ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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屋敷に帰ろう!そして、また、出発!Ⅱ

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 公都につくころ、雨になった。
 屋敷に帰ってきた翌日、ウィルとセバスが帰ってきたことを聞きつけ屋敷に来てくれる。


「遠いところ、お疲れさん!」
「うん、いろいろとアクシデントが続いたから……ちょっと、疲れた」
「刺客に狙われたんだって?」
「えぇ、一応……なんて言うか、一応ね?」
「何?どういうこと?」


 私はウィルとセバスにことの顛末を話すと、ウィルは腹を抱えて笑い、セバスは悪いよとウィルを窘めながらも笑っている。
 わかる、わかるよ!私だって聞く側だったそうなってたと思うし……でも、一応、一応ね?狙われたわけだから、そう、笑ってもいられない。


「それで、黒幕の口をわった?」
「うぅん。わらないというか、知らないようね。見るからに、世間知らずのお嬢さんと出来の悪い
 従者って感じね」
「騙されているとかない?演技がメチャクチャうまいとか……」
「ちゅんちゅんが囁くには、演技ではないそうよ?」
「それは、信頼できるからな……まぁ、俺も、調べておくわ!コーワ伯爵の娘ね?」
「うん、よろしく!」
「それで、そのお嬢さん、どこにいるの?」
「屋敷にいるわよ!ナタリーに引き合わせて、仕事をさせるつもり。仕事がなくてというより、仕事の
 仕方がわからなくて、飢えてたんだけど……」
「まさかとは、思っていたけど……姫さん」


 それはまた……と、セバスは呆れかっていた。確かに、私もそれは、思う。従者がついていながら……って、従者は雇えるの?とふと疑問に思ったら、家に仕える従者だったんじゃない?とウィルはいう。
 貴族には、昔から家に仕える侍従がいることもある。それなのだろう。


「まぁ、何はともあれ、姫さんが無事に帰ってこれてよかった」
「そうね、これから、また、コーコナに行くんだけどね……」
「コーコナの進捗はどうなの?」
「うーん、やっぱり、近衛が上手く機能してないのと、雨が予想より結構降っているみたいで、進捗は
 進んでないってはなしだったわ」
「雨は、確かにアンナリーゼ様がいない間、公都でも結構降ったよね?」
「あぁ、降ったね……姫さんの予知夢が現実味を帯びてきて怖い」
「確かに……公都より、コーコナ領の方が降っているという噂も聞きますからね!」
「どうにか、間に合ってくれることを祈るしかないのだけど……」
「直接行って、采配か?俺も……」
「今回は、ウィルはお留守番!悪いんだけど、子どもたちを見ていてくれないかな?」
「てっきり、行くんだと思って準備してたのに……」
「いいじゃない、うちの屋敷に常駐してくれたら!」


 なるほど、その手があったか……と呟くウィルに苦笑いのセバス。


「何かあったの?」
「ウィルに縁談があってね……しないって逃げてるところ」
「俺、結婚はまだしないって言ってるのにさ、親がね……レオとミアには、母親がって。レオもミアも
 リアンが近くにいるし、領地に帰ったらって話もしてるんだけどさ……俺、そんなことより、ミアが
 ものすごく機嫌が悪い方が、気になる……毎日、ぶっすぅって顔してるんだぜ?何言ってもプイって
 されるし……」
「今日、連れてきて正解ね!ウィルに結婚する気がないなら、しばらく、うちの屋敷に滞在すれば
 いいわ!アンジェラも喜ぶし、子どもたちにもそのほうがいいと思うから!」


 悪いなと、ちっとも悪そうにしないウィルに少々呆れた。


「それで、領地にはおっさんを連れて行くのか?」
「そのつもり!リアンも連れて行くから、馬車移動だしね!」
「リアンを?デリアじゃなくて?」
「そう。デリアが懐妊したから、しばらくは馬車移動であちこちというのは、無理だと思うの。
 倒れちゃったから……もしかしたら、私よりずっと大変になる可能性があるから」
「姫さんは、いわゆる悪阻は軽かった方だっけ?」
「そう、私のは、物凄く軽かったのよ。だから、デリアには無理はさせない方向で、リアンについて
 きてもらう予定。向こうにもココナがいてくれるんだけど、公爵ともなるといろいろある場合もある
 から」


 ため息をつきながら、しょうがないよねというと、二人も頷いてくれた。


「そういえば、僕は行かなくていいの?」
「うん、セバスには、水車のことをお願いしたくて……」
「あぁ、ニコライから送られてきた設計図だね?僕も見てみたいけど……」
「ここから、馬なら1日もあれば行ける距離だから、行ってみてもいいかも!宰相との話が出来ている
 なら、先にアンバーに戻ってイチアと一緒に考えてほしいんだけど」
「たぶん、導入だよね?なんだか、アンナリーゼ様が好きそうなものだったし、実用性もよさそうだった
 から。どんなことに使えるの他の使い方も検証したいから、やっぱり1度見に行くことにするよ!」
「わかったわ!出発日を教えてくれる?」
「なんで?」
「護衛をつけるわ!セバスに何かあったら、とっても困るから!」
「そんな、大袈裟だよ!」
「そうでもないと思うよ!たぶん、ウィルの結婚話もアンバー公爵家に関わることだからってことだと
 思う。気を付けた上に気を付けることに越したことはないわ!」
「そっか……ありがたく、借りることにするよ!あと、僕もこっちで住まわせてもらってもいいかな?」


 もちろん!用意しておくわ!と微笑むと、助かるよと苦笑いしている。セバスも宰相との話し合いで、目をつけられているらしいことは、耳には入ってきていたので、二つ返事だ。アンバー公爵家の傘下で好き勝手しようものなら……それなりに、覚悟は必要だよねと少しだけ大きな声でいうと、遠のいた足音。聞こえなくてもウィルと頷きあったのである。
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