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アンナ様が?
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「雨、本降りになってきたわね……」
「本当ですね。あんなに晴れていたのに、急激に……」
「この前より、雨量が多い気がするのだけど……何もなければ、いいわね」
私はあれから、馬車に揺られてコーコナ領の領主の館に帰ってきた。執務室で窓の外を覗いていったときだった。
体から、ふっと力が抜けていく。
「アンナリーゼ様!」
リアンの叫ぶ声が聞こえた気がした。ただ、返事をしようにも、どうも頭が痛いし声がでない。
大丈夫よ、そんなに心配しなくても……
声にならず、リアンに微笑んだつもりだったが、目には涙が溜まっているのか、周りがよく見えなかった。
「叫び声が聞こえたけど……アンナ様?……アンナ様!」
あぁ、アデルの声も……聞こえる。
そぉーっと手を伸ばすと、ぎゅっと握ってくれる。このごつごつした手はアデルだろう。剣ダコがあった。手を握れば、どんなふうに剣を握っているのか、どこに力を入れれいるのかわかるのだが、今は、頭痛でうまく考えられなかった。
「アンナ様をベッドに!」
「大丈夫でしょうか?おでこ……熱が、高いですね!」
「さっき、ヨハン教授がいましたから呼んできます!その前に、アンナ様をベッドに運びます」
「では、私が呼んでまいります!」
バタバタとリアンらしくないくらい慌てて部屋から出ていった。私は誰かに抱かれているのか、ふわっと体が浮く。
また、バタバタと走ってくる子がいた。ココナだろうとあたりをつけ、私は、くたっと体を預けた。
「アンナリーゼ様のお部屋は、こちらです!ベッドの用意もしてありますので、こちらに。夜着に
着せ替えますから、部屋を……」
「あぁ、わかった。アンナ様を頼んだよ!」
部屋を出ていったのはアデルだ。
「アンナリーゼ様、着替えさせますので、少々お手数ですが……」
私は、しゃべれないので、頷くと着替えさせてくれた。ココナの手が冷たくて気持ちいい。着替え終わった頃、リアンがヨハンと一緒に部屋に入ってきたようだ。
そんな足音がしているような気がする。
「あぁ、こりゃ、風邪ですね?雨に打たれてたんじゃないですか?まったく……このお姫様は、自分の
ことより、まず、身近な人、領民へ手を差し伸べるから……自分が調子悪いことをわかってなかった
んだ」
「あの……直りますよね?」
「ただの風邪だからね。あったかいものを食べさせて、熱があるから汗をいっぱいかかせてゆっくり
すれば、元気になるよ。元々、体力もある方だから、明日の朝にはケロッとしているさ」
「本当ですか?もぅ、心配で……」
「リアンさんも、母親なんだ。子どもが風邪をひくこともあるだろ?」
「でも、アンナリーゼ様は、全然風邪などひいたことなんて……」
大きくため息をつくヨハン。私のおでこに手をおくと、気持ちいい。
「頭、痛いはずだから、早く冷やしてあげて。アンナリーゼ様は、元気だけど、さすがに今回は、
あちこちの対応もしながら遠方に視察行って、そのままコーコナ領まで来たんだ。こっちに来ても、
休む間もなく、動き回っていたんだろ?どうせ。
風邪って言っても、疲れが溜まっていたんだと思うよ。雨に打たれたことがきっかけになっただけ
で……1日ゆっくりさせてあげて。働くと言っても叱り飛ばしてさ!
デリアがいないことがやっぱり大きいな。アイツなら、アンナリーゼ様の健康管理を徹底的にする
から」
「……不甲斐ないです」
「あっ、リアンさんを責めているわけじゃないんだ!リアンさんはよくやってるよ!このお嬢さんが
少々自分勝手に動き回るから、悪いんだ。体の芯から疲れ切ってしまっただけだから」
リアンは、肩を落とし、ヨハンは薬を出してくれた。
「今、長雨で伝染病が流行っているから、それだけは気を付けてあげて。体が弱っているから、長引く
可能性がなくもないから。まぁ、心配には及ばないだろうけどね!」
それじゃあ、お大事にと部屋から出ていくヨハンをリアンは見送った。その代わりに、アデルが部屋に入ってきた。
「あの、ヨハン教授は、なんとおっしゃってたんですか?」
「……お疲れのようです。それが、雨を引き金に風邪をひかれたようで……明日には元気になるよう
ですよ!」
「そうですか……アンナ様が、倒れられるなんて、驚いてしまいました」
「えぇ、いつも元気ですからね。私が至らぬばかりに、こんなことに……もっと、気を付けていれば……」
「リアンさん、それは、言っても仕方のないことです。アンナ様の性格的に、出歩かないなんて
ありえないですし、気にはなっていることが、少々多いのですから。
小さな体で頑張っているアンナ様を支えるのが、俺らの仕事ですから、そんな顔しないでください」
ありがとうございます、少しだけアンナリーゼ様を見ていてくださいますか?といって、リアンは部屋から出ていった。
「アンナ様、早く元気になってくださいね?」
「んん……リアン、ご……めんね……」
熱が高いのか、ふぅふぅと吐く息も熱く、さっきよりもクラクラしてきた。
「ゆっくり休んでください」
アデルの声を最後に、私は、ぐっすり眠りについた。
目を開けたのは明け方。
看病をしてくれていたのだろう。リアンは、ベッドに突っ伏した状態で眠っていた。
私はその頭を優しく撫でる。
「心配かけて、ごめんね……もう少しだけ、自分のことも考えるわね……」
「……んん……アンナ……リーゼ様?」
「おはよう!昨日はごめんね。ありがとう!」
もう少し寝ていてと言った側から、リアンが目を覚まして、レオのように叱られる。
私は反省も込め、本日は1日ベッドの上で過ごす様にと、リアンを始め、入れ替わり立ち代わり、アデルやココナ、ノクトにまで釘を刺されて行くのであった。
「本当ですね。あんなに晴れていたのに、急激に……」
「この前より、雨量が多い気がするのだけど……何もなければ、いいわね」
私はあれから、馬車に揺られてコーコナ領の領主の館に帰ってきた。執務室で窓の外を覗いていったときだった。
体から、ふっと力が抜けていく。
「アンナリーゼ様!」
リアンの叫ぶ声が聞こえた気がした。ただ、返事をしようにも、どうも頭が痛いし声がでない。
大丈夫よ、そんなに心配しなくても……
声にならず、リアンに微笑んだつもりだったが、目には涙が溜まっているのか、周りがよく見えなかった。
「叫び声が聞こえたけど……アンナ様?……アンナ様!」
あぁ、アデルの声も……聞こえる。
そぉーっと手を伸ばすと、ぎゅっと握ってくれる。このごつごつした手はアデルだろう。剣ダコがあった。手を握れば、どんなふうに剣を握っているのか、どこに力を入れれいるのかわかるのだが、今は、頭痛でうまく考えられなかった。
「アンナ様をベッドに!」
「大丈夫でしょうか?おでこ……熱が、高いですね!」
「さっき、ヨハン教授がいましたから呼んできます!その前に、アンナ様をベッドに運びます」
「では、私が呼んでまいります!」
バタバタとリアンらしくないくらい慌てて部屋から出ていった。私は誰かに抱かれているのか、ふわっと体が浮く。
また、バタバタと走ってくる子がいた。ココナだろうとあたりをつけ、私は、くたっと体を預けた。
「アンナリーゼ様のお部屋は、こちらです!ベッドの用意もしてありますので、こちらに。夜着に
着せ替えますから、部屋を……」
「あぁ、わかった。アンナ様を頼んだよ!」
部屋を出ていったのはアデルだ。
「アンナリーゼ様、着替えさせますので、少々お手数ですが……」
私は、しゃべれないので、頷くと着替えさせてくれた。ココナの手が冷たくて気持ちいい。着替え終わった頃、リアンがヨハンと一緒に部屋に入ってきたようだ。
そんな足音がしているような気がする。
「あぁ、こりゃ、風邪ですね?雨に打たれてたんじゃないですか?まったく……このお姫様は、自分の
ことより、まず、身近な人、領民へ手を差し伸べるから……自分が調子悪いことをわかってなかった
んだ」
「あの……直りますよね?」
「ただの風邪だからね。あったかいものを食べさせて、熱があるから汗をいっぱいかかせてゆっくり
すれば、元気になるよ。元々、体力もある方だから、明日の朝にはケロッとしているさ」
「本当ですか?もぅ、心配で……」
「リアンさんも、母親なんだ。子どもが風邪をひくこともあるだろ?」
「でも、アンナリーゼ様は、全然風邪などひいたことなんて……」
大きくため息をつくヨハン。私のおでこに手をおくと、気持ちいい。
「頭、痛いはずだから、早く冷やしてあげて。アンナリーゼ様は、元気だけど、さすがに今回は、
あちこちの対応もしながら遠方に視察行って、そのままコーコナ領まで来たんだ。こっちに来ても、
休む間もなく、動き回っていたんだろ?どうせ。
風邪って言っても、疲れが溜まっていたんだと思うよ。雨に打たれたことがきっかけになっただけ
で……1日ゆっくりさせてあげて。働くと言っても叱り飛ばしてさ!
デリアがいないことがやっぱり大きいな。アイツなら、アンナリーゼ様の健康管理を徹底的にする
から」
「……不甲斐ないです」
「あっ、リアンさんを責めているわけじゃないんだ!リアンさんはよくやってるよ!このお嬢さんが
少々自分勝手に動き回るから、悪いんだ。体の芯から疲れ切ってしまっただけだから」
リアンは、肩を落とし、ヨハンは薬を出してくれた。
「今、長雨で伝染病が流行っているから、それだけは気を付けてあげて。体が弱っているから、長引く
可能性がなくもないから。まぁ、心配には及ばないだろうけどね!」
それじゃあ、お大事にと部屋から出ていくヨハンをリアンは見送った。その代わりに、アデルが部屋に入ってきた。
「あの、ヨハン教授は、なんとおっしゃってたんですか?」
「……お疲れのようです。それが、雨を引き金に風邪をひかれたようで……明日には元気になるよう
ですよ!」
「そうですか……アンナ様が、倒れられるなんて、驚いてしまいました」
「えぇ、いつも元気ですからね。私が至らぬばかりに、こんなことに……もっと、気を付けていれば……」
「リアンさん、それは、言っても仕方のないことです。アンナ様の性格的に、出歩かないなんて
ありえないですし、気にはなっていることが、少々多いのですから。
小さな体で頑張っているアンナ様を支えるのが、俺らの仕事ですから、そんな顔しないでください」
ありがとうございます、少しだけアンナリーゼ様を見ていてくださいますか?といって、リアンは部屋から出ていった。
「アンナ様、早く元気になってくださいね?」
「んん……リアン、ご……めんね……」
熱が高いのか、ふぅふぅと吐く息も熱く、さっきよりもクラクラしてきた。
「ゆっくり休んでください」
アデルの声を最後に、私は、ぐっすり眠りについた。
目を開けたのは明け方。
看病をしてくれていたのだろう。リアンは、ベッドに突っ伏した状態で眠っていた。
私はその頭を優しく撫でる。
「心配かけて、ごめんね……もう少しだけ、自分のことも考えるわね……」
「……んん……アンナ……リーゼ様?」
「おはよう!昨日はごめんね。ありがとう!」
もう少し寝ていてと言った側から、リアンが目を覚まして、レオのように叱られる。
私は反省も込め、本日は1日ベッドの上で過ごす様にと、リアンを始め、入れ替わり立ち代わり、アデルやココナ、ノクトにまで釘を刺されて行くのであった。
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