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確かに、これは。

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 兄と一緒に屋敷へ帰ってきた。まずは、ジョージアを迎えに行くことにし、兄は先に応接室へと向かう。
 私は執務室の扉をノックすると、ジョージアのどうぞという声が聞こえてきた。


「ただいま戻りました」


 朝のこともあったので、少々緊張の面持ちで執務室へと入っていく。
 執務机には座らず、別に設えてある机に向かい、ジョージアは何事か書き物をしていた。


「おかえり、アンナ。今日は、お店に行ってたんだよね?」
「えぇ、そうですよ!」
「有意義な時間になったかな?」


 今朝と違い、雰囲気が柔らかくなったジョージアに私はホッとした。
 今なら、兄との話を出来るのではないだろうかと、口を開こうとしたとき、ジョージアが書いているものが目に入った。
 私ももちろん書いている領地の管理簿だ。基本的に私が管理してはいるが、領地にいない間は、セバスやイチアに頼むこともあった。


「管理簿ですか?」
「あぁ、そうだね。これは、この屋敷に置くためのアンナが書いているものの複写だね」
「そう言えば、2冊作らないといけないことになっていましたね……」
「アンナが書いた物をイチアかセバスが書き写しているみたい。これを見ていると、領地で起こった
 こと、これから発展させる事業、反省点、経費が事細かく書いてある。実は、アンナが書き始めて
 から、領地の管理簿は見たことがなかったんだ。俺は、父上に言われた通りのものを書いていたけど、
 正直、この管理簿の書き方には驚いたよ」


 私の方を見て、ジョージアは少し困った顔をしている。領地の管理簿は、1日両開き1枚を目途に書き込むようにしている。
 ジョージも言ったが、今日の出来事、反省、経費については、きちんと書き込む様にしている。杜撰な管理簿で多額のお金を失っていたアンバーとしては、これくらいしてもしたりない。
 基本的に領主が領地にいる間は、きちんと把握しておいた方がいいことを書き込んである。
 例えば、トイレ問題や麦の取れ高など、領民へ直結する問題はわかりやすくしておかないといけない。


「これだけ見ただけでも、アンナが健全な領地運営をしていることがわかるよ」
「そうですか?これでも、大きな出来事とかお金の動きだけですからね。イチアやセバスには、もっと
 細かい物を書いてもらってありますよ!1日に数ページに渡ることもありますし……こうして、管理簿を
 見ていると、まだまだ領地のためになることが出来ると思いますね。ジョージア様もそう思いませんか?」
「うーん、正直、思うこともあるかな。人の使い方にしても無駄が多いようだし、もう少し、いろいろ
 なところで効率的にできそうな気がするよ?」


 私は、そんなジョージアの気づきが嬉しい。そして、何かしないといけないとなったときに、領地や領民へジョージアの目が行ったことがなにより嬉しかった。
 さすが、アンバー公爵である。


「ジョージア様、例えばですけど……こういう管理簿から、私たちの改革を分析して、もっと効率が
 よくなるところとか改善策を私に教えてくれませんか?私やセバスにイチアは、当事者過ぎて目に
 見えないことがあります。第三者の目が必要だと話をしていたところですから、それをしてもらえる
 なら嬉しいです。アンバー領の知識は、私たちよりずっと多いジョージア様が、ジョージア様の私見を
 私に聞かせてください!領地の運営について議論いたしましょう!」


 そんなことでいいの?と目を丸くして驚くジョージア。私たちは、やっってみてダメならまた新しい方法をと手探りでしている部分がある。今まであまり関わっていないからこそ、ジョージアにしか見えてくる何か期待したい。
 書きおこしていた部分を見れば、頼む前から出来ている。
 これなら、ジョージアも大いに力を発揮出来るであろうことがわかったので、お願いすることにした。


「そうそう、私、ジョージア様を呼びに来たのです。お兄様との話聞きませんか?それだけで、目の付け
 所というのが身につくかと思います」
「わかった。一緒にいくよ。サシャをこの部屋に呼べばよかったんじゃない?」
「そうなんですけどね?真面目に話すと……なんというか……」


 何のこと?と首を傾げるジョージア。女装することになったことは、内緒であることを思い出した。
 なので、兄の口から出るまでは黙っておこうと、今更ながら考えた。


「そういえば、さっき、カレン様のおつかいが来ていたよ。これ、手紙ね。急ぎらしいからと言って
 いたけど、また、アンナはカレン様を巻き込んで何かするの?」
「いえ、お兄様にカレンを紹介したくて……」
「あぁ、そういうこと?カレン様はアンナにとって、こっちで出来た初めての友人だからね。会わせて
 おいていいと思うよ。ただ、あの色香は……」
「ジョージア様もカレンのような女性が好きですか?」


 廊下を歩きながら、チラッと上を見るとと、まさか!と驚いていた。
 そうはいっても、ソフィアも……と考えて複雑な顔をしていると、アンナ以外を受け付けておりませんからと笑う。
 いつものジョージアの笑顔がみれて、私も嬉しい。
 応接室まではあと少しだが、ジョージアの腕に抱きつく。


「アンナさん?」
「なんですか?」
「あの、これから、サシャに会うんだよね?」
「お兄様なんて、別にいいじゃないですか?仲良しなところを見せつけてやりましょう!」


 私が甘えるのが珍しいからか、くっくっと笑っている。


「まさか、ローズディアまで来て、妹と友人のいちゃこらしているところを見せられるなんて、サシャも
 可哀想だな」
「大丈夫ですよ!始まりの夜会が終われば、毎日、黒の貴族に連れまわされて忙しいですから。私も程
 ほどに忙しいですけど、ジョージア様との時間はしっかり作りますよ!ジョージア様も少しぐらい、
 私との時間を作ってくださいね?」
「あぁ、子どもたちとの時間も作ろう。ジョージが寂しそうにしているんだ」
「わかりました、親子で過ごす時間も作りましょう」


 そういって、応接室にベタベタとくっつきながら入って行くと、兄は呆れかえっていた。
 そして、ため息ひとつ、羨ましいと呟くとソファアに座り直し、私たちも対面に座る。
 店で話したことをジョージアにも情報共有する。
 そういえば、カレンからの手紙をと思い開き内容を確認すると、明日、屋敷に来てくれるらしい。


「お兄様、カレンを紹介しますわ!明日、来てくれるようです。ローズディアでの協力者ですから、
 お兄様も失礼のないようにお願いしますね?」
「アンナじゃないんだから、大丈夫だよ!ジョージアももちろん、参加するだろ?」


 まさか!という顔をしているジョージアに、兄の一言で参加することになった。
 そういえば、兄はやはりジョージアにはあのことは言わないらしい。
 始まりの夜会当日、ジョージアが変装する兄と気づくのか……楽しみであった。
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