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将来の約束
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「ニコライ、悪いのだけど……」
「食事が済みましたら、エレーナ様たちを呼んできますね!」
ありがとうとニコライにいうと、ベリルは私が何をするのか興味が湧いたらしい。今まで深窓のご令嬢だったベリルに、これからこの部屋に呼び寄せるエレーナたちの説明をすると、本当に同じ令嬢だったのかと驚かれた。
まぁ、いうなれば……深窓のご令嬢とは一番遠いところにいた私なのだが、社交界での私しか知らない貴族にとって、私と関われば関わる程、無茶苦茶なんだと驚くことばかりだろう。
「ベリルは、本当に何も知らずに生きてきたのね?」
「そのようです……私、自分が恥ずかしい。今回、父のせいで没落して、生活も食うや食わずだった
から、アンナリーゼ様を逆恨みして……恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい……」
「お嬢……」
「あなたたちもいけないのよ!私は、もう伯爵令嬢ではないのだから……もっと厳しく世間のことを
話してくれないと……」
「「そうはいっても……」」
「令嬢だものね、夢見がちな子も多いんじゃなくて?」
「……はい。お嬢は読書、特に恋愛小説が好きでして……夢見がちを絵に描いたような……いたっ!」
「そんなことないわよ!」
「……本当のことを言われたからって、お嬢、蹴飛ばすことないじゃないですか!」
「し……知りません!」
プイっと向こうを向いてしまったベリル。そのとき、エレーナとルイジが入ってくる。
「アンナリーゼ様、ご機嫌麗しく」
「ルイジ、クロック領までの往復は、大変だったでしょ?そこにかけてくれる?」
「いえ、大丈夫です。失礼しますね」
「今回の件、旦那様に詳細を伺いました。アンナ様、クロック侯爵領の危機を救っていただき、誠に
ありがとうございました」
「いいのよ、そういう約束ですものね!それより、今後の改善策を話し合いましょ?今のままでは、
また、同じようなことになるから……」
はいと返事をし、エレーナとルイジは空いている席についた。
「アンナ様、ひとつ、伺ってもいいでしょうか?」
「えぇ、いいわよ!」
「この人たちは、一体……?」
エレーナは、ベリルたち見て訝しんでいる。それもそうだろう。ここ何日も一緒にいたエレーナにとって、急に増えた人物たちなのだ。正直なことを言ってしまえば、反対されることはわかっているので、起こった出来事は伏せることにした。
「伯爵令嬢のベリルとその従者よ。私がこの地を回ると聞いて案内をかってくれたのよ!」
「そうだったのですか?それは、それは……私たちのせいで、アンナ様が身動き取れなくなって
しまって……、大変申し訳ございませんでした」
「いいのよ!明日、1日この辺を案内してもらって、私たちも公都へ帰るわ!エレーナたちもそろそろ
帰らないといけないわよね?」
「えぇ、明日には発とう思います。あの、それで……」
ベリルたちを気にするエレーナだが、ベリルたちから目を離すとそれはそれで面倒なので、他の部屋に移動させることはしないでいい方法を考えた。
「他の部屋にとも思ったんだけど……このベリルは、私の熱烈なファンらしくって……かなりの情報通
なの。ここにいてもらって、口止めした方がいいと思って……」
「そういうことなら……」
意を決したようにエレーナは、今回の話をし始めた。
私は、そのことで、ノクトが感じたことを指摘していくと、驚いているようだ。
「それは……うちの警備兵は、その……指揮系統が弱いということですか……」
「そうね。そういった経験が少ないのじゃないかしら?例えば、お城で警備の任についていた人を雇って
ノウハウを学ぶとか、城へ何人か勉強するために送りこんだりしてみたらどうかしら?」
「なるほど……アンナ様、提案なのですが……」
「何かしら?」
「昨日、エレーナとも話をしたのですが、アンバー領で育ててもらうことはできないでしょうか?」
「アンバー領でね……見返りは?」
私は、ただ、見返りの話をする。人を育てるには、かなりの時間もいるし、手間もかかるのだ。ただというわけにはいかない。それに、今、欲しいのは土木工事が出来る作業員であって、警備ではないのだ。
「見返りは、リアーナで……ネイト様が成人されるまでにこちらで仕込ませていただきます。領主の
支えとしてネイト様がいらっしゃるのですよね?」
「そのつもりはないけど……たぶん、ネイトがアンバー領の次期領主になると思うわ。
そのとき、ネイトを支えられる夫人を私にくださるということでいいの?」
「えぇ、そのつもりです。元より、私もアンナ様に命を救われた身。旦那様と始めた運輸業もアンナ様を
始め、サシャ様の援助がなければ難しかった。加えて、今回の件です。私たちには、今が精一杯です
ので、手助けいただければと……」
「そのために、年端も行かない娘の結婚相手を決めていいの?」
「……はい。アンナ様の元にいるのです。リアーナは立派になるかと」
私は、エレーナとルイジの考えを目を閉じて考えてみた。アンジェラは、次期公爵としてローズディアでは、周知の事実である。ただ、その先にアンジェラはなることが『予知夢』でわかっているのだ。
「わかったわ!それで。ただし、学園を卒業するまでは、あなたたちの元で、リアーナを育てなさい。
年に数回、ネイトに合わせてあげて。ネイトには、政略結婚が決まっていることを伝えるわね」
「はい、よろしくお願いします」
「それで、人数だけど、警備兵五名、文官三名あたりで、どうかしら?出せる?」
「えぇ、それで……」
「うちからも、そちらに送るわ!警備隊の隊長格を送って下準備をさせましょう。あと、文官もね」
「ありがとうございます!」
「いいのよ。私たちもエレーナたちの運輸業がうまく行ってくれないと困るのだから」
私は、微笑んだ。見返りをくれと言ったが、結局アンバー公爵家もクロック侯爵家の事業に依存しているところがあるのだ。それを思うと、リアーナ獲得というのは、少々高い見返りであるのだが……惜しみない支援をこれからもしてほしいということなのだろう。
私たちの報告会は、無事終わり、どちらにとってもいい話となった。
ただ一人、納得できないという顔をしているベリルを除いては、終始和やかに話がまとまったのであった。
「食事が済みましたら、エレーナ様たちを呼んできますね!」
ありがとうとニコライにいうと、ベリルは私が何をするのか興味が湧いたらしい。今まで深窓のご令嬢だったベリルに、これからこの部屋に呼び寄せるエレーナたちの説明をすると、本当に同じ令嬢だったのかと驚かれた。
まぁ、いうなれば……深窓のご令嬢とは一番遠いところにいた私なのだが、社交界での私しか知らない貴族にとって、私と関われば関わる程、無茶苦茶なんだと驚くことばかりだろう。
「ベリルは、本当に何も知らずに生きてきたのね?」
「そのようです……私、自分が恥ずかしい。今回、父のせいで没落して、生活も食うや食わずだった
から、アンナリーゼ様を逆恨みして……恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい……」
「お嬢……」
「あなたたちもいけないのよ!私は、もう伯爵令嬢ではないのだから……もっと厳しく世間のことを
話してくれないと……」
「「そうはいっても……」」
「令嬢だものね、夢見がちな子も多いんじゃなくて?」
「……はい。お嬢は読書、特に恋愛小説が好きでして……夢見がちを絵に描いたような……いたっ!」
「そんなことないわよ!」
「……本当のことを言われたからって、お嬢、蹴飛ばすことないじゃないですか!」
「し……知りません!」
プイっと向こうを向いてしまったベリル。そのとき、エレーナとルイジが入ってくる。
「アンナリーゼ様、ご機嫌麗しく」
「ルイジ、クロック領までの往復は、大変だったでしょ?そこにかけてくれる?」
「いえ、大丈夫です。失礼しますね」
「今回の件、旦那様に詳細を伺いました。アンナ様、クロック侯爵領の危機を救っていただき、誠に
ありがとうございました」
「いいのよ、そういう約束ですものね!それより、今後の改善策を話し合いましょ?今のままでは、
また、同じようなことになるから……」
はいと返事をし、エレーナとルイジは空いている席についた。
「アンナ様、ひとつ、伺ってもいいでしょうか?」
「えぇ、いいわよ!」
「この人たちは、一体……?」
エレーナは、ベリルたち見て訝しんでいる。それもそうだろう。ここ何日も一緒にいたエレーナにとって、急に増えた人物たちなのだ。正直なことを言ってしまえば、反対されることはわかっているので、起こった出来事は伏せることにした。
「伯爵令嬢のベリルとその従者よ。私がこの地を回ると聞いて案内をかってくれたのよ!」
「そうだったのですか?それは、それは……私たちのせいで、アンナ様が身動き取れなくなって
しまって……、大変申し訳ございませんでした」
「いいのよ!明日、1日この辺を案内してもらって、私たちも公都へ帰るわ!エレーナたちもそろそろ
帰らないといけないわよね?」
「えぇ、明日には発とう思います。あの、それで……」
ベリルたちを気にするエレーナだが、ベリルたちから目を離すとそれはそれで面倒なので、他の部屋に移動させることはしないでいい方法を考えた。
「他の部屋にとも思ったんだけど……このベリルは、私の熱烈なファンらしくって……かなりの情報通
なの。ここにいてもらって、口止めした方がいいと思って……」
「そういうことなら……」
意を決したようにエレーナは、今回の話をし始めた。
私は、そのことで、ノクトが感じたことを指摘していくと、驚いているようだ。
「それは……うちの警備兵は、その……指揮系統が弱いということですか……」
「そうね。そういった経験が少ないのじゃないかしら?例えば、お城で警備の任についていた人を雇って
ノウハウを学ぶとか、城へ何人か勉強するために送りこんだりしてみたらどうかしら?」
「なるほど……アンナ様、提案なのですが……」
「何かしら?」
「昨日、エレーナとも話をしたのですが、アンバー領で育ててもらうことはできないでしょうか?」
「アンバー領でね……見返りは?」
私は、ただ、見返りの話をする。人を育てるには、かなりの時間もいるし、手間もかかるのだ。ただというわけにはいかない。それに、今、欲しいのは土木工事が出来る作業員であって、警備ではないのだ。
「見返りは、リアーナで……ネイト様が成人されるまでにこちらで仕込ませていただきます。領主の
支えとしてネイト様がいらっしゃるのですよね?」
「そのつもりはないけど……たぶん、ネイトがアンバー領の次期領主になると思うわ。
そのとき、ネイトを支えられる夫人を私にくださるということでいいの?」
「えぇ、そのつもりです。元より、私もアンナ様に命を救われた身。旦那様と始めた運輸業もアンナ様を
始め、サシャ様の援助がなければ難しかった。加えて、今回の件です。私たちには、今が精一杯です
ので、手助けいただければと……」
「そのために、年端も行かない娘の結婚相手を決めていいの?」
「……はい。アンナ様の元にいるのです。リアーナは立派になるかと」
私は、エレーナとルイジの考えを目を閉じて考えてみた。アンジェラは、次期公爵としてローズディアでは、周知の事実である。ただ、その先にアンジェラはなることが『予知夢』でわかっているのだ。
「わかったわ!それで。ただし、学園を卒業するまでは、あなたたちの元で、リアーナを育てなさい。
年に数回、ネイトに合わせてあげて。ネイトには、政略結婚が決まっていることを伝えるわね」
「はい、よろしくお願いします」
「それで、人数だけど、警備兵五名、文官三名あたりで、どうかしら?出せる?」
「えぇ、それで……」
「うちからも、そちらに送るわ!警備隊の隊長格を送って下準備をさせましょう。あと、文官もね」
「ありがとうございます!」
「いいのよ。私たちもエレーナたちの運輸業がうまく行ってくれないと困るのだから」
私は、微笑んだ。見返りをくれと言ったが、結局アンバー公爵家もクロック侯爵家の事業に依存しているところがあるのだ。それを思うと、リアーナ獲得というのは、少々高い見返りであるのだが……惜しみない支援をこれからもしてほしいということなのだろう。
私たちの報告会は、無事終わり、どちらにとってもいい話となった。
ただ一人、納得できないという顔をしているベリルを除いては、終始和やかに話がまとまったのであった。
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