ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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見せたい景色Ⅳ

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 私とジョージアが奥へ進むと、家の片づけをしている人たちが十人程いた。


「こんにちは!」
「領主様!どうされたのですか?」
「うん、あれからどうなった視察にきたの。しばらく、来れなくてごめんなさいね?」
「いえ、大丈夫ですよ!みなさん、よくしてくださいましたから。それにしても後ろの方は?」
「私の旦那様よ!引継ぎに来たの。旦那様に」
「領主様は、公都へ戻られるのですか?」
「いいえ、アンバー領へ戻るつもりなの」
「そうなのですね」


 残念そうにするお姉さんに私は肩に手をおき微笑んだ。


「様子は見に来るわ!ごめんなさいね……あっちもこっちも領地があるから、飛び回っていて……
 みなには心配をかけてしまって……」
「いえ、領主様が私たちと真剣に向き合ってくれていることは、今回のことでわかりましたから、
 大丈夫です!そうすると、近衛の方々もひかれるんでしょうか?」
「えぇ、そうね。コーコナが落ち着いたら、まずは半分をアンバーに移動してもらう予定よ!そのあと、
 アンバーでも受け入れ態勢が出来れば、残りも来てもらうことになるわ!」
「そうなのですね!少々賑やかでしたので、寂しくなりますね」
「そうね……近衛は向こうにも仕事が待っているから、それは仕方のないことだわ!」


 誰か想い人でもできたのだろうか?なんだか、妙に近衛たちを気にするお姉さんと話を終え、ジョージアに今回の災害の話をした。
 綺麗に片付いたとはいえ、まだ、少し残っているところを残って片付けてくれている領民がいる。


「ここが、崩れた場所です」
「なるほど……上の場所は、もう補強が済んでいるんだね?」
「えぇ、なるべく早く終わらせるよう指示をしましたので、同時進行で補強をしてくれたと思います」
「すごいな、自然の力は……家が何軒かダメになったって言っていただろ?あの壊れていない家くらい
 のものが壊されたんだったら……とても人間では太刀打ちできないね?」
「えぇ、当時の現場もすごかったです。私は、災害が起こった後に駆けつけたので、見ただけで恐ろし
 かったです。ただ、災害に実際にあった領民たちは生きた心地がしなかったんじゃないでしょうか?
 今後は、心の方の様子も見ていくとヨハンの助手が言っていたので……ヨハンを交えて、今後の方針を
 決めることになります」
「そこは、俺の出番だね。口を出すわけではないけど、方向性の話は聞いておかないと」
「そうですね。領民との調整役というところでしょうか?決して高圧的にならず、まずは、領民たちが
 どうしたいのかを含め、話し合ってほしいところです」


 わかったと頷く。ジョージアは家があった場所をじっと見つめていた。何を思っているのか、私からは考えも及ばなかったが、ジョージアにはジョージアなりの領民への配慮があるのだろう。
 優しいジョージアなら、大丈夫だと頷いた。


「災害現場も見れたことだし、次に移動?まだ、まわるところがあるんでしょ?」
「えぇ、あります。でも、その前に、みなに声をかけてから行きましょう!」
「そういうところ、まめだよね?」
「そうですか?私に土を掘れと言われても一人じゃできませんからね。みながいてくれるからこそ成り
 立っているので、感謝はどんどん伝えていくべきだと思います!」


 こっちです!と手を引き向かったのは、山の方だ。少々登ったところで作業をしてくれていた。


「みんなぁ!お疲れ様!片付け手伝ってくれてありがとう!」
「あっ、アンナリーゼ様!」
「領主様!」


 声をかけると、下を向いて土砂を掘り起こしていた人たちがこちらを向く。


「今日は、どうされたんで?」
「視察だよ!領地をぐるっと回ってこようと思って!今回は、ここが1番の被害だったけど、他にも
 なかったかの確認を兼ねて回っているの!」
「なるほど。アンナリーゼ様の元気な顔見れてよかったで!」


 あははと大笑いするみなに、心配かけたねと微笑むとなんのなんのという彼ら。早々に戻ってくると信じて待っていてくれたらしい。
 再度、ありがとうとお礼をいう。


「私、もう少し、コーコナが落ち着いたら、アンバーに戻ることにしたの!近衛のみなは、半分ずつ
 アンバーへ移動してもらうから、そのつもりでいてね!それと、向こうに行っても街道を作る工事
 とか、剣を握ることが少ないからくれぐれも不満を言わないでちょうだいね!」
「わかりました!どこまでもお供します!」


 近衛の誰かが発した言葉に、みなが大笑いだ。
 そんな様子を隣でため息ついているジョージア。私は、こんな様子も見せたかったのだが……これは、見せなくてよかったらしい。


「じゃあ、また、アンバーでね!コーコナのみなは、お手伝いしてくれて本当にたすかりました!
 まだ、本来の仕事もあるけど、力かしてね!」
「あったりまえよ!」
「領主様、また、コーコナに来てください!」


 口々にいう領民にありがとうの感謝とまたねと言葉を残して、この場を発つことにした。私を見つけて、駆けてきた少女が、これをと渡してくれたのは、コーコナの紋章のが刺繍された布であった。
 聞くと、次代のコーコナのお針子さんになるべく練習しているらしい。ありがとうともらって、馬の鞍につけた。
 かわいい女の子は、嬉しそうにして家に駆けていく。


「すごいな、アンナは。老若男女問わず人気者だ。あんなに可愛いお嬢さんにまで、贈り物をもらえる
 だなんて!」
「いいでしょ?次代のお針子さんは、もう、上手よ!いつか、ナタリーの側で、1番のお針子になって
 いるかもしれませんね!」


 私たちは、馬の背に揺られ、次なる町へと移動する。
 伝染病が流行っている町や村のひとつ手前で、今日は泊まることになる。そこまでの間のコーコナの景色や私が知りうる話をジョージアにすると、嬉しそうに頷きながら聞いてくれた。
 なんだか、暗い知らせが多い中、こんなふうに穏やかな時間を過ごす幸せを噛みしめたのである。
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