ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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甘いお菓子と恋のお話、その前に仕事の話しませんか?

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「アンナ様って、それ程、おもてになったのですか?」


 トワイスにいた頃や学園の頃の私を知らないデリアは、エレーナに質問をする。ここにいる中で、トワイスにいた頃を知っているは、エレーナだけなのだ。


「えぇ、それはとても人気の令嬢でした。引く手あまただったでしょう。ジョージア様は、知っていら
 っしゃると思いますが、王太子様と宰相の令息が幼馴染でしたからね。みなが、どちらと婚約する
 のか、はたまた、トワイス国中の令息の誰かがアンナ様の心を射止めるのかとみなが思ってたと思い
 ましたよ!」
「それほど……」


 デリアは興味津々で、頷く。ちなみに子どもたちは、おやつを食べた後、疲れたのかお昼寝している。


「王太子様か宰相令息のどちらかと婚約されると思っていたのですが、まさか……屋敷に呼ばれた日に
 ジョージア様がいらっしゃるとは……」
「思いもよらなかったって?」
「えぇ、そのとおりです。他に言わないようにと言われていましたし、卒業式へ同伴されるということ
 は、そういうことだと、他に示しているようなものですからね!」
「出し抜かれたと思っただろうね?ヘンリー殿は」
「ジョージア様、なぜ、ヘンリー様がなのですか?」


 ジョージアは、デリアの質問に曖昧に笑う。あのときのことを思い出しているのか、空を見上げる。


「アンナの心の中にいたのは、俺ではなくヘンリー殿だったからだよ」
「?」
「デリアは、アンナと常に共にあるこの赤薔薇のピアスが誰から贈られたものか知っているかい?」
「……まさか?」
「そのまさかだよね?アンナ」


 私の顔をちらりと見る。両耳には真紅の薔薇が光っていた。


「アンナ様、それは、本当ですか?」


 デリアの質問に私は、苦笑いするしかなかった。人並みならぬ執着があるものだから、両親か兄からもらったものだろうと思っていたらしい。
 それにしても、ジョージアはどこでその話を聞いてきたのだろうか?お兄様?と内心穏やかではない。


「やはり、ヘンリー様がアンナ様の心を射止めてらっしゃったのですね。いついかなるときも側から
 離れず、やりたいことをするときは優しく見守り、やりすぎたときは窘め、振り回されていると揶揄
 する人もいましたが……」
「ヘンリー殿程、アンナを理解して大事にし、愛している人物はいないよね!」


 だんだん恥ずかしくなる……世間様は、そんなふうに思っていたのかと直接言われると、反応に困った。


「それで、何故、アンナ様は、ヘンリー様でなく、ジョージア様を?」
「……好きだからです」
「今、ヘンリー様の話で盛り上がっていたと思いますが?」
「本当に、好きだったの!ほら、見てよ!このトロっとした蜂蜜色の瞳!私、私……好きなんです……」


 尻つぼみになっていく言葉を聞いて、ジョージアが笑う。


「光栄だね!この容姿は、正直煩わしいと思っていたけど、まさか……瞳が好きだなんて。それで、
 好きな相手が振り向いてくれるなら、来世もこのままで生まれたいよ!」
「ジョージア様、茶化さないでください!本当に……好きなんですから……きっかけは、容姿だったと
 思いますよ!でも、お兄様からお話を聞いたり、卒業式の準備でお話をしたり、私はジョージア様の
 ことが思いのほか好きになりましたから、この結婚は、別に不思議なことではないはずですよ?」
「政略結婚、だったのですよね?」
「えぇ、そう。でも、公との婚約もありえたというか、打診されてはいたの」
「かっこいいことに、単身、城に乗り込んで、ジョージア様以外との婚約はお断りします!っていっ
 ちゃううちの奥様は、誰がなんて言ってもかっこいいよね!」


 エレーナが不思議に思っていた話が明かされていく。ただ、ひとつ。釘を刺された。


「失礼を承知で言うならば、公との結婚の方が、ローズディアにとってよかったのではないかと思い
 ます。トワイスなら、さらに活躍の場があったのではないかとも。私は、今、目の前で幸せそうに
 されているアンナ様を見て、よかったという思いと、残念な気持ちがやはりありますね……」
「……エレーナ」
「アンナ様も結婚後、苦労が絶えなかったとは、聞き及んでいます。全てを把握することは出来ません
 が、ヘンリー様に守られる選択はなかったのか……と思いますわ」
「エレーナが言うのは、もっともだけど……私がそうしたかったの。それに、人生なんて、いいときも
 あれば悪いときもある。今、幸せなら……幸せに向かって努力するのに、私は、苦労しているとは、
 思わないから。何より、あの子たちと会えたことが、最大の幸せだわ!正直、ジョージア様は、もう、
 2番手、3番手……4番手かしら?」


 ジョージアに尋ねると、何番手でもいいよ。と笑う。今は、それだけで十分なのだ。


「それより、仕事の話をしましょう!これ以上、私の話は、こそばゆすぎて耐えられない!」
「それもそうですね!元々そういうことでしたのに……アンナ様といるおもしろいお話がたくさん聞け
 てしまうので……」


 お茶を入れ替えますねとデリアが立つ。私はお願いね!と声をかけ、エレーナと向き合った。
 今日まで数日の間、今後のハニーアンバー店の展開について、ニコライも混ざりしてきた。現状、エレーナの方も、今の人数で回すのが精一杯だということを感じていると話していたので、今後、人を増やすことも視野に入れているということだ。
 やはり、ハニーアンバー店が、ローズディア全体に広まったことが、エレーナたちが営む運輸業の売上も多くなったし、信頼関係が出来てきたことで、業務展開もしやすくなったとのことだ。
 アンバー公爵家が営む店お抱えの運輸業社というのが大きいと話す。

 私は、エレーナの話を聞きながら次の展開にと考えていた。


 バタン……


 背後から何か倒れる音がした。何?と思いながら後ろを向くと、デリアが倒れていたのである。
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