、まだよ!実物も持っていないし……」
「実物ならありますから、今、報告いたしましょう」
そういって、ニコライが取り出した白い光沢のある布を見て、私たちは驚いた。
「これって、領地の紋章?」
「えぇ、このたび、コーコナへ行ったさいに作りましたの。夏のドレスの応用編ですわ!」
「これで、中綿を作るの?」
「そうです!これなら……飾り箱、香水の瓶にも引けを取らないモノになるかと。すでにティアの作る宝飾品の台座に使わせていただいています。従来の刺繍とは違うので、傷もつきませんからね!」
自信たっぷりのナタリーに私は感服した。すごいものを作り出したな……と。ウィルも何か思いついたようで、頷いた。
「そうだけど?」
ロイドも気が付いたようだったので、当たり前よね?とみなにいうと、頷きが返ってきた。
「気が付いていなかったのって……」
「ロイドだけだなぁ……俺ら、姫さんとの付き合いは長いし、考えていることは、だいたいわかる。今頃、リアンに一服盛られているんだぜ?きっと」
「……そ、そ、それは!ど――!」
「万能解毒剤っ!」
ロイドをからかったウィル。立ち上がって抗議までしようとしていたのに、まさかのヨハン作成万能解毒剤を飲まされているだなんて、思いもしなかったのだろう。領地では周知の事実だが、万能解毒剤は、毒におかされていなかったら、疲労回復に役立つ。睡眠時間を削って、三人が案を出してくれたのは嬉しいが……休んでも欲しかった。なので、リアンに指示を出し、無味無臭の万能解毒剤を混ぜた飲み物を提供してもらう手筈になっている。
たぶん、飲んだら、コロッと寝てしまうと思う。それくらい、効果は抜群だ。
ヘナっと座り直したロイドに、話を続けましょうかと声をかけると、ニコライが執務室へと飛び込んできた。
「遅れました!すみません、もう始まってますよね?」
「ふふっ、まだよ!今、並べただけだから、入ってちょうだい!」
招き入れると、ビルの隣に座って、並べられた瓶や飾り箱を見ている。
「これは、素晴らしい飾り箱ですね!見た目も可愛らしくて、目を引きますし……あっ、これ、香水が入るとこうなるんですね!」
商人ニコライ……私と同じで新しいもの珍しいもの高く売れるものが大好きだ。まさに、新商品となるものが目の前に並んで興奮しているのがわかる。
「今度の商品ですよね!これ、全部ですか?いいですね!この飾り箱。すごく気に入りました」
「ニコライ、少し落ち着いたらどうだい?」
「父さん、こんな素晴らしいものを見て、落ち着いていられるなら、もう、商人として衰えているんじゃないか?」
「いうようになったな……」
「アンナリーゼ様!」
「はいっ!」
「これ、全部、商品化するんですよね?」
まるで、自分を見ているような気持ちで、毎度のことながら……みんなごめんと心の中で謝る。
「そのつもりよ!ただ、改善点はあるだろうから、そこの詰めね!あと、商品をどのように組み合わせるかとか、考えようかと」
「なるほど……売値と原価もありますからね。ガラスがこれほど、ふんだんに使われているのと、貴族を対象としているのと、あとは、付加価値ですね」
「香水の方は、それほどの原価はかかっていません。それに片手間ではあるので」
「売り上げの一部は、ロイドにも分配はするわ!材料費は領地が持つとしても、手間賃は必要よ!」
「いりません!給金もたくさんいただいているいるのに、その他にまでとかは」
「それは、ダメね。そうしないと合わないもの。その支払ったお金で、ハニーアンバー店やアンバー領の店で使ってくれると嬉しいわ!還元の還元よ!ロイドなら、わかるでしょ?」
盲点でしたと照れ笑いするロイド。ロイドは、調香師として、領地へ来てもらったわけではないので、本業を忘れられては困る。
「取り分の配分は、ガラス職人2、飾り箱職人2、調香師2、領地4ってところね。材料費も領地が持つから、もう少し領地へ欲しいところだけど……」
「このガラス細工はラズの作ったものですね。わけ分として2はいいと思いますが、こちらの小瓶は量産できるよう作られているので、単価を落としてもいいのではないですか?こちらの飾り箱も同じく……長方形や楕円は、この繊細な飾り箱を作った職人でなくても作れるように作られたものですね。長方形のを見ると、このような形で纏めるのであれば……ガラス職人1.5、他0.5、飾り箱1、調香師1.5、領地5.5の配分でどうですか?」
ニコライの提案でどうかと、周りを見た。私的には、いい塩梅ではないかとと思うが、他の小瓶が少し安い気がしている。
「ニコライ殿、小瓶のガラス職人にもう0.5は配分出来ませんか?」
「その心は?」
「4つ種類の違う飾りの擦りガラスになるからです」
長方形の箱の中から、ラズの試作品を取り出すロイド。確かにニコライは、箱の外から見ての判断だったので、それは間違いではないだろう。
「いいですね!そういたしましょう!」
「待って!それなら、ナタリーのところも欲しいわ!配分は……1かしら?」
「いただけるのであれば……」
「ナタリー様は何をなさるので?」
「この中綿を作ることになっているの!」
「もしかして、あの布のお目見えですか?」
「えぇ、それを考えているわ!そういえば……ティアの反応はどうだった?」
「えぇ、えぇ、あの布は、大変、妻が気に入ったようです!光沢のある白に宝石の色を邪魔をしない領地の紋章が入っている布地は、アンバー領の宣伝にもなると大喜びでした!」
ナタリーとニコライは、ティアへ何か試してもらっていたらしい。報告を受けていないのでわからないが……今回の中綿にも使うという話を聞けば、その企みは知りたい。
「二人で盛り上がっているところ悪いのだけど……」
「まだ、報告を上げていらっしゃらなかったんですか?」
「私も夜中に到着したばかりで、この試作品を見せてもらっていたから、まだよ!実物も持っていないし……」
「実物ならありますから、今、報告いたしましょう」
そういって、ニコライが取り出した白い光沢のある布を見て、私たちは驚いた。
「これって、領地の紋章?」
「えぇ、このたび、コーコナへ行ったさいに作りましたの。夏のドレスの応用編ですわ!」
「これで、中綿を作るの?」
「そうです!これなら……飾り箱、香水の瓶にも引けを取らないモノになるかと。すでにティアの作る宝飾品の台座に使わせていただいています。従来の刺繍とは違うので、傷もつきませんからね!」
自信たっぷりのナタリーに私は感服した。すごいものを作り出したな……と。ウィルも何か思いついたようで、頷いた。
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