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けとばしちゃった……

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 翌日には、昨日の熱はなんのことというふうに、アンジェラは元気になった。
 今日は1日休息を取ることになっていたので、私たちは宿屋でのんびりすることになったのだが……私とニコライだけは、出かけることになった。


「ごめんなさい、ジョージア様。後をお願いします!」


 元気になったアンジェラは、自分も行くのだと元気に泣き叫ぶ。いやいや、昨日熱出してた子は大人しくしててね?といっても、聞きやしない。
 何処か既視感は感じたものの、心を鬼にしてダメだと叱った。


「アンジェラ、お土産を買ってくるから、ジョージア様と遊んであげて?お姉ちゃんだからできる
 よね?」
「えっ?俺がアンジェラに遊ばれるの……?」
「違います?」
「……違わないです。アンジーほら、パパと遊んでくれ。何がいいかな?」


 ジョージアがアンジェラを呼んだとき、すごい不機嫌で睨んだのは……𠮟るべきだろうか?
 ジョージアの方を向いているうちに、こそっと扉から出ていく。気配でわかったのか、出て行った瞬間、廊下まで聞こえるくらい大泣きしているアンジェラを可哀想に思いながら、聞こえない、聞こえないと呟いて、戻りたいのをぐっと堪えて外に出た。


「よかったのですか?」
「アンジェラのこと?」
「えぇ、あんなに泣いて……」


 外まで聞こえてくる泣き声に、本人にも申し訳ないが、一緒にいるジョージアや、宿に泊っている人たちにまで迷惑をかけている気がしてならない。
 しかし、物分かりのいいアンジェラが、ここまでぐずるのは珍しかった。


「あぁ、宿は、人、いないですから大丈夫です!」
「えっ?」
「貸し切りとかじゃないですよ。たまたま、人が少ない時期なんで」
「そうなんだ?なら……大丈夫かな?」


 私は、後ろ髪ひかれながら、歩き始めた。


「今日の向かう先はお店ですよ!」
「お店?」
「はい、アンナリーゼ……」
「アンナね!ニコライ」
「すみません、言いなれてなくて……」


 ニコニコと微笑むと、恐縮しきっている。一応、目立つ容姿ではあるので、なるべく髪を隠すために帽子を目深にかぶっている。


「あ……あの、アンナさん……?ちゃん?」
「好きなように呼んでくれたらいいよ!アンナでもいいし!ほら、行くよ!」
「では……アンナさん、こちらのお店です」


 案内された店は、普通の店であった。よくよく看板のところを見て、私は声をあげる。


「ニコライ、ここって……!」
「わかりましたか?ハニーアンバー店の支店ですよ!」


 私の提案で、他領に1店舗ずつ店を出せるほどの資金がないから、根付いている店の間借りをしたりと協力方法を何通りか作って、手を貸してくれる店を作れないかというのを言っていたのだが、まさに、そのお店であった。


「あの方法が、上手く行っているの?」
「上手くかはわかりませんが、貴族の中では、ハニーアンバー店という名がひとつの自慢話となって
 いるので、このお店の看板をつけるだけで、売り上げが上がるとか。
 ここは、間借りしているお店なんですけど、一度見ていただこうと思いまして……」


 ニコライが先に入っていき、私はついて行く。
 お店に入ると、普通の日用雑貨を売っているお店のようで、その一角の1番いい場所に大き目の机にうちの商品が並んでいた。
 領民が手に取りやすいようなものが、並んでいる。目玉は、やはり、砂糖のようで、そこには並んでおらず、『砂糖、あります!購入は店員までお声がけください!』と書かれた立札が書いてあった。


「こんにちは!店主さんいらっしゃいますか?」


 私が、ふらふらと店内を見ていると、ニコライが挨拶しているのが、聞こえてきた。
 所狭しと商品が棚に嵌っている店を上を向いて見ていて、躓いた。


「わぁ、わわわ……」
「おっとっと……お嬢さん、大丈夫だったかい?」


 人のよさそうな人が屈んでいたので気づかずに蹴飛ばしてしまって、その勢いで前へつんのめりになる。


「えぇ、大丈夫!それより、おじさん、ごめんなさい。大丈夫だった?」
「あぁ、大丈夫だ!」
「店主!ハニーアンバーのニコライさん来てくれてるよ!」
「あぁ、今行く!お嬢さん、ゆっくり見て行ってくれ!」
「ありがとう!」


 私は、ニッコリ笑いかけると、店主と呼ばれた人の後姿を見送る。その後、店内をまた歩き始めた。
 それ程大きくない店なので、1周回っても5分とかからない。すると、聞こえてくるニコライの呼ぶ声に、私は向かう。


「いたいた、アンナさん。どこ行ってたんですか!」
「探検?」
「子どもみたいなこと、好きですね?」
「新しいところに来たら、とりあえず見て回りたいのよ!」
「その気持ち、わからなくもないですけどね!」


 ニコライもイタズラっぽく笑う。たぶん、トワイスの王都でもあちこち見て回っていると聞いているので、私がどんな幼少期を過ごしていたのか知っているのだろうから、今更作ったりはしない。


「あぁ、さっきのお嬢さん!」
「店主、こちらがハニーアンバー店の店主だよ!」
「えっ?ニコライが店主ではないのかい?」
「僕は、違うよ。この方の下についているに過ぎない。店のことは殆ど任せてもらっているけど」
「そうだったのかい。このしがない店の店主をしております」
「初めまして、ハニーアンバー店の店主……ニコライ、私はやっぱり店主ではないわね。出資者って
 感じがあっていると思うわ!」
「そうは言わずに……それなら、いっそ、領主って名乗ればいいんじゃないですか?」
「あぁ、確かに……領地経営の店だものね。領主のアンナリーゼです!先程は、失礼しました!」


 沈黙が続く……続く……続く……


「領主だって?えっ?領主っていや、貴族じゃないか!」
「えぇ、一応、この公国の筆頭公爵を拝命してますわ!」


 店主は、言葉なくし、さらに静かになるのであった。
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