563 / 1,518
トラブルの真ん中Ⅲ
しおりを挟む
「次に、屋敷の守りね?ディルがいれば問題ないと思うけど、ジョージア様、ジョージ、お兄様には
護衛をつけて欲しいわ!」
「あの、アンナリーゼ様?」
「何かしら?リアン」
「アンナリーゼ様のお子様たちはどうなさるのですか?」
「エマがついているから、大丈夫だと思うよ?どう?デリア」
「はい、その辺りは抜かりなく。私もなるべく見回りにお子様のところへは向かいます」
「えっと……エマですか?」
「そう、エマ。エマってね、実は特殊な生まれなのよ」
「えっと、デリアが拾ってきた子だと聞いてますけど……」
「間違ってはいないよ。間違っては……」
俺も疑問に思っていたんだけど?とジョージアが聞いてくる。エマのことは、デリアが後継にと連れてきた子ではあった。
笑わない表情の乏しい子で出自も何も誰にも教えていなかった。
「言ってもいいよね?デリア」
「……はい」
「エマは、本職は暗殺者。私と侍女カルアの命を狙ってここに送り込まれようとした刺客ね!」
「はっ?」「えっ?」「暗殺者?」「アンジェラの侍女?」
なかなか、いい反応をしてくれる面々に私はニコッと笑うと、突拍子もない話で、驚いていた。ディルも知らない事実だったようで、エマの普通に不自然なところがなかったということが確認がとれた。
「カルアを……主に侍女の口封じをするために、送られた暗殺者だったのよ。この屋敷に入るまでに、
デリアに気づかれて手酷く躾け直されたわけなんだけど……」
「よく、気が付いたね?」
「たまたまです。アンナ様にもいろいろと教えてもらっていたときで、自分でも試していました。足音
のしない人は、まず、疑っていいって言ってたので、あぁそうかも?と思って、声をかけたのです。
ヨハン教授に聞いたところ、薬で記憶を混濁させられ、催眠をかけられて、いろいろとわからなく
させられていたようです」
「それで、そんな危険な子をどうして?」
ジョージアの意見はもっともだろう。他にも聞きたいと目が訴えている。
「私が責任を取るから、まず、薬漬けになっているのを抜いてくれと言いました。相当小さい頃から
何かしらの薬を飲まされていたようで、薬を抜くのに、時間がかかりましたよ」
「薬って、どうやって?」
「ヨハンの万能解毒剤です。それを飲ませるんですけど、なかなか……それこそ、200本近く飲ませて
やっと、解毒できました」
「薬って、結局なんだったの?」
「正確にはわかりませんが、催眠剤みたいだと、ヨハンには聞いています」
「あの、それで……エマがアンジェラ様の侍女って……」
不安を隠せないリアンは、少々震えながら言っている。
エマと1番長くいるはずでも、暗殺者という言葉で不安になったのだろう。たぶん、私より暗殺にかけてはエマの方が秀でている。私は方法を知っているだけで、実際使うことなんてないんだから……
「大丈夫よ。薬はもう抜けているし、もし、殺意が湧くのであれば、それはエマの心からのもの。もし、
そうなったら、どうしようもないけど、エマの命はデリアが握っているからね?」
「あの……デリアにも何か?」
「リアンには話していなかったかな?デリアは、少々特殊な侍女なのよ」
スカートの中からナイフを取り出し、デリアに向けて投げる。もちろん、デリアの心臓目掛けて。
それを見て、デリアの隣にいたリアンがひぃっと小さく悲鳴をあげた。
何食わぬ顔をして、デリアが私の投げたナイフを受け止め、投げ返してくる。兄に向けて……
今度は、兄と行方を見ていたジョージアがえっ?っと固まってしまった。兄にはこれくらい自分で受け止めて欲しいところではあるのだがとチラッと見たが動く感じもしないので、私が遮った。
「あ……危ないな……」
手元に戻ってきたナイフを太腿につけているホルダーにしまい込み座り直した。
兄は冷や汗をかいているのか、ハンカチで額を拭っている。隣を見ればジョージアも似たような感じだ。
「お兄様もこれくらい避けるか、取るかくらい反応出来ないでどうするのです?」
「いや、そうは言っても……デリアは、ナイフ投げうまいよ。僕じゃ無理」
それじゃ困るのだけど?と睨むと、無理と視線を兄が送ってくる。
ふぅっとため息をひとつ、席に深く座り直した。
ジョージアも未ださっきの出来事から戻ってきていないのか、呼吸がとても浅い。
「ジョージア様、大丈夫です?」
「……うん、大丈夫。あの、デリアって、何者なの?」
「私の侍女です。少々、ディルによって調教されてますけど……」
「アンナ様、言い方!」
調教に反応したデリアの顔は真っ赤であるが、間違ってはいない。ディルは、表向きアンバー公爵家筆頭執事ではあるが、裏でもきちんと筆頭執事として実力はかなりある。
「ジョージア様は、知りませんか?ディルの裏の顔って言えばいいのかしら?」
「何か、それは……かっこいいですね?」
「あら、ディル。気に入ってもらえた?」
「えぇ、とても。裏ですか。裏表なく、私はアンバー公爵家の筆頭執事なのですけど」
「確かに」
「……もしかしなくても?」
「アンバー公爵家にもあるんですよね。裏組織が。今は殆どが情報収集機関となっているのですけど、
それなりにみんな戦えますし、特に優秀な侍女たちは私たちを守るための訓練を受けています」
「……知らなかった。えっ?なんで、アンナは知っているの?」
「……ジョージア様」「旦那様……」「はぁ……」
「うん、俺が自分の家のことすら知らなさすぎるのは、わかった。わかったけど……デリア、そのため
息は、ちょっと傷つくよ?」
「では、旦那様」
はい!と緊張の面持ちでデリアに向き合うジョージア。その姿が、私やデリアに叱られる前のアンジェラそっくりで笑ってしまいそうになりそっぽ向く。それでも、堪えられず、体を震わせてしまった。
すると、その振動が伝わったのか、ジョージアがムッとしてこっちを見たが、すぐにデリアに向き直って、聞く体制だ。
思わず、ジョージアの頭をアンジェラみたいに撫でてしまったのであった。
護衛をつけて欲しいわ!」
「あの、アンナリーゼ様?」
「何かしら?リアン」
「アンナリーゼ様のお子様たちはどうなさるのですか?」
「エマがついているから、大丈夫だと思うよ?どう?デリア」
「はい、その辺りは抜かりなく。私もなるべく見回りにお子様のところへは向かいます」
「えっと……エマですか?」
「そう、エマ。エマってね、実は特殊な生まれなのよ」
「えっと、デリアが拾ってきた子だと聞いてますけど……」
「間違ってはいないよ。間違っては……」
俺も疑問に思っていたんだけど?とジョージアが聞いてくる。エマのことは、デリアが後継にと連れてきた子ではあった。
笑わない表情の乏しい子で出自も何も誰にも教えていなかった。
「言ってもいいよね?デリア」
「……はい」
「エマは、本職は暗殺者。私と侍女カルアの命を狙ってここに送り込まれようとした刺客ね!」
「はっ?」「えっ?」「暗殺者?」「アンジェラの侍女?」
なかなか、いい反応をしてくれる面々に私はニコッと笑うと、突拍子もない話で、驚いていた。ディルも知らない事実だったようで、エマの普通に不自然なところがなかったということが確認がとれた。
「カルアを……主に侍女の口封じをするために、送られた暗殺者だったのよ。この屋敷に入るまでに、
デリアに気づかれて手酷く躾け直されたわけなんだけど……」
「よく、気が付いたね?」
「たまたまです。アンナ様にもいろいろと教えてもらっていたときで、自分でも試していました。足音
のしない人は、まず、疑っていいって言ってたので、あぁそうかも?と思って、声をかけたのです。
ヨハン教授に聞いたところ、薬で記憶を混濁させられ、催眠をかけられて、いろいろとわからなく
させられていたようです」
「それで、そんな危険な子をどうして?」
ジョージアの意見はもっともだろう。他にも聞きたいと目が訴えている。
「私が責任を取るから、まず、薬漬けになっているのを抜いてくれと言いました。相当小さい頃から
何かしらの薬を飲まされていたようで、薬を抜くのに、時間がかかりましたよ」
「薬って、どうやって?」
「ヨハンの万能解毒剤です。それを飲ませるんですけど、なかなか……それこそ、200本近く飲ませて
やっと、解毒できました」
「薬って、結局なんだったの?」
「正確にはわかりませんが、催眠剤みたいだと、ヨハンには聞いています」
「あの、それで……エマがアンジェラ様の侍女って……」
不安を隠せないリアンは、少々震えながら言っている。
エマと1番長くいるはずでも、暗殺者という言葉で不安になったのだろう。たぶん、私より暗殺にかけてはエマの方が秀でている。私は方法を知っているだけで、実際使うことなんてないんだから……
「大丈夫よ。薬はもう抜けているし、もし、殺意が湧くのであれば、それはエマの心からのもの。もし、
そうなったら、どうしようもないけど、エマの命はデリアが握っているからね?」
「あの……デリアにも何か?」
「リアンには話していなかったかな?デリアは、少々特殊な侍女なのよ」
スカートの中からナイフを取り出し、デリアに向けて投げる。もちろん、デリアの心臓目掛けて。
それを見て、デリアの隣にいたリアンがひぃっと小さく悲鳴をあげた。
何食わぬ顔をして、デリアが私の投げたナイフを受け止め、投げ返してくる。兄に向けて……
今度は、兄と行方を見ていたジョージアがえっ?っと固まってしまった。兄にはこれくらい自分で受け止めて欲しいところではあるのだがとチラッと見たが動く感じもしないので、私が遮った。
「あ……危ないな……」
手元に戻ってきたナイフを太腿につけているホルダーにしまい込み座り直した。
兄は冷や汗をかいているのか、ハンカチで額を拭っている。隣を見ればジョージアも似たような感じだ。
「お兄様もこれくらい避けるか、取るかくらい反応出来ないでどうするのです?」
「いや、そうは言っても……デリアは、ナイフ投げうまいよ。僕じゃ無理」
それじゃ困るのだけど?と睨むと、無理と視線を兄が送ってくる。
ふぅっとため息をひとつ、席に深く座り直した。
ジョージアも未ださっきの出来事から戻ってきていないのか、呼吸がとても浅い。
「ジョージア様、大丈夫です?」
「……うん、大丈夫。あの、デリアって、何者なの?」
「私の侍女です。少々、ディルによって調教されてますけど……」
「アンナ様、言い方!」
調教に反応したデリアの顔は真っ赤であるが、間違ってはいない。ディルは、表向きアンバー公爵家筆頭執事ではあるが、裏でもきちんと筆頭執事として実力はかなりある。
「ジョージア様は、知りませんか?ディルの裏の顔って言えばいいのかしら?」
「何か、それは……かっこいいですね?」
「あら、ディル。気に入ってもらえた?」
「えぇ、とても。裏ですか。裏表なく、私はアンバー公爵家の筆頭執事なのですけど」
「確かに」
「……もしかしなくても?」
「アンバー公爵家にもあるんですよね。裏組織が。今は殆どが情報収集機関となっているのですけど、
それなりにみんな戦えますし、特に優秀な侍女たちは私たちを守るための訓練を受けています」
「……知らなかった。えっ?なんで、アンナは知っているの?」
「……ジョージア様」「旦那様……」「はぁ……」
「うん、俺が自分の家のことすら知らなさすぎるのは、わかった。わかったけど……デリア、そのため
息は、ちょっと傷つくよ?」
「では、旦那様」
はい!と緊張の面持ちでデリアに向き合うジョージア。その姿が、私やデリアに叱られる前のアンジェラそっくりで笑ってしまいそうになりそっぽ向く。それでも、堪えられず、体を震わせてしまった。
すると、その振動が伝わったのか、ジョージアがムッとしてこっちを見たが、すぐにデリアに向き直って、聞く体制だ。
思わず、ジョージアの頭をアンジェラみたいに撫でてしまったのであった。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す
冬
ファンタジー
口が悪く男勝りで見た目は美青年な不良、神田シズ(女)は誕生日の前日に、漆黒の軍服に身を包んだ自分とそっくりの男にキスをされ神様のいない異世界へ飛ばされる。元の世界に帰る方法を捜していると男が着ていた軍服が、城で働く者、城人(じょうにん)だけが着ることを許させる制服だと知る。シズは「君はここじゃないと生きれない」と吐き捨て姿を消した謎の力を持つ男の行方と、自分とそっくりの男の手がかりをつかむために城人になろうとするがそのためには試験に合格し、城人になるための学校に通わなければならず……。癖の強い同期達と敵か味方か分からない教官、上司、王族の中で成長しながら、帰還という希望と真実に近づくにつれて、シズは渦巻く陰謀に引きずり込まれてゆく。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる