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晴れているって気持ちいい
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「アンナリーゼ様は、芋の皮むきが上手なんですね?」
奥さまがたに褒められ、照れながら、しょりしょりと皮を向いていく。今日は、体が冷えるといけないから、温かいスープをと考えていたにも関わらず、晴れて暑いくらいの日差しのおかげで、私たちも汗をかきながら調理を進めていた。
「ふぅ……これだけむいたらいいかしら?」
「結局、今日は熱いスープは、ダメですね……汗が止まりませんもの!」
ナタリーも額の汗を拭きながら、手で顔を煽っている。
あっつ……とベリルは素が出ている。お嬢様は、こんな気温のなか、料理人がするような皮むきや調理などしたことがないのだろう。わたわたとしながら、火の側で番をしていた。
「アンナリーゼ様、大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ!それより……このタオルを濡らしてくれる?」
「わかりました。少々お待ちください!」
火の番をしているベリルは、顔を真っ赤にしながら、ふぅふぅっと言っていた。お水とリアンが濡らしてきてくれたタオルをもってベリルの側に行く。
火の側だけあって、私が皮むきをしていたところより、さらに暑い。
「ベリル、水分補給をしなさい。熱で倒れてしまうわ!」
「……ありがとうございます」
「あと、はい、これ使って!」
「何でしょう?」
手渡したタオルを不思議そうに見つめていた。そうすると、奥さまがたのうちの一人が、優しく笑いかけ使い方を教えてくれる。
「まず、顔を冷やして、それが終わったら首に置くんだ。真夏の火の番は大変だろ?」
「……はい、こんなに大変だとは」
そういってから、言われた通りにタオルを顔に当てると、ひゃっ!っと声を出した。
「ふわぁ……気持ちいい……」
「首に当てるともっと気持ちいいよ!」
私用に用意してくれた分をベリルの首筋に当てると、座っていたベリルのお尻が冷たさで驚いて跳ねた。
「つめたっ!はぁ……気持ちいい……」
「晴れて気持ちもいいし、今日はいい日ね!」
「本当ですよ!こんなに晴れるなんて……夏になる前から、曇りや雨が多くなって……こんなに晴れた
のは、本当に久方ぶりです!」
料理を作っている奥さまがたも気持ちのいい晴れの日を喜んでいる。
私も、こんなにいい天気になるなんて……と思わず、口から出てしまったが、熱をはらむ風で、少しでも雨の影響が出なければいいのに……と思わずにはいられなかった。
「料理も出来ましたから、みなさん順番に呼びに行きましょう!」
無造作に呼びに行こうとする奥さまがたを止め、まずは、指示を出しているアデルたちを集め順番に昼食に来るように伝える。
すると、割り振られた順番通り、30人がぞろぞろと歩いてくるので、給仕に勤しむことになった。
「領主様が、給仕だなんて!恐れ多くて……」
私の顔を知っているのか、みなが恐縮したが、私は頑張ってくれているのだから当たり前よ!と配膳されたものを配っていく。
「おかわりはあるから、いっぱい食べてね!」
結局、冷たいポタージュと柔らかいパンにベーコンや野菜をたっぷり挟んだものを出すことにした。なので、パンさえ焼ければ、材料がある限り、昼食を提供できる形だ。
ポタージュもたくさん作ったので余るだろう。今も、作っているところだし。
「領主様、おかわりいいですか?」
「えぇ、もちろんよ!持っていくから、待っていて!」
くるくると回りながら、給仕していく。
あちこちから、うめぇ!とか、こんなの食ったことない!とかわいわいと騒いで食べてくれた。
お腹いっぱいになったら、次は別の班が来る。
やはり、私が給仕していることに驚きはしていたが、すぐに慣れ、おかわりのリクエストをしていった。
近衛以外には、てるてる坊主のおまけを渡していく。
「あんの……領主様!」
「はいはい!」
「この、これ……なんですか?」
「私が作ったお守りみたいなものよ!家に帰ったら、窓際にこうやってつけて置いてくれる?明日も
晴れますようにってお祈りして!」
「そうすると、晴れますか?」
「子供だましのおまじないだと思うけど……今日は、ほらぁ!」
上を指さし、雲ひとつない空を見上げた。
「さっそく、家に帰ったら、つけてみます!今日、晴れたのは、これのおかげなのか……
それにしても、いい布で出来ていますね?」
「それ、私を始め、貴族のドレスを作るときに出た端切れを使っているからね!みんなが作ってくれた
布をなるべく捨てずに使える方法を模索していたから、今回、使わせてもらったわ!」
「おらたちが、作ったものだか?」
「こんなに上質な布になっているのか?」
「あの、領主様が着ている服も……?」
「もちろん、コーコナ領で作られた綿花や養蚕で作られた糸を元に作られたものよ!」
おぉーっと声が響き、コーコナの領民たちは、とても嬉しそうにしていた。
私は、領主なのだから、アンバーのものもコーコナのものも1番に消費する宣伝するのは当たり前なのに、そう、感動されたり喜ばれたりすると、変な感じだ。
「お昼からも、頑張ってね!昨日とは違って、暑いからしっかり水分補給!たまに塩分も補給してね!」
「わかったよ、領主様!うまい昼飯ありがとう!」
手を振り作業へ戻っていく領民や近衛を見送りながら、新しくきた腹ペコたちへ昼ご飯を配膳する。こちらでも、私の顔を見て、恐縮する人たちで溢れかえったのである。
奥さまがたに褒められ、照れながら、しょりしょりと皮を向いていく。今日は、体が冷えるといけないから、温かいスープをと考えていたにも関わらず、晴れて暑いくらいの日差しのおかげで、私たちも汗をかきながら調理を進めていた。
「ふぅ……これだけむいたらいいかしら?」
「結局、今日は熱いスープは、ダメですね……汗が止まりませんもの!」
ナタリーも額の汗を拭きながら、手で顔を煽っている。
あっつ……とベリルは素が出ている。お嬢様は、こんな気温のなか、料理人がするような皮むきや調理などしたことがないのだろう。わたわたとしながら、火の側で番をしていた。
「アンナリーゼ様、大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ!それより……このタオルを濡らしてくれる?」
「わかりました。少々お待ちください!」
火の番をしているベリルは、顔を真っ赤にしながら、ふぅふぅっと言っていた。お水とリアンが濡らしてきてくれたタオルをもってベリルの側に行く。
火の側だけあって、私が皮むきをしていたところより、さらに暑い。
「ベリル、水分補給をしなさい。熱で倒れてしまうわ!」
「……ありがとうございます」
「あと、はい、これ使って!」
「何でしょう?」
手渡したタオルを不思議そうに見つめていた。そうすると、奥さまがたのうちの一人が、優しく笑いかけ使い方を教えてくれる。
「まず、顔を冷やして、それが終わったら首に置くんだ。真夏の火の番は大変だろ?」
「……はい、こんなに大変だとは」
そういってから、言われた通りにタオルを顔に当てると、ひゃっ!っと声を出した。
「ふわぁ……気持ちいい……」
「首に当てるともっと気持ちいいよ!」
私用に用意してくれた分をベリルの首筋に当てると、座っていたベリルのお尻が冷たさで驚いて跳ねた。
「つめたっ!はぁ……気持ちいい……」
「晴れて気持ちもいいし、今日はいい日ね!」
「本当ですよ!こんなに晴れるなんて……夏になる前から、曇りや雨が多くなって……こんなに晴れた
のは、本当に久方ぶりです!」
料理を作っている奥さまがたも気持ちのいい晴れの日を喜んでいる。
私も、こんなにいい天気になるなんて……と思わず、口から出てしまったが、熱をはらむ風で、少しでも雨の影響が出なければいいのに……と思わずにはいられなかった。
「料理も出来ましたから、みなさん順番に呼びに行きましょう!」
無造作に呼びに行こうとする奥さまがたを止め、まずは、指示を出しているアデルたちを集め順番に昼食に来るように伝える。
すると、割り振られた順番通り、30人がぞろぞろと歩いてくるので、給仕に勤しむことになった。
「領主様が、給仕だなんて!恐れ多くて……」
私の顔を知っているのか、みなが恐縮したが、私は頑張ってくれているのだから当たり前よ!と配膳されたものを配っていく。
「おかわりはあるから、いっぱい食べてね!」
結局、冷たいポタージュと柔らかいパンにベーコンや野菜をたっぷり挟んだものを出すことにした。なので、パンさえ焼ければ、材料がある限り、昼食を提供できる形だ。
ポタージュもたくさん作ったので余るだろう。今も、作っているところだし。
「領主様、おかわりいいですか?」
「えぇ、もちろんよ!持っていくから、待っていて!」
くるくると回りながら、給仕していく。
あちこちから、うめぇ!とか、こんなの食ったことない!とかわいわいと騒いで食べてくれた。
お腹いっぱいになったら、次は別の班が来る。
やはり、私が給仕していることに驚きはしていたが、すぐに慣れ、おかわりのリクエストをしていった。
近衛以外には、てるてる坊主のおまけを渡していく。
「あんの……領主様!」
「はいはい!」
「この、これ……なんですか?」
「私が作ったお守りみたいなものよ!家に帰ったら、窓際にこうやってつけて置いてくれる?明日も
晴れますようにってお祈りして!」
「そうすると、晴れますか?」
「子供だましのおまじないだと思うけど……今日は、ほらぁ!」
上を指さし、雲ひとつない空を見上げた。
「さっそく、家に帰ったら、つけてみます!今日、晴れたのは、これのおかげなのか……
それにしても、いい布で出来ていますね?」
「それ、私を始め、貴族のドレスを作るときに出た端切れを使っているからね!みんなが作ってくれた
布をなるべく捨てずに使える方法を模索していたから、今回、使わせてもらったわ!」
「おらたちが、作ったものだか?」
「こんなに上質な布になっているのか?」
「あの、領主様が着ている服も……?」
「もちろん、コーコナ領で作られた綿花や養蚕で作られた糸を元に作られたものよ!」
おぉーっと声が響き、コーコナの領民たちは、とても嬉しそうにしていた。
私は、領主なのだから、アンバーのものもコーコナのものも1番に消費する宣伝するのは当たり前なのに、そう、感動されたり喜ばれたりすると、変な感じだ。
「お昼からも、頑張ってね!昨日とは違って、暑いからしっかり水分補給!たまに塩分も補給してね!」
「わかったよ、領主様!うまい昼飯ありがとう!」
手を振り作業へ戻っていく領民や近衛を見送りながら、新しくきた腹ペコたちへ昼ご飯を配膳する。こちらでも、私の顔を見て、恐縮する人たちで溢れかえったのである。
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