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あちこちの集まりにでかけましてよ!

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 始まりの夜会の翌日は、のんびりしていた。
 今日は特に予定も入れず、明日からの夜会や茶会のために英気を養う。
 それでも、朝の習慣なのかいつもの時間に目が覚めたので、こっそりベッドを抜け出そうとすると、いつものように寝ぼけたままのジョージアに抱きつかれる。


「……もぅ……起きたの?」
「おはようございます。目が覚めちゃいました。ジョージア様はゆっくり眠ってください」


 そういって、おでこにキスをすると布団の中に潜り込んでいく。
 私は解放されたので、起き上がり、デリアを呼んで着替えさせてもらった。


「アンナ様、よろしかったのですか?」
「えぇ、習慣で目が覚めちゃったから、朝食をとるわ!ジョージア様は、もう少し寝かせておいて
 あげて。慣れないことして疲れているだろうし」


 わかりましたというデリアと一緒に食堂へ向かう。
 昨日の屋敷の様子を聞き、特に変わったことがなかったようで、引き続き警戒をしてくれるよう頼む。


「何か情報は集まりましたか?」
「全然ダメね……アンバー公爵家を狙っているんでしょ?だからなのか、全然それっぽい人が寄って
 こないのよね。釣れない魚を釣るには、糸をたらすだけじゃダメなのよね。ダドリー男爵のことや
 城の情勢を書き換えるくらいのことをやってるから、相手も慎重よね?それでこそって感じだけど」


 ふぁあとあくびをしてしまうと、デリアに見られてしまった。すっと手を口元持って行ったが、後の祭りである。
 ため息をついたデリアは、私のあくびには触れず、兄の話になった。
 昨日、遠くから見ていたが、エールに連れまわされて結構動き回っていたようだ。
 私より遅く帰ってきたようで、今は寝ているらしい。


「サシャ様、帰りはドレスを脱いで帰ってきていましたよ。その方が、ソルトのことがバレないから
 でしょうけど、結構酔われていたので、今日はたぶん……」
「使い物にならないってことね。話を聞きたかったんだけど……仕方ないわね」


 私は食堂でさっと朝食食べ、軽く執務をする。
 アデルからの報告書が届いていたので、私は目を通した。
 内容は、災害に向け少しずつではあるが、領民の手助けもあり近衛たちと共に対策が進められているということが書かれている。
 気になることがあると書かれていた。それは、見事に暗号化されていたので、普通の報告書にしか見えない内容から拾っていく。
 この暗号は近衛で使われているものとは全く違うので、知る人じゃないとわからない。


「なるほどね……アンバー公爵をよく思っていない貴族の子息が今回の近衛貸与に混ざっていたか……
 こちらで、人選は出来ないから仕方がないわよね」


 誰のことかまで書かれていたので、記憶しておく。報告書は、敢えて隠すことはせず、普通に置いておくことにした。
 たいした内容ではないので、敵方にバレたとしても被害は少ない。
 ただ、その子息は私のことを領民を始め、アデルやココナなどにも聞いているらしい。
 不利になるようなことを侍従たちは言わないだろうが、領民はわからないといいアデルは心配してくれていた。

 コーコナ領に行くことも少ないので、あまり領民と話をする機会は少ないが、領地にはなるべく顔を出した方がいいのだろうなと考えさせられた。
 やらないといけないことを書き出し、机に突っ伏する。
 さすがに、この社交の期間を乗り切るには、それなりに気合がいるなとリストを見た。

 今日は一日が何事もなく過ぎて行く。
 ジョージアも兄も夕食まで会うことなく、私は執務室に籠ったのであった。



 ◇◆◇◆◇



「ゆっくりできましたか?」


 私はぼんやりしている兄に声をかけた。げっそりしてこちらを振り返る兄は、飲みすぎたと青い顔をしている。


「そんなに飲んだのですか?」
「エールに言われるがままに飲んでたんだよ……うぅ、頭が……」
「後で部屋に来てください。ヨハンの万能解毒剤を渡してあげます」
「……頼む」


 よろよろと夕飯の前に座ったが、食べられそうになさそうだ。見るに見かねた私は先に解毒剤を取りに部屋に向かうことにした。

 部屋に入ると、こちらもぼんやりとしたジョージアが部屋で佇んでいた。


「……アンナか」
「どうされましたか?」
「うん、いや……昨日の夜会は、濃かったなと……」
「その後も、濃い一晩でしたよ?」
「確かに。アンナが可愛いから仕方がないよね?」


 まだ、眠いのか、ふぁあとあくびをして、夕飯?と言っている。
 ジョージアを呼びに来たわけではないのだが、そうですよと言って衣装棚の奥に顔を突っ込む。


「……何してるの?」
「お兄様が二日酔いらしくって、解毒剤を……」


 がさごそとして1本解毒剤を持ち出すと、そんなところに置いてあるの?と不思議そうに見ていた。


「その解毒剤って、アンナが毒を口にしたときに飲んでたものだよね?」
「えぇ、そうですよ!」
「解毒剤に、二日酔いを直す、そんな効果あるの?」
「ありますよ!なんでも効いちゃうんですよ!飲んでみますか?疲れにも効きますから!」


 私はジョージアに万能解毒剤を渡すと、訝しみながら試験管を振っている。効果抜群なのは私が飲んでいるので立証済みである。最近では、インゼロの毒にも対策が取られているので、致死量の毒では死なない。即死の効果があるものとある特殊な毒以外なら効き目はなんでもござれのこの雑な解毒剤。
 アンナがそんなに勧めるならとジョージアは飲んだ。

 うーん、それで毒だったらどうするんだろ?

 勧めた手前、言葉にはせず、また、がさごそと兄の分を漁る。


「飲みやすいんだね?」
「そうですね。苦いの苦手なので、極限まで甘くしてもらってあります」


 食堂へ行きましょうかと手を繋ぎ部屋をでると、ジョージアが呟く。
 だるかったのに、なんだか体がほわほわするなと不思議そうにしていた。
 私はニコっと微笑み、食堂にいながらぐったりしている兄へ万能解毒剤を渡すとありがとうも言わず飲み干した。
 ふぅっと息を吐く兄は、顔色も少しだけ回復したようだ。


「そうだ!明日からの夜会と茶会のスケジュールですけど……」


 そう言ってカレンからもらっている参加予定表を二人に見せた。
 二人とも、その件数にギョッとしている。



「明日から、あちこちの集まりにでかけましてよ!」


 ジョージアと兄に言うとげんなりしながら、半分にしてくれ……と、小声で二人が言う。
 私は、二人の呟きは聞こえないふりをして、今晩のうちに打ち合わせしましょうね!とニッコリ笑うのであった。
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