上 下
599 / 1,480

とっても仲良し

しおりを挟む
「……私、勘違いしていたのでしょうか?」
「ん?どうして」


 ソファの反対側に子どもたちを真ん中にしてジョージアと並んで座っている私たちを見るエレーナの顔はとても優しい。


「先程、聞いた話で、どうして?と思いましたが、アンナ様が、ジョージ様にもアンジェラ様と変わら
 ない愛情をかけられているので、失礼なことをと思いまして……」
「いいのよ!私たちは、ちょっと複雑な家族なの。でも、私たちは、とっても仲良しだし、ジョージア
 様も二人にちゃんと愛情を注いでいるわよ?ねぇ、ジョージア様?」
「もちろんだよ。可愛い子どもたちだからね。三人とも」
「そういえば、1番下の子のお名前を聞いていませんでしたわ!」
「ネイトよ!秋と冬の間に生まれた子なの」
「ネイト、可愛いの!」


 頬をむぎゅっとしながら、アンジェラはニコッとするとみんながそれを見て微笑む。


「そういえば……エレーナの子どもは、どこに?」
「少し離れたところに泊まっていますので……でも、旦那様が帰ってくるまで動けませんから、どう
 しましょう?」
「こっちに宿屋を変えたらどうかしら?ニコライ、部屋に空きがあるか聞いてきてくれる?」
「大丈夫ですよ!手配ならすぐできます!エレーナ様、準備いたしましょうか?」
「……そうね、お願いできるかしら?」
「では、お部屋の準備をいたします。あとで馬車も準備しますから、お声をかけてください。馬車には、
 デリアさん、ついて行ってくれますか?」
「いいでしょうか?アンナ様」


 うん、お願い!とデリアにいうと、出かける準備をしてくれる。デリアさん、いつでも重いのだが、外に出かけるときはさらに重くなる。そこそこの投げナイフをそのスカートの下に仕込んであるのだ。当的は完ぺきなので、このへんの夜盗や盗賊くらいなら、デリア一人でもやっつけてしまうだろう。
 エレーナにも護衛がいることを考えても、デリアがついていくだけで大丈夫だと判断した。


「アンナ様、何から何まで、お世話になってしまって、返って申し訳ないです」
「いいのよ!エレーナには日頃から協力してもらっているのですもの!これくらい、たいしたことでは、
 ないわ!ノクトもやる気だったしね!」


 エレーナに微笑めば、恐縮しきっている。そこにニコライが馬車の用意ができたと言ってきたので、エレーナとデリアは自分たちが泊っている宿屋へと向かった。

 のこされたのは、ジョージアと私、ニコライに子どもたち。いざとなれば、動けるのは、私だけだな……と、立ち上がり、持ってきていた剣のところまで行く。


「ママ、どこいくの?」


 とたとたとついてきたアンジェラに、剣のところよ?というと、目を輝かせている。
 最近レオとミアが一緒にいないので、子ども用の模擬剣をもつこともないだ。アンジェラが既に模擬剣に興味を持っていて、たまに振り回しているのは、報告を受けてはいたが……まるで、自分の子どもの頃を見ているようで、少々頭が、痛い。
 ゆくゆくは、教えるつもりでいたのだが、少し興味を持つには早いようだ。


「ママ、ママ!アンも剣持つ!」
「アンジェラも?」


 コクコクと頷いているが、アンジェラが持てるようなものはなかった。子ども用の模擬剣も持ってきておらず、ここにあるのは、私の愛剣だけ。


「アンジェラは、危ないからダメよ!」


 すると、みるみるうちに目に涙が溜まっていった。


「アンジェラ、泣いたら何でも解決できると思ったら大間違いよ!今日は、アンジェラが使えるものは持ってないから、ニコライに明日、用意してもらいましょう!今日は、本を読むのはどうかしら?」
「やだ!それがいい!」


 私の愛剣を指さし、駄々をこねる。仕方がないので、剣が抜けないようにロックをかけて、アンジェラに渡すことにした。2歳の子どもには、かなり重いはずだが……と、心配しつつ見守ることにする。


「わかったわ!貸してあげる。でも、ママが返してって言ったら、ちゃんと返してね?」


 さっきまで、目に涙をためいていたのは誰だろう?と言いうほどのニッコリ笑顔にため息をついた。


 はいっと渡すと、案の定重かったようで、床に落としてしまった。軽めに作ってあるといっても真剣なのだから、子どもには、ましてや2歳の女の子にはかなり重い。
 うんぎゅぎゅぎゅ……と変な声を上げながら、剣をあげようとしたが、やはり、重いらしい。ぺたんと床に座って、膝の上に置くのがやっとのようだ。
 どうするんだろう?と見ていると、その様子を見ていたジョージアがクスクス笑っている。


「アンジー、それは、まだ無理だ。アンナみたいにしっかり体をつくらないと、持てないよ!」
「……アンじゃ持てないの?パパは、持てる?」
「もちろんだよ!」


 そういって、アンジェラと視線を合わせ、膝の上に乗っている私の剣をひょいっと持ち上げた。
 型はできると言っていたジョージアは、そのまま、少しだけ剣をふり、剣術の型をしてくれる。
 初めて見るジョージアのそんな姿に、私は驚いた!これは、体を動かす授業のときは、さぞかし、黄色い声援が飛んだことだろう。



「お話の王子様みたい!」
「ジョージ、ありがとう!アンナにもそんな風に見えてるといいけど……」
「ふふっ、見えてますよ!いつも、私の王子様に」
「アンも、アンも見える!」


 駆け寄ろうとした、アンジェラを剣の間合いから遠ざける。このままジョージアに駆け寄ると確実に頭を叩かれるだろう。
 真剣に鞘はあれど、痛いに決まっている。といか、痛い……お母様の間合いに入って私自身、実証済みなので、我が子には、そういう痛い思いはも少し後でもいいだろうと止めたのだ。


「ジョージア様、上手ですね?もう少しだけ、膝を曲げて腰が落とせるといいですよ!それじゃあ、ただの踊りですからね!」
「剣のこととなると、手厳しいな……」
「今度、レオを一緒にする朝の練習、混じってみたらどうですか?」
「……出来の悪い生徒なので、邪魔はしないでおくよ!」



 苦笑いと共に、私の剣を返してくれた。軽い剣だね?というので、私に合わせてつくられていますからね!と微笑んでおく。
 今のところ、出番らしい出番は無く、済んでいる。いずれは、アンジェラに渡すつもりではあるが、今日、私の剣にアンジェラが興味を持ったことが嬉しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...