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集まると
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翌日から早速、カレンが予定表をくれたお茶会に参加する。
今日は女性だけの会となっているため、ジョージアは今晩の男性の会に向け家にいることとなった。
忙しいのは、実は兄で、昼はソルトとして、夜はサシャとして出かけることになる。
そして、今、注目の的であるソルトは、お茶会に引っ張りだこだということを昨夜の打ち合わせで聞かされる。
「黒の貴族っていうからさ、どんな人物なんだろう?って思ったら、意外といい人だよね!」
「手が早い以外は、私も好感はもっていますよ。仕事仲間として、なかなかおもしろいですし。それ
より、奥さんのミネルバの方がもっとおもしろいですけどね!」
「隣国なんだっけ?会ってみたいな。エールみたいにこっちの夜会には来ないのかい?」
「来ないですね。エールは、火遊びしに来ているだけですから……」
「あぁ、なるほどね。隣にいるとさ、キレイどころからの睨みが半端じゃないんだよ。確かにエールが
相手なら、遊びでもいいやって思うよね?」
「サシャ、変なことをアンナに言わないでくれる?本当にしたら、困るから」
「ジョージア、心配なんてする必要はないぞ?アンナの中身はほぼ、『ジョージア様のもの』だから。
アンナがフラフラと誰かについて行くようなことがあったら、僕が驚くよ!昔から、ジョージア様
だもんな、アンナ?」
兄の暴露壁はなんとかならないのだろうか?恥ずかしくて仕方がない。
キッと兄を睨み、私は何も言わず黙る。
「アンナ、ほら、機嫌直して?」
兄は私を宥めるように言うが、知らん顔しておく。
「アンナもサシャもそれくらいにして、今後のことを話し合おう」
私と兄の間に入りオロオロとしているジョージアに悪いと思ったので、ごめんなさいというと兄もジョージアに謝る。同時だったので、ジョージアはクスクス笑うので私たちは顔を見合わせてため息をついた。
今日はこの会場には、ジョージアがいない。挨拶に来たソルトにそっけなくすると後々噂になってもいけないので、にこやかに対応する。
私の笑顔の種類は、兄ならわかっているので、若干笑顔を引きつりながら挨拶をすませた。
今日は、情報収集を存分にと思い、積極的に入っていく。
「アンナリーゼ様、今日のお召し物もとても素敵ですね!それもハニーアンバーのものですの?」
「えぇ、そうですよ!今年の流行りは皆様も着てらっしゃるように、少々色香を纏うものですから、
私も流行りに合わせてドレスを新調いたしましたの!」
「夜会のドレスは、少々趣が違いましたけど……」
「レースをあしらって、胸元の開きを少々隠してしまいました。みなさまのように美しい体であれば
良いのですが、少々自信のないところもありますから……」
集まったみなの笑いを誘い、そして、今度その後付けレースも販売予定であることをしっかり宣伝する。
「ジョージア様がアンナリーゼ様に寄り添う姿は、どこかの王子様とお姫様みたいでした」
「ジョージア様は本当に王子様のようですね!私、いつまでたっても、ジョージア様に恋をしている
ようで……いつも側にいらっしゃるので、今日は寂しいです」
私の話できゃあきゃあと騒いでいたご婦人たちが、今度は、ジョージアがいないと肩を落としてしゅんと私がすると、私がいますわ!私もいますわ!ずっと、お慕いしておりますわ!と声をかけてくれた。
ナタリーのような物言いに少々戸惑う様子をみせ、ありがとうとニッコリ笑いかけると、とんでもございませんと惚けた顔でみなが言う。
その中で、1つ2つ視線の厳しい視線を感じた。まさにそれを待っていたのだが、なかなかその視線の先にたどり着けない。
直接、顔を見れたらいいんだけど、さすがに向こう側の顔をじっくり見るわけにはいかないので、扇子を広げる振りをして見やった。
カレンに目くばせすると頷いてくれたので、後日、誰か聞くことにした。
他の茶会や夜会もカレンが必要なものを選んでくれているので会場のどこかしこにはカレンがいてくれるので助かる。
今日はナタリーは別の茶会に出かけているので、次の打ち合わせをするときに話を聞くことになるだろう。
「アンナリーゼ様、お茶会は楽しんでおられますか?」
「カレン、えぇ、みなさまのおかげで楽しんでいますよ!日頃、領地にいるので公都のお話をたくさん
聞けて嬉しいわ!」
「それは、よかったですわ!こちらのお茶会に参加されてるみなさま、アンナリーゼ様のことをとても
気にされていらっしゃるのですよ」
「それは?」
「アンナリーゼ様がこの国にいらしてから、領地改革を始めたり、ハニーアンバー店を開店させたりと、
話題が尽きない公爵様に興味があるのです。中にはこっそり、アンバー領へ向かわれた方がいらっ
しゃるのですよ!」
そういってカレンが流し目でご婦人たちを見ると、照れたように頬を染めている方がちらほら見えた。
来てくれたのなら……領主の屋敷に寄ってくれたらいいのにと微笑む。
「あら、本当?次回来られる場合は、是非、領主の屋敷に来てください!ハニーアンバー店の本店が
ありますの。屋敷の一部を改装しているので、品ぞろえは、公都のそれとは違うのですけど、また
趣の違うものを揃えていますから!」
ニッコリと笑いかけると、先程頬を染めていた夫人たちが、はい!と思わず返事をしていた。お得様獲得に私はほくそ笑む。
こうやって、アンバー領のいいところをどんどん発信出来て行けば、いずれは活気ある領地に戻るだろう。私が領地のために出来ることは、多くはない。
こういう地道な宣伝が、私にとって最大の領地貢献だと、さっそく今後の領地改革の話を始める。
ご婦人が聞いていても退屈しないことを選りすぐって話すと、みんな少女のように目を輝かせて聞いてくれるのであった。
今日は女性だけの会となっているため、ジョージアは今晩の男性の会に向け家にいることとなった。
忙しいのは、実は兄で、昼はソルトとして、夜はサシャとして出かけることになる。
そして、今、注目の的であるソルトは、お茶会に引っ張りだこだということを昨夜の打ち合わせで聞かされる。
「黒の貴族っていうからさ、どんな人物なんだろう?って思ったら、意外といい人だよね!」
「手が早い以外は、私も好感はもっていますよ。仕事仲間として、なかなかおもしろいですし。それ
より、奥さんのミネルバの方がもっとおもしろいですけどね!」
「隣国なんだっけ?会ってみたいな。エールみたいにこっちの夜会には来ないのかい?」
「来ないですね。エールは、火遊びしに来ているだけですから……」
「あぁ、なるほどね。隣にいるとさ、キレイどころからの睨みが半端じゃないんだよ。確かにエールが
相手なら、遊びでもいいやって思うよね?」
「サシャ、変なことをアンナに言わないでくれる?本当にしたら、困るから」
「ジョージア、心配なんてする必要はないぞ?アンナの中身はほぼ、『ジョージア様のもの』だから。
アンナがフラフラと誰かについて行くようなことがあったら、僕が驚くよ!昔から、ジョージア様
だもんな、アンナ?」
兄の暴露壁はなんとかならないのだろうか?恥ずかしくて仕方がない。
キッと兄を睨み、私は何も言わず黙る。
「アンナ、ほら、機嫌直して?」
兄は私を宥めるように言うが、知らん顔しておく。
「アンナもサシャもそれくらいにして、今後のことを話し合おう」
私と兄の間に入りオロオロとしているジョージアに悪いと思ったので、ごめんなさいというと兄もジョージアに謝る。同時だったので、ジョージアはクスクス笑うので私たちは顔を見合わせてため息をついた。
今日はこの会場には、ジョージアがいない。挨拶に来たソルトにそっけなくすると後々噂になってもいけないので、にこやかに対応する。
私の笑顔の種類は、兄ならわかっているので、若干笑顔を引きつりながら挨拶をすませた。
今日は、情報収集を存分にと思い、積極的に入っていく。
「アンナリーゼ様、今日のお召し物もとても素敵ですね!それもハニーアンバーのものですの?」
「えぇ、そうですよ!今年の流行りは皆様も着てらっしゃるように、少々色香を纏うものですから、
私も流行りに合わせてドレスを新調いたしましたの!」
「夜会のドレスは、少々趣が違いましたけど……」
「レースをあしらって、胸元の開きを少々隠してしまいました。みなさまのように美しい体であれば
良いのですが、少々自信のないところもありますから……」
集まったみなの笑いを誘い、そして、今度その後付けレースも販売予定であることをしっかり宣伝する。
「ジョージア様がアンナリーゼ様に寄り添う姿は、どこかの王子様とお姫様みたいでした」
「ジョージア様は本当に王子様のようですね!私、いつまでたっても、ジョージア様に恋をしている
ようで……いつも側にいらっしゃるので、今日は寂しいです」
私の話できゃあきゃあと騒いでいたご婦人たちが、今度は、ジョージアがいないと肩を落としてしゅんと私がすると、私がいますわ!私もいますわ!ずっと、お慕いしておりますわ!と声をかけてくれた。
ナタリーのような物言いに少々戸惑う様子をみせ、ありがとうとニッコリ笑いかけると、とんでもございませんと惚けた顔でみなが言う。
その中で、1つ2つ視線の厳しい視線を感じた。まさにそれを待っていたのだが、なかなかその視線の先にたどり着けない。
直接、顔を見れたらいいんだけど、さすがに向こう側の顔をじっくり見るわけにはいかないので、扇子を広げる振りをして見やった。
カレンに目くばせすると頷いてくれたので、後日、誰か聞くことにした。
他の茶会や夜会もカレンが必要なものを選んでくれているので会場のどこかしこにはカレンがいてくれるので助かる。
今日はナタリーは別の茶会に出かけているので、次の打ち合わせをするときに話を聞くことになるだろう。
「アンナリーゼ様、お茶会は楽しんでおられますか?」
「カレン、えぇ、みなさまのおかげで楽しんでいますよ!日頃、領地にいるので公都のお話をたくさん
聞けて嬉しいわ!」
「それは、よかったですわ!こちらのお茶会に参加されてるみなさま、アンナリーゼ様のことをとても
気にされていらっしゃるのですよ」
「それは?」
「アンナリーゼ様がこの国にいらしてから、領地改革を始めたり、ハニーアンバー店を開店させたりと、
話題が尽きない公爵様に興味があるのです。中にはこっそり、アンバー領へ向かわれた方がいらっ
しゃるのですよ!」
そういってカレンが流し目でご婦人たちを見ると、照れたように頬を染めている方がちらほら見えた。
来てくれたのなら……領主の屋敷に寄ってくれたらいいのにと微笑む。
「あら、本当?次回来られる場合は、是非、領主の屋敷に来てください!ハニーアンバー店の本店が
ありますの。屋敷の一部を改装しているので、品ぞろえは、公都のそれとは違うのですけど、また
趣の違うものを揃えていますから!」
ニッコリと笑いかけると、先程頬を染めていた夫人たちが、はい!と思わず返事をしていた。お得様獲得に私はほくそ笑む。
こうやって、アンバー領のいいところをどんどん発信出来て行けば、いずれは活気ある領地に戻るだろう。私が領地のために出来ることは、多くはない。
こういう地道な宣伝が、私にとって最大の領地貢献だと、さっそく今後の領地改革の話を始める。
ご婦人が聞いていても退屈しないことを選りすぐって話すと、みんな少女のように目を輝かせて聞いてくれるのであった。
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