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社交の準備!

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 1日ゆっくり過ごした私とデリアは、同じような動きをしながら体をほぐしていた。
 まぁ、デリアの方は私に気づいてやめてしまったが、おはようと声をかけると優しい笑顔で挨拶をしてくれる。


「デリアもそんな優しいえが……いえ、なんでも……」


 一瞬で崩れた笑顔と同時に冷える心。朝から怒らせてはいけないと思い言葉を引っ込めた。
 朝食を並べてもらい、席に向かうが、ジョージアはまだ寝ているようだ。


「旦那様は、まだ、お休みですか?」
「そうね。寝かせておいてあげて。それより、今日は、私は忙しいのよね?」
「そうですね。今日は衣装合わせがありますから……ナタリー様がおいでくださいますよ!今回の
 ドレスもとても素敵なものでした。先に拝見させていただきましたが……あのドレスを着られるので
 あれば、私は腕によりをかけて、アンナ様をみがきあげませんと!」


 やたら気合の入ったデリアに、それ程気合を入れなくても……と声をかけたが、聞く耳を持たなかった。
 私を着飾るのは、デリアの仕事の中で1番誉れ高いことらしく、手を抜くということはありえないらしい。
 確かに、筆頭公爵がみすぼらしかったら、示しがつかないのでそういうことも考えてくれているのであろう。


「そういえば、ナタリーに頼みたいことがあるんだった。ドレスの注文をしたいのだけど……」
「ドレスの注文ですか?」
「えぇ、そうなの!この社交の時期だとだいたいどれくらいのドレスがあればいいかしら?」
「アンナ様のドレスなら、確保してありますけど……?」
「私のではないわ!ふふっ、私のではないのよ!デリア」
「それでは、一体誰のをご用意されるのですか?アンジェラ様は、まだ、早いでしょうから……」


 私の顔を見ながら、考え込むデリアに私は思わず頬を緩ませると、ますますよくわからないと考えこんだ。
 そんなデリアの見ながら朝食をとり、執務室へと移動した。そろそろ、友人たちが着てくれているはずだったので、執務室へと急ぐ。
 部屋に入るとパルマがお茶の用意をしてくれているところで、すでに三人は席につき雑談をしている。


「おはよう、ウィル、セバス、ナタリー」
「はよ、姫さん!」
「おはようございます、アンナリーゼ様」
「お久しぶりですわ!アンナリーゼ様」


 三者三様で出迎えられ、私は微笑む。
 一昨日の謁見の話をしないといけないので、集まってもらったのだ。


「朝から集まってもらっちゃって……」
「いえいえ、朝は早いので問題ないですよ!」
「俺は、眠い……昨日、ミアのお人形遊びに夜中まで……ふぁぁあ……」
「ウィルが、お人形遊びって、想像つかないわね?」
「俺だって、そういうのに付き合うんだよ。父親だから!」
「いいお父様ね!うちの父にも爪の垢を煎じて飲ませたいわ!」
「まぁまぁ、ナタリー。気を沈めて!それで、今少しだけ話を聞いたんだけど……」


 そうねと頷くと、ウィルと出向いたコーコナのこと、謁見の話、公妃の謝罪の話をセバスとナタリーにもすることにした。
 手っ取り早く、簡単そうな公妃の謝罪の話をすることにした。


「謁見での話なんだけど……お願いしたいことが2つあるわ!」
「なんでしょうか?」
「まずは、ナタリーへのお願いを話すわね!」
「……はい、お願いします」


 何を話すのかと、ウィルやセバスの顔を見てからナタリーは私の方を見る。まぁ、畏まって話をすることって、あまりないので少し身構えたようだった。


「ドレスをね……5着程用意してほしいの」
「アンナリーゼ様のですか?今年の分については、本日持ってきましたが……」
「私のではないの。公妃の分よ!公に買い上げてもらったのよ!」
「えっ?公妃様の分ですか……?それには、何か意図があるのですか?」
「えぇ、今度の始まりの夜会に公妃も出席することが決まっているの」
「なるほど、ハニーアンバー店を潰すと言っていた公妃にハニーアンバー店のドレスを着せるという
 ことですね?公妃からしたら、屈辱でしょうね?劣悪なものを……」
「ナタリー、待って!」
「はい、何でしょうか?」
「最高級のドレスを用意してちょうだい。みなが羨むようなとてもとても素敵なドレスを公妃のため
 だけのものを用意してちょうだい!」
「でも、着てもらえない気がしますが……」
「私からの贈り物なら、着ないでしょうね?でも、大好きな公から、今回の夜会に是非着てくれと言わ
 れたら?」


 なるほど……着ますねと言ったのは、セバスである。公妃が公に執着していることは、周知の事実なのだからねらい目である。例え、私が絡んでいるとわかっていても、謝罪込みの話であるからして、断ることはできないだろう。


「夜会の1着はわかりましたけど、他のドレスは?」
「社交の季節だからね、お茶会もあるでしょうしね。公妃は夜会にはなるべくでない方向だから……」
「わかりました。昼間のお茶会に映えるドレスにしましょう!夜会の前日には、ニコライに届けてもらう
 方向で話を進めておきます」
「時間がないのに、ごめんね!」
「いいえ、いい宣伝になりますよね!第二妃は、表舞台に出てくるような人ではありませんから、いくら
 公がドレスを贈っても誰かの目にとまることは少ないですし、公妃が嫌っているドレスを着こなして
 いたら……これ程、おもしろいことはありませんわ!
 ひとつ、出来上がっているドレスがありますの!公妃に似合う色味のものですから、そちらを用意
 しますわ!それにしても、アンナリーゼ様は人が悪いですわね!」


 ふふっとセンスで顔を半分隠して笑うナタリーは、妖艶な悪女っぽい。
 その様子を見てウィルはさっきまで眠そうにしていたのに、ギョッとしていた。目が覚めたようで何よりだ。


「ナタリー、請け負ってくれてありがとう!」
「とんでもないですわ!夜会楽しみにしておきます。
 そうそう、あのクーヘンという彼女、とてもいいセンスをしていますわ!アンナリーゼ様のドレスを
 一緒に作ったのですけど、阿吽の呼吸とは、こういう手合いの感じなのかと嬉しく思いましたわ!」


 ナタリーはデリアを呼び、夜会用のドレスを広げるよう指示を出すと、リアンと同時にきて見せてくれた。精緻な刺繍がとても綺麗な一品であるからして、この辺のレースはクーヘンが手がけたのだろうか?


「見事なドレスね!」
「ありがとうございます!これと、全く同じものを1つ作ってありましたの。私が着ようと思ってい
 ましたが……なるほど、みんなが目のつく公妃のドレスなら、確実に注文が殺到することを考えて
 おいた方がいいと思います」
「嬉しい悲鳴ってやつね!」


 ナタリーが頷くと、ドレスには興味のない男性二人組がヒソヒソと話をしていた。


「いい方法なのよ!お金をかけず、宣伝してもらえればいうこと無し。着心地がいいこのドレスを万が
 一にでも、公妃が好んで着るようになった……なんて、少し欲まで出てきたわ!」


 ニッコリ笑うと、さすがアンナリーゼ様とセバスが言ってくれる。次はセバスの番よと微笑むと、控えていたパルマをこちらに呼び寄せるのであった。
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