ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
539 / 1,513

社交の準備!

しおりを挟む
 1日ゆっくり過ごした私とデリアは、同じような動きをしながら体をほぐしていた。
 まぁ、デリアの方は私に気づいてやめてしまったが、おはようと声をかけると優しい笑顔で挨拶をしてくれる。


「デリアもそんな優しいえが……いえ、なんでも……」


 一瞬で崩れた笑顔と同時に冷える心。朝から怒らせてはいけないと思い言葉を引っ込めた。
 朝食を並べてもらい、席に向かうが、ジョージアはまだ寝ているようだ。


「旦那様は、まだ、お休みですか?」
「そうね。寝かせておいてあげて。それより、今日は、私は忙しいのよね?」
「そうですね。今日は衣装合わせがありますから……ナタリー様がおいでくださいますよ!今回の
 ドレスもとても素敵なものでした。先に拝見させていただきましたが……あのドレスを着られるので
 あれば、私は腕によりをかけて、アンナ様をみがきあげませんと!」


 やたら気合の入ったデリアに、それ程気合を入れなくても……と声をかけたが、聞く耳を持たなかった。
 私を着飾るのは、デリアの仕事の中で1番誉れ高いことらしく、手を抜くということはありえないらしい。
 確かに、筆頭公爵がみすぼらしかったら、示しがつかないのでそういうことも考えてくれているのであろう。


「そういえば、ナタリーに頼みたいことがあるんだった。ドレスの注文をしたいのだけど……」
「ドレスの注文ですか?」
「えぇ、そうなの!この社交の時期だとだいたいどれくらいのドレスがあればいいかしら?」
「アンナ様のドレスなら、確保してありますけど……?」
「私のではないわ!ふふっ、私のではないのよ!デリア」
「それでは、一体誰のをご用意されるのですか?アンジェラ様は、まだ、早いでしょうから……」


 私の顔を見ながら、考え込むデリアに私は思わず頬を緩ませると、ますますよくわからないと考えこんだ。
 そんなデリアの見ながら朝食をとり、執務室へと移動した。そろそろ、友人たちが着てくれているはずだったので、執務室へと急ぐ。
 部屋に入るとパルマがお茶の用意をしてくれているところで、すでに三人は席につき雑談をしている。


「おはよう、ウィル、セバス、ナタリー」
「はよ、姫さん!」
「おはようございます、アンナリーゼ様」
「お久しぶりですわ!アンナリーゼ様」


 三者三様で出迎えられ、私は微笑む。
 一昨日の謁見の話をしないといけないので、集まってもらったのだ。


「朝から集まってもらっちゃって……」
「いえいえ、朝は早いので問題ないですよ!」
「俺は、眠い……昨日、ミアのお人形遊びに夜中まで……ふぁぁあ……」
「ウィルが、お人形遊びって、想像つかないわね?」
「俺だって、そういうのに付き合うんだよ。父親だから!」
「いいお父様ね!うちの父にも爪の垢を煎じて飲ませたいわ!」
「まぁまぁ、ナタリー。気を沈めて!それで、今少しだけ話を聞いたんだけど……」


 そうねと頷くと、ウィルと出向いたコーコナのこと、謁見の話、公妃の謝罪の話をセバスとナタリーにもすることにした。
 手っ取り早く、簡単そうな公妃の謝罪の話をすることにした。


「謁見での話なんだけど……お願いしたいことが2つあるわ!」
「なんでしょうか?」
「まずは、ナタリーへのお願いを話すわね!」
「……はい、お願いします」


 何を話すのかと、ウィルやセバスの顔を見てからナタリーは私の方を見る。まぁ、畏まって話をすることって、あまりないので少し身構えたようだった。


「ドレスをね……5着程用意してほしいの」
「アンナリーゼ様のですか?今年の分については、本日持ってきましたが……」
「私のではないの。公妃の分よ!公に買い上げてもらったのよ!」
「えっ?公妃様の分ですか……?それには、何か意図があるのですか?」
「えぇ、今度の始まりの夜会に公妃も出席することが決まっているの」
「なるほど、ハニーアンバー店を潰すと言っていた公妃にハニーアンバー店のドレスを着せるという
 ことですね?公妃からしたら、屈辱でしょうね?劣悪なものを……」
「ナタリー、待って!」
「はい、何でしょうか?」
「最高級のドレスを用意してちょうだい。みなが羨むようなとてもとても素敵なドレスを公妃のため
 だけのものを用意してちょうだい!」
「でも、着てもらえない気がしますが……」
「私からの贈り物なら、着ないでしょうね?でも、大好きな公から、今回の夜会に是非着てくれと言わ
 れたら?」


 なるほど……着ますねと言ったのは、セバスである。公妃が公に執着していることは、周知の事実なのだからねらい目である。例え、私が絡んでいるとわかっていても、謝罪込みの話であるからして、断ることはできないだろう。


「夜会の1着はわかりましたけど、他のドレスは?」
「社交の季節だからね、お茶会もあるでしょうしね。公妃は夜会にはなるべくでない方向だから……」
「わかりました。昼間のお茶会に映えるドレスにしましょう!夜会の前日には、ニコライに届けてもらう
 方向で話を進めておきます」
「時間がないのに、ごめんね!」
「いいえ、いい宣伝になりますよね!第二妃は、表舞台に出てくるような人ではありませんから、いくら
 公がドレスを贈っても誰かの目にとまることは少ないですし、公妃が嫌っているドレスを着こなして
 いたら……これ程、おもしろいことはありませんわ!
 ひとつ、出来上がっているドレスがありますの!公妃に似合う色味のものですから、そちらを用意
 しますわ!それにしても、アンナリーゼ様は人が悪いですわね!」


 ふふっとセンスで顔を半分隠して笑うナタリーは、妖艶な悪女っぽい。
 その様子を見てウィルはさっきまで眠そうにしていたのに、ギョッとしていた。目が覚めたようで何よりだ。


「ナタリー、請け負ってくれてありがとう!」
「とんでもないですわ!夜会楽しみにしておきます。
 そうそう、あのクーヘンという彼女、とてもいいセンスをしていますわ!アンナリーゼ様のドレスを
 一緒に作ったのですけど、阿吽の呼吸とは、こういう手合いの感じなのかと嬉しく思いましたわ!」


 ナタリーはデリアを呼び、夜会用のドレスを広げるよう指示を出すと、リアンと同時にきて見せてくれた。精緻な刺繍がとても綺麗な一品であるからして、この辺のレースはクーヘンが手がけたのだろうか?


「見事なドレスね!」
「ありがとうございます!これと、全く同じものを1つ作ってありましたの。私が着ようと思ってい
 ましたが……なるほど、みんなが目のつく公妃のドレスなら、確実に注文が殺到することを考えて
 おいた方がいいと思います」
「嬉しい悲鳴ってやつね!」


 ナタリーが頷くと、ドレスには興味のない男性二人組がヒソヒソと話をしていた。


「いい方法なのよ!お金をかけず、宣伝してもらえればいうこと無し。着心地がいいこのドレスを万が
 一にでも、公妃が好んで着るようになった……なんて、少し欲まで出てきたわ!」


 ニッコリ笑うと、さすがアンナリーゼ様とセバスが言ってくれる。次はセバスの番よと微笑むと、控えていたパルマをこちらに呼び寄せるのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...