672 / 1,513
石畳の街道の進捗
しおりを挟む
急に来た私に嫌な顔ひとつせず、リリーは石畳の街道について話をしてくれる。私が、領地を離れる前は、確か石切の町を出るか出ないかくらいだったのを思えば、ずいぶん拡張されて行っているのがわかった。
「ピューレがここの指示を担ってくれているのよね?」
「そうです。基本的にはって話ですが、本人も動き回っているので……カノタも指示に回っていますよ!」
「そうなの?石の橋の方もやっているわよね?」
「えぇ、そっちの設計は終わって、リアノさんの許しが出たそうで進めていますね!馬車を通すことを考えて、盛土を作っているところらしいです!」
「盛土?なら、ここを掘り起こしたときの土とかを持って行っているの?」
「そうですね!よくわかりましたね?」
えへへと笑うと、ウィルに褒められてないからなと言われる。大慌てでリリーが否定するが、私もそんなことですねたりは、しないのだ。大人だし……そうは、思っていないウィルとリリーはため息をついているが……一応、ウィルとは同級生なはずだった。
「ウィルって、私と同級生よね?」
「年齢はね~」
「ん?どういうこと?」
「精神年齢は、姫さんはもっと若いでしょ?」
「若いって!」
「これでも、言葉を選んだんだから!」
「選ばなくていいし!」
二人でくだらないことで言い合いをしていると、作業中の近衛たちが顔をあげる。昼食が終わり、作業に戻っている近衛たちの真ん中で、リリーから今の進捗状況を聞いているところだったので、私たちは、とても目立った。
「そういえば、どこまで今は終わっているの?サラおばさんの村から来たんだけど、半分くらいできていたわ!」
「そちらから、来られたのですね!そうですね、今は二手に分かれていますので、半分はユービスの店がある町を整備中です」
「本当?じゃあ、サラおばさんの方の道を迂回して砂糖工場の方へ抜ければ、道は比較的いいのかしら?」
「そういわれれば、そうですね!若干の遠回りな気がしますが、馬車だと凸凹の道を走るよりかは、早く進めるかもしれません。馬だけなら、どちらもいいかもしれませんが……」
「確かに……馬なら、どちらでも、そう変わらないわね。基本的に領地の移動は、馬が多いけど……お店の仕入れなんかは、馬車だからね」
「そうですね!できる限り、早く領地内だけでも整備できると、移動がしやすくなるんですけどね……」
リリーは、荷馬車も使って移動する場合もあるので、そこら辺は、私より知っている。なので、頷いておく。
そういえば、もうそろそろ、最終の葡萄の収穫期だったなと思い浮かべる。
去年は、無理やり作った葡萄酒。今年は、心機一転、準備に準備を重ねて始めたので、楽しみであった。その辺の事情も知っているだろうか?
報告書でもらう情報量は、多くはないので、実際動き回っているリリーから話が聞ける方がいい。
「そういえば、最終の葡萄の収穫が近づいていると思うんだけど……」
その言葉に反応したのは、周りで一生懸命石畳の街道を作ってくれている近衛たちだった。
聞き耳をたてているのが、わかる。
「最後の葡萄は、アンナ様が好きな葡萄ジュースにできるとびきり甘い葡萄ですね!夏の太陽をサンサンと浴びて、多少、全盛期からは落ちるらしいのですが、いい出来らしいです」
「本当?」
「えぇ、本当ですよ!羊の飼い放しをしていたのは覚えていますか?」
「もちろん!今日は、そこにもいくつもり!」
「それなら、葡萄も一緒に見に行ってくるといいですよ!」
「うん、わかったわ!」
「葡萄の甘い香りに誘われて、害獣が来ることもあるそうですから、気を付けてくださいね?」
「害獣?」
「熊です。冬眠までは、まだ、だいぶ先ですが……甘い葡萄は好き見たいですから!」
「そうなんだ……なんとか、ならないのかしら?」
「今のところ、被害はないですけど……冬の前になると、凶暴になるかもしれませんから……ちょっと、考えましょう」
「そうね!今度、屋敷に来たとき……うぅん、帰ったらイチアに相談してみる」
「お願いします!そういえば、今年は、盥の上で踊らないのですか?」
去年のことを思い出す。お掃除隊を連れて、領地のあちこちを回っていた。
そのとき、葡萄酒は廃ったと諦めていた酒蔵で、造ろう!と後押ししたこと、そして、私自ら、葡萄酒の原材料となる葡萄を潰す作業に関わったことを思い出す。
確かに……今よりずっと領地は大変だったけど……楽しかった!思い出すだけで胸が温かくなる。
「なんだか、懐かしいわね!今年も、参加できればいいけど……」
「山のように執務があるんですね?」
「……抜け出していこうかしら?後で、こっそり日時だけ教えてくれるかしら?突撃するわ!」
「わかりました!決まったら、こっそりとお知らせに参ります!」
ふふっと笑いあうと、姫さん……と呆れ声が聞こえてくる。
きっと、俺が聞いているから、行かせないよ?と言いたいのだろう。イチアにまかせっきりだった執務は、本当にたくさんあるのだ。セバスもいるとはいえ、イチアに押し付けていたことが、申し訳なくなった。
「わかっているわ!楽しいことばかりを優先しちゃダメだって言いたいんでしょ?でも、ほら、みんな葡萄酒が飲みたいって顔をしているし?」
周りを見渡すと、キラキラした目をこちらに向けてくる近衛たち。呆れたというウィルに苦笑いする。
「みんな、葡萄酒好きだよね?」
「もちろんです!」
「ほら、みんな好きだって!」
「わかったわかった!でも、姫さん一人で作れるものじゃないからな!」
「収穫もありますからね……休日の近衛の数人にお手伝いを頼もうかと思っています!」
うげ……と言っているものや、やったっと笑顔のもの。きっと、笑顔の近衛は、休日なのだろう。
「じゃあ、任せるわ!私は、ひたすら、執務を片付ける!」
「よしっ、その意気で頑張ろうな!姫さん」
ウィルに言われると……なんだか不満なのだが、私がやらないといけないこと……私しかできないことも多いのだから、ふぅとため息一つついて笑いかける。
その後もリリーの話を聞き、私は次なる目的地へと馬に揺られるのであった。
「ピューレがここの指示を担ってくれているのよね?」
「そうです。基本的にはって話ですが、本人も動き回っているので……カノタも指示に回っていますよ!」
「そうなの?石の橋の方もやっているわよね?」
「えぇ、そっちの設計は終わって、リアノさんの許しが出たそうで進めていますね!馬車を通すことを考えて、盛土を作っているところらしいです!」
「盛土?なら、ここを掘り起こしたときの土とかを持って行っているの?」
「そうですね!よくわかりましたね?」
えへへと笑うと、ウィルに褒められてないからなと言われる。大慌てでリリーが否定するが、私もそんなことですねたりは、しないのだ。大人だし……そうは、思っていないウィルとリリーはため息をついているが……一応、ウィルとは同級生なはずだった。
「ウィルって、私と同級生よね?」
「年齢はね~」
「ん?どういうこと?」
「精神年齢は、姫さんはもっと若いでしょ?」
「若いって!」
「これでも、言葉を選んだんだから!」
「選ばなくていいし!」
二人でくだらないことで言い合いをしていると、作業中の近衛たちが顔をあげる。昼食が終わり、作業に戻っている近衛たちの真ん中で、リリーから今の進捗状況を聞いているところだったので、私たちは、とても目立った。
「そういえば、どこまで今は終わっているの?サラおばさんの村から来たんだけど、半分くらいできていたわ!」
「そちらから、来られたのですね!そうですね、今は二手に分かれていますので、半分はユービスの店がある町を整備中です」
「本当?じゃあ、サラおばさんの方の道を迂回して砂糖工場の方へ抜ければ、道は比較的いいのかしら?」
「そういわれれば、そうですね!若干の遠回りな気がしますが、馬車だと凸凹の道を走るよりかは、早く進めるかもしれません。馬だけなら、どちらもいいかもしれませんが……」
「確かに……馬なら、どちらでも、そう変わらないわね。基本的に領地の移動は、馬が多いけど……お店の仕入れなんかは、馬車だからね」
「そうですね!できる限り、早く領地内だけでも整備できると、移動がしやすくなるんですけどね……」
リリーは、荷馬車も使って移動する場合もあるので、そこら辺は、私より知っている。なので、頷いておく。
そういえば、もうそろそろ、最終の葡萄の収穫期だったなと思い浮かべる。
去年は、無理やり作った葡萄酒。今年は、心機一転、準備に準備を重ねて始めたので、楽しみであった。その辺の事情も知っているだろうか?
報告書でもらう情報量は、多くはないので、実際動き回っているリリーから話が聞ける方がいい。
「そういえば、最終の葡萄の収穫が近づいていると思うんだけど……」
その言葉に反応したのは、周りで一生懸命石畳の街道を作ってくれている近衛たちだった。
聞き耳をたてているのが、わかる。
「最後の葡萄は、アンナ様が好きな葡萄ジュースにできるとびきり甘い葡萄ですね!夏の太陽をサンサンと浴びて、多少、全盛期からは落ちるらしいのですが、いい出来らしいです」
「本当?」
「えぇ、本当ですよ!羊の飼い放しをしていたのは覚えていますか?」
「もちろん!今日は、そこにもいくつもり!」
「それなら、葡萄も一緒に見に行ってくるといいですよ!」
「うん、わかったわ!」
「葡萄の甘い香りに誘われて、害獣が来ることもあるそうですから、気を付けてくださいね?」
「害獣?」
「熊です。冬眠までは、まだ、だいぶ先ですが……甘い葡萄は好き見たいですから!」
「そうなんだ……なんとか、ならないのかしら?」
「今のところ、被害はないですけど……冬の前になると、凶暴になるかもしれませんから……ちょっと、考えましょう」
「そうね!今度、屋敷に来たとき……うぅん、帰ったらイチアに相談してみる」
「お願いします!そういえば、今年は、盥の上で踊らないのですか?」
去年のことを思い出す。お掃除隊を連れて、領地のあちこちを回っていた。
そのとき、葡萄酒は廃ったと諦めていた酒蔵で、造ろう!と後押ししたこと、そして、私自ら、葡萄酒の原材料となる葡萄を潰す作業に関わったことを思い出す。
確かに……今よりずっと領地は大変だったけど……楽しかった!思い出すだけで胸が温かくなる。
「なんだか、懐かしいわね!今年も、参加できればいいけど……」
「山のように執務があるんですね?」
「……抜け出していこうかしら?後で、こっそり日時だけ教えてくれるかしら?突撃するわ!」
「わかりました!決まったら、こっそりとお知らせに参ります!」
ふふっと笑いあうと、姫さん……と呆れ声が聞こえてくる。
きっと、俺が聞いているから、行かせないよ?と言いたいのだろう。イチアにまかせっきりだった執務は、本当にたくさんあるのだ。セバスもいるとはいえ、イチアに押し付けていたことが、申し訳なくなった。
「わかっているわ!楽しいことばかりを優先しちゃダメだって言いたいんでしょ?でも、ほら、みんな葡萄酒が飲みたいって顔をしているし?」
周りを見渡すと、キラキラした目をこちらに向けてくる近衛たち。呆れたというウィルに苦笑いする。
「みんな、葡萄酒好きだよね?」
「もちろんです!」
「ほら、みんな好きだって!」
「わかったわかった!でも、姫さん一人で作れるものじゃないからな!」
「収穫もありますからね……休日の近衛の数人にお手伝いを頼もうかと思っています!」
うげ……と言っているものや、やったっと笑顔のもの。きっと、笑顔の近衛は、休日なのだろう。
「じゃあ、任せるわ!私は、ひたすら、執務を片付ける!」
「よしっ、その意気で頑張ろうな!姫さん」
ウィルに言われると……なんだか不満なのだが、私がやらないといけないこと……私しかできないことも多いのだから、ふぅとため息一つついて笑いかける。
その後もリリーの話を聞き、私は次なる目的地へと馬に揺られるのであった。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる