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ラズとりんごと……
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おはようと声をかけると、まだ眠そうなアンジェラとジョージがゴソゴソと布団の中で動く。昨日から川の字なって眠ることになり、今日は三人並んでいた。
何故か私が真ん中なのではあるが……寝相がそんなによろしくない私、子どもたちを潰してないかちょっと不安であった。
「……ママ」
むぎゅっとアンジェラは私に抱きついてきたと思ったら、反対側からもジョージが抱きつく。
身動きが……取れない。が、これはこれで幸せだなと思える。
「今日はお出かけするけど、行く人!」
「おでかけ?」
「そう、行く?アンジェラ」
「いくぅ!」
「ジョージは、どうする?」
「僕は……」
「ジョーも行こう!」
アンジェラの目はお出かけに輝いているし、外が苦手なジョージは渋る。ただ、アンジェラが行こう行こうとジョージを誘い始めると、うん……と渋々だが了承した。
「アンジェラ、あんまり無理強いはダメだよ?」
「ん?」
よくわからないと首を傾げるアンジェラに、自分を重ねて見てしまう。きっと、幼いころは、私もお兄様をこんなふうに振り回していたのだろう。
同じ日に生まれたアンジェラとジョージは、私たち兄妹とはちょっと違うが、同じように育っている。
「ジョージには、ジョージの好きなものがあるんだよ?アンジェラが、引っ張りすぎてもダメなの」
「ダメなの?」
わかっているのか……いないのか。きっと、お母様もため息をつきながら、私を諭していたいたことだろう。
なんて言ったらいいのだろう?
悩みに悩んでいると、私の夜着を引っ張るジョージ。
「どうしたの?」
「僕、行くよ!ママとアンと一緒に!」
「いいの?」
「うん、行く!」
私はニコリと笑うジョージを抱きしめる。当然のごとく、アンジェラはそこに割って入ってくる。
私たち親子は、三人でベッドの上で笑いあっていると、いいことでもありましたか?とリアンとエマが入ってきたのである。
「今日は、子どもたちも連れて出かけるわ!馬車を用意してくれる?」
「ネイト様も連れていかれますか?」
「そうね!レオたちも誘おうかしらね!今日は、リアンもエマも一緒に来てくれる?」
「わかりました。では、準備をいたしましょう!」
朝の支度をして、私たちは出かける準備をして馬車に乗り込んだ。
「今日は、どこに行かれるのですか?」
「ラズベリーのところよ?会ったことは……なかったかしら?」
首を傾げる子どもたちに、まさか、裸体のお姉さんを作ってる人とは言えず、リンゴのガラス細工の話をした。
外で護衛としてついてきたウィルは何だか笑っているようだったし、リアンはちょっと困り顔である。
「ラズはね、ガラス細工の職人よ!この領地では、珍しいかな?女性の職人でね、ほら、アンジェラの部屋にリンゴのガラス細工が置いてあるでしょ?」
「あれですか?」
「そう、あれ。あのリンゴを作っている職人よ!」
ラズの工房は屋敷からは少し遠いのだが、朝早くから来たので昼前には着いた。
アンバー領にいる時間は長くても、外に出たことはあまりなかったアンジェラとジョージ、ミアは嬉しそうに外を見ていた。ガタッと馬車が停まったので、下りる。
「さぁ、着いたわ!下りてちょうだい」
レオがアンジェラとミアがジョージの手を繋ぐ。暴走しがちなアンジェラをレオが抑えてくれるのだろう。大人しいジョージは、ミアと一緒に歩く。
エマがネイトを抱きかかえてくれていた。
お店兼家になっている扉を遠慮なく開く。
「ラズ、いるかしら?」
「ラズなら、今、工房ですよ!ガラスを……」
「あっ、こんにちは!」
「あぁ、アンナリーゼ様!……と、お子様たち?ですか」
「そう。ラズに話があって来たんだけど……待たせてもらってもいいかしら?子どもたちは、侍女が見てくれるから」
「いえ、それは気にしていません。よかったら、工房の方へ行かれますか?お茶とかの用意は……」
「私がいたしますので、アンナリーゼ様の案内をお願いできますか?」
リアンの提案で私はラズの工房へと行くことになった。当然のようにアンジェラは行きたがったのでレオにお願いしてついてきてもらう。ウィルは、ジョージたちの方を見てくれるよう頼んでおく。
「ママ、暑いね!」
「そうね!ガラスを作っているところは、とっても暑いのよ!火を使うから」
ふぅふぅと息をはきながら、ついてくるアンジェラ。
工房に入ったとき、さらに暑い熱風に驚いたのか、私に抱きついた。
「大丈夫よ!」
「ここの扉は開けておきますね。少しでも熱を逃がしますから」
「ごめんなさいね……急に来たばっかりに」
「いいんですよ。見てやってください!」
ちょうど、溶かしたばかりのガラスに息を吹き込むところだった。ロイドが頼んだものの試作を作っているようである。
「ラズ、アンナリーゼ様がお見えだ。時間はいいか?」
「うん、今、区切りのいいところだから、すぐに行くわ!」
小瓶を作っているらしく、何個も置いてあった。ただ、顔を見ればわかるが、どうにも納得のいっている顔ではなかった。
「ママ、しゅごいね?」
じっと見ていたアンジェラは、感動したのかちょっとだけ、言葉が可愛らしいことになっている。
そう思わせるラズのガラス細工は、いつ見ても素晴らしい。
今は、納得の行くおもしろいものを作っていないからか、顔が曇り加減であった。
私の方へ駆け寄ってくる。その前に、奥にいる誰かに一言二言言葉をかけて……
「お待たせしました!ここでは、暑すぎますから、店の方へ行きましょうか!」
ニカッと笑うラズベリーにそうしましょうと返事をして、元居た場所へと戻る。その間もラズは、何かを考えているような難しい顔をしていて、唸っていた。
何故か私が真ん中なのではあるが……寝相がそんなによろしくない私、子どもたちを潰してないかちょっと不安であった。
「……ママ」
むぎゅっとアンジェラは私に抱きついてきたと思ったら、反対側からもジョージが抱きつく。
身動きが……取れない。が、これはこれで幸せだなと思える。
「今日はお出かけするけど、行く人!」
「おでかけ?」
「そう、行く?アンジェラ」
「いくぅ!」
「ジョージは、どうする?」
「僕は……」
「ジョーも行こう!」
アンジェラの目はお出かけに輝いているし、外が苦手なジョージは渋る。ただ、アンジェラが行こう行こうとジョージを誘い始めると、うん……と渋々だが了承した。
「アンジェラ、あんまり無理強いはダメだよ?」
「ん?」
よくわからないと首を傾げるアンジェラに、自分を重ねて見てしまう。きっと、幼いころは、私もお兄様をこんなふうに振り回していたのだろう。
同じ日に生まれたアンジェラとジョージは、私たち兄妹とはちょっと違うが、同じように育っている。
「ジョージには、ジョージの好きなものがあるんだよ?アンジェラが、引っ張りすぎてもダメなの」
「ダメなの?」
わかっているのか……いないのか。きっと、お母様もため息をつきながら、私を諭していたいたことだろう。
なんて言ったらいいのだろう?
悩みに悩んでいると、私の夜着を引っ張るジョージ。
「どうしたの?」
「僕、行くよ!ママとアンと一緒に!」
「いいの?」
「うん、行く!」
私はニコリと笑うジョージを抱きしめる。当然のごとく、アンジェラはそこに割って入ってくる。
私たち親子は、三人でベッドの上で笑いあっていると、いいことでもありましたか?とリアンとエマが入ってきたのである。
「今日は、子どもたちも連れて出かけるわ!馬車を用意してくれる?」
「ネイト様も連れていかれますか?」
「そうね!レオたちも誘おうかしらね!今日は、リアンもエマも一緒に来てくれる?」
「わかりました。では、準備をいたしましょう!」
朝の支度をして、私たちは出かける準備をして馬車に乗り込んだ。
「今日は、どこに行かれるのですか?」
「ラズベリーのところよ?会ったことは……なかったかしら?」
首を傾げる子どもたちに、まさか、裸体のお姉さんを作ってる人とは言えず、リンゴのガラス細工の話をした。
外で護衛としてついてきたウィルは何だか笑っているようだったし、リアンはちょっと困り顔である。
「ラズはね、ガラス細工の職人よ!この領地では、珍しいかな?女性の職人でね、ほら、アンジェラの部屋にリンゴのガラス細工が置いてあるでしょ?」
「あれですか?」
「そう、あれ。あのリンゴを作っている職人よ!」
ラズの工房は屋敷からは少し遠いのだが、朝早くから来たので昼前には着いた。
アンバー領にいる時間は長くても、外に出たことはあまりなかったアンジェラとジョージ、ミアは嬉しそうに外を見ていた。ガタッと馬車が停まったので、下りる。
「さぁ、着いたわ!下りてちょうだい」
レオがアンジェラとミアがジョージの手を繋ぐ。暴走しがちなアンジェラをレオが抑えてくれるのだろう。大人しいジョージは、ミアと一緒に歩く。
エマがネイトを抱きかかえてくれていた。
お店兼家になっている扉を遠慮なく開く。
「ラズ、いるかしら?」
「ラズなら、今、工房ですよ!ガラスを……」
「あっ、こんにちは!」
「あぁ、アンナリーゼ様!……と、お子様たち?ですか」
「そう。ラズに話があって来たんだけど……待たせてもらってもいいかしら?子どもたちは、侍女が見てくれるから」
「いえ、それは気にしていません。よかったら、工房の方へ行かれますか?お茶とかの用意は……」
「私がいたしますので、アンナリーゼ様の案内をお願いできますか?」
リアンの提案で私はラズの工房へと行くことになった。当然のようにアンジェラは行きたがったのでレオにお願いしてついてきてもらう。ウィルは、ジョージたちの方を見てくれるよう頼んでおく。
「ママ、暑いね!」
「そうね!ガラスを作っているところは、とっても暑いのよ!火を使うから」
ふぅふぅと息をはきながら、ついてくるアンジェラ。
工房に入ったとき、さらに暑い熱風に驚いたのか、私に抱きついた。
「大丈夫よ!」
「ここの扉は開けておきますね。少しでも熱を逃がしますから」
「ごめんなさいね……急に来たばっかりに」
「いいんですよ。見てやってください!」
ちょうど、溶かしたばかりのガラスに息を吹き込むところだった。ロイドが頼んだものの試作を作っているようである。
「ラズ、アンナリーゼ様がお見えだ。時間はいいか?」
「うん、今、区切りのいいところだから、すぐに行くわ!」
小瓶を作っているらしく、何個も置いてあった。ただ、顔を見ればわかるが、どうにも納得のいっている顔ではなかった。
「ママ、しゅごいね?」
じっと見ていたアンジェラは、感動したのかちょっとだけ、言葉が可愛らしいことになっている。
そう思わせるラズのガラス細工は、いつ見ても素晴らしい。
今は、納得の行くおもしろいものを作っていないからか、顔が曇り加減であった。
私の方へ駆け寄ってくる。その前に、奥にいる誰かに一言二言言葉をかけて……
「お待たせしました!ここでは、暑すぎますから、店の方へ行きましょうか!」
ニカッと笑うラズベリーにそうしましょうと返事をして、元居た場所へと戻る。その間もラズは、何かを考えているような難しい顔をしていて、唸っていた。
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