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雨ばっかりね
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コーコナ領へ近づいて行くと、だんだん雨も量が増えていく。領地についてから、しばらく、雨が止む日はなかった。
毎朝、領地の屋敷から、現場へと向かう近衛たちを見送っていた。雨に濡れながら向かうので、なんだか申し訳ない。
窓に張り付き空を見上げると、ずっと、雫が見えるくらい大粒の雨が降ってくる。ウンザリして、ため息をつくと、後ろから声がかかった。
「アンナリーゼ様、お茶が入りましたので、どうぞ」
「ありがとう。なんて言うか、こう雨が続くと、気も滅入るわね?」
「そうですね……こちらに来てから、ずっと、雨が続いていますからね……」
「……うん。でも、こんな中、みんな、外で働いてくれているんだよ。何か、私に出来ることってない
かしら?」
お茶を飲みながら、うーんと唸る。コーコナ領へ来てから、ずっと雨なのは、『予知夢』でもわかっていたことだ。
「炊き出ししますか?」
「でも、それって、屋敷の調理場が負担にならない?」
「そうですね……ちょっと、聞いてきます」
「えっ、リアン、ちょ……ちょっと待って!」
そう言い残し、部屋から出て行ったリアン。パタンと閉まる扉に手を伸ばした私。そのままで固まっていると、リアンはすぐに戻ってきて、その後ろには、ナタリーとベリルを連れてきていた。
「アンナリーゼ様、この雨の中、何かしたいということですけど……」
「リアンから聞いたの?」
「えぇ。やりましょう!炊き出し。今、ちょうど、綿花農家の奥さんたちは、時間を持て余している
はずです。仲のいい人たちに声をかけてみますわ!」
「でも……」
「アンナリーゼ様、初めてアンバー領を訪れたときのことを覚えていますか?」
「えぇ、覚えているわ!」
「炊き出し、しましたよね?ちょっと、多めに材料を持って行って……」
「余ったのは、持って帰っていいよってしたね?」
「そう、それで、奥様がたは動いてくれますよ!ここは、食料に困ってはいませんけど、食べ物は、
毎日消費するものですから、いくらあっても喜ばれます!」
そっか……そうだよね!と私は俯いていた顔をぐっとあげて、計画を練ることにした。女性陣の中でも、ナタリーとリアンは、経験上で提案をしてくれるが、ベリルはあたふたとするばかりであった。
さすが、お嬢様ね!とからかうと、申し訳ありませんと肩を落とすベリル。
「少しずつ覚えて行けばいいわ!私も貴族ですし、アンナリーゼ様とアンバー領の領地改革に参加して
いなかったら、ベリルと同じでこんなこと出来ませんからね!」
「……ナタリー様。あの、リアンさんはどういった……公爵家の侍女ですよね?」
「えぇ、私は、今ではアンバー公爵家ですが、某男爵家では、メイドをしておりました。食事も自分
だけでなく、子どもたちの分も用意しなくてはいけなかったですし、諸事情があって、公都の庶民
より、酷い生活をしていたのです。アンナリーゼ様に拾っていただいたおかげで、このような生活を
送れていますけど、初めてアンナリーゼ様にお目にかかたときは、酷いものでした」
「酷い……お子さんがいるのですか?そんなに若いのに……」
「若くはありませんよ!この中でも1番の年かさですし、すでに40も目前です!」
「えっ、リアンってそんなに年取っていたの?」
どういうことですか?とリアンに若干睨まれたような気がしたが……気にしてはいけない。だって、どう見てもデリアより少し上、20代後半から30代前半だと思っていたのだ。
「……もっと、若いのだと思っていたの。肌も髪も艶々しているし、デリアと並んでも、ちょっとお姉
さんくらいだと思っていたから……」
「アンナリーゼ様、あまり若くいうと、嫌味です……私は、若くありませんし、アンナリーゼ様の倍
近くは生きているのですよ。そんな年若い方に助けていただいたのかと思うと、なんだか、とても
恥ずかしいですね……」
リアンは恥じらうようにするが、どこからどう見ても、若々しいのだ。
「デリア曰く、リアンは、自身の子どものことだけでなく、アンジェラ様やネイト様、ジョージ様との
時間が多いから、若々しいのだと言ってましたよ!張り合いがあるからこそだと。その中でも、1番
手のかかるのは、アンナリーゼ様だからって、デリアに言われてましたよ?」
「私?……否定出来ないことが、また、デリアの発言らしいわ!」
「アンジェラ様にネイト様、ジョージ様には手がかかりません。私の子どもたちも殆どウィル様に
預けていますので、その……」
「やっぱり、私が迷惑かけているのね!デリアにもリアンにも……以後気を付けます!」
「アンナリーゼ様の、『以後気を付けますは』信用ならないやつですからね!」
くすっと笑うリアンとナタリーは楽しそうだが、どう反応していいのかわからないベリルは困っているし、本人である私はため息をつくしかなかった。
「それは、そうと、炊き出しは何にする?これだけ雨が降っていれば、夏とはいえ、温かいものの方が
いいわよね!」
「そうですね。体を温める根菜をたくさん入れたスープとパンでいいですかね?」
「パンだけだと味気ないわね!例えば、薄切りしたパンに何か挟んでみるのは、どうかしら?」
「美味しそうですね!何がいいか、何ならすぐに集まるのか、相談してみましょう!私たちより、この
領地のことを知っている料理人や奥様がたに聞いてみましょう!」
「なるべく早く、準備を整えて、炊き出ししましょう!近衛だけでなく、その前に避難場所を作って
くれている領民もいるから、そちらにもね!」
「アンナリーゼ様も手伝ってくださいね!」
もちろんよ!と私は、自分の胸をたたきながら、少しでも、頑張ってくれている領民たちの励みになればと、行動をする。
雨が止むことあ1番いいことではあるので、私はデリアに教えてもらった雨が止むおまじないを作ることにしたのである。
毎朝、領地の屋敷から、現場へと向かう近衛たちを見送っていた。雨に濡れながら向かうので、なんだか申し訳ない。
窓に張り付き空を見上げると、ずっと、雫が見えるくらい大粒の雨が降ってくる。ウンザリして、ため息をつくと、後ろから声がかかった。
「アンナリーゼ様、お茶が入りましたので、どうぞ」
「ありがとう。なんて言うか、こう雨が続くと、気も滅入るわね?」
「そうですね……こちらに来てから、ずっと、雨が続いていますからね……」
「……うん。でも、こんな中、みんな、外で働いてくれているんだよ。何か、私に出来ることってない
かしら?」
お茶を飲みながら、うーんと唸る。コーコナ領へ来てから、ずっと雨なのは、『予知夢』でもわかっていたことだ。
「炊き出ししますか?」
「でも、それって、屋敷の調理場が負担にならない?」
「そうですね……ちょっと、聞いてきます」
「えっ、リアン、ちょ……ちょっと待って!」
そう言い残し、部屋から出て行ったリアン。パタンと閉まる扉に手を伸ばした私。そのままで固まっていると、リアンはすぐに戻ってきて、その後ろには、ナタリーとベリルを連れてきていた。
「アンナリーゼ様、この雨の中、何かしたいということですけど……」
「リアンから聞いたの?」
「えぇ。やりましょう!炊き出し。今、ちょうど、綿花農家の奥さんたちは、時間を持て余している
はずです。仲のいい人たちに声をかけてみますわ!」
「でも……」
「アンナリーゼ様、初めてアンバー領を訪れたときのことを覚えていますか?」
「えぇ、覚えているわ!」
「炊き出し、しましたよね?ちょっと、多めに材料を持って行って……」
「余ったのは、持って帰っていいよってしたね?」
「そう、それで、奥様がたは動いてくれますよ!ここは、食料に困ってはいませんけど、食べ物は、
毎日消費するものですから、いくらあっても喜ばれます!」
そっか……そうだよね!と私は俯いていた顔をぐっとあげて、計画を練ることにした。女性陣の中でも、ナタリーとリアンは、経験上で提案をしてくれるが、ベリルはあたふたとするばかりであった。
さすが、お嬢様ね!とからかうと、申し訳ありませんと肩を落とすベリル。
「少しずつ覚えて行けばいいわ!私も貴族ですし、アンナリーゼ様とアンバー領の領地改革に参加して
いなかったら、ベリルと同じでこんなこと出来ませんからね!」
「……ナタリー様。あの、リアンさんはどういった……公爵家の侍女ですよね?」
「えぇ、私は、今ではアンバー公爵家ですが、某男爵家では、メイドをしておりました。食事も自分
だけでなく、子どもたちの分も用意しなくてはいけなかったですし、諸事情があって、公都の庶民
より、酷い生活をしていたのです。アンナリーゼ様に拾っていただいたおかげで、このような生活を
送れていますけど、初めてアンナリーゼ様にお目にかかたときは、酷いものでした」
「酷い……お子さんがいるのですか?そんなに若いのに……」
「若くはありませんよ!この中でも1番の年かさですし、すでに40も目前です!」
「えっ、リアンってそんなに年取っていたの?」
どういうことですか?とリアンに若干睨まれたような気がしたが……気にしてはいけない。だって、どう見てもデリアより少し上、20代後半から30代前半だと思っていたのだ。
「……もっと、若いのだと思っていたの。肌も髪も艶々しているし、デリアと並んでも、ちょっとお姉
さんくらいだと思っていたから……」
「アンナリーゼ様、あまり若くいうと、嫌味です……私は、若くありませんし、アンナリーゼ様の倍
近くは生きているのですよ。そんな年若い方に助けていただいたのかと思うと、なんだか、とても
恥ずかしいですね……」
リアンは恥じらうようにするが、どこからどう見ても、若々しいのだ。
「デリア曰く、リアンは、自身の子どものことだけでなく、アンジェラ様やネイト様、ジョージ様との
時間が多いから、若々しいのだと言ってましたよ!張り合いがあるからこそだと。その中でも、1番
手のかかるのは、アンナリーゼ様だからって、デリアに言われてましたよ?」
「私?……否定出来ないことが、また、デリアの発言らしいわ!」
「アンジェラ様にネイト様、ジョージ様には手がかかりません。私の子どもたちも殆どウィル様に
預けていますので、その……」
「やっぱり、私が迷惑かけているのね!デリアにもリアンにも……以後気を付けます!」
「アンナリーゼ様の、『以後気を付けますは』信用ならないやつですからね!」
くすっと笑うリアンとナタリーは楽しそうだが、どう反応していいのかわからないベリルは困っているし、本人である私はため息をつくしかなかった。
「それは、そうと、炊き出しは何にする?これだけ雨が降っていれば、夏とはいえ、温かいものの方が
いいわよね!」
「そうですね。体を温める根菜をたくさん入れたスープとパンでいいですかね?」
「パンだけだと味気ないわね!例えば、薄切りしたパンに何か挟んでみるのは、どうかしら?」
「美味しそうですね!何がいいか、何ならすぐに集まるのか、相談してみましょう!私たちより、この
領地のことを知っている料理人や奥様がたに聞いてみましょう!」
「なるべく早く、準備を整えて、炊き出ししましょう!近衛だけでなく、その前に避難場所を作って
くれている領民もいるから、そちらにもね!」
「アンナリーゼ様も手伝ってくださいね!」
もちろんよ!と私は、自分の胸をたたきながら、少しでも、頑張ってくれている領民たちの励みになればと、行動をする。
雨が止むことあ1番いいことではあるので、私はデリアに教えてもらった雨が止むおまじないを作ることにしたのである。
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