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トトンガトンっ!
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駆け寄ってきたヤイコにニコリと微笑むと、お久しぶりです!と満面の笑みを返してくれる。
「今、何している?」
「出荷できる豚を見繕っているところですよ!全部出荷してしまうとダメなので……」
「……出荷」
「えぇ、食べるために育てているので!」
さも当たり前のように言われると、何も言えずにただ笑うことしか言えない。食卓に並ぶ肉やベーコン、ハムなどを思いおこすと、目の前にいる豚に対して悪い気がしてきた。
でも、おかげで、自身の体を作っていることもわかっているので感謝しかない。
「今更わかった気がする……」
「何が?」
「いただきますっていうじゃない?」
「あぁ、姫さん、言ってるよね?それが?」
「お母様に小さいときからご飯の前に必ず言いなさいと言われていたのだけど……何を意味するかあまりわからなかったのよね……恥ずかしいけど、今、わかったわ!」
「どういう意味なの?」
「私は、元々、料理人たちが料理を作ってくれることに対して、ありがとうと言うのだと思っていたの」
「それは、うん、そうだな」
「なんで、料理人だけにいうのだろう?と思っていたんだけど……違うのね!私の食卓にならぶ命あったモノたちに対して、その命をいただくって意味もあるんだわ……」
「命をいただく……アンナリーゼ様のお母様は素敵な考えの持ち主ですね!確かに、この子たちは食肉用に生まれて、そして、食べるんですけど……そっか……命あるものですものね!もちろん、捌いて肉や加工品にするときも、ひとつひとつを愛おしく思いながら包丁を入れいますが、そんな考えは全くありませんでした。家畜は結局食糧……と何処かで割り切っていたのかもしれませんね。お恥ずかしい」
苦笑いするヤイコに、イロイロと考えながらお世話をしてくれているのだと思うと、素直にありがとうとお礼の言葉が出てきた。
「えっ?どうされたのですか?」
「なんとなく、出てきたわ!私、ヤイコの動物に対して愛情も素敵だなって思っているわ!」
「ありがとうございます!私は、犬猫だけでなく、いつの間にか、たくさんの動物が大好きになったんです。最初は、生き死に対して涙を流していました、いつのまに命をなんとなく軽く考えてしまっていたように感じます。今回、アンナリーゼ様のお話を聞けて、よかった!私は、この子たちとの向き合い方を考えさせられました!」
ニッコリ笑いかけられ、こちらの方が驚きウィルと顔を見合わせてしまった。
それにしても、思ったより多くの豚がいることに驚いた。
「ヤイコ、ここには、どれくらいの豚がいるのかしら?」
「今は、常時70頭くらいですね!子豚も生まれますし……」
「70頭……そんなに管理してたら、大変じゃない?」
「まぁ、そうなんですけど……私、一人ではなく、他にも手伝ってくれる領民の方々がいますから!」
「そうなの?」
「えぇ、そうです!羊の毛刈りとときに、養豚を始めたいと話をしていたら、興味を持ってくれた四人が、今は私たちを手伝ってくれています!後で紹介しましょうか?」
「うーん、ヤイコが信頼できる人なら、それはそれで任せるわ!この領地のために、わざわざフレイゼンから来てもらったのだから!」
中を見せて!とお願いすると、いいですよ!こちらですと案内してくれるようだ。
今は、豚を外に出して厩舎の中を掃除しているところらしく、葡萄畑で走り回っているらしい。というか、さっきまでヤイコが追いまわしていた……が、正しい。今晩、精肉する豚をを選んでいたとのことだ。
「それにしても、綺麗な豚たちね?」
「それはそうですよ!豚は綺麗好きなんですから!実をいうと、私より綺麗好きかもしれません!」
泥だらけの繋ぎを少し恥ずかしそうにしながら指して、苦笑いをする。一方、豚の方は、手入れがされていることがわかる。とても、艶々しているのだ。
確かに、最初は可哀想だとも思ったが……だんだん、美味しそうに見えてきたりもする……
「美味しいベーコンになりそうね?」
「姫さん……食い意地!」
「はへぇ?」
「口に出てたぞ?ベーコンって……」
ため息をつくウィルとは反対に、ヤイコは大笑いをし始めた。
「……はぁ、笑った、笑った!アンナリーゼ様、美味しいベーコンって、笑わせていただきましたよ!作りましょう!美味しいベーコン!」
「……恥ずかしい。口に出てたなんて……あまりにいいお尻をしてたもんだから……穴があったら入りたいわ!」
両手で顔を押さえて、赤みが引くのを待っていた。どうして、口に出たのだろう……と、考えれば考えるほど、恥ずかしい。
「そういえば、加工場を作りたいって話をしていたのですが……それって、アンナリーゼ様に申請をすればいいのですか?」
「それは?」
「捌くので、生では日持ちしませんからね。アンナリーゼ様もさっき言っていたように、加工するのがいいかと思いまして……」
「なるほど……領地内だけでも、そうね……ベーコンなんかに加工した方がいいのね……うーん、養豚場を作っているなら、そうね……必要よね!」
うんうん唸り始めた。今まで、そんなこと考えもしてなかったことだ。新しく私が知らないところから話が始まっていたので……考える時間は欲しいが、この豚たちの食べごろは……待ってくれない。
「わかったわ!帰って、イチアに相談しておくわ!加工場を建てるにしても、いろいろと準備も必要だし……ちょっとだけ時間をちょうだい」
「わかりました!」
「ところで、今は、どうやっているの?」
「私の住んでいるところで作っています!今は、まだ、お試しなので……」
なるほどと頷いた。これは、さっそく、帰ってイチアにそうだんだと、頭の隅にメモをした。
「今、何している?」
「出荷できる豚を見繕っているところですよ!全部出荷してしまうとダメなので……」
「……出荷」
「えぇ、食べるために育てているので!」
さも当たり前のように言われると、何も言えずにただ笑うことしか言えない。食卓に並ぶ肉やベーコン、ハムなどを思いおこすと、目の前にいる豚に対して悪い気がしてきた。
でも、おかげで、自身の体を作っていることもわかっているので感謝しかない。
「今更わかった気がする……」
「何が?」
「いただきますっていうじゃない?」
「あぁ、姫さん、言ってるよね?それが?」
「お母様に小さいときからご飯の前に必ず言いなさいと言われていたのだけど……何を意味するかあまりわからなかったのよね……恥ずかしいけど、今、わかったわ!」
「どういう意味なの?」
「私は、元々、料理人たちが料理を作ってくれることに対して、ありがとうと言うのだと思っていたの」
「それは、うん、そうだな」
「なんで、料理人だけにいうのだろう?と思っていたんだけど……違うのね!私の食卓にならぶ命あったモノたちに対して、その命をいただくって意味もあるんだわ……」
「命をいただく……アンナリーゼ様のお母様は素敵な考えの持ち主ですね!確かに、この子たちは食肉用に生まれて、そして、食べるんですけど……そっか……命あるものですものね!もちろん、捌いて肉や加工品にするときも、ひとつひとつを愛おしく思いながら包丁を入れいますが、そんな考えは全くありませんでした。家畜は結局食糧……と何処かで割り切っていたのかもしれませんね。お恥ずかしい」
苦笑いするヤイコに、イロイロと考えながらお世話をしてくれているのだと思うと、素直にありがとうとお礼の言葉が出てきた。
「えっ?どうされたのですか?」
「なんとなく、出てきたわ!私、ヤイコの動物に対して愛情も素敵だなって思っているわ!」
「ありがとうございます!私は、犬猫だけでなく、いつの間にか、たくさんの動物が大好きになったんです。最初は、生き死に対して涙を流していました、いつのまに命をなんとなく軽く考えてしまっていたように感じます。今回、アンナリーゼ様のお話を聞けて、よかった!私は、この子たちとの向き合い方を考えさせられました!」
ニッコリ笑いかけられ、こちらの方が驚きウィルと顔を見合わせてしまった。
それにしても、思ったより多くの豚がいることに驚いた。
「ヤイコ、ここには、どれくらいの豚がいるのかしら?」
「今は、常時70頭くらいですね!子豚も生まれますし……」
「70頭……そんなに管理してたら、大変じゃない?」
「まぁ、そうなんですけど……私、一人ではなく、他にも手伝ってくれる領民の方々がいますから!」
「そうなの?」
「えぇ、そうです!羊の毛刈りとときに、養豚を始めたいと話をしていたら、興味を持ってくれた四人が、今は私たちを手伝ってくれています!後で紹介しましょうか?」
「うーん、ヤイコが信頼できる人なら、それはそれで任せるわ!この領地のために、わざわざフレイゼンから来てもらったのだから!」
中を見せて!とお願いすると、いいですよ!こちらですと案内してくれるようだ。
今は、豚を外に出して厩舎の中を掃除しているところらしく、葡萄畑で走り回っているらしい。というか、さっきまでヤイコが追いまわしていた……が、正しい。今晩、精肉する豚をを選んでいたとのことだ。
「それにしても、綺麗な豚たちね?」
「それはそうですよ!豚は綺麗好きなんですから!実をいうと、私より綺麗好きかもしれません!」
泥だらけの繋ぎを少し恥ずかしそうにしながら指して、苦笑いをする。一方、豚の方は、手入れがされていることがわかる。とても、艶々しているのだ。
確かに、最初は可哀想だとも思ったが……だんだん、美味しそうに見えてきたりもする……
「美味しいベーコンになりそうね?」
「姫さん……食い意地!」
「はへぇ?」
「口に出てたぞ?ベーコンって……」
ため息をつくウィルとは反対に、ヤイコは大笑いをし始めた。
「……はぁ、笑った、笑った!アンナリーゼ様、美味しいベーコンって、笑わせていただきましたよ!作りましょう!美味しいベーコン!」
「……恥ずかしい。口に出てたなんて……あまりにいいお尻をしてたもんだから……穴があったら入りたいわ!」
両手で顔を押さえて、赤みが引くのを待っていた。どうして、口に出たのだろう……と、考えれば考えるほど、恥ずかしい。
「そういえば、加工場を作りたいって話をしていたのですが……それって、アンナリーゼ様に申請をすればいいのですか?」
「それは?」
「捌くので、生では日持ちしませんからね。アンナリーゼ様もさっき言っていたように、加工するのがいいかと思いまして……」
「なるほど……領地内だけでも、そうね……ベーコンなんかに加工した方がいいのね……うーん、養豚場を作っているなら、そうね……必要よね!」
うんうん唸り始めた。今まで、そんなこと考えもしてなかったことだ。新しく私が知らないところから話が始まっていたので……考える時間は欲しいが、この豚たちの食べごろは……待ってくれない。
「わかったわ!帰って、イチアに相談しておくわ!加工場を建てるにしても、いろいろと準備も必要だし……ちょっとだけ時間をちょうだい」
「わかりました!」
「ところで、今は、どうやっているの?」
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