597 / 1,513
恋は盲目?偉大ですよ!
しおりを挟む
「あの、アンナ様、あの、あの……」
「どうかしたかしら?」
「旦那様は、その……」
「あぁ、元将軍に任せて置けば、なんとかなると思いますよ?少々、警備兵には痛い目をみてもらうことにな……」
顔を青ざめていくエレーナに気づいたのは、得意げに話をしていた私ではなくジョージアであった。
肘でコンコンっとつつかれて、エレーナの方を見るように言われ気が付いた。
「じょ……冗談ですよ!」
「……いえ、あの……あの方、私、見たことがあります!」
「えっ?」
私は目を丸くしながら、ジョージアを恐る恐るみやると、困った顔をして視線を合わせてくれた。
が、首を横に振っているので、あんまりいい状況ではないらしい。
「あの方は……インゼロ帝国の前の皇帝の弟様……何故、アンナ様の側に……?」
可哀想なくらい、カタカタと震えだすエレーナに私は席を立ち隣に座って抱きしめる。
「エレーナ、大丈夫?」
「……はい」
少しだけ落ち着いたのか、小さく息をはきながら、こちらを見上げてきた。
「ノクトのことが、怖いかしら?」
「……はい。正直に申しますと、とても怖いです。旦那様は引篭もりでしたから、あの方を知っている
かどうかはわかりませんが、とても有名な方ですから……常勝の将軍と」
「そうね。わりと有名な話よね?まぁ、その常勝に終止符を打ったのは、他でもないうちのセバスなん
だけどね?」
「えっ?セバスチャン様がですか?あの、アンナ様と一緒にいらした方ですよね?」
「えぇ、エレーナも学園やお茶会で会ったことがあるでしょ?」
「はい、たしか、ローズディアで文官を目指していたことは、知っていましたが」
「えぇ、立派な文官になって、今は、アンバーの領地改革を手伝ってくれているわ!」
「……文官になって。月日が立つのは早いですね。それで、あの……」
聞きにくそうにしているエレーナに微笑みかけた。
ローズディアとインゼロとの小競り合いの話からしないといけない。ノクトとの出会いへと続く話は、そこから始まったのだから。
「と、いうわけで、何もかもを奥さんと息子さんに任せて、お葬式をして私の配下になったの。もう、
アンバーでやりたい放題よね……」
「ウィル様も近衛になられて……功績を積まれたのですか。セバスチャン様も爵位を。私の知らない
間に、ずいぶん変わったのですね。その繋がりがノクト様という方を引き寄せたのですね……」
ため息に近いような、ほぅっというエレーナ。
「驚いたでしょ?」
「はい、驚きました。ジョージア様との結婚だけでも、私は驚いたのですけど……ウィル様やセバス
チャン様、さらにはノクト様まで……驚きです。あの、ナタリー様は、どのような……」
「ナタリーもアンバーの領地改革を手伝ってくれているわ!ドレスのデザインをしたり、作ってくれ
たり。今日着ているのもナタリーが作ってくれたものよ!」
「まぁ、アンナ様のドレス、素敵だと思っていたのですけど……ナタリー様が?みなさん、立派になら
れたのですね……」
感慨深そうに話すエレーナにみなの近況を話したら喜んでいた。エリザベスとは手紙のやり取りをしているそうで、トワイスのことは少しだけ知っているけど、ローズディアの話はあまり入ってこないと言っていた。
確かに、エレーナ宛に手紙は書いていたが、こういった近況はあまり書いていなかったことを思い出し、次からは書くわね!というと喜んだ。
「水をさして悪いんだけど、エレーナって……エリザベス嬢の侍女、ニナだったりする?」
ジョージアに指摘され、私と視線を合わせてクスっと笑うエレーナ。
「はい、ジョージア様。私は、エリザベスの侍女でニナでした。いろいろと事情があり、エレーナと
いう名をもらい、クロック侯爵家へ嫁いでおります」
「……やっぱり。それって、やっぱりアンナが関わっているの?」
「はい、私は、アンナ様に助けられました。私だけでなく、家族も」
「また、ひとつ、アンナの功績を見せつけられたよ……」
「ふふっ、功績だなんて。お兄様のお嫁選びに少々加担しただけですよ!」
「それが、エリザベスのご実家を助けることにもなりましたし、私たちも助けられました。私の浅はか
さのおかげで、たくさんの方々に迷惑をかけたことは、決して忘れません」
「今、それを返してくれているでしょ?それで、いいのよ!」
二人して……とジョージアが呟く。
「エリザベス嬢を嫁にと推したのは、アンナだって聞いていたけど」
「ニナもお兄様の嫁候補だったのです。下級貴族ですからね!可能性がないわけではなかった」
「でも、私は、今の方がとても幸せです!」
「それは、よかった。お兄様と結婚したって苦労するだけだからね!」
「……あとで、サシャに言っておくよ!」
「妹に泣きつくお兄様ですよ?」
すると、三人ともが思い当たるようで笑いだす。
ちょっと頼りないのが、兄だ。私は、そんなお兄様が大好きだったが、ここに集まったジョージアもエレーナも同じのようだった。
「今は、エリザベスによって、だいぶましになりましたけどね!」
「たしかに……サシャ様は少々頼りない感じがしましたね?そこが、よかったのですけど……」
「どう思います?ジョージア様」
「恋は盲目ってことだね?」
「じゃあ、私もそうだってことですかね……」
小さくため息をつくと、ジョージアが待って!と反論し、エレーナがクスっと笑う。
「恋は、偉大ですよ!」
「確かに!引篭もりの侯爵を引っ張り出しちゃったんだから、エレーナってすごいよね!」
そこじゃないよとジョージアは苦笑いしているが、エレーナは照れたように微笑んだ。
「どうかしたかしら?」
「旦那様は、その……」
「あぁ、元将軍に任せて置けば、なんとかなると思いますよ?少々、警備兵には痛い目をみてもらうことにな……」
顔を青ざめていくエレーナに気づいたのは、得意げに話をしていた私ではなくジョージアであった。
肘でコンコンっとつつかれて、エレーナの方を見るように言われ気が付いた。
「じょ……冗談ですよ!」
「……いえ、あの……あの方、私、見たことがあります!」
「えっ?」
私は目を丸くしながら、ジョージアを恐る恐るみやると、困った顔をして視線を合わせてくれた。
が、首を横に振っているので、あんまりいい状況ではないらしい。
「あの方は……インゼロ帝国の前の皇帝の弟様……何故、アンナ様の側に……?」
可哀想なくらい、カタカタと震えだすエレーナに私は席を立ち隣に座って抱きしめる。
「エレーナ、大丈夫?」
「……はい」
少しだけ落ち着いたのか、小さく息をはきながら、こちらを見上げてきた。
「ノクトのことが、怖いかしら?」
「……はい。正直に申しますと、とても怖いです。旦那様は引篭もりでしたから、あの方を知っている
かどうかはわかりませんが、とても有名な方ですから……常勝の将軍と」
「そうね。わりと有名な話よね?まぁ、その常勝に終止符を打ったのは、他でもないうちのセバスなん
だけどね?」
「えっ?セバスチャン様がですか?あの、アンナ様と一緒にいらした方ですよね?」
「えぇ、エレーナも学園やお茶会で会ったことがあるでしょ?」
「はい、たしか、ローズディアで文官を目指していたことは、知っていましたが」
「えぇ、立派な文官になって、今は、アンバーの領地改革を手伝ってくれているわ!」
「……文官になって。月日が立つのは早いですね。それで、あの……」
聞きにくそうにしているエレーナに微笑みかけた。
ローズディアとインゼロとの小競り合いの話からしないといけない。ノクトとの出会いへと続く話は、そこから始まったのだから。
「と、いうわけで、何もかもを奥さんと息子さんに任せて、お葬式をして私の配下になったの。もう、
アンバーでやりたい放題よね……」
「ウィル様も近衛になられて……功績を積まれたのですか。セバスチャン様も爵位を。私の知らない
間に、ずいぶん変わったのですね。その繋がりがノクト様という方を引き寄せたのですね……」
ため息に近いような、ほぅっというエレーナ。
「驚いたでしょ?」
「はい、驚きました。ジョージア様との結婚だけでも、私は驚いたのですけど……ウィル様やセバス
チャン様、さらにはノクト様まで……驚きです。あの、ナタリー様は、どのような……」
「ナタリーもアンバーの領地改革を手伝ってくれているわ!ドレスのデザインをしたり、作ってくれ
たり。今日着ているのもナタリーが作ってくれたものよ!」
「まぁ、アンナ様のドレス、素敵だと思っていたのですけど……ナタリー様が?みなさん、立派になら
れたのですね……」
感慨深そうに話すエレーナにみなの近況を話したら喜んでいた。エリザベスとは手紙のやり取りをしているそうで、トワイスのことは少しだけ知っているけど、ローズディアの話はあまり入ってこないと言っていた。
確かに、エレーナ宛に手紙は書いていたが、こういった近況はあまり書いていなかったことを思い出し、次からは書くわね!というと喜んだ。
「水をさして悪いんだけど、エレーナって……エリザベス嬢の侍女、ニナだったりする?」
ジョージアに指摘され、私と視線を合わせてクスっと笑うエレーナ。
「はい、ジョージア様。私は、エリザベスの侍女でニナでした。いろいろと事情があり、エレーナと
いう名をもらい、クロック侯爵家へ嫁いでおります」
「……やっぱり。それって、やっぱりアンナが関わっているの?」
「はい、私は、アンナ様に助けられました。私だけでなく、家族も」
「また、ひとつ、アンナの功績を見せつけられたよ……」
「ふふっ、功績だなんて。お兄様のお嫁選びに少々加担しただけですよ!」
「それが、エリザベスのご実家を助けることにもなりましたし、私たちも助けられました。私の浅はか
さのおかげで、たくさんの方々に迷惑をかけたことは、決して忘れません」
「今、それを返してくれているでしょ?それで、いいのよ!」
二人して……とジョージアが呟く。
「エリザベス嬢を嫁にと推したのは、アンナだって聞いていたけど」
「ニナもお兄様の嫁候補だったのです。下級貴族ですからね!可能性がないわけではなかった」
「でも、私は、今の方がとても幸せです!」
「それは、よかった。お兄様と結婚したって苦労するだけだからね!」
「……あとで、サシャに言っておくよ!」
「妹に泣きつくお兄様ですよ?」
すると、三人ともが思い当たるようで笑いだす。
ちょっと頼りないのが、兄だ。私は、そんなお兄様が大好きだったが、ここに集まったジョージアもエレーナも同じのようだった。
「今は、エリザベスによって、だいぶましになりましたけどね!」
「たしかに……サシャ様は少々頼りない感じがしましたね?そこが、よかったのですけど……」
「どう思います?ジョージア様」
「恋は盲目ってことだね?」
「じゃあ、私もそうだってことですかね……」
小さくため息をつくと、ジョージアが待って!と反論し、エレーナがクスっと笑う。
「恋は、偉大ですよ!」
「確かに!引篭もりの侯爵を引っ張り出しちゃったんだから、エレーナってすごいよね!」
そこじゃないよとジョージアは苦笑いしているが、エレーナは照れたように微笑んだ。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる