696 / 1,513
試作品Ⅳ
しおりを挟む
「もしかしなくても、職人たちを別室へ移動させたのって、仮眠を取らせるためですか?」
「そうだけど?」
ロイドも気が付いたようだったので、当たり前よね?とみなにいうと、頷きが返ってきた。
「気が付いていなかったのって……」
「ロイドだけだなぁ……俺ら、姫さんとの付き合いは長いし、考えていることは、だいたいわかる。今頃、リアンに一服盛られているんだぜ?きっと」
「……そ、そ、それは!ど――!」
「万能解毒剤っ!」
ロイドをからかったウィル。立ち上がって抗議までしようとしていたのに、まさかのヨハン作成万能解毒剤を飲まされているだなんて、思いもしなかったのだろう。領地では周知の事実だが、万能解毒剤は、毒におかされていなかったら、疲労回復に役立つ。睡眠時間を削って、三人が案を出してくれたのは嬉しいが……休んでも欲しかった。なので、リアンに指示を出し、無味無臭の万能解毒剤を混ぜた飲み物を提供してもらう手筈になっている。
たぶん、飲んだら、コロッと寝てしまうと思う。それくらい、効果は抜群だ。
ヘナっと座り直したロイドに、話を続けましょうかと声をかけると、ニコライが執務室へと飛び込んできた。
「遅れました!すみません、もう始まってますよね?」
「ふふっ、まだよ!今、並べただけだから、入ってちょうだい!」
招き入れると、ビルの隣に座って、並べられた瓶や飾り箱を見ている。
「これは、素晴らしい飾り箱ですね!見た目も可愛らしくて、目を引きますし……あっ、これ、香水が入るとこうなるんですね!」
商人ニコライ……私と同じで新しいもの珍しいもの高く売れるものが大好きだ。まさに、新商品となるものが目の前に並んで興奮しているのがわかる。
「今度の商品ですよね!これ、全部ですか?いいですね!この飾り箱。すごく気に入りました」
「ニコライ、少し落ち着いたらどうだい?」
「父さん、こんな素晴らしいものを見て、落ち着いていられるなら、もう、商人として衰えているんじゃないか?」
「いうようになったな……」
「アンナリーゼ様!」
「はいっ!」
「これ、全部、商品化するんですよね?」
まるで、自分を見ているような気持ちで、毎度のことながら……みんなごめんと心の中で謝る。
「そのつもりよ!ただ、改善点はあるだろうから、そこの詰めね!あと、商品をどのように組み合わせるかとか、考えようかと」
「なるほど……売値と原価もありますからね。ガラスがこれほど、ふんだんに使われているのと、貴族を対象としているのと、あとは、付加価値ですね」
「香水の方は、それほどの原価はかかっていません。それに片手間ではあるので」
「売り上げの一部は、ロイドにも分配はするわ!材料費は領地が持つとしても、手間賃は必要よ!」
「いりません!給金もたくさんいただいているいるのに、その他にまでとかは」
「それは、ダメね。そうしないと合わないもの。その支払ったお金で、ハニーアンバー店やアンバー領の店で使ってくれると嬉しいわ!還元の還元よ!ロイドなら、わかるでしょ?」
盲点でしたと照れ笑いするロイド。ロイドは、調香師として、領地へ来てもらったわけではないので、本業を忘れられては困る。
「取り分の配分は、ガラス職人2、飾り箱職人2、調香師2、領地4ってところね。材料費も領地が持つから、もう少し領地へ欲しいところだけど……」
「このガラス細工はラズの作ったものですね。わけ分として2はいいと思いますが、こちらの小瓶は量産できるよう作られているので、単価を落としてもいいのではないですか?こちらの飾り箱も同じく……長方形や楕円は、この繊細な飾り箱を作った職人でなくても作れるように作られたものですね。長方形のを見ると、このような形で纏めるのであれば……ガラス職人1.5、他0.5、飾り箱1、調香師1.5、領地5.5の配分でどうですか?」
ニコライの提案でどうかと、周りを見た。私的には、いい塩梅ではないかとと思うが、他の小瓶が少し安い気がしている。
「ニコライ殿、小瓶のガラス職人にもう0.5は配分出来ませんか?」
「その心は?」
「4つ種類の違う飾りの擦りガラスになるからです」
長方形の箱の中から、ラズの試作品を取り出すロイド。確かにニコライは、箱の外から見ての判断だったので、それは間違いではないだろう。
「いいですね!そういたしましょう!」
「待って!それなら、ナタリーのところも欲しいわ!配分は……1かしら?」
「いただけるのであれば……」
「ナタリー様は何をなさるので?」
「この中綿を作ることになっているの!」
「もしかして、あの布のお目見えですか?」
「えぇ、それを考えているわ!そういえば……ティアの反応はどうだった?」
「えぇ、えぇ、あの布は、大変、妻が気に入ったようです!光沢のある白に宝石の色を邪魔をしない領地の紋章が入っている布地は、アンバー領の宣伝にもなると大喜びでした!」
ナタリーとニコライは、ティアへ何か試してもらっていたらしい。報告を受けていないのでわからないが……今回の中綿にも使うという話を聞けば、その企みは知りたい。
「二人で盛り上がっているところ悪いのだけど……」
「まだ、報告を上げていらっしゃらなかったんですか?」
「私も夜中に到着したばかりで、この試作品を見せてもらっていたから、まだよ!実物も持っていないし……」
「実物ならありますから、今、報告いたしましょう」
そういって、ニコライが取り出した白い光沢のある布を見て、私たちは驚いた。
「これって、領地の紋章?」
「えぇ、このたび、コーコナへ行ったさいに作りましたの。夏のドレスの応用編ですわ!」
「これで、中綿を作るの?」
「そうです!これなら……飾り箱、香水の瓶にも引けを取らないモノになるかと。すでにティアの作る宝飾品の台座に使わせていただいています。従来の刺繍とは違うので、傷もつきませんからね!」
自信たっぷりのナタリーに私は感服した。すごいものを作り出したな……と。ウィルも何か思いついたようで、頷いた。
「そうだけど?」
ロイドも気が付いたようだったので、当たり前よね?とみなにいうと、頷きが返ってきた。
「気が付いていなかったのって……」
「ロイドだけだなぁ……俺ら、姫さんとの付き合いは長いし、考えていることは、だいたいわかる。今頃、リアンに一服盛られているんだぜ?きっと」
「……そ、そ、それは!ど――!」
「万能解毒剤っ!」
ロイドをからかったウィル。立ち上がって抗議までしようとしていたのに、まさかのヨハン作成万能解毒剤を飲まされているだなんて、思いもしなかったのだろう。領地では周知の事実だが、万能解毒剤は、毒におかされていなかったら、疲労回復に役立つ。睡眠時間を削って、三人が案を出してくれたのは嬉しいが……休んでも欲しかった。なので、リアンに指示を出し、無味無臭の万能解毒剤を混ぜた飲み物を提供してもらう手筈になっている。
たぶん、飲んだら、コロッと寝てしまうと思う。それくらい、効果は抜群だ。
ヘナっと座り直したロイドに、話を続けましょうかと声をかけると、ニコライが執務室へと飛び込んできた。
「遅れました!すみません、もう始まってますよね?」
「ふふっ、まだよ!今、並べただけだから、入ってちょうだい!」
招き入れると、ビルの隣に座って、並べられた瓶や飾り箱を見ている。
「これは、素晴らしい飾り箱ですね!見た目も可愛らしくて、目を引きますし……あっ、これ、香水が入るとこうなるんですね!」
商人ニコライ……私と同じで新しいもの珍しいもの高く売れるものが大好きだ。まさに、新商品となるものが目の前に並んで興奮しているのがわかる。
「今度の商品ですよね!これ、全部ですか?いいですね!この飾り箱。すごく気に入りました」
「ニコライ、少し落ち着いたらどうだい?」
「父さん、こんな素晴らしいものを見て、落ち着いていられるなら、もう、商人として衰えているんじゃないか?」
「いうようになったな……」
「アンナリーゼ様!」
「はいっ!」
「これ、全部、商品化するんですよね?」
まるで、自分を見ているような気持ちで、毎度のことながら……みんなごめんと心の中で謝る。
「そのつもりよ!ただ、改善点はあるだろうから、そこの詰めね!あと、商品をどのように組み合わせるかとか、考えようかと」
「なるほど……売値と原価もありますからね。ガラスがこれほど、ふんだんに使われているのと、貴族を対象としているのと、あとは、付加価値ですね」
「香水の方は、それほどの原価はかかっていません。それに片手間ではあるので」
「売り上げの一部は、ロイドにも分配はするわ!材料費は領地が持つとしても、手間賃は必要よ!」
「いりません!給金もたくさんいただいているいるのに、その他にまでとかは」
「それは、ダメね。そうしないと合わないもの。その支払ったお金で、ハニーアンバー店やアンバー領の店で使ってくれると嬉しいわ!還元の還元よ!ロイドなら、わかるでしょ?」
盲点でしたと照れ笑いするロイド。ロイドは、調香師として、領地へ来てもらったわけではないので、本業を忘れられては困る。
「取り分の配分は、ガラス職人2、飾り箱職人2、調香師2、領地4ってところね。材料費も領地が持つから、もう少し領地へ欲しいところだけど……」
「このガラス細工はラズの作ったものですね。わけ分として2はいいと思いますが、こちらの小瓶は量産できるよう作られているので、単価を落としてもいいのではないですか?こちらの飾り箱も同じく……長方形や楕円は、この繊細な飾り箱を作った職人でなくても作れるように作られたものですね。長方形のを見ると、このような形で纏めるのであれば……ガラス職人1.5、他0.5、飾り箱1、調香師1.5、領地5.5の配分でどうですか?」
ニコライの提案でどうかと、周りを見た。私的には、いい塩梅ではないかとと思うが、他の小瓶が少し安い気がしている。
「ニコライ殿、小瓶のガラス職人にもう0.5は配分出来ませんか?」
「その心は?」
「4つ種類の違う飾りの擦りガラスになるからです」
長方形の箱の中から、ラズの試作品を取り出すロイド。確かにニコライは、箱の外から見ての判断だったので、それは間違いではないだろう。
「いいですね!そういたしましょう!」
「待って!それなら、ナタリーのところも欲しいわ!配分は……1かしら?」
「いただけるのであれば……」
「ナタリー様は何をなさるので?」
「この中綿を作ることになっているの!」
「もしかして、あの布のお目見えですか?」
「えぇ、それを考えているわ!そういえば……ティアの反応はどうだった?」
「えぇ、えぇ、あの布は、大変、妻が気に入ったようです!光沢のある白に宝石の色を邪魔をしない領地の紋章が入っている布地は、アンバー領の宣伝にもなると大喜びでした!」
ナタリーとニコライは、ティアへ何か試してもらっていたらしい。報告を受けていないのでわからないが……今回の中綿にも使うという話を聞けば、その企みは知りたい。
「二人で盛り上がっているところ悪いのだけど……」
「まだ、報告を上げていらっしゃらなかったんですか?」
「私も夜中に到着したばかりで、この試作品を見せてもらっていたから、まだよ!実物も持っていないし……」
「実物ならありますから、今、報告いたしましょう」
そういって、ニコライが取り出した白い光沢のある布を見て、私たちは驚いた。
「これって、領地の紋章?」
「えぇ、このたび、コーコナへ行ったさいに作りましたの。夏のドレスの応用編ですわ!」
「これで、中綿を作るの?」
「そうです!これなら……飾り箱、香水の瓶にも引けを取らないモノになるかと。すでにティアの作る宝飾品の台座に使わせていただいています。従来の刺繍とは違うので、傷もつきませんからね!」
自信たっぷりのナタリーに私は感服した。すごいものを作り出したな……と。ウィルも何か思いついたようで、頷いた。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる